2011年11月19日土曜日

農産加工品の売価・値入れは?売価調査が必須!

    これは加工品の話ではないが、鹿児島の方から「直売所で初めて花を売ることになったが、売価設定をどうしたら良いか」と問われたとき、「原価÷0.50~0.40で良いのではないか」と答えたことがある。

  だが農家の方で、自家製品の原価を正確に把握している人は、10%もいないことが分かっている。分かっていながら上記のアドバイスをするのは矛盾である。6次産業化や農商工連携事業で、ジャムやジュース、チーズ、ソフトクリームなどの新製品を作る場合も、同じように原価が問われる。

  平均的な農産物の原価は、農水省や県農業試験場などの経営指標を参考にすれば、主材料の原価は出せる。経営指標について言えば、北海道(農業生産技術体系)、秋田、石川7、群馬、長野、岐阜、鳥取、広島、山口、熊本など多数の県で、細かい作物・畜種ごとの指標が出ている・・・農水省のものよりはるかに細分化した作物別の統計がある。ぜひ参考にして欲しい。

 だが、法人経営などにおいては商品別、作業別の労働時間の記録をとるようにしないと、正確な原価は出ない・・・と自覚すべきだ。合わせて、従事者全体の1時間労賃も確定しておく必要がある。

 
 加工の場合、「販売段階で利益を確保する」との考えでなく、「原価段階で生産に要した家族労力費、及び利益を確保する」と考えるべきである。経営主の所得も生産段階のものは原価に含める・・・そのうえで下記の粗利益を上乗せすべきだ。

  問題は粗利益額・率である。これを原価に乗せないと、販売が成立しない。粗利益=販売管理費+利益(通常は経常利益)・・・だが、販売管理費には、梱包費、輸送費、各種の中間手数料、販売の間接費、セールスマンや販売に要する人件費などが含まれる。

 仮に直売所で売る場合、委託手数料は加工食品や総菜では20~28%の例が多い(青果・花の12~20%と違い)。ネットで直接消費者に売る場合でも、大手のポータルサイトに出店するときは「出店料、販促費、カード手数料などに12%ほどかかり、粗利益率20%以下であれば損する」と言われている。

 
 HPで直接販売する場合、宅配便を使うので配送費のみですぐ15%ほども掛ってしまう。包材費や人件費まで考えれば、すぐ30%近くの粗利益が必要になる。このためもあり、配送費を別建てで示している例が多い。

 一般の食品加工業の指標では、売上高対比率で原価70.3%、粗利益29.7%、うち販売管理費26.4%、営業利益3.3%、経常利益4.1%という数値もある。

 製造と同時に多数の直営店で小売している例では、原価率61.8%、粗利益率38.2%、うち販売管理費34.4%、営業利益3.8%、経常利益3.5%となっている。

 29.7%の粗利益を達成するには返品や値引き(特売)まで考えると、平均33%ほどの値入率になることもある。値入率と最終の粗利益率は違うことを知って欲しい。また、価格競争型の商品(主にメーカー品)と個性の出しやすい品(中小工場や6次産業化の品)で、かなり差があることも知って欲しい。

 6次産業化や農商工連携品となると、規模が小さく生産性が低い。原価額が高いから、より「こだわり」を前面に出し、高い売価を設定しないと、並みの粗利益率は確保できない。

 小売の値入率を見ても・・・某チェーンの値入率を紹介すると、中小メーカーの多いコンニャクAは46.2%、コンヤクBは41.7%、豆腐Cは30.0%、ひき割り納豆Dは33.0%、いりごまEは33.7%、片栗粉Fは31.6%とかなり高い。これに反し、皆さんもよく知っているキッコーマン醤油Gは10.1%。QPドレシングHは20.7%、雪印バターIは16.7%、マル米みそJは17.8%と低い。

 大量に売れる売れない、回転が速いか遅いかなども、値入率や売価に関係することも知って欲しい。同時に直売をする場合と、小売や問屋に卸す場合とでは売価の概念が異なってくる。後者の場合は卸売価となるが、上記の小売段階の値入率や売価を考え設定しなければ、相手に受け入れられない。このため付加価値販売が実現しにくくなる。

 70円の原価のものを30%の値入率で売る場合・・・100-30=70  ÷100=0.70(70%の原価率の意味) 70円÷0.70=100円 が売価だが、小売段階でさらに30%の値入をして売る場合、100÷0.70=143円ほどになる。「これでは消費者に買ってもらえない」となると、生産者の粗利益率を15~20%に下げる必要が起きる。実際、販売を小売に任せれば経費が少なくなり、生産者の粗利益なり売価は下げて当然と言える。

 注意しなければならないのは、直接ネット販売するのと、卸や小売業者に任せるのと併用する場合、だれしもネットも見ているので、両者に差がありネット価格が安ければ、安いレベルに小売値を下げるよう要求される。 このため値入率や売価は、卸の場合下がってしまう。「一物一価」の原則が働くので、併用型の場合は売価を統一し、ポイントとか情報サービスとか別のプレミアで対応しなければならなくなる。

 以上から理解できると思うが、自己の粗利益率を高めるには、こだわりを持った個性力を高め、消費者なり小売り側だ「ぜひお宅の商品が欲しい」と言われるようにする必要がある。 

 最後に売価の設定だが、これは原価+販売管理費+利益として積み上げ計算が出来ない場合が多く(原価不明で)、直売所、スーパー、ネットで容量別の価格を徹底的に20~30例ほど調べ、横軸を容量、縦軸を価格とする分散表をパソコンのエクセルで作り、平均傾向線、上限傾向線、下限傾向線を引いてみて、自家の容量および品質・こだわりレベルを考え設定するのが妥当である。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料


2011年11月3日木曜日

農産物直売所-売れる陳列③道の駅ちちぶは「木のぬくもり」!

   道の駅「ちちぶ」(埼玉県)は、市街地にあるが、背後地は中山間部である。そして林業を意識し、オール木製の陳列棚である。木の加工品も置きもの、ステッキ、子供向きのおもちゃまで並んでいる。
 
  直売所そのものは30坪ほどと狭い。注目に値するのは、野菜・果物の陳列棚を3~4段の多段式にしていること。ゴンドラ(スチール棚)を木でつくり、当方がかねて提案してきたが、台の裾に当る部分を空洞にし、ここに商品を並べる場合は4段利用となっている(写真・下)。

  狭い直売所の参考例になる。秩父は札所めぐりや有名な秩父神社もある観光地である。土産物がよく売れ、逆に野菜や果物の生産は傾斜地のため潤沢と言えない。売り場が広すぎても、ボリューム感が出ない。

  土産ものの陳列を増やせば、青果の販売はコンパクトにせねばならず、青果の陳列間口は6間弱に過ぎない。このため平台は1間聞=6尺1台のみで、他5間は3~4段利用の木製台である。ここに約120アイテムが並んでおり、品目でも50品はあるはずで、100坪の直売所と比べても見劣りしない。

  特産品の壁側の木製台は4段で額部分には、染物の暖簾も取り付け、他の道の駅にない地方性をよく演出している。デザインの企画力を称賛したい。

 直売所には立ち食いソバ・コーナー、ベーカリーもあり、狭いながらもゆったり感を残している点でもすばらしい。





      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料



下記の内容の講演・研修は、すでにパワー・ポイント
を用意してあり、いつでもご要望に応じます
1.主婦の買物動向と食のライフスタイルと対応
2.農産物直売所の顧客動向と対応
3、顧客視点に立った農産物直売所の運営
4.農産物直売所の計数目標と管理
5.農産物のマーケティング
6.食品加工業の就業希望者が知るべきポイントこと
7.6次産業化の身近な事例から学ぶ


















2011年11月1日火曜日

農産物直売所-売れる陳列②マルシェに学ぶ!

 
 写真はいずれも都内・青山の国連大学前で土日に開設されるマルシェ(青空市場)の写真である・・・1年前以上の開設2日め に撮影したもので、今日どうなっているかは 別問題である。

 3点とも平台に傾斜式に箱を立てかけて、目線に近づくよう陳列している。プロの指導 を受けこうしたのか、狭い1畳分のスペース を有効に活用したいための独自の工夫なのかは分からない。

 ともあれ合理性のある陳列で、直売所においても大いに参考にすべき陳列に違いない。その理由は・・・

 ①狭い面積が1.3倍、1.5倍にも広がり、それだけ有効に利用できる。

 ②5~6mはなれていても、全体の品揃えが見える。

 ③近くに寄った場合も均等な距離で視野に入り、手に取ることも容易である。

 「直売所と狭い場所借りのマルシェとは、訳が違う」と言うかもしれない。


















 しかし、合理的で美しいものは積極的に、直売所にも生かすべきだ。いまから40年も前、初めてアメリカ西海岸15日の旅に出た時に衝撃を受けた。

 なぜか・・・勤勉できれい好きの日本人よりも、人件費の高いアメリカの方が、スーパーやファーマーズマーケットの青果他の陳列が緻密でボリューム感もあり美しいことだった。救いが一つあった。この美しさの最高傑作がカリフォルニア?のゲルソンマーケットで、青果コーナーを構築したチーフが日系人であるということだった。作業現場も見てきた。

 ともかく、西海岸はバラ売り-秤販売が全盛だった。キュウリが同じ方向に何百本と並び、他のどの品も同一方向を向いて重ね置きされ、さらにカラーコントロール=縦に色分けされた陳列でもあった。

  美しい陳列は、食味をそそり、かつお客さんに「選んでかき混ぜれば、崩れる」という心理がはたらき、痛みも出ない・・・今は省力の時代であり、ゲルソン流をそのまま真似ることはない。  

 特に狭い直売所ほど、こうした立体陳列をし、品揃えの充実に努めるべきである。また中段の写真のように、ジャムやハチミツといったものは、平台に置いた場合、目線の下の方に沈みこんでしまうので、こうした立体陳列が特に望まれる。たとえゴンドラに並べるにしても、ブランドごとに傾斜台を棚にはめ込み立体陳列するのが得策である・・・少ない在庫でも豊富に見えるからだ。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料











2011年10月31日月曜日

福島屋(都下羽村市)が福島の米を売る!NHK放映

今日(10月31日)のNHK「プロへッショナル=こんな食品スーパーがあったのか!」で、東京・羽村市の福島屋が登場した。本プログで前に紹介した店である。

 社長にお会いしたのは1回のみだが、放送中にこやかな顔が続いたのが印象的である。生産者や消費者への貢献を、楽しさに変えている点で敬服した。放送後、一気に27人の方がブログにアクセスしてくれたことで、関心の高さが知れる。

 各地の農家を訪ね、「それを作る人の生産品と向合う心=こだわりを知って、取引きするかを決める」という意味の言葉が重い。

 後半、たどりついたのは、今まで売ったことのない福島の米である。福島のセールスマンがわざわざやってきて販売をお願いする。

 担当部署の数人の方は「いままで扱ったことのない福島県産の米を扱うのはリスクが多い」と言う。 福島社長も頭に手を置き、何回も苦悩する。しかし、最後には「一生懸命、こだわりを持って作った安全も保証されているものを、風評被害を気にして避けて通ることが正しいか」と職員に問う。

 わざわざ現場も訪ね、「あの端からこちらまで。田を這って雑草を取り、減農薬を大幅に減らした」の
農家の声。

 そしていよいよ販売開始! 大きなPOPで「国の検査ー生産者の検査-福島屋の検査」と3重チェックをしたことを表示していた。午前は雨、雨があがると続々顧客が来て、社長自らアンケートを採っていたが、納得ずくで次々と買う人が出て完売。

 顧客は「福島屋さんは、平素から信用しているので、福島産であっても信用する」と、何人もが語っていた。31日は偶然2店のスーパーを訪ね、小売の現場に触れたわけだが、残念ながら2店から学んだのは品揃えの豊富さのみで、生産者や消費者への「真の思いやり」は伝わってこなかった。 

H24年2月20日 追記
 新聞報道によれば、米など一般食品に含まれる放射性セシウムの新規制値は100ベクレル以下で、これを超えると出荷停止にすることを義務づけた。福島県の米についての検査によれば、昨年産の97.5%まで100ベクレル以下であったそうだ。福島産であっても、検査済みのOKの品しか出回らない。福島の農業復興支援のため、ぜひ福島産品を快く買ってほしいものだ。

2011年10月23日日曜日

埼玉農業大賞ベンチャー部門大賞に「桂ファーム」!(加筆)














  第2回埼玉農業大賞が20日に発表され、農業者の友人である栗原桂一代表の有限会社・桂ファーム(養鶏業-入間市)が、「農業ベンチャー部門」の大賞に輝いた。うれしい限りだ。
大賞は2部門に分かれ、「農業地域貢献部門」の大賞は本庄市の「ひびきの南部選果機利用組合」である。ちなみにベンチャー部門の優秀賞は有限・オオクマ園芸(三郷市)、高荷正行氏(深谷市)、地域貢献部門の優秀賞は北川辺米の会(加須市)、高橋博氏(さいたま市)である。11月19日午前11時から加須はなまき水上公園で表彰式が行われる。

  桂ファームは今年夏に、某農商工連携人材育成事業の際にも30人近くを案内し、栗原さんから経営の歴史と実態について話をしてもらった。HPも開かずの宣伝を嫌い、「隠れたベストセラー」ともいうべき存在だが、実際は付近の駿河大学との産学協同事業や各種の委員会にも関係、地元小学校の1~6年の某科目も担当するなど地域にも貢献し人脈は広い。

   また日に3冊の本を読んだ時代もある読書家で、すこぶる広い広い知識の持ち主でもある。これが「考える農業」「ゆとりある農業」を生み出す原動力になったように思う。

   目立ちにくい幹線道路から300mも入った奥まった立地で、常時25,000羽の養鶏を飼い、そのすぐ脇の施設で手選別し、生産タマゴの90%近くを農場付帯の直売所で売っている。品種は赤玉のポリスブラウンが90%、白玉のジュリアが10%。駐車台数は7台ほどだが、1台来て帰れば、次の1台が来るといった繁盛ぶりである。信用ある販売をすれば、口コミで広がり、多少立地が悪くとも客が来ることを教えてくれる。

              

   赤玉の直売価格はM以上が1kg480円、S以下が400円、B級品350円。白玉はM玉以上が350円、S以下が300円だ。総務庁「家計費調査」によれば、1kg平均の小売価格は269円であり、M玉は、その1.78倍になる。流通コストの削減分+単価の差があいまって、通常の25,000羽経営の平均販売額の数倍の売上高になる。選考委員の先生もその所得の高さにびっくりしたはずである。(高騰時の令和5年4月はM玉650円)。

   実際は、農水省の経営指標をアレンジした当方作成の規模別連続経営指標からすると、同規模=25,000羽の養鶏に比し粗収益は2.7倍にもなる。この数字は、生産者手取り価格をそのまま反映している。新聞報道によれば、H23年次の生産者手取り価格は中間流通経費も多いため1kg168円である。これに2.7倍を掛けると1kg454円になる。桂ファームの直売価格はこれに近いののになっている。いかに生産-直売の6次化効果が高いかを教えてくれる。

   安全で良い餌、良い環境で育て、美味なタマゴを生みだし、当方も購入して行きつけの喫茶店の馴染み客にもに数回食べてもらっているが、評判はすこぶる良い。「娘への土産にしたいから買ってきてくれ」のオーダーも何回かあったほど。

    すでに過日の「鶏卵」の項でも4点ほど書いたが、再度その理念を吟味すると7つほどの特徴が浮かびあがる。
①直売で売れる量だけ飼い、いたずらな規模拡大をしない・・・付加価値販売に沿った適正規模。
②鶏舎に余裕を持ち、オールイン・アウトの時間差を広げ、充分な消毒をする・・・鶏の安全の確保。
③1段か2段式のケージ(写真)でストレスがなく衛生的な快適環境を維持する・・・産卵環境の維持。
④現在のケージはさびず、鶏舎も20年以上持ち、無駄な投資をしない・・・償却費等の固定費削減。
⑤手選別で割れ玉も出ないが、鶏糞乾燥ハウス、鶏糞発酵機も備えその堆肥化・販売もしている・・・無駄な生産品を出さない。
⑥タマゴを1kg、2kg、4kgで売る場合、某飲料メーカーの空き箱をカットして使用・・・無駄な経費省く。
⑦ファークリフトを使った除糞やバケットローダーを使った鶏糞の切り返し(発酵のための)等の実施・・・省力すべきところは省力する。鶏糞の収入は

    だが、改めて長時間にわたり話を聞くと、一般常識と大いに異なる経営哲学を持っている。つまり、①シンプル、②スロー、③スモール、④ローカル、⑤アナログ、⑥アバウト、⑦ローテク、⑧スマイルで、「全体としては非効率と思われることをやって、最終的に効率が上がるもの」・・・と言う。
   当方も充分理解できていないが、
①養鶏一筋でかつ直販売一筋。かつムダな投資をしないシンプルな経営のほうが成果を達成しやすい。
②短期的な視野でなく長期的な視野を持ち、急がず考えながらスローに着実に最大の利益を追及する。
③質を高め、小さくても所得、利益の上がる経営を良しとする。
④都市近郊とか、遠隔地といた立地に見合った経営戦略で臨む。
⑤⑥物事を白黒と割りきらず、「あいまいさ」を残しながらアナログ的に、着実に基礎をしっかり築く。
⑦良い商品を作るには、労力を掛けるべきところは掛け、ハイテク(機械的管理)に走らない。
⑧最後には家族・従業員・顧客・地域が共に豊かになり、喜び合える経営になる。
・・・ということを、強調しているように思う。

 鶏糞の収入は売上全体の0.35%ほどにしかならないが、利用してくれる畑作農家のため、便利に散布できるようマニアスプレダーも購入し、無料貸し出ししている。軽4輪で運べるものだ。

   家族と社員5人、パート・アルバイト12人が1昨年までだが、昨年から息子さん、娘さん夫婦も加わり、社員7人、パート・アルバイト6人(実質3人)になった。従業者も充分確保されており、労力的にゆとりもあるため、畑を借りて新たな夢に挑戦しようとしている。24年の夏には、小麦の収穫の手伝いもさせてもらった。

 栗原さんの偉さは、「畑作は素人」として、その技術習得のため、栽培関係の塾に通ったことだ。「たえず謙虚であれ。そして急がず学び、ゆっくり実践し、目先の利益に走らず、信用を重んじ着実にお客を獲得していく」と、新事業の展開についても抱負を語っている。

故・栗原桂一氏を偲ぶ

 桂ファームの栗原社長は令和2年の8月に亡くなられた。6月だったか、電話に出られた栗原さんは「眼底の癌にかかり片目を取るはめになった。慣れればさほど不自由でもない」と元気な声が返ってきた。だが「一度会いに行こうか」と言うと、なぜか「今は止めておきたい」との回答。

 暮れにお歳暮の注文に行ったら訃報に初めて接し愕然とした。「農業界のエース逝く」である。私は昔、農業雑誌の記者であり、5年前までは農業コンサルタントだった。ために農業界の優秀な経営者にもたくさん会ってきたが、すぐれた実践者であり、同時に優れた実戦哲学を持った人はそう多くなかった。若いころは3冊の本を並べて交互に読んだ・・・と言うくらいの勉強家であった故に、広い視点に立った経営哲学が構築できたのだと思う。

 謙虚であり、私が50年も前に農業雑誌社「家の光」を独立する時、名刺がわりに書いた農業の本質論から説き起こし発展策を書いた「農業革命への提言」と言うタイプ打ちの小冊子を5年ほど前に渡したが、先の電話の際も「あれは大したものだ。今も大切に保管してあるよ」と言ってくれた。私の貴重な理解者が1人亡くなり淋しい限りである。




     下記の講演承ります    2時間 3万円
1.家庭教育 自立力を育てるのこそ最大のテーマ
2.高校中退でも海外50億円企業の社長ー人生やり直しは可能
3.賢い主婦―食ライフ・スタイル分析―1万件の訪問調査結果
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中小企業診断士歴48年  ブログ実用記事発信300件上





























2011年9月27日火曜日

農産物直売所と客単価-魅力度の指標だ!

 客数×客単価=売上高になる。昔、POSレジのない時代には、どこのスーパーもレジ会社から貰った月計簿(年間月別記録簿)に部門別売上、合計売上、客数、客単価、天候を記入したものだ。そして客数や客単価の増減に一喜一憂した。

 いまは、パソコン上にPOSレジの結果が自動的に出るため、手間をかけずに客数も客単価も出るため、2つの持つ重みを充分につかんでいないはず。

 実は、客単価は「店の魅力度」を投影する指標と言える。魅力があれば、それだけ多数の品が買われていることを示し、ときには高品質の単価の高いものを買っていることを示す。客単価が低ければ逆になる。

 しかし売り場坪数の広さで品揃えの魅力も上下するので、売り場坪数も配慮しないと「良い」「悪い」とは言えない。19件というわずかな例の傾向値であるが、直売所の規模別客単価:y円=3.36x+1,019.9 ±12.2%  x=坪面積  ひとつ自店の売り場坪数をx置いて計算してみて欲しい。

 25坪 1,106円    125坪 1,452円   
 50坪 1,193円    150坪 1,539円
 75坪 1,279円    175坪 1,625円
100坪 1,366円    200坪 1,692円
 
 という傾向値になる。実際には、かつて書いたが常時50坪、土日70坪でも1,800円強の店もある。米や惣菜も充実、しかし花がないのにこれだけになるのは、メインの野菜が85品目もあり、アイテム数にすれば200を楽に超えているためである。

 客単価が高くなれば、魅力度も高くなり客数も増えるのが普通である。また、「直売所が増え、客数が減った」と嘆く例も多いが、魅力を高め客単価を上げれば、徐々に客数も回復するものだ。

 50坪以下の小さな店であっても、工夫次第でいくらでも品揃えは増やせる。平台を2段台にする。下部をケコミにしてここに箱(前から見えるキャスター付き)を置けば3段に使える。花も雛壇にすれば、3段に立体的で見やすい陳列になる。スパイスなど小型商材は柱にプラスチックケースを貼りつけ、陳列もできる。

 またスーパーで売るようなナショナルブランドの加工食品・菓子は大幅カットし、6~8尺の多段オープンケースを1~2本は入れ、ウエット(濡れ物)食品であり回転の速い豆腐、納豆、こんにゃく、生めん、漬物、牛乳、デザートを充実させる。ギフト用に地域特産品を箱売りする・・・客単価向上の余地は無限にある。50坪以下のミニ・スーパーばかり100店以上も開店指導してきたので、陳列のアイデアはいろいろ経験している。

 大切なのは、総客数で日々の部門別売上高を割って、部門別客単価を出すことも大切。どの部門に問題があるかもすぐ分かる。

 なおちなみにスーパーの客単価の傾向値は、150坪で1,424円、200坪でも1,570円である。品揃えが専門店的な直売所の方が高いのは、商圏半径が5倍も10倍も広く、生鮮品であってもまとめ買いをしてくれるからだ。その代り、来店頻度はスーパーの1/4~1/5以下と低い。

2011年7月10日日曜日

農業革命!20代で時給1,700円を目指す経営へ!

 農業も年齢も考え、時給目標(時に年収)を明確に設定、これを達成するため、1.いかに省力するか、2.いかに資材や投資に無駄を省くか、3.生産物のうち、捨てる部分をゼロに近づけるか、4.付加価値販売に努め、手取り率を高めるか(直売や加工等の6次産業化の努力含む)・・・の4点から革新的管理を進める必要性がある。否、いま真剣にこの問題に挑戦しないと、人的資源の面で日本農業は、10年も持たないのではないか。それほど深刻な状況にある。

 私自身、畜産分野で直売をし、夫婦2人で年収3,000万円を達成している事例にも接している。そして上記4点を確実に実行しているのだ。農業法人協会の会員の面々を見ていても、かなりの所得をあげ、雇用の場を広げている人が多い。そして余裕を持って各地の研修に出向き、連携もしてさらに上を目指している。

 平成22年の推定では、農業者の平均年齢は65.8歳。販売農家は163万戸、・・・これに対し、新規就農者は推定6万人に過ぎない。平成12年の7.7万人、17年の7.9万人に比し増えていない。

 長期不況のなか「農業は魅力ある職業」ともてはやされているものの、農業の専門求人広告欄を見ると(都道府県別、作物・畜種別)、求人ゼロの場合が目立つ。県という広い単位でも、結構ゼロが多い。しかも当初の月給与13~18万円の求人が多く、20万円を超えることはまれだ。これでは劣悪な条件とされる介護部門と変わらない。新規就農希望者の研修講師を努めた際も、「必死に農業を勉強しているが、適正な給与の受け入れ先があるのだろうか」の声が強かった。

 一般産業の統計を紹介すると、年間労働時間は残業分まで含め、20年で1,751時間となっているが、平均年収は21年の場合の国税庁資料のまとめでは下記の通りで、仮に年1,800時間労働とした時給は( )の通りである・・・
            男子            女子
19才以下   148万円 (  822円)  110万円
20~24才   256万円 (1,422円)  230万円
25~29才   355万円 (1,922円)  289万円
30~34才   427万円 (2,372円)  291万円
35~39才   497万円 (2,761円)  285万円
40~44才   579万円 (3,217円)  282万円
45~49才   620万円 (3,444円)  274万円
50~54才   629万円 (3,494円)  269万円
55~59才   595万円 (3,306円)  251万円
60~64才   479万円 (2,661円)  217万円
65~69才   387万円 (2,150円)  201万円
70才以上    374万円 (2,078円)  225万円
平均       500万円 (2,778円)  263万円

 夫婦2人で働くとすれば、サラリーマン並みの年収とは763万円となる。美味しい食べ物、美味しい空気まで考えれば、これだけの年収になれば、サラリーマン以上の豊かさも実感できるはず。ともあれ、20代の単純平均の時給はサラリーマンは約1,700円である。年1,800時間労働では年収306万円、月収25.5万円である。30代では時給約2,567円、年収462万円、月収38.5万円である。

 後継者や新規就農者に、「上記年収ぐらいは払える経営」を前提に、経営計画を立て、冒頭の4点を前提に実践的な管理する・・・こんな経営であってほしいと願う。私もかつてバリバリ仕事を受けていた時代は、15年間市場調査のアッシスタントに昼食代も含め日給18,000~21,000円を払い、1人の求人に50人もの応募を得た経験を持つ。そのかわり、内容の手抜きはせず、徹底した作業工程の効率化に挑戦もしたものだ。

 新規就農者についても、20代から30代前半には結婚生活が保証できる農業を目指して欲しい。これこそが農業再生・発展の道と信じている。

















 
  
 

 



 
 

2011年6月27日月曜日

農業と古民家生活体験「コロット」の実践!!



















 写真(右)体験農場と貸し農園
    (左)古民家の内部

所沢市の西武球場に向かう西武線の下山口駅から徒歩15分。樹齢900年とされるケヤキの大木が目印。ここに100年以上を誇る古民家がある。株式会社「corot=コロット」の若き経営者・峯岸祐高さん(29歳)のおじいさんが残した農家住宅だ。ケヤキの11寸角の大黒柱、囲炉裏もある。建面積は当方の計算では40.5坪ほど。土間や長い廊下もある。 入口脇には手作りのピザ焼きの窯が置かれていた。

 敷地約400坪には、農具を置く納屋、手前味噌を造る小屋やかまどなどもあるが、建て替えペンキ塗りといた華美に見せるくふうは一切せず、古いままの原型がとどめられている。100年前に極めて近い風景に安らぎを感じる。

 敷地前の散歩道を隔て、1,500坪ほどの体験農場と貸し農園が展開し、ジャガイモや里芋他が植えられていた。入会金5,000円を払い、農園レンタルであれば3坪1ケ月5,500円、1日体験入園1,000円、古民家素泊まり2,500円、薪使用の管理人サポート付き素泊まり3,500円、ピザ講習3,000円・・・6月だけで7~8回もイベントがあり、計100~120人もが来てくれるそうだ。

 また、味噌作りは大豆の栽培から始め、収穫後に味噌作りで全行程では1年半を要するが、10回ほど通い農作業や仕込みを体験するが、8,000円+味噌作り4,000円(講師料含む)とのこと。

 ツイッターで客が客を呼んでくれ、無料の宣伝が行きとどき、最近テレビ東京の土曜スペシャルでも紹介された・・・かのデビ夫人、杉田かおる、川上麻衣子の3人が宿泊体験をしたそうだ。

 提供しているメニューの多さに感心するが、さらに耕作放棄地を広く借り、ビール麦も植えて、メーカーさんに渡し、顧客のマイ・ビールを開発出来ないか?のアイデアも持ち、古民家の雰囲気にマッチしたヨガ教室も開きたい・・・と夢は多い。またそれを実現する能力を持つところがすごい。

 イベント時の労力は高齢者を上手に使っている。助成金もあるためだが、雇用を広げ地域活性化に貢献したいとの意欲にも満ちている。6時産業化の物ではなく「新たなサービス作り」のパイオニアとも言える。早くお嫁さんが来れば、さらに大きく羽ばたくことになるだろう。

2011年5月25日水曜日

直売所のパソコンを使ったPOP作成指導















 パソコンの時代!POPもパソコンで作ったほうが豊かな表現もできるし綺麗である。100円の品を108円、118円の価値に高めることもできる。だからと言って、手書きの味わいを否定するものではない。




 だが全体の商品に、もれなくPOPを添付していくには、職員の誰かがパソコンPOPを作成できることが必須条件である。1枚100円で職員が請け負っている場合もある。モデルPOPを打ちこんでおけば、農家の方でも真似て打ちこみもできるもの。

 パソコンPOP作成の手順を紹介しよう・・・・

(1)まず一般的にはA4サイズかこの半分(小さい店の場合)サイズのPOPを予定する。

(2)一般的には横長の利用である。縦長も一部使えば、アクセントがつき互いに目立つ。
 
(3)横長の印刷を指定し、できれば用紙の上下にラインを設ける。挿入→図形→四角の枠を選び横に 伸ばす→自店のマーク、店名、キャッチフレーズなどを上段の枠に入れる。ラインがあると文字部分が紙全体の7分目に押さえこまれ見た目がよい。

 プライスについては、日々変わるため、別に書くこととして除くのがよい。品名、プレゼン(訴えかけの文章)。イラスト等については、それぞれを配置する場所を挿入→図形→四角の枠で設定してかかるとよい。そうすれば、枠ごと文字や写真を他所に動かすこともできる。

 いよいよPOP文字の打ち込みだ・・・

(5)まず商品名の打ち込み。たとえばタケノコとしよう。文字欄に書き込みできるよう、四角の枠に右クリックして「テキストの追加」を選択、枠内左端上にカーソルが来るようにし合わせる。

(6)挿入→マークのワードアートを選択→多数のA=アート文字のうち左端の最上段を選ぶ(黒縁どりのくっきりした文字になる)。次に文字打ち込みの画面が出るので、文字を選択する。文字の選択欄にはMSPゴジックとなっているが、アクセントをつけたい場合、右端の▼をクリックて▲▼をそうさして、好きな文字を選択する。この選択ではP0Pらしく、説明文、プライスなどには主にHG創英角ポップ体や、HG創英角ゴジックUBなどを使うのが良い。文字の色、文字を囲む線の太さも右クリックして指定欄を出し、選択する、

(7)文字記入欄にタケノコと打つ。そのあと右上の選択のBを押し太文字に指定するのがベター。

(8)OKを押せば、枠内にタケノコの文字が移る。枠ごと小さくなるのが普通だが、枠を前の大きさまで拡大後、文字もほぼ同じサイズに拡大する。

(9)文字の間隔は狭いほうがPOPが締まる。この場合は書式→左端のAV間隔を選択→一般的に「狭い」を選択。

(10)文字の色付けは、右クリック後→ワードアートの書式設定→色の選択をする。

 イラスト・写真やプレゼン・・・
(11)イラストや写真の挿入も「テキスト追加」で枠内左上にカーソルを持ってきて、ここに貼り付ける。枠やイラスト等を伸ばし、当初予定の大きさに整える。枠ごと望みの位置にずらすこともできる。

(12)プレゼンは文章と同様にPOP文字指定で書くのもよし(写真)、ワードアートで書くもよしだ。一般にはPOP文字で書くのが楽。

(13)最後に目ざわりな枠線は消す。一部残してアクセントを付加するもよしだ。

 ひとつモデルデザインを作れば、あとは品名やイラスト、プレゼン(商品説明)を書きかえるだけですむ。またラミネート加工しておけば長期に使え、来年の同じ時期にも使える。 ラミネートの機械だないときは、100円ショップで用紙を挟みこむ書類入れを利用する・・・10枚入り?で100円。

 このため、日々変わるプライス(価格)は別に128円、148円、178円と10円刻みで多数の価格を作成しラミネート加工し、プレゼン型POPの下部にセロテープで日々貼り付ける・・・この方法が最善である。

 イラスト集が欲しい人は連絡いただければ、メールでおくります。もちろん無料。




































































 POP

2011年5月22日日曜日

直売所と野菜苗-日高中央は120アイテム




 夏野菜の苗物販売もすでに終盤のはずだが、埼玉県のJA日高中央直売所は、以前あった小型店舗の時代から、野菜苗の豊富さが特徴だった。新店舗になりますます活発で、店頭の2間幅の下屋出し部の幅10間にわたり、野菜苗がびっしり。およそ120アイテムある。

 一緒に見学に行った仲間は、「これはすごい。東京の世田谷あたりの住宅地で、20%も掛けて売っても大人気になる」と評したほどだ。実際、出荷者か従業員が軽トラに積んで、繁盛商店で販売するようになれば、これも直売所の発展に通じる。

 売り方も実に多様である。例えばナス、ピーマンは共に5ケ683円、3ケ410円、2ケ273円、枝豆やトウモロコシ、キャベツは10ケ525円、7ケ368円、5ケ263円と個数の選択がしやすくなっている。
 他の扱い品目も紹介すると、トマト、ミニトマト、キュウリ、ニガウリ、カラーピーマン、ゴーヤ、トウガン、シシトウ、 ヘチマ、ヒョウタン、カボチャ、ミニカボチャ、ネギ、キャベツ、ベビーサラダ、パセリ、セルリー、ハーブ、モロヘイヤ、シソ、トウガラシ、鷹のつめ・・・と続く。

 市民農園も増え、耕作放棄地の農園化も進めば、ビル屋上での野菜作りも今後進む・・・となれば苗ものは成長産業と見てよい。自家の畑の苗作りと合わせ、販売苗まで作る、それを積んで都市中に打って出る勇気ある生産者が現れてもおかしくない。

2011年5月19日木曜日

援農ボランティア!NPO「すずしろ22」

 農村の高齢化による人手不足は深刻!なにせ農業就業者の平均年齢はH22年で65.8%、65才以上の構成比も60.4%(推)と高い。多くの直売所でも出荷者が減り困っている。新たな生産者をどう育てるか・・・そのシステムの構築求められる。

 こうしたなか、市民による援農システムを推進しているのが、都下八王子市のNPO法人「すずしろ22」(理事長・中村貞夫氏)である。写真では見にくいが、「八王子の大地を応援する」をキャッチフレーズに活躍し、すでに正会員は130人ほど。年会費1,500円、あとは万一の事故に備え、任意に傷害保険に入るだけ。

 活動は3本柱・・・
 ①援農ボランティア  農家と市民の相互扶助に立った農作業の応援。責任・継続・対等の考えから有償の活動で、農家から550円の謝礼をもらい、運営費として100円を引いた450円が市民にわたる。

 ②援農プロジェクト  農地の活用・保全について農家の計画に主体的に参加し、謝礼として収穫野菜をもらう。市民農園の開設・運用、環境・景観の維持にも寄与していこうというもの。

 ③地産地消活動  生産された野菜の販売を手伝うもの。新鮮・安全・顔の見える野菜を消費者に提供するとか、学校給食ほかのルートを開発し、流通ルートの短縮に寄与していく活動。

 健康に良い、農作業を体験したい、農家に元気になって欲しい・・・など、参加理由は様々なようだが、「すずしろ22 月報」は、実に豊富な内容がA41ページに上手まとめられ、センスあふれる編集である。今月の援農状況、援農に参加した感想文、イベント情報、農家の栽培状況、事務局からのお知らせなど簡潔に掲載され、写真・イラストもあって楽しく読める。

 4月の月報に載ったUさん(女性)の感想文・・・「生協で援農経験は何度かありますが、車がないので 遠出は無理です。近くを中心に参加しています。介護も始まり、当初思ったほど参加できません。内容も草刈りだけです。夏の炎天下、畑にしゃがみこで草刈りをするのは、思った以上に疲れる作業でした。(中略)それでも、畑が綺麗になるとうれしいものです。半日やった後に飲んだアイスコーヒーは格別に美味しかったです」とあります。

 体験を通じ、真の農業者と市民の相互理解と交流が進み、それが援農につながる、わずかながら収入にもなる・・・こうした3方良しのシステムが全国に広がることを願ってやみません。

 

 

 

 

















2011年4月8日金曜日

頑張れ「ふれあい大樹!身障者の直売所誕生(加筆)




    農産物直売所「ふれあい大樹」が、4月14日に埼玉県入間市上藤沢にオープンした。身体障害者や心身障害者に各種作業の場(授産)を提供する「茶の花福祉会」が運営する施設である。「障害者を平等に扱い、その自立支援」がモットー。
   障害者の働く場を確保し、合わせてで生産した野菜、加工したパン、調理した料理を提供し、少しでも障害者の所得アップを図りたい・・・というのが狙いだと思う。
同法人の高橋満男理事長は「作業場など直営の施設を12ケ所持つほか、関連グループの施設まで含めれば、22~23の施設になる。今回の直売所は、県の最低賃金1時間750円を守る初の指定施設]だそうで、関係者から期待が寄せられている。

障害者雇用定員20人に対し現在11人が働き、約10人の健常者が店長やパートとして働いている。敷地1,100坪、駐車場62台、建物面積200坪、直売所は約75坪、レジ4台。これに入口を同じくする手作りパン工房があり、入口を異にする和菓子工房、うどん屋・大樹(約15坪)がある。目標は年商3億円ほどのようだ。営業時間は9時半から17時である。
   
    直売所の場合、近隣農家の50軒ほどが支援、商品の80%以上の供給を受けている。手数料は野菜15%、加工食品20%とこの辺では極めて安いレベルだ。障害者の農場は市内の金子地区に2haあって、15~20人が働いているそうだ。「商品として今一歩改善が必要」との農家の指摘もある。
   
    仕入も一部しており、野菜の品揃えは45品目(普通50~85程度)だからまだ少ない。だが1品目2~3人出荷の場合あり80アイテムはある。野菜のワン・ストップが直売所の使命とすれば、もっと努力が必要である。また午前中で売り切れてしまう品ものがあり、数量の確保が当面の課題である。買い物もしたが、泥ネギ3本128円、ニンジン3本198円、ジャガイモ男爵4ケ238円、ピーマン5ケ78円、シメジ1P99円・・・といった安くて手頃な値段だ。

   ある農家の方は「70Pほど出したが午後1時までに売り切れてしまった」とうれしい悲鳴をあげていた。携帯電話に自動的に販売数量と金額が順次送られてきており、IT体制も整った近代的な直売所である。問題はPOPがまだまだ値段だけ。こだわりを訴えるPOPがぜひ欲しい。

    精肉の豚のロース、バラ肉、切り落とし、ひき肉と4品あり、加工肉も8品ある。漬物、豆腐類、牛乳類なども品揃えは悪いが、「こだわりを持つ地域の良品を一生懸命揃えた」という。地域で有名な近藤牧場のヨーグルト、地元生産者の有機大豆で作った島屋豆腐店の手作り豆腐もある。調味料ほかの加工食品も総てこだわり品で、ナショブラ品は皆無なのは賢明である。

    うどん屋・大樹は15坪ほどだが繁盛していた。うどんだけでなくトンカツ定食、カレーライス、飲み物とメニューは30種以上と豊富。料理品に限れば400~650円の価額帯。なによりも働く心身障者の方の懸命で明るい接客が素晴らしい。ぜひ昼食などに利用して欲しい。
東日本大震災の罹災者にも、きっと復興への勇気を与えることになるだろう。頑張って繁盛店になって欲しい。

    (4/15)休日とは知らず店を訪ねると、駐車場の隅に高橋理事長さんともう一人の方が、自ら藤棚を作っていた。今年は無理として来年の5月には3尺?も吊下がった美しい藤が見ることができるだろう。それにしても理事長さんの店を思うと心と努力に、あらためて敬服した。

   (4/29)父兄の方へのお願い! 野菜料理の様々な独自のメニューがあればFAX04-2931-1155に送ってください。御礼はしませんが、POP化して売り場で広くお客様に紹介したいのです。名前を出して良い場合は名出しOKと記してください。

  (5/27) 「農産物直売所」の看板も大きくなり、目立つようになった。品揃えの不足はまだ目立つが、野菜の陳列は午後に行っても手が入り整然としている。壁面の加工食品のコーナーは納品者が競って演出につとめ、商品説明のPOP、パンフなどもつるし、非常に充実している。レジ前の自家製の弁当や和菓子も魅力がある。パンは売り切りでいつも新鮮。これは精肉にも言え、ララミーハムさんが毎日新しいパックに入れ替えてくれるとのこと(感謝すべきこと)。
31日の火曜には地元放送局「茶笛」の取材放送も予定されている。何時かがはっきりしないが、アナウンサーの松下様・・・充分、宣伝してください。よろしく。 放送時間午前10時40分ころ・・・と分かりました。

(7/31)7月1・2日にはチラシが撒かれ「朝どり夏野菜」の販売がされ、7月26日にもチラシを撒き、ふれあい夏市の夏休み向けの豊富なイベントがされた・・・「ペーパーボール投げ大会」「ヨーヨー釣り」、「ジャガイモ・タマネギ詰め放題」、焼き鳥の出店のほか、かき氷、バナナミルクジュースの販売。
    これで客数も伸びているが、問題はまだまだ季節品を中心とさいた品揃えが不十分。やはり入間市の出荷可能な農家の皆さんは、ぜひ出荷に協力し欲しい。出荷したい人は 04-2966-2941 施設長の上山さんに電話しくれるよう、こころからお願いします。

(H24年5/20)久しぶりに訪問したが、直売所の職員のうち障害者17人、健常者10人と障害者の比率が大幅に増加。レジ、商品補充、各種加工など立派にこなしている。お客さんとの対応もすこぶる良い。それでいて心配していた葉物類の品揃えも、時期のせいもあるが一段と充実していた。ひと安心。家庭菜園をしている方も積極的に出荷してくれるとのこと。POPの野菜のイラストも新しい工夫が見られた(当初、当方が渡したイラストでないもの)。




  1ケ月以上遅くなるが、5月25日、26日、27日には開店1周年記念が予定され、バンド演奏も行われる。(写真3点)
ぜひ父兄の皆さんはじめ、地元消費者の皆さん!応援してあげて欲しい。24年は23年の2倍増が売上目標とのこと。

(H24年9月13日) このところ弁当の充実が素晴しい。セブンイレブンが380円ほどで売っているものがここでは・・・照り焼き梅肉風、鶏の立田揚、チキンかつ、ハンバーグ、唐揚げの各弁当が300円だ。レジ前でお客さんを待っている。売場の新鮮野菜を加工した天ぷらセットもたっぷりはいって250円である。季節の果物の充実も一段と進んでいる。変わったところでは、台所、居間、寝室、冷蔵庫、履物入れに便利な除菌・防臭剤やお口の化粧品も置かれるようになった。


(H25年3月31日) 茶の花福祉会では来る5月12日(土)に、10~15時に入間市の「彩の森入間公園」で、「福祉ふれあい祭り」を開催する。
 鹿鍋が無料のほか、ふれあい音楽、フリーマーケット、屋台横町、大道芸、ゲームコナーなど、多彩な企画である、ぜひ多くの参加を願う1人である。












































































2011年3月4日金曜日

農産物直売所-損益の指標はどうなるか!②


 カット写真は栃木の生産者からいただいた「とちおとめ」。生産者番号をフイルムに印刷

前回も述べたが、まずコントロールすべきは最大の経費である人件費だ。スーパーやコンビニを含む各種小売業の労働分配率は46.6%という数字もあるが、新規出店の場合「初期設備投資の償却もかさむので45%ほどに抑えるのがベター。
 
 粗利益率17.5%の場合、人件費率は×0.45=7.88%になる。3店平均の9.02%-7.88=1.14%・・・が浮いてくる。経常利益の2.11%+1.14=3.25%となる。小売業では3%前後の経常利益を目標にするのが常識である。スーパーの40社ほどの平均は1.55%だが、価額競争でなく鮮度・品質中心の「こだわり競争」であれば、この程度は取れるはずである。実際、事例3事例の1つはそうなっている。
 
 次に大切なのは初期投資である。初期の設備+運転資金投資は・・・年売上高÷3より少なくすることが原則だ。つまり経営資本回転率を年3回以上にする。スーパーでは平均3.15回転という数字が出ている。直売所の場合、冷ケース、肉・魚などのバックヤードへの投資は少なく、安い木の平台中心で、3回転では甘いぐらいだ。

 売上予測に見あ合わない広い売り場、電気や空調が無駄になる高い天井の建物であれば、コストがかかり無駄も生むことに留意する必要がある。以前にも書いたが、直売所の売り場面積見合いの平均的売上高は 年y万円=256.5xー1,026.1 (x=坪面積)。年商の1/3以上の投資になっている場合は、売り場の予定を2/3とかに圧縮してみるとよい。2/3の面積でも工夫次第で1.5倍分の品揃えとそのボリューム確保は可能である。

 ちなみに売り場面積見合いの平均客単価を紹介しておくと・・・客単価y円=3.46x+1,020(x=坪面積)である。 さらに年売上高÷客単価=年客数である。一般に50~150坪くらいで客単価は1,500~1,600円のはずだが、60坪で1,800円の店もある。157坪の店の品目数が53品に対し、この60坪の店は87品であった。同一品目について選択できるよう複数アイテムあることも必要だが、まず品目の多さが必要なことを教えてくれる。

 品揃えに魅力があればそれだけ買い回り、客単価は上昇する。肉のインストア処理店では2,000円超えの店もある(う宮やーな=富士宮市)。

 ついでに言えば、直売所の多くは目標管理に沿った、計数の管理がほとんどできていない。パソコンのできない店長にもであった。POSレジがなんでも数字を処理してくれるが、結果を見てないし、生かしていない。ここがスーパーとの違いで、いずれスーパーが直売所経営に参入したら簡単に負けてしまいかねない。

 スーパーでは財務管理と合わせ、部門売上、部門粗利益率、部門ロス率、売り場1坪売上、従業員1人売上、従業員1時間当り粗利益額・・・など常時月ごとに分かるようになっている。この見張りが機能していなければ、JAの大型店であろうとも、タイタニック号に等しい。

2011年2月10日木曜日

農産物直売所-損益の指標はどうなるか!①

 農産物直売所は①生産者からの委託品、②市場や生産者からの仕入品からなる場合が多く、決算処理では、収入額は①については委託手数料のみの計上、②については売上を計上・・・と2つの異質なものが合算されている。

 このため、収支目標を設定するには、①についてもひとまず手数料収入÷手数料率(例えば15%の場合0.15)として③仮の売上を立て、③+②を全体の売上として、各経費率を出し、順当か否かを検討するといったややこしいことになる。

 ところで野菜・果樹や花の委託手数料が仮に15%としても、手作りの惣菜ほかの加工品は20%だったり、仕入品は粗利益設定が25%だったりする。委託手数料にしても12~23%までと差が大きい。このため粗利益率の目標を中間的な17.5%と仮定し、目標となる経費率を考えてみたい。

 まず3事例について異なる手数料や粗利益率を17.5%に揃えて、そのとき各経費率がどうなるか・・・をそのまま紹介しよう。最大経費の人件費は9.02%(うち0.55%は福利厚生費)。これは粗利益の51.5%になるが、労働分配率と言える。 

 広告宣伝費0.51%、研修・会議費0.18%、修繕費0.13%、事務用品・消耗品費0.80%、水道光熱費0.63%、旅費交通費0.16%、各種手数料0.53%、公租公課0.25%、保険料0.18%、諸会費0.17%、リース料0.16%、原価償却費0.54%、地代家賃0.11%、管理費0.92%、雑費0.36%となる。この結果人件費を含む経費合計は14.65%。

 包装費は消耗品に含まれるとみるべきだし、POP費は広告費や事務消耗品にまたがっているのではと推察する。また人件費以外で比較的多い経費は、管理費(保守点検、財務・清掃・警備などの外部委託?)、事務消耗品等、水道光熱費、手数料(配達?)などだが、正直3社3様の分類がされていて、正確につかみにくい。直売所についての経営管理の指導書がほとんどなく、横並びの比較検討がしにくいのが残念である。

 17.50-14.65=2.85%が営業利益になる。ここから金利等の営業外損益を引いた経常利益は2.11%となる。

 これを自店に当てはめたいときは、例えば粗利益率が17.5%でなく15%なら、各費用科目を0.857倍に圧縮、20%なら1.143倍に拡大して比較してみて欲しい。

 問題は敷地、店舗、設備の所有形態が様々で、 一般常識からすれば家賃地代、原価償却費などはもっとかかると見るべきだが、第3セクターの土地・建物を安く使うような場合は逆に率がもっと低いのが現状である。

 いずれにしても、粗利益額の51.5%を占める人件費のコストコントロールが、黒字化のカギを握り、①事前や日々の職員教育(質)、②時間帯別の適正配置(量の適正化)などに留意しないと、委託手数料の上限20%でも採算に乗らない。直売所の主人公は消費者や出荷生産者であり、一般スーパーレベルの①②に努めることが店側の使命である。

2010年12月21日火曜日

「談合坂SAの直売所」の旅客は野菜もたっぷり!


 東京方面から中央道を旅すると、談合坂サービスエリア(SA)で必ず一息つきたくなる。下り車線のSAは大賑わい。帰りには、楽しみにしていた上り車線の農産物直売所「やさい村」に寄った。

 この直売所、トイレ近くの人が寄り易い場所にあるが、コンクリートの床に張られたテント掛け。いくつかの水色やブルーのテントがガッチリと寄りそうように建てられている。売場は約56坪見当(レジ2台、年商推定1億2千万円?)。低コストで、農村部のロードサイドの販売所のようで、「親しみやすさ」がある。低コスト販売といった面で好感も持てる。
 
 が、商品を持ち込む生産者からすると、「テントの色のため、野菜の本来の色が出ない」「外気温に影響され、しなびやすい」といった悩みもある様子。
 
 外回りには花壇苗、野菜苗、豪華な鉢花が多数飾られ、店内の野菜は結構豊富。特に葉物では珍しいものが多い。 訪ねた時は20人もの客が狭い店内にひしめいていた。

 別途資料によれば、生産者は「上野原市新鮮野菜生産者の会」に組織された81名とのこと。極めて多くの品目の野菜作りが盛んな土地柄のようで、モロヘイヤを帝国ホテルに出したり、ルッコラ、チインゲンサイ、ソ連産のナス「ブランドローズ」、夏にはトウモロコシ・・・なんでもあり。
 年間を通じ、珍しさのオンパレードになれば、人気がこれからも増すはずである。多くの直売所では、この珍しさへの挑戦があまり見られない。
 運営主体はNEXCO中部日本という。このNEXCOは、関係エリアのSAに今年10店舗の直売所を出す・・・というので興味がかきたてられ訪ねた次第だ。 普通の直売所同様に委託販売で、手数料は青果20%、加工品25%のようだ。
 
 店の人の話では「98%は旅客」という。地元客が一般道から入れる駐車場も 台となっているが、近隣の住宅密度は極めて薄く、ららん藤岡(群馬)とは大違い。東京に入る前の最後のSAとなれば、あと永くて2時間もあれば家につける。肉や魚は冷蔵庫にある!あとは新鮮な野菜があればよい・・・こんな客が次々立ち寄っているのだろう。

 「しなびるから、野菜はあまり遠方で買わない」という常識は古き時代のものとして捨てねばならないようだ。

 

 

2010年12月18日土曜日

「ポケットファームどきどき」(牛久)は最高のおもてなし




 全国直売所研究会の特別研修会が、17日に茨城県の「ホケットファームどきどき」(牛久店)で開催された。今回はこの直売総合施設の「森の家庭料理レストラン」にスポットを当てた研修会である。 

 農村レストランのあり方について、用地取得から全体設計、レストランの細かい運営を手掛けられたJA全農いばらきの管理部特命担当部長の鎌田定宗さんから、ことこまかに説明をいただき、後にレストランで各自1,800円の食べ放題のランチを満腹になるまで賞味した。
 どきどき牛久店は10月2日開店、敷地14,300坪ほどと広く、駐車場350台と広い。直売所面積182坪。レストラン部門150坪(130席)と広く、開店初月の売上は全体で1億円という。レストラン部門はランチのみで、夜の営業はしていないがランチだけで1日200食が出、1日40万円近くという。250~300食が目標のようだ。
 バイキング形式だがホテルのバイキングと異なり、そのメニューの豊富さに圧倒される。米飯、フランスパン、スパゲティ、味噌汁、スープ、野菜サラダ、肉料理、アイス、スイーツ、ドリンクなんでもありで、選択幅は100品にも及ぶはず。新規に豚等のしゃぶしゃぶも提供している。
 そしてキッチンの中も見え清潔、通路・客席の配置もゆったりで、主婦のくつろぎの場として、すでに大繁盛。森林を開いた敷地で、周囲の景色を見れば癒される。まさに森のレストラン。料理の体験教室もあり、子供さんの遊園地も準備中でる。 

 鎌田氏の説明を聞いていると、すべてユニークな発想で、かつ納得の行くことばかり。
 「一番大切なことはおもてなしの心。これが完全に定着するには1~2年はかかる。まだまだこれから伸ばせる」
 「設備や売り場のレイアウトにしても、これで完全とは見てない。これから従業員がお客様のことも考え、直して行くもの」
 
 「料理メニューを固定してない。その日入った新鮮な野菜ほかの素材を前提に、日々考えるように指導している」・・・隣の直売所に野菜だけでなく、新鮮な肉も豊富(セルフだけでなく対面コーナーも)
 
 「ここは現在はランチを楽しむ主婦をターゲットとしている。男性客はいらない。それだけの世帯数もある」
 
 「原価率は目標よりまだ4%ほど多いが、素材や料理品の有効活用をし、料理の技術が向上すれば、2~3年後には達成できる」
 
 顧客ターゲットが明快なこと、また「どきどき茨城店」(平成12年4月オープン)の過去の実践で得た「計算された目標」に沿い、余裕を持って、かつ従業者自らの力で改善を進める・・・といった運営姿勢は素晴らしいの一語に尽きる。









 

2010年11月26日金曜日

地産マルシェは地元連携の本物直売所


 「よくここまでやっているな!これは本物だな」と言えるのが都内地産マルシェだ。群馬県前橋市に本拠地を持つファームドゥ株式会社が経営する都内の阿佐ヶ谷店と中野店を改めて見た感想である。

 この会社は農家直送の採れたて野菜を中心に地元産の各種の加工品を扱い、レストランまで含む「食の駅」を群馬県下で5店舗展開している。「地域社会へに貢献」をモトーに生産農家と地元の中小の加工業者を一体化し、従来の農産物直売所と違い、ワンストップ(1ケ所で多種揃う)な直売所を都内・埼玉にも11店出している。

 阿佐ヶ谷店は約32坪、中野店は約45坪(レジ2台、常時2人体制?)とコンビニと同等かやや大きめの広いさに過ぎないが、野菜の品揃えは150坪の直売所以上に豊富で、細かく並べ阿佐ヶ谷60~中野130品にも及び、有機あり、泥つきのニンジン、ダイコン、ゴボウ、ネギありだ。

 さらに精肉(中野12品)、塩干魚(同・7品)、惣菜だけでなく、地元のメーカーさんの顔写真、名前まで掲示して豆腐・納豆類、こんにゃく、麺類、牛乳・乳製品、ハム・ソセージ、パン、ケーキの一部、和菓子、米、卵まで揃えています。特徴の出しにくいドライ食品は4尺のゴンドラ2~3本ほどに圧縮し、頻度の高い生鮮品、日配品に絞り、豊富さをキープしている。米粉入りのパン、バームクヘン、ハードケーキまである。
  
 

 「本物だな」と言ったのは、群馬の地元産、しかもこだわり品ばかりを置いていること。ナショナルブランド品は10品もないくらい。いま「農業の6次産業化・農商工連携」という言葉が盛んに使われているが、「地域の各業者の横の連携がポイントになる」とされるが、マルシェはこれを見事に実現している。素晴らしい。
 
 
 垢ぬけした店舗で、老いも若きも関係なく、こだわり客が来るはず。 営業時間のAM10~PM7:30ないし8:00時というのも好感が持てる。これなら並みの直売所と異なり、兼業主婦でも来店可能になる。

 
 60代の主婦は、「病院の近くなので、ある時寄って、野菜が新鮮で安いし、珍しいものばかりある。最近はバスでよく来ている」とのこと・・・話が弾み、一緒にバス停まで帰った。

 

2010年8月24日火曜日

農産物直売所!何が問題点か-リスクなき企業

 B 「大型の直売所では、3年くらいであっさり目標の売上高になりますね。だがこの後の伸びがない」
 A 「だいたいそんな傾向ですね。チラシを撒かなくても、3年もたてば口コミで来たい人に浸透してしまう。それだけ鮮度や合理的安さ、安全などスーパーにない良さでQ型(8月14日記述)人間は、ほっておいても来てくれる。だがその先の長期な発展計画がない」
 B 「そうですね。委託販売、返品受取、手数料制の運営では、まったくリスクがない。リスクなき企業などは普通の社会では考えられない。リスクがないので横ばいでも、パートの人員を調節すればどうにかやれる。このため新たな発展策を考えない」
 A 「そうなんだ。だが直売所でも、福岡市南区で直売店ぶどう畑のばあい、店長の新開玉子さん(実際は経営者)は自ら農業者だが、食品加工が得意なこともあり、当初から商品は買い取りし、残れば自家加工して売ることをしてきた。これがリスクを負った真の起業だと思う。だからオリジナルな加工品も多く、料理講習会も活発で、近隣にJAの大型店が出ても発展している」
 B 「普通に新鮮なものを安く売るだけでは、すぐ壁が出来る。これを超える新しい挑戦は「起業」でありリスクがともなう。しかし起業、また起業、また起業・・・と次の手を打たないと成長はないですね。減農薬・減化学肥料や有機品の栽培、新品種や地元伝統の品種に挑戦する。良いものを作り、直売所をブランド化して、その信用を基礎にして、ギフトの宅配も拡大する。農村レストランにとどまらず、レジャー施設、体験農場やときにペンションなども経営しグリーンツーリズムにつなげてゆく」
 A 「三重県のモクモクファーム、埼玉県のサイボクなどの発展過程を充分知るべきですね」
 B 「茨城のみずほの村の市場も立派ですね。2番手の人は1番手の人以上に良い品を作り、良となればより高い値で売らしてくれる。これであれば、良品競争の循環ができ、農家の所得は増える」
 A 「みずほでは、米20品も総て特殊栽培品以上、調味料も菓子もみんな個性あるこだわり品。それだけでなく、野菜部門では、コマツナ、ホウレンソウ、レタス、切干ダイコン、6~7種の試食がされている。温室の蘭にしてもゆうに30種になる。ともあれ理念がしかりしている」
 B 「直売所そのもののブランド化を進め、千客万来のようですね」
 この会話のように、いま新たな直売所の胎動が起きている。安さ競争の直売所にさようならしないと、その未来はないと信じます。

2010年8月14日土曜日

農産物直売所も商店もPOPが命


 農産物直売所のPOP講習会の講師を長野・栃木などでやらせていただいた。ミニ・スーパーの開店実務指導時代は相手の店に泊まり込み、当方が企画したチラシを見ながら必死に50~60枚のチラシを描いた。合計すれば楽に2千枚にもなるが、品目と値段のプライスカードである。
 
  いまチェーンスーパーでは、省力化でプライスカード一色になり、プレゼンテーション(訴え)入りの説明型POPは零に近い。生産者の思いは全く消費者に伝わらなくなった。直売所や専門店などは、これを伝えることで、差別化もでき支持者も増える。
 POPは購買時点の広告。やはり文字は多少下手でも、商品に託した売る側の思いが表現されていることが大切・・・値段は2の次。
 
 主人公の商品は「ぼくはこうしたこだわりで栽培された。そして栄養価や料理法、貯蔵法などの特徴も知らせてくださいね」とつぶやいている。こだわりには美味、新鮮、完熟、朝採り、エコ栽培、減農薬や有機肥料栽培、珍しい新種の採用等いろいろある。
 画材はなんでもありでよい。マジック、墨汁(赤・黒)、クレパス、サインペン・・・と豊富であればあるほどよいし、得意なものを選べばよい。これに写真、まんが、イラスト、新聞や雑誌の切り抜き(関連記事の載った)も駆使して、楽しく表現する。
 
 用紙サイズは店の広さ、売リたい量も考え、A3、A4、A4の1/2、A4の1/4まで用意しとくとよいし、 店の統一性を考え、周囲に楽しいデザインや枠を印刷したものを主に使うのがベターだ。
 車の通りがあるが、人通りのない山間部の直売所では、車をストップさせるため、時に看板に畳半畳もの大きなPOPも必要になる。
 
 紙の8分目ほどに描き、中心に寄せて書く。イラストなり写真はぜひ欲しい。イラスト見本が欲しければメールで連絡いただければお送りする。ネットに出っていて使えるものも沢山ある。プレゼン型のPOPの場合、ラミネート加工して何回も使えるよう保存する。プライスはその都度変わるので、別の紙に描き添えるのが妥当だ。