2012年9月21日金曜日

直売所「地球畑」(鹿児島市)は本格派の有機栽培品の販売店!

 
  講演の仕事を終えて、鹿児島市下荒田の無農薬・有機野菜の店「地球畑」を見た。正式には「かごしま有機生産組合直売店」である。他にも2つの店を持ち、組合員は150人にのぼると聞いた。

  荒田店は売場約47坪、レジ1台、駐車場も裏手に20台分あり、市街店ながら広域集客に耐えられるようになっている。隣にはレストランも併設され、有機野菜の料理も食べられ、万全の布陣である。営業時間は10時~19時30分。原則無休。

  「有機」を謳っていても、名ばかりの店が多い。ここは「地球畑はいのちと環境を守る有機農業の店です」「顔の見えるつながりを大切にし、おいしさと安全をお届けします」とコンセプトも明確なら、
信頼を裏切らず55品目ほどの野菜すべてが、「無農薬・有機肥料の栽培」である。JASの有機認定の赤いシールを張った認証品も10品近くを数える・・・さらにパケージに印刷したものもあるはず。

  慣行栽培品は完全に排除されており、「無農薬・有機栽培品だけのの直売所」という鮮明な特徴を持つ。全国的に見ても稀れな存在だ。東京でも有機が売りの小型店を見たことがあるが、「減農薬率が20%程度のものもある」と聞いて、看板に偽りありと思ったことがある。ここは本物である。

 加工食品も安全志向のこだわり品で全品固めている。また精肉や鮮魚も揃え、直売所としてはワンストップ・ショッピングのニーズに応えている。日配品も含めれば、平の冷蔵オープンケースも5台あり、計34尺にもなる。



 
 正確なことは分からないが、こうした有機専門の直売店がいくつもあるのは、有力な指導者が古くからいて、かつ県や市のほうでも有機農業を推進してきたからあと思える。店内にNPO法人「鹿児島県有機農業協会」のオーガニック=Organicという立派でモダンな体裁の雑誌も置かれていたが、①JAS認証の有機農産物はここで手に入ります、②農家の台所、③オーガニックフェスター今年も開催、④原発と有機農業、⑤畑の学校、⑥特集ー健康に生きていくために、⑦有機農産物が、なぜ拡がらないか?・・・の見出しが躍っていた。身を切りながら、説得を試みる⑦のような内容もあり好感が持てる。

 
 NPOといった推進母体があり、個人会員でも入会金2,000円、年会費5,000円も払っている。これはすごい。鹿児島は日本一の有機推進県と思えてならない。高温・多湿の日本では、病原菌や害虫が発生しやすく、減農薬は難しく、有機農産物の流通は農産物全体の0.18~0.19%ほどとされる(認定を受けない隠れ有機はカウントされていないはず)。この気候的な困難さに負けず、環境・食の安全の理想に向け努力を続ける鹿児島県に敬意を表したい。

 EU諸国は農地の3.5%が有機栽培だ。アメリカは年率9~16%の割合で伸び、いま現在流通シェアは3%ほど。9年前の統計で食品類の1.9%を占め、スーパーで44%、自然食品の店で47%、直売や生協ルート、輸出で9%となっている。日本との差が大きいが、日本のばあい栽培の大規模化や省力化の面で遅れをとっていて、出回りが少なく馴染みがないことも原因。 
 

  隣のレストランでは、有機野菜の天ぷらセット、特製野菜シチュー、900~930円、有機おにぎり2ケ300円ほかメニューも豊富。

 「地球畑」の偉さは、一般小売店並みに販促も多様な形で行っていることだ。手づくりのチラシには1ケ月分の販促企画が1日ごとに記され、さらに①曜日別の特売品も設定、②2~4日単位のテーマや部門に応じたイベントも多数組まれている(朝市、キノコ祭り、書籍フェアー、決算セール)。
さらに3店が競って独自のチラシを作っている点でも素晴らしい。







 

 

2012年9月15日土曜日

新規就農!50aで売上げ年1,000万円目標!

    埼玉県狭山市の畑でエダマメを見て回るのが木村友洋さん(37才)。当方が親しくしていた神奈川県三浦市の山森農園の元従業員で、東京高円寺の青果直売店で何度かあったことがある。昨年、社長の山森一樹氏が突然の事故で他界し、秋に独立し山森農園の出城であった狭山の農園と高円寺の店を引き継ぎ、現在50aで野菜作りをし、直売している。

 

 環境保全を学び、農業にあこがれる金指さんという女性アッシスタントと2人3脚の経営だ。この地区は江戸時代から「三富自然循環農業」といって、人工林を作りその落ち葉を利用して野菜栽培をしてきた。学会でも注目され、外国で応用モデル農場もできている。金指さんにピッタリの大地ののだ・・・もっとも最近は落ち葉で堆肥を作る例はごく少数と聞く。

 
 
 
 木村さん自身は、飲食業の出だが山森農園で、厳しい実習をしてきたから、4枚ほど見せていただいた区画は、ズッキーニ、オクラ、ピーマン、ナス、白ナス、トマト、キュウリ等が、いずれも立派に育っている。バジルやつるムラサキ、エンダイブ、モロヘイヤ、バナナピーマン、UFOカボチャなど珍しいものが多い。いずれも減農薬につとめ、作物残渣を使った有機堆肥通信の栽培。

 多品種少量生産の直売志向で、「生産者直売」を謳う高円寺の店は6坪ほどのこじまりとした店で、いま現在は(9月中旬)品揃えも15品ほどと少ない。畑では秋のサラダ菜、ホウレンソウ、タカナ、コマツナ、ハクサイ、ダイコン、ジャガイモなどの播種や苗の定植が進められている。

 いずれにしても、50aで目標売上1,000万円を目標にしている。農水省のやや古い資料によるが、露地野菜の平均手取り額は24品目平均で67.1万円になっている(資料1)。50アールでは336万円に過ぎない。だが別の野菜の流通段階ごとの単価統計によれば、小売売価は生産者手取りの2.75倍になっている(資料2)。

 
 これを前提に計算すれば直売の場合、50aで923万円の売上高となり、1,000万円にかなり近いものになる。実際。高円寺の直売所では1日平均3万円を売っており、年1,000万円には届く。
 
 ところで資料1では生産者手取りに占める経費率は51.8%、そして資料2で省き得ない経費率は31.2%となっている。こうした条件を踏まえ全体の所得率を計算すると・・・
 
生産者手取りの小売値に占める% 36.35 × 経費率51.8%(0.518)=18.8(A)
小売値を100%           100×省けない経費率約20%(0.200)=20.0(B)
注:省けない経費とは、運送費とか小売の家賃、水道光熱費等
 
 
A+B=はやや多く見ても40%で、このため所得率は60%になる。つまり1,000万円売れれば約600万円の所得になる。これを2人でどう配分するかは別として(その後、販売のパート採用し変化)、50aの経営とすれば好成績と言える。    
 
最近まで2人で農業もやり。売場も担当・・・「無理」があったが、ここにきて売店にパートさんがはいるようになり、農作業に半ば打ちこめるようになった。その分、売上目標も増やす必要があるが、有力直売所にも持ち込める話は前からある。だが某直売所は「良品志向」であり、技術改善も求められている。

   当方としては、小売部門ではもっと「農場直売」を個性として売り込み、野菜量販店(競合が3店以上)と差別化する必要を感じる。農場や作物の写真パネルを充実、口で対応している説明をPOP化する必要性を説いている。さらに「便利性」を考えれば、トマト、キュウリ、キャベツ、レタスほかの売れ筋は、仕入しても揃えるべき・・・との考えである。同じ野菜のため複数店回るとは、お客にとって苦痛になるからだ。

 木村さんは「もし農業に真摯に向合う同じ志の人がいれば、一緒にやりたい」との考えている。まだまだ農地を借りる余地があり、かつハウスの設備もすでに借りているからだ。こんな人がいれば、当方にでもメールをいただきたい。

 

2012年7月8日日曜日

[このままでは直売所が農業をつぶす」(長谷川久夫著)!

    全国直売所研究会会長の長谷川久夫氏の「直売所が農村を変える」に続く第2弾の著書・・・「このままでは直売所が農業をつぶす」だ。
   出版社「ベネット」(電03-5913-2627 定価・税込1,000円)。手ごろな長さで、1時間半も掛ければ充分に読み切れる。茨城県つくば市の「みずほの村市場」の実践に裏打ちされた農業経営の書だ。
   長谷川久夫氏はかつて日本法人協会の会長を務めたくらいで、農業の現場視点で「農業のあり方を示せる数少ない見識者の一人」と、いつも尊敬している。そして気さくにだれとでも話をされる方だ。
  この本は直売所関係者だけが読めばよいものではない。農業者の生きるべき道を真剣に説いている。ぜひ多くの農業者や農業関係者が読むことをお勧めしたい。

ポイントをいくつか紹介すると・・・・
1.「直売所は農業者が農業で生活を成り立たせるひとつの販売の手段である。その目的を忘れ、ただ(安売りも辞さない)販売に特化した場になていないか」と苦言する。「生活が成り立つだ
けの所得をあげ、自立を達成し、かつ消費者と信頼関係で結ばれるようでないと直売所に未来はない」と提言。

   2.1農家平均の直売所の出荷額は80万円。「孫に小遣いを上げられれば、そこそこの売上高でよい」と安売りに走る。100万円では家族どころか夫婦の生計も成り立たない。「みずほ」では1農家平均750万円売る。農業でやれるから、若者の農業者が増えている。「みずほ」では権利金年30万円を徴収し「最低販売額」と「売上目標額」を決め、最低に達しなければ不足分について15%の違約金を権利金から引く。逆に目標額を超えれば、その分に15%の報奨金を払う。

  3.市場に出した後の、残りものや規格外品だけ売っていたら、消費者は魅力を感じない。売上げが減り、出荷している人も直売所に出す魅力がなくなり、出荷しなくなりますます客足は減る。「みずほ」では農業者が競ってよい商品を出す仕組みを作っている。つまり前に人が100円なら、後で出す人はこれを超える品質にし、一段高く売ることを義務にしている。また「商品管理ペナルティ制度」を設け、商品としてふさわしくないものは自己回収(販売価格で)を義務づけている。

 4.「みずほ」では作付・出荷計画も事前に提出させることを1995年からやり、年1回欠品や絶対量を考えた検討会をし調整をしている。消費者に「いつから、〇〇さんの大玉スイカがでる」と時前に知らせ、農家が計画を守るよう促して、計画出荷をまもる癖をつけてきたた。

 まだまだ沢山の内容に触れられている・・・①1万3,000人の会員制度やこの仕組み、②イベントなど妥当な販売促進の方法、③消費者モニター制度、④いかに放射能汚染や風評被害を解消していたか、⑤新店を軌道に乗せるたまの努力等々。あとは皆さん自身に読んでいただきたいのでための、省略させていただきます。


      近藤・支援内容
  該当時間
1.農業のマネージメント講座
3~7時間
2.農産物のマーケティング講座
3~7時間
3.農産物直売所の新たな発展策講座
3時間
4.直売所・顧客視点の販売促進講座
 3時間
5.主婦の食のライフスタイル講座
 3時間
6.直売所顧客調査(200~300人)
2日16時間
7.直売所の総合診断
2日10時間
8.農業経営総合診断
2日10時間
<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
経営診断20万円(交通・宿泊費別)
報告日は無料とし、交通・宿泊費別
     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料

    



    

2012年6月26日火曜日

生産履歴も開示する直売所-中井農産センターの豊富な品揃えも参考になるフレッシュファーム(吉川市)



    6時産業化の優良モデルである中井農産センターの商品を実際に目に触れたくて、3時間ほど車を走らせ、埼玉最東部の吉川市保609-1のJAさいかつのフレシュファームを訪ねた。すでに1時半を回ってしまい、中井農産の米、小麦から枝分かれさせ多数のアイテムのごく一部しか見ることができなかった。

    まだ残っていたのは田舎寿司400g420円、ちらしいなり300g315円、小麦まんじゅう3ケ315円、草餅6ケ315円、こだわりあられ生地250g410円。米飯類は吉川産コシヒカリで美味を追求している。「こだわり農家」が中井農産のブランドといえ、どのパックにも統一したイラストともにロゴ的に描かれている。
   普通、弁当類だけで6~7種類、まんじゅう類で8種あるという。赤飯700g1,050円、1200g1,575円のPOPも張られていた。このほか季節によりのし餅(暮れ)、おはぎ、桜餅(3月)、柏餅(5月)等も置かれる。ここでは総てを扱っていないが、中井農産の枝分かれ品は、米粉、米粉パン、小麦粉、玄米粉、黒米生粉、赤米生粉、上新粉、黒米を使った食紅など際限なく開発されているのが素晴しい。
フレシュファームの場合、午後の品揃えはおせいじにも良いと言えず、欠品だらけで「機会損失が多い店」の一つである。だがキラリと光るものを多数持つ店である。たとえば、米コーナーの展示即売の玄米は5種に過ぎないが、吉川産の特殊栽培品のコシヒカリ=スーパー有機くん1kg400円も売られている。それだけでなく食味80以上の品のみ厳選して売ているとのこと。
米のすぐ脇には生産者ごとのトレサビリティ関連の「生産履歴台帳」が写真の通り整然と23人分置かれていた。これは当方としては初めてのことである。真の信頼を売りたい・・・との姿勢を大いに評価したい。また農業教育を目指した、ニンジンなどの栽培法を図解した展示物もある。


平成3年に埼玉消費直結型農業施設として建設され、年月が経っているが、冒頭の写真のようにガラス室型のモダンな建物である。売場面積は約46坪、レジ1台である。外で花卉も販売。従業員は正2人、パート4人ほどと聞いた。出荷者は32人ほど。営業時間は9:30~17:00、休日は珍しく金曜。






2012年6月15日金曜日

青年就農給付金年150万円に応募殺到!就農促進の目玉!

    45才以下の新規就農者に対し、国が年150万円を支援する制度が24年度から発足。新聞報道によれば、8,200人分の予算枠に対し、すでに12,000人の希望者がいるとされる。正式には「新規就農者確保事業」と言いの約152億円の予算となっている。この事業と合わせ「農業者育成支援事業」(約6億2千万)を通じ、若い就農者を毎年2万人に倍増させるのが狙い。申請締め切りが6月25日のはずで、希望者は申請を急ぐ必要がある。
  
    青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るため、就農前の2年以内の研修期間と、経営が不安定な就農直後の5年以内の所得を確保するための給付である。また農業法人への就農を促進するため、法人が新規就農者に対し行う実践研修について、最長2年間に要する経費を支援するもの。

    前者のばあい2年の研修期間+就農後5年間=最長計7年間の給付が受けられ、最大計1,050万円の支援となる。就農後すぐに黒字化しにくいのが農業の現状とすれば、5年間の支援は就農定着の強力な支援となる。
    問題があるととすれば、研修期間において、先進農家・法人においてもマネージメント(経営管理)やマーケティング(販売管理)の面で弱さを持っており、これらについては「農業者育成支援事業」で補っていくようである・・・プロの教育機関に任せ、これを支援。
  
    新聞の記事によれば、 平成22年に例を取ると新規就農者は54,570人、うち13,150人が39才以下の就農者というから、若い人の就農は多くはない。この少なさを打破するための施策であり、。農水省としても「予算に限りはあるが、受給要件を満たす人には可能な限り給付する」としている。
   では、受給要件とは何か・・・次のすべて満たす必要がある(農水省HP「青年就農給付金」参照。これに申請書の形式も出ている)。
Ⅰ.就農準備型  事業主体は都道府県
1.就農予定時の年齢が原則45才未満である。農業経営者となることについての、強い意志を
  持っている。
2.独立自営就農または雇用就農を目指すこと。
3.研修計画が以下の基準に合致していること。
(1)都道府県が認めた研修機関・先進農家・先進農業法人で、おおむね1年以上(1,200時間以上)研修する・・・すでに研修を開始している者であっても、残りの研修期間が1年以上の場合は給付対象となる。
(2)先進農家・先進農業法人が、その技術力、経営力等から見て、研修先として適正であること。
(3)先進農家・先進農業法人の経営主が給付対象者の親族(三親等以内の者)でないこと。
(4)先進農家・先進農業法人と過去に雇用契約(短期のパート・アルバイトは除く)を結んでないこと。
4.常勤の雇用契約を締結していないこと。
5.生活保護、求職者支援制度など、生活費を支給する国の他の事業と重複受給でないこと。
また次の場合は、給付金の返還対象となる。
1.適切な研修を行っていない場合・・・事業実施主体が、研修計画に基づく必要な技術を習得できないと判断したとき。
2.研修終了後、1年以内に原則45才未満で独立・自衛就農または雇用就農しなかった場合。
3.給付期間の1.5倍の期間(最低2年間)、独立・自営就農または雇用就農をしない場合。
Ⅱ.経営開始型 事業主体は市町村
1.就農予定時の年齢が原則45才未満である。農業経営者となることについての、強い意志を
持っている。
2.独立・自営就農であること。
(1)自から作成した営農開始計画を持ち、主体的に農業経営を行っている状態をさす。
(2)具体的には①農地の所有権または利用権を有し、原則として給付対象者が所有または借りていること。
(3)生産物や生産資材等を給付対象者の名義で出荷・取引する。
(4)売上げや経費を自身の名義の通帳や帳簿で管理する。
3.独立・自営就農5年後は農業で生計が成り立つ計画である。
4.市町村の作成する人・農地プランに位置付けられるか、位置づけが確実なこと。
5.生活保護、生活費支給の国の他の事業と重複受給していないこと。
次の場合は給付停止となる。
1.給付金を除いた本人の前年の所得が250万円以上の場合。
2.経営計画実行の努力を怠り、適切な就農をおこなっていないと市町村が判断した場合。


      近藤・支援内容
  該当時間
1.農業のマネージメント講座
3~7時間
2.農産物のマーケティング講座
3~7時間
3.農産物直売所の新たな発展策講座
3時間
4.直売所・顧客視点の販売促進講座
 3時間
5.主婦の食のライフスタイル講座
 3時間
6.直売所顧客調査(200~300人)
2日16時間
7.直売所の総合診断
2日10時間
8.農業経営総合診断
2日10時間
<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
経営診断20万円(交通・宿泊費別)
報告日は無料とし、交通・宿泊費別
     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料




2012年5月16日水曜日

農業経営の目標設定は売上高?経常利益?所得?

    農業者の皆さん!5年後、10年後の経営改善計画を立案する場合、①粗収益、②売上高、③営業利益、④経常利益、⑤家族労働報酬・・・どれを選らんで数値目標の基礎とするか。これには家族中心の経営、従業員も多数いる経営・・・といった体質によっても違ってくるかもしれない。
 ところで、①~⑤について個々の内容を吟味したい。
1.粗収益=生産品の売上+副産物の売上+自家消費+生産品に関係する補助金・交付金
2.売上高=生産品の売上+副産物売上
3.営業利益=粗収益-生産・販売経費
4.経常利益=営業利益+営業外収入(利子や生産品と関係ない保険等の収入)ー営業外支出
=税引き前利益
5.家族労働報酬=専従者報酬(法人では家族役員報酬等)+経営主報酬 
  
  ざっとこんなことになる。1や2は、あくまで入ってくる金で、利益とか家族労働報酬の高さとは関係ない。規模拡大すれば、普通なら売上高や粗収益は上がる。しかし、規模拡大のみ急ぎ、借金まみれ、赤字まみれになっている経営は少なくない。酪農経営で110頭まで増やしたが、草地が劣悪のため、餌不足で年間1頭の乳の量が7,500kg(標準9,000kg)で、8,000万円以上の借金のため、返済できず競売にかかった例も見てきた。

 
 3や4の営業利益や経常利益は目標値になるか?家族労働報酬を高くすれば、シーソーゲームのように、一般に営業利益や経常利益は減る。実際、節税対策のため、家族個々の報酬を増やし、営業利益や経常利益を抑える例は多い。5の場合の家族労働報酬もまた、3や4とのシーソーゲームで低くなったり高くなったりする。

  経営の5ケ年、10ケ年の中・長期計画を立てる場合、それが期待や希望に満ち、楽しいものでなければ、「おっくう」なものになる。「10年後には子供も2人になり、このくらいの所得が欲しい。
借金が楽に返せ、投資も充分にできるだけの余裕を確保したい」・・・こんな前提で、経営計画が立てられることがベターである。

  とするならば、1~5の単独型経営計画は総てバツである。そして家族所得や経常利益を組みこんだ4+5型のものであるべきだ。個人経営の場合、経常利益は差引経営者所得に組みこまれている。これに専従者所得(給与)を加えれば、法人経営の家族役員報酬+経常利益に類似してくる。法人と個人の別なく収益力の比較も可能になる。また(4+5の額)÷(粗収益対比の4+5の百分率)×100=目標粗利益額となり、収入全体の目標も簡単に計算できる。

 2、3、4,5年後の粗収益の目標といっても、その前提として、目標労働報酬、目標経常利益というものが計算に組み込まれていなければ、将来の発展に結びつかない。適正な労働報酬は家庭のうるおいを保証し、経常利益は返済余地や投資の余地を広げ、着実な発展を保証してくれる。

 できれば、家族労働報酬だけでなく、雇用者の労働報酬も含めて目標に折り込むのが正解である。さもないと、人的面で行きずまる・・・新規の就農者不足も報酬の低さに起因しているからだ。

  今回、以上の点に触れたのも、個人経営には経営主所得を、法人経営には営業利益を採用し、
5ケ年の実績評価をする・・・といった同質性のない要素で評価する場面に出会ったからである。
また我々コンサルタント仲間においても、農業者に個人、法人の決算書例を示し、丁寧に数字の意味を説明したうえで、経営計画立案を指導していただく必要がある・・・と感じるからだ。

  経営計画を立案する場合、年々の変化は売上高=栽培ないし飼育規模×出荷量×単価になる。そして単価はこだわりの程度(付加価値)や販売チャネルで異なるだけではなく、①対象とのる生産物の価格推移・・・回帰分析による推定、②価格変動が激しい場合はそのリスクを折り込む必要がある。また経費面では①家族及び雇用者の所得=労働報酬の向上を見る、②主たる資材の値上りまで組む・・・といった配慮をして、初めて本物の経営計画になる。ただ過去の延長であってはいけない。

 
 回帰分析(=最小ニ乗法)による傾向値の計算は、難しいものではない。関数を使うのでなく、エクセル表で視覚でとらえながら計算する方法もある。必要な方には無料で計算方法を伝授する。
  ところで、部門別の所得率(法人であれば家族労働報酬+経常利益)のメドだが、やや古いH19
年の統計では、償却費を含んだ所得率レベルは、稲作全国38.9%、柑橘34.0%、リンゴ37.4%、露地野菜全国29.6%、施設野菜35.2%、施設花き30.3%、茶30.2%、キノコ25.6%、酪農全国23.4%、肉牛全国10.4%、養豚11.2%、採卵鶏9.3%、ブロイラー9.4%である。


 


2012年5月15日火曜日

大型6次産業化の優等生-モクモク手づくりファーム!

 やや前になるが、4月26日にテレビ東京で放送された村上龍氏進行の「かんぶりあ宮殿」=三重県伊賀市の「モクモク手作りファーム」の訪問記である。見られた方も多いと思う。全国直売所研究会から事前連絡を受け、当方も一生懸命メモを取った1人である。見なかった方からのリクエストもあり、一部間違いもあるかもしれないが、下記に紹介してみる・・・

「2人のサムライ修(オサム)の農業革命」といったサブタイトルだった。社長が木村修さん(60才)、専務が吉田修さん(61才)で、2人は同じ農協で働く職員だった。木村さんが販売、吉田さんは獣医で営農指導? ともあれ、夫婦よりも長く30年間も一緒に持ち味を発揮してきた。性格も異なり木村さんは楽天派、吉田さんは慎重派で、モクモクを立ち上げるとき、吉田さんは子供3人、家も新築したばかりで慎重にならざるを得なかったようだ。

今日、モクモクは年商48億円、年間来場者50万人、視察受入れ320件(5,000人)、ネイチャークラブ会員4万2千世帯・・・HPの公表数字で、実際に放映の際にも紹介された。

1.価格決定権を持ちたい

農協当時、物を売るためスーパーを訪ねると安い輸入品がズラリと並び、「安くしろ・安くしろ」の要求ばかり。ところが、デパート等のギフトコーナーに行くと、ハムなどの贈答品は1万円で売られている。生産者手取り価格は、この1/10ほどと低い。

「メーカーや小売に価額決定権を握られ、農業者は下請けにすぎない。これではいけない。価格決定権を持たねば」と2人とも退職し、呼びかけ、仲間16人で1人200万円ずつ出資し、農事組合法人を設立、24年前に現在の「手づくり体験A館」の場所に工房を立ち上げ直売を始めた。

「あのバカ者たちに、何ができる」と当初はあざ笑われた。実際、山のなかの立地のため、お客が来てくれない。赤字続き。「ただ普通のものを作っていては評判にならない。味と品質にこだわりが必要」と反省。ハムも伝統加工法の自然熟成にし、ウインナーの皮も高騰しているものの天然の羊腸を使った。売れるようになり、地元養豚も1万頭出荷までに増え豊かになった。

次々と野菜の直売所、パン工房と拡大してきた。いまではレストラン、遊園地、宿泊施設、体験農場・・・ほか約26ほどの施設があり、その規模は東京ドームの3倍と云う。直売所「野菜塾」は100軒の農家が出荷しているが、あまり安くせず100円以上で売るのが原則。パン工房では国産の小麦を使用。酵母入り生ビールも地元産の大麦を使用。

2.土着性のあるブランド作り

 商品作りのコンセプトは生活圏の人に愛着を持ってもらえるための「土着性の強いブランド」である。「国際競争が増すなか、生き残るには地元顧客に愛されればならない」ということ。

 成功の秘訣は、一つに話題性・・・「バレンタインデーに米こめウィンナーを」と新製品を提案したり、その後も渦巻き状の「クルクルウインナー(全長160cm)」「スープが飛び出す生ウインナー」など、毎年新製品を出し続けてきた。

 地域と一体になるには、体験してもらう必要がある。イチゴ狩り体験教室をスタートさせ、子供さんなどに「イチゴは野菜ですよ。木になるのが果物」と農育の場面も放映された。「食べ放題はいけません。沢山採って沢山たべにゃーあかんということになると、採り過ぎて捨てることがある。もったいない」との弁もあった。

手作りウインナーの体験教室は1年先まで予約で一杯という。「同じ腸でも羊を使ったのがウインナー、豚がフランクフルト、牛がボロニアン」とここでも知ってもらう努力が盛んにされている。レンコンの収穫体験もあり、これらの魅力が熱烈フアン42,000人を生み出した。「消費者は仲間というスタンスが大切だ」と指摘していた。

また「大切なのは伝えること。知ってもらうこと」で、体験教室だけでなく、通信販売では、カタログに商品作りの失敗事例も沢山のせ、注目度を高めてい。現在、通販は全販売髙の30%と高い。

3.視察者の地元を支援

 立派なのは、視察に来た農業者の現地に出向き、奉仕的に農業や6次化の支援をしていること。沖縄の徳之島では2人にコーヒー栽培を奨励し、自家焙煎し、地元にコーヒーショップも作って売るよう指導している。

「おせっかいが好きなんですよ」と2人の修さんは笑い合う。各地の農業の見直しを手伝い、自らの手で地域活性化できるよう「おせっかい」を焼くとは、実に立派である。

 この後出て来たのが、モクモクへの新規就職者の紹介だった。中央や早稲田大学の法学部卒、東大や名古屋大学農学部卒、中央大学経済学部卒・・・とそうそうたる学歴が披露された。

 やはり、モクモクは生産―加工-販売の6次産業を多要素で達成、待遇も良く、楽しく、明るい未来型の農業経営をすでに実現しているからだろう。昔、モクモクの高い給与の紹介記事を見たことがある。

「各県にモクモクのような大型のモデルが1つ?できれば、ずいぶん地域活性化が進むことになるだろう」との村上龍さんの言葉が印象的だった。しかし人材が必要である。モクモクが育てた人材が、全国的に散ればこれも夢でない。