2014年4月15日火曜日

農産物直売所の数は全国16,816なのか23,560なのか?

 今回、農水省「6次産業化総合調査」(平成24年度実施・B欄)が、4月1日に公表された。農産加工、直売所、農家レストラン、民宿、水産加工等について詳しい情報がでている。ネットで検索すればすぐ出てくる。問題は直売所の資料である。全国の経営体の数が23,560、総年売上高8,448億円となっている。

 これまで、我々が頼りにしてきたのは農水省「農産物地産地消等実態調査」(平成21年度実施-23年7月25日公表・A欄)のもので、直売所数(今回は経営体数で、本来違いがないはずですが)16,816件、年総売上高8,767億円である。3年間経過してた今日、売上高においては近似しているものの319億円少なくなっている。逆に経営体数は1.40倍になり、,744経営体も増加している。明らかに大きな矛盾だ。 

 2つ統計に大幅な乖離があり、何を信じてよいか統計の信頼性を揺るがす。今回調査の「直売所認定の規定」も読んだが、「無人販売所、移動販売及びインターネットのみによる販売は除く」としており、21年度調査と一致しているように思えるのですが、経営体数の乖離があまりにも多過ぎる。今回の経営体の数の乖離は、主に農家のテント掛けハウス等の畑隅販売を計上したためと思われる(後記)。

表―1 21年と24年調査の数値比較   (左項目)


0

 分類

事業体数

0

   /調査年度

21年 A

24年 B

1

農業協同組合 小計①

1,901

1,950

2

農協女性部・青年部

427

 

3

生産者又生産者グループ

10,685

5,170

4

農家個人 (Bの分類)

 

11,090

5

農家法人 (Bの分類)

 

490

6

       小計

10,686

16,750

7

第3セクター

450


640

8

地方公共団体

203

9

       小計

653

640

10

会社   (Bの分類)

 

3,149

1,430

11

その他    

2,790

12

       小計④

3,149

4,220

13

合計 ①+➁+➂+

16,816

23,560

表―2 21年と24年調査の数値比較   (右項目)



総売上額(億円)

1事業体年売上(万円)


21年 A

24年 B

21年 A

24年 B

1

2,811

1,176

14,787

6,031

2

124

 

2,904

 

3

2,452

1,255

2,296

2,427

4

 

573

 

517

5

 

119

 

2,429

6

2,776

1,947

2,598

1,162

7

518


656

11,511


10,250

8

139

6,847

9

657

656

10,061

10,250

10

 

2,723

484

 

8,647

3,385

11

2,408

8,631

12

2,723

2,892

8,647

6,853

13

8,767

8,448

5,213

3,586

<注>1.横幅がないため、本来右に繋がるべき表を表―2として
下段に持ってきた。2.4つの小計を黄色のストライブとし、Aに
比しBが大幅に異なる場合、オレンジ色にした。3.Aに比しBが
大幅に異なる場合、水色とした。

 どこで差が生れたかを、類似項目について整理し比較してみた。結果は・・・21年調査と24年調査の乖離が大きいのは、(1)農協経営の直売所の売上高及び1事業体売上高、(2)生産者または生産者グループ等に分類される事業体数、売上高、1事業体売上高、(3)会社その他の直売所の経営体数、1事業体売上高だった。全体の売上高やその他の「小計」は比較的近似した数値も多い。
 

特に経営体の数の差を生んでいるのは生産者及び生産者グループの小計で、約6,000件のふくらみがある。農家個人が畑隅にブルーシート掛け等の2~6坪ほどのトンネル状のハウスを作り販売している売上高の小さいものが、かなりカウントされているものと推定される。確かに小計➁欄の農家個人のばあい、1経営体当たりの年商は517万円、1日当たりでは1.4万円と極めて少ない。
 
・・・東京の23区+多摩地区の中央線や総武線の沿線部にはこのような例が無数にあります。つい最近も昭島市、立川市を車で走り実感した。また武蔵野市の直売所の紹介パンフでは全直売所がこのタイプ。都市部と近郊部にはこうした例が多く、統計数字が膨らんだとみるべきだ。6次産業化の調査となると、これらが無視できないためと言えよう。
 
なお、これまでの農水省、まちむら機構、JA等の直売所統計のどれもが、要素別のクロス分析がなされておらず、コンサルタント泣かせの統計である。クロス分析ができるはずなのに、各要素の平均値と分散状況が示されるだけで、売り場面積(時にレジ台数または従業者数)に対応した年商とか客数、駐車台数等の相関が示されずに終っており、税金の無駄使いになっているのが残念である。

2014年4月11日金曜日

ファミリーマートがカット野菜の鮮度保持にP-プラス新方式!

 消費者の「スーパー等の買い物先」の選択基準は、当方=スーパー開発の調査によれば、1位「近さ」70.6%、2位「鮮度」61.3%、3位「価格が安い」35.6%・・・となり、物理的条件の「近い」を除けば、「鮮度」が最大の支持率である。
 

生鮮品、とりわけ野菜を中心に売る農産物直売所の購買動機からすると「鮮度」の支持率は92.3%にもなる(3店1,200人調査の1店平均)。野菜では鮮度を制するものがシェアを制するとさえ言える。 

 
    野菜は肉や魚と違い、収穫後も生きている・・・つまり呼吸している。鮮度を維持するには、パッケージを工夫し、低温や低酸素・高CO状態で呼吸を抑えつつも、呼吸を可能にすべきである。 


ファミリーマートは、3月下旬からPBブランドのカット野菜について、鮮度保持機能が良い、ミクロの穴のあいたP-プラスというフイルムを使ったパッケージにしていくことを発表した。カット野菜は特に呼吸量が増し、痛みが激しいからだ。これにより、見た目の変色や臭気の発生も抑えられ、鮮度が維持されるのでロスもなくなる。1石2鳥のフイルム利用である。 

<写真>ファミリーマートのミックス野菜P-プラス包装

P-プラスはフイルムの種類は問わず、むしろ中身の種類に応じ、酸素通過量を微細な穴の数でコントロールする技術の革新である。このため住友ベークライト株の資料によれば、P-プラスについて・・・

①呼吸量の多いカット野菜→使用効果大きい。
もともと呼吸量の少ないタマネギ、ダイコン、レンコン等→使用効果が期待できない。
肉・魚などはもともと鮮度維持の原理がちがう→使用効果が期待できない。
④青果でも冷凍したら呼吸しなくなる→使用効果が期待できない。
とのこと。以上を理解し使用するよう留意すべきだ。 

 P-プラスは、カット野菜だけでなく、各種野菜の産地包装―出荷にも活用されており、資料によればリンゴ、マイタケ、インゲン、アシタバ、ニンニク、菜ハナ、リンゴ、スダチ等にも活用されている。

 

2014年4月5日土曜日

兵庫県養父市の国家戦略特区構想-山間地農業の活性化!

   政府は、3月28日に全国計6ケ所に国家戦略特区を指定することを決めた。その1つが兵庫県養父市(やぶし)である。農業委員会の事務の一部(農地移動)の権限を市に移管することなど、農業の改革が基本である。本事例については、ネットに「国家戦略特ワーキンググループ提案に関する集中ヒアリング」が出ている。これを中心に何をどうしょうとしているのか、見てみたい。 

Ⅰ.養父市の現状は超高齢化と零細農業

 養父市は「やぶ医者」の言葉の発祥地・・・実際は逆に名医の里とのこと。兵庫県北部の但馬地区に属し、平成16年に合併して誕生。12年の人口30,110人、22年には26,501人で、約12%も減少。市の面積422平方メートルのうち84%が山林。農地面積2,500haで、1農家の耕作面積は平均0.38haで全国平均の2.2haの1/5.8倍に過ぎない。山間地という部類で耕作放棄地が多い。 

 経済規模は平成24年で約560億円。農業はうち4.1%の約25億円。平成32年までに、高齢化約や人口減少で経済活動は約100億円縮小すると見込まれている。 

 超高齢化が進み、市人口のうち100才以上が1万人に対し15.4人(兵庫県の平均4.8人)、65才以上の高齢化率33%、75才以上20%.それだけ健康で長生きしている地区。今回構想では、労力不足のなかで元気なお年寄りのパワーも活用することが含まれている。 

Ⅱ.現状打破の先進的な実践

 市長は2期目を迎え、政策綱領のテーマは「産業を育て、人を育てて新たな命を生む町」として、経済再生を考え先駆的な実践をしているが、その概要は・・・ 

1.約100億円の経済縮小を考え、100億円の新たな経済効果を創造する。

2.行政の施策では、民間活力を引き出せない面があり、平成24年2月に市が100%出資の株式会社「やぶパートナー」を設立。民間から副市長を選び、社長とした。

3.「やぶパートナー」は、企業に出資を行う一方、ビジネスモデルを作り事業化を進めていく。そして収益を得る。「やぶパートナー」は、すでに農地の再生、空き地を使った米つくり、消費者との交流等を行っている。

4.官民協同で実施する公共サービス事業=PFIとして、温泉事業、道の駅を行い、 市の直轄工事に民間の専門家を配置する事業=CMとしてトンネル掘りも行っている。

 また民間との共同出資会社を立ち上げ、民間企業を育成支援をしつつ、農地の統合的な地経営、木彫を生かし地域振興もしている。さらに廃校の体育館を使い、産官学連携のスマートアグリも進めている(この事業者はオリックス)。

5.農業の活性化のため、農地をまとめ、任せる相手を決め担い手を育てる。元気な高齢の人材も活用し、養父市の特徴である無農薬有機、資源循環型の農業、蛇紋岩米(稲作)、但馬牛、八鹿豚、ブロイラー、高原野菜(特にダイコン)、朝倉山椒などの振興もしていく。

6.シルバー人材センターが頑張っているが、現在443人。平均年齢69.3才、請負事業規模2億4,000万円(件数の60%は民間事業)だが、もっと参加してもらい、農業を中心にした地域起こしに貢献してもらう。 

Ⅲ.規制緩和の主な要望は2点

 以上の改革推進のため法的な規制緩和が浮上し、戦略特区の申請がされたわけで、その具体的内容は以下の2点である・・・ 

1.農業委員会の主な仕事は、①土地利用計画の立案と土地賃借や所有権の移動決定という2つがあるが、仕事がオーバーな面がある。については、市に権限を移管して欲しい。現在市と農業委員会の関係は良好で、委員会も了解している。

また新年度から発足する農地中間管理機構は県段階に設置される予定だが、地元の実態を知っている市段階がその役割を担うのが望ましい。また農地転用の認可は県・国にあるが、これも一部は市に任すのが望ましい。 

2.シルバー人材センターについては、労働時間が週20時間以内、連続して31日以上働けないことになっているが、もっと運用を弾力的にし、長い労働時間にして欲しい。せめて週30時間、連続1年くらいの雇用にして欲しい。そうすれば収入を得ながら地域活性化に貢献できる。

  制約違反のペナルティーは明確でないが、厚生省から補助金が出るかわり、「制約遵守」の厳しい通達がたびたびくる。労働時間が少ないと人材登録者が少ないので、作業のローテイションが組めない。なお地元に労働力が少ないので、若い人の雇用機会を奪うことにはならない。 

Ⅳ.要望の背景は何かー精神的負担も加味

規制緩和を望む背景を紹介すると、まず第1の農地委員会だが、全国の状況を紹介しておくと、原則1市町村に1つの委員会を設けることとし、現在1,743市町村に1,

713の委員会がある。委員の任期は3年、月額報酬は3万円。地域の農業者から選挙でえらばれる選挙委員と、各団体(農協、農業共済組合、土地改良区)から1人ずつ推薦で選ばれる専任委員からなる。全国平均すると農業委員は21人で、選挙委員16人、専任委員5人である。
 

問題は地域には自治会委員、農協理事などいろいろの役職があり、養父市のように高齢化が進むと、なり手も減少する。加えて委員になれば地元の農地利用計画の立案や、耕作放棄地など遊休地の調査などの仕事もあり、そのうえ農地売買や賃借の許可をするとなると、極めて過重な労働。しかも、売買や賃貸の許可となると各戸の利害関係もからみ、決定をくだすための精神的負担も大きい。 

この負担軽減のためにも「所有・賃貸による移動許可」は市に移管すべきだというのだ。そして農業委員には、遊休地の調査や地元のよりよい農地の利用計画立案に専念してもらいたい・・・というのだ。 

 また現在国が検討中の農地集積中間管理機構を県に置くとしたばあいも、現場の実態が正確につかめず、これまた「不公平感が拡大」、「市町村の意向に沿わない集積」にもなってしまう。
 

・・・以上両面からの規制改革提案なのである。養父市のばあい、「山間地で平坦地と同様な大規模化をしても農業改革の実りに通じない」という面がある。ときに、シルバー人材センターの人に貸与とか、有機農業をしたい若者に貸与するなど、農業活性化の道は多様であることも背景にある。 

 シルバー人材センターの制約の緩和も深刻な問題のようだ。あらゆる面で、若手の人材が確保しにくい。当面元気な人には多いに働いてもらいたい。養父市の長寿の秘訣は各人が少ないなりに農地を持ち、働いていることも理由の一つ。となれば「若い人の職場を圧迫し、賃金も下げる」といった杓子定規な制約をはずすことも正論に映る。実際、養父市には年365日働ける、そして働きたいシルバー人材も多いという。 

 構造改革戦略特区の問題は「他山の石」ではない。1,743の市町村はそれぞれ立地も、農業の平均経営規模も、特産品も、働き手の年齢も変わっている。それぞれの個性に応じ自由裁量の余地を十分に残した行政でないと、日本は改革されないのではないか。

 

2013年12月27日金曜日

青梅の林業に生きる-木工やアロマ対応で林業経営に活力を!

1.無価値の間伐材の利用から

 最近、仕事の関係で、東京都下青梅市の成木を訪ね、若き林業者であるの「環境林業 成木の森」の中島大輔さん(32歳)に2度ほどお会いした。お父さんと100haの林地の管理に当たっている。
 
当方も8年前に「成木川の早太郎」という間伐材をめぐるささやかな環境小説を書いた(静岡県教育委員会の推薦図書になる)。その題材を得た場だけに、計7時間ほどと話が弾んだ。 
 
 小説でも「日本の林業は出口の見えないトンネル」と表現したが、現場にも名栗川に抜けるトンネルがあり。これに引っかけた表現である。そのトンネルの手前に西成木のバス停があるが(青梅方面からのバスの終着駅)、近くに中島さんの自宅がある。それだけでなく、バス停すぐ前には、中島さんが昔の借家跡に建てたという15坪ほど(一部2階あり)のロッジ風集会施設もある。これを拠点にいろいろの催しを開き、林業の活性化に寄与した・・・というのが中島さんの願い(写真1)。 

 
 写真①集会所用の建物
 
いま、どこの村や大字と名乗る地域でも、中島さんのような専業の林業家は1人とか2人しかいない。専業林業者や林業組合といっても、あくまで国や県の補助金で、森林を維持・管理するのが主目的。「林業本来の姿である材木売って儲けるとか、経営を維持できる状況にはない」という。 

中島さん自身も後継者のため、サラリーマン生活を投げ打って林業者になったものの、100haの森林を相手にしても、サラリーマン時代の所得に遠く及ばないそうだ。 

日本の国土の66%は森林である。資源のない日本にあって、水や森林は貴重な資源のはず。だがそうなっていない。「成木(せいぼく)の立木そのものは極めて安い。しかし、急峻な山地から運びだすとすれば、林道の不備もあって労力がかかる。市場で丸太として売れば実質赤字になる。このため、下草刈り、枝落とし、間伐、林道整備も補助金なくしてはやれない」。儲からないから人も雇用できず、林地はいたるところで荒れ放題。これでは、豊富な雨水も地中に残留することなく一気に流れ、土砂災害や洪水も起きる。 

台風のたびに、林地に放棄された間伐材がダムに流れ、流木の山を築いている写真を見た方も多いはず。林地の保水力がなくなれば、一気に流れくだり、ダムが干しあがる現象も多発する。多くの生活者は、森林と距離を持つため、この事実に無関心である。 

中島さんは、「政府も補助金で、目先の手当てをするだけで、抜本的に林業経営が回っていくような対策を講じていない。私としては、価値のない間伐材を使い、大工さんと協力し机、椅子、置物、アクセサリーなどの木工加工品の開発も始めている。また森林浴といわれるが、樹液などから癒しの基となる芳香(油精)を取り出し、アロマ・セラピーに通じるよう香水化しようと協力事業者に商品化のお願いもしている。こうしたことができ、ささやかながら収入があがるとなれば、兼業の林業者にしても、林地の整備もやれるようになる」と語る。

   写真②足を開くことで、机の面積を2~3倍に
写真③ 2人掛けの椅子。1人掛けもあり。           

 木工については、写真②のような開閉式の支柱で、テーブル面積が2倍、3倍になる商品、③のような2人掛けや1人掛けの椅子、④置物、⑤自然木を使った欄干や輪切りにしたペンダント・・・といった1点ものも作っている。まだ、いくらに売ってよいか迷いがあるようだが、写真を見て「このくらいなら買いたい」と言っていただければ、大変助かるはず。

④自然木を生かした置物 

 当方も6次産業化のお手伝いのなかで、①林地に生える榊(さかき)を畑地で増やし、ブランド化して売る、②林地にはえるカエデのシロップを集め、これをミツバチに食わせ、機能性の高いハチミツにする・・・などの話にも接してきた。 

 日本には広大な林地があり、間伐材やその枝葉という資源は無限である。政府も、こうした木工品やアロマ・セラピーに沿った商品、メイプルシロップ関連品、徳島県の葉っぱビジネス、アケビ等ほかの枝ものビジネス(直場所の顧客調査で「枝ものがもっと欲しい」との華道のお師匠さん2人からの要望を受けたこともある)・・・等々といった、林業周辺のビジネスの商品開発、マーケティングにも手を貸してゆくべきである。まず補助金ありきでなく、補助金が将来「1倍返しくらい」にはなって返ってくる緻密な戦略が必要だ。 

 間伐材を使ったバイオマス発電の実験も、各地で補助金を前提で行われたが、どこも成功例を聞いていない。当ブログでは一度、ガス化の提案をしたが、都市ガスに比し熱カロリーが低い欠点がある。都市ガスとミックスして価値が出るようだ。ガス会社に売電同様に、売ガスできる制度を作れば、これまた普及する可能性は高い。発電よりシステムが簡単と思われるからだ。売ガスで林業地帯が潤えば、森林管理も進む。 

2.急速に失われる世界の森林=1時間に東京ドーム127個分

 中島さんとも同意見だが、「やがて世界の森林が枯渇し、日本の林業がうらやましがられる日が来るはず」だ。だがそこまで待っているうちに、林業地区に後継者も従業者もまったくいなくなってしまう。そうなってからでは遅いのだ。本来の林業についても簡単に触れておきたい・・・

 ネット情報によれば、2000年から2010年までに、世界で減少した森林面積は年平均約521万haになる。1時間に東京ドーム約127個分に相当。減少の著しいのは、アフリカ、南米で、中国や欧州は植林も盛んで増えている。しかし、中国の場合、現状の供給は需要に追いつかず木材価格は高騰している。 

 残念なことに、中国はスギ、ヒノキを使ってこなかったため、木材の基準に、スギ、ヒノキが入っていないため、日本から輸出ができない。また、テレビで見て分かるように、全体的に鉄筋の集合住宅が普通という事情もあって、すぐには、日本からの輸入が進まない。 

 最近、高校時代の友人と話したことだが・・・中国であれ、その他のアジアの諸国であれ、日本のスギ、ヒノキが欲しい国があれば、政府が仲介し、立木で売り、相手国の労力で切り出してもらい、その国に持ち帰って利用してもらう。労働者の仮設住宅はこちらで準備、日本の各地を回る・・・こんなことができないものか。 

 スギ、ヒノキについては、未乾燥ではゆがみが生じ乾燥を要する。また乾燥してもなおかつやわらかい欠点がある。乾燥にコストもかかり、圧縮や硬さを生む樹脂加工などにもコストがかかる。これらへの対策も国を挙げて取り組み、ぜひ林業資源大国を生かすべきで、これまた成長戦略の1つになるはずだ。

2013年12月2日月曜日

溶液土耕栽培(明大農学部・小沢聖特認教授が研究)の普及を!

 静岡で地上に水槽を設置した野菜の水耕栽培を見学したこともあるが、先般、明治大学黒川農場の収穫祭に伺い、水槽を使わず土壌に液肥を直接注入する溶液土耕栽培の講演とハウス実験棟の前で、小沢聖特任教授からその説明を受けた。

 国土の60%が乾燥地帯のイスラエルで、節水栽培のため開発され、すでにオランダ、韓国はもちろん、フイリッピン、マーレシアでも普及をしているが、日本ではまだ「これから」の段階とのこと。イスラエルは園芸作物の輸出大国になっているが、その原動力が、この栽培法だと言う。
 
  
 
 水に肥料を溶かした培養液を、必要に応じチューブから点滴のように土中に送りこむので、水も肥料も少なくて済む。余分な肥料が土中に増えたり、水と共に肥料分が地下水に流れ込むこともなく、ブログ別掲の「環境保全型農業」に役立つ。発展途上国であれば、糞尿を処理した溶液も使うことも考えられる(そのまま使うと、チューブが目詰まり)。

 問題は日本の場合、純粋な液肥をつかうため見かけの肥料コストが高くつくこと。だが、①肥料(基肥不要・適正施肥)、②建設費(ハウスは並み、土壌は普通の畑地)、③センサーによる自働で注入で作業費・・・の3要素が大幅に削減、④適正な水・液肥の管理で多収になり、所得が高まる。
 

 外国製の注入チューブも見せていただいたが、細くきゃしゃな感じだが、ところどころに付けられた弁から、つまることなく溶液が点滴されるので、コストもかからない研究されつくした品である。

     問題はキュウリであれ、トマトであれ、この農法の収益性の資料が欲しい。設備投資や収支については、佐賀県「佐城普及センター」が取りまとめた資料を紹介しておきたい(ネットより。促成ナス)。明大の実践とは違いもあるはず。あくまで参考資料である。

表―1 システムの概要とコスト(10a当たり)


部品名

数量

金額(円)

液肥混入機(AV200V)


540,000

原水フィルター


47,000

原液タンクセット


23,000

撹拌機セット(200V)


39,000

Nタイマー基本2系統


60,000

電磁弁


29,000

点滴チューブ


114,000

メールアダプター

15

,000

ラインエンド

15

,200

PFメ―タ―


,800

ミズトール


,700

ECメーター


25,000

合計

 

903,700

注:施工・調整・ポンプ代・ポンプ制御等は別

 

表-2 溶液土耕栽培の効果(比率は導入前と比較)


項目

導入後

比率

労働時間

(施肥・灌水)

10.4hr

24%

肥料代

110,124円

60%

収量

19,779kg

125%

粗収益

,538,120円

125%

生産費

,643,090円

105%

所得

,895,030円

201%

秀品率

46.8%

106%

施肥N量の削減

 

76.1%

注:導入前が、どのような栽培かは不明。リアルタイムの

診断によらない水・液肥供給との比較?実額を参考に!

 
 
 いずれにしても・・・
①基肥不要・・・初期生育を抑え、生育段階に合わせるので過茂にならない。
 
②水と液肥の同時施用・・・生育を安定させ、収量もアップし持続で多収穫になる。
③土壌が良好に保たれる・・・細かく均一に水・液肥が点滴され、土壌の物理的性が悪化しない。。
④培地は土壌そのもの・・・自然の土地そのものが使え、コストがかからない。また土壌が緩衝力を持つので不意のトラブルにも耐えられる。

 

2013年11月22日金曜日

「セレサモス」直売所(川崎市黒川)は閉店まで活気を持続!

   神奈川県川崎市麻生区黒川172のファーマーズマーケット「セレサモス」(JAセレサ川崎農協)は、友人コンサルタントが過去に「その良さ」を調査してくれ、一度は訪ねたいと思っていた直売所だ。今回、近くの明大農学部黒川分校の収穫祭を見にいったついでに寄った。明大農場でもこの日、セレスモアの出張「直売所」が開設されていた。
 
 
    上段の写真のとおり、アーチ状の建物でモダンな外観・・・ここに新鮮さがある。売り場面積は82坪ほど。レジ4台。年4億円前後ではないか。丘陵地帯のわずかな平坦地を利用したためか駐車場は60台とやや少なめだが、前面がワイドなガラスで仕切られ、店内は広々と感じる。

   ホームページで「病害虫防除記録などの生産履歴を記録し、指導管理のもと農畜産物を作っています。だから、新鮮で安全・安心を畑から食卓にお届けできます」と、明確に安全性を訴えている。
 
   16時過ぎに訪ねたが、地元生産者のキャベツ、ピーマン、コマツナ、ネギ、カブ、カリフラワーなど最低の購入に耐える品揃えがある。そして従業員全員、補充、陳列手直し、鮮度のチェックなどキビキビ作業している。
 
    閉店まで売り場が生きており、「売り切れご免」の風潮が強い直売所とは違う。職員の方に聞くと、「携帯電話で売れ行き状況が送信され、各人自主的に補充をしたり、店から午後便の出荷を促がすこともする」とのこと。最寄りの黒川駅などにスーパーがなく、付近に2店のコンビニがあるのみ。品揃えを基本に「頼りになる直売所」を目指してきたように思う。
 
    この日、和牛・ももスライス100g548円とか、切り落とし478円もあり、豚肉、鶏肉だけでなく牛肉の充実もしていると推定した。豆乳プリンや、リンゴ・パンプキン・アップルのパイ(380~398円)もある。野菜の珍しいものも、聖護院カブ200円、ベニムラサキ・カブ150円、辛味ダイコン120円、ダイコン抜き菜100円もあった。
 
    友人の7月時の報告では、ナスでけでもサラダ紫、千両二号、米ナス、ひ翠もあり、空心菜、モロヘイヤ、グレンベリー、ブラックチェリーtマト、ウコン、サンチュ、ソウメンカボチャなどもあった。
 
   
    花は店内に30程の切花の水槽を持つだけでなく、入口前、西側の側面全体(16坪ほど)に鉢花や苗木など極めて多数が置かれている。
 
    川崎市黒川地区は、「農業公園づくり」に指定されており、自然環境の保全と活用を通じ、農村・農業と市民とのふれあいを目指している。周囲の住宅も立派なものも多く、高い消費レベルに見合った、雰囲気、品揃えを実現している。
 
   11~翌3月が10~17時の営業。4~10月は10~18時の営業。定休日は毎水曜日。






 


2013年10月25日金曜日

「マオイの丘公園・道の駅」(北海道)は多店舗市場型の直売所!

   北海道の旅パート2である・・・当別から千歳空港に抜ける道すがらにある「道の駅」の標識。これに誘われ立ち寄ったのがとんがり帽子の屋根が、「マオイの丘公園」道の駅である(夕張郡長沼町)。4年程前に雪中を訪ねた由仁町。このすぐ近くだったことを後で知った。 

もちろん中央の施設には、土産物屋やレストランもあるのだが、直売所はこの施設と離れ、8つの小間割り店舗になっているのが、他所の道の駅と大違いである。各地に魚菜市場があり、ときに50店、100店もの専門店が集まっている例もある。

 
ここは魚菜市場でなく、「菜菜市場」とも言える。20区野菜販売グループ、17区グリーン営農集団、JAながぬま、幌内蔬菜集団、マオイ青果物販売グループ・・・と5つの集団がまず野菜や米を扱い、このほかに長沼町果樹振興会、酪農家の店・マオイ牧場クラブ、マオイの丘茶屋・南長沼商店街の3店が果物他の要素を補っている。たとえば。餃子、コロッケ、餅、ソフトクリームなども扱っている。
 
 
長沼町としては、1本化・1フロアー化した並みの直売所ではなく、「意欲あるグループが複数出店し、互いに市場のように競うことで、魅力を出して欲しい」との発想を持ったのではないか。1小間は15坪もないと思うが、共通の前広場が50~60坪あり、この前広場で売る分がむしろメインになっている・・・全国でも珍しい例である。ただ雨の日のことが心配になった。 

最初の5店はどこも米、カボチャ、キャベツ、ダイコン、タマネギ、ジャガイモなど共通の品も多い。だが共通品であってもそれぞれ個性ある品で、選択性が保たれている。平日の午後4時というのに、20~30人が回遊し賑わっていた。それぞれ2~3人の販売員がいるから、対話もはずみ顧客にとっても楽しいのではないか。
 


 
なお、冬場11~4月は営業時間10~18時、夏場5~10月は10~19時。駐車場は普通120台、大型15台。付近にはハイジ牧場、長沼温泉、馬追温泉もある。