2011年2月10日木曜日

農産物直売所-損益の指標はどうなるか!①

 農産物直売所は①生産者からの委託品、②市場や生産者からの仕入品からなる場合が多く、決算処理では、収入額は①については委託手数料のみの計上、②については売上を計上・・・と2つの異質なものが合算されている。

 このため、収支目標を設定するには、①についてもひとまず手数料収入÷手数料率(例えば15%の場合0.15)として③仮の売上を立て、③+②を全体の売上として、各経費率を出し、順当か否かを検討するといったややこしいことになる。

 ところで野菜・果樹や花の委託手数料が仮に15%としても、手作りの惣菜ほかの加工品は20%だったり、仕入品は粗利益設定が25%だったりする。委託手数料にしても12~23%までと差が大きい。このため粗利益率の目標を中間的な17.5%と仮定し、目標となる経費率を考えてみたい。

 まず3事例について異なる手数料や粗利益率を17.5%に揃えて、そのとき各経費率がどうなるか・・・をそのまま紹介しよう。最大経費の人件費は9.02%(うち0.55%は福利厚生費)。これは粗利益の51.5%になるが、労働分配率と言える。 

 広告宣伝費0.51%、研修・会議費0.18%、修繕費0.13%、事務用品・消耗品費0.80%、水道光熱費0.63%、旅費交通費0.16%、各種手数料0.53%、公租公課0.25%、保険料0.18%、諸会費0.17%、リース料0.16%、原価償却費0.54%、地代家賃0.11%、管理費0.92%、雑費0.36%となる。この結果人件費を含む経費合計は14.65%。

 包装費は消耗品に含まれるとみるべきだし、POP費は広告費や事務消耗品にまたがっているのではと推察する。また人件費以外で比較的多い経費は、管理費(保守点検、財務・清掃・警備などの外部委託?)、事務消耗品等、水道光熱費、手数料(配達?)などだが、正直3社3様の分類がされていて、正確につかみにくい。直売所についての経営管理の指導書がほとんどなく、横並びの比較検討がしにくいのが残念である。

 17.50-14.65=2.85%が営業利益になる。ここから金利等の営業外損益を引いた経常利益は2.11%となる。

 これを自店に当てはめたいときは、例えば粗利益率が17.5%でなく15%なら、各費用科目を0.857倍に圧縮、20%なら1.143倍に拡大して比較してみて欲しい。

 問題は敷地、店舗、設備の所有形態が様々で、 一般常識からすれば家賃地代、原価償却費などはもっとかかると見るべきだが、第3セクターの土地・建物を安く使うような場合は逆に率がもっと低いのが現状である。

 いずれにしても、粗利益額の51.5%を占める人件費のコストコントロールが、黒字化のカギを握り、①事前や日々の職員教育(質)、②時間帯別の適正配置(量の適正化)などに留意しないと、委託手数料の上限20%でも採算に乗らない。直売所の主人公は消費者や出荷生産者であり、一般スーパーレベルの①②に努めることが店側の使命である。

2010年12月21日火曜日

「談合坂SAの直売所」の旅客は野菜もたっぷり!


 東京方面から中央道を旅すると、談合坂サービスエリア(SA)で必ず一息つきたくなる。下り車線のSAは大賑わい。帰りには、楽しみにしていた上り車線の農産物直売所「やさい村」に寄った。

 この直売所、トイレ近くの人が寄り易い場所にあるが、コンクリートの床に張られたテント掛け。いくつかの水色やブルーのテントがガッチリと寄りそうように建てられている。売場は約56坪見当(レジ2台、年商推定1億2千万円?)。低コストで、農村部のロードサイドの販売所のようで、「親しみやすさ」がある。低コスト販売といった面で好感も持てる。
 
 が、商品を持ち込む生産者からすると、「テントの色のため、野菜の本来の色が出ない」「外気温に影響され、しなびやすい」といった悩みもある様子。
 
 外回りには花壇苗、野菜苗、豪華な鉢花が多数飾られ、店内の野菜は結構豊富。特に葉物では珍しいものが多い。 訪ねた時は20人もの客が狭い店内にひしめいていた。

 別途資料によれば、生産者は「上野原市新鮮野菜生産者の会」に組織された81名とのこと。極めて多くの品目の野菜作りが盛んな土地柄のようで、モロヘイヤを帝国ホテルに出したり、ルッコラ、チインゲンサイ、ソ連産のナス「ブランドローズ」、夏にはトウモロコシ・・・なんでもあり。
 年間を通じ、珍しさのオンパレードになれば、人気がこれからも増すはずである。多くの直売所では、この珍しさへの挑戦があまり見られない。
 運営主体はNEXCO中部日本という。このNEXCOは、関係エリアのSAに今年10店舗の直売所を出す・・・というので興味がかきたてられ訪ねた次第だ。 普通の直売所同様に委託販売で、手数料は青果20%、加工品25%のようだ。
 
 店の人の話では「98%は旅客」という。地元客が一般道から入れる駐車場も 台となっているが、近隣の住宅密度は極めて薄く、ららん藤岡(群馬)とは大違い。東京に入る前の最後のSAとなれば、あと永くて2時間もあれば家につける。肉や魚は冷蔵庫にある!あとは新鮮な野菜があればよい・・・こんな客が次々立ち寄っているのだろう。

 「しなびるから、野菜はあまり遠方で買わない」という常識は古き時代のものとして捨てねばならないようだ。

 

 

2010年12月18日土曜日

「ポケットファームどきどき」(牛久)は最高のおもてなし




 全国直売所研究会の特別研修会が、17日に茨城県の「ホケットファームどきどき」(牛久店)で開催された。今回はこの直売総合施設の「森の家庭料理レストラン」にスポットを当てた研修会である。 

 農村レストランのあり方について、用地取得から全体設計、レストランの細かい運営を手掛けられたJA全農いばらきの管理部特命担当部長の鎌田定宗さんから、ことこまかに説明をいただき、後にレストランで各自1,800円の食べ放題のランチを満腹になるまで賞味した。
 どきどき牛久店は10月2日開店、敷地14,300坪ほどと広く、駐車場350台と広い。直売所面積182坪。レストラン部門150坪(130席)と広く、開店初月の売上は全体で1億円という。レストラン部門はランチのみで、夜の営業はしていないがランチだけで1日200食が出、1日40万円近くという。250~300食が目標のようだ。
 バイキング形式だがホテルのバイキングと異なり、そのメニューの豊富さに圧倒される。米飯、フランスパン、スパゲティ、味噌汁、スープ、野菜サラダ、肉料理、アイス、スイーツ、ドリンクなんでもありで、選択幅は100品にも及ぶはず。新規に豚等のしゃぶしゃぶも提供している。
 そしてキッチンの中も見え清潔、通路・客席の配置もゆったりで、主婦のくつろぎの場として、すでに大繁盛。森林を開いた敷地で、周囲の景色を見れば癒される。まさに森のレストラン。料理の体験教室もあり、子供さんの遊園地も準備中でる。 

 鎌田氏の説明を聞いていると、すべてユニークな発想で、かつ納得の行くことばかり。
 「一番大切なことはおもてなしの心。これが完全に定着するには1~2年はかかる。まだまだこれから伸ばせる」
 「設備や売り場のレイアウトにしても、これで完全とは見てない。これから従業員がお客様のことも考え、直して行くもの」
 
 「料理メニューを固定してない。その日入った新鮮な野菜ほかの素材を前提に、日々考えるように指導している」・・・隣の直売所に野菜だけでなく、新鮮な肉も豊富(セルフだけでなく対面コーナーも)
 
 「ここは現在はランチを楽しむ主婦をターゲットとしている。男性客はいらない。それだけの世帯数もある」
 
 「原価率は目標よりまだ4%ほど多いが、素材や料理品の有効活用をし、料理の技術が向上すれば、2~3年後には達成できる」
 
 顧客ターゲットが明快なこと、また「どきどき茨城店」(平成12年4月オープン)の過去の実践で得た「計算された目標」に沿い、余裕を持って、かつ従業者自らの力で改善を進める・・・といった運営姿勢は素晴らしいの一語に尽きる。









 

2010年11月27日土曜日

農産物直売所の集客半径は?車客は?頻度は?

 農産物直売所と一口に言っても、その性格は実に様々。当方の各平日・土日に分けた各400人の調査では、①近隣型でサブ幹線道路に面した場合が6.1km(車客の率67.4%)、②観光客がドライブに多く使う幹線道路沿いに面した場合が17.8km(同・86.5%)、③道の駅付帯で主幹線道路に面した場合が約25km(同・87.5%)。調査はしないが、観光地にある広域型では100~200kmになっても不思議でない。
 
 「随分細かい距離計算」ですね」と思われるかもしれないが、これは距離別の累計客数をLOGの最小2乗法で処理し、傾向方程式が100%に達する距離です。ポツリポツリとは県外とか上記以上の距離からも来ていても、客数貢献度からすれば無視してよくこうなる。
 
 問題は近距離型での約67%=約2/3は車客。中・遠距離型では約87%が車客。駐車場が充分なく、「順番待ち」ともなれば次に来るのを敬遠する。個性あるローカルにある広域型のスーパーの例を見ると年約500万円の売上に対して1台の駐車場になっている。年1億円売りたい場合、最低20台は
必要になる。5億円なら100台以上だ。
 
 大都市の中の駐車場の少ない直売所がどうしても苦戦するのは、直売所は専門店的で「広く浅く集客する」ためで、総ての人が対象になりにくい・・・という事実をしるべきだ。つまり別項で触れたがライフスタイルQ型(鮮度・品質=クオリティ型)中心の集客ということ。

 実際の来店頻度は、来ない人まで入れた計算では①の近隣型で、1km内の人でも週平均0.254回、③の遠距離型では0.194回と頗る低い。主婦は平均4店ほどのスーパーほかを回り、平均週
4.34回買い物に出るので(全国55地区-当方調査)、週1店1.09回の頻度となる。ここに4倍、5倍の開きがある。スーパーと業態差(近隣型)があり、頻度の差は残るが、魅力次第で直売所への来店頻度を大幅に上げる余地があると見る。
 
 このためには、店頭調査を年1回は繰り返し、苦情・要望を正確につかみ、イノベーションをすることが大切。店頭調査ならぜひ当方に任せていただきたい。売上予測の調査も同様だが、3地区について距離別集客係数を持っているものの、立地差が大きい。やはり類似の条件の直売所の店頭調査をし、係数を割り出し新規店に適用するのがベター。これもお任せください。



 

 

2010年11月26日金曜日

地産マルシェは地元連携の本物直売所


 「よくここまでやっているな!これは本物だな」と言えるのが都内地産マルシェだ。群馬県前橋市に本拠地を持つファームドゥ株式会社が経営する都内の阿佐ヶ谷店と中野店を改めて見た感想である。

 この会社は農家直送の採れたて野菜を中心に地元産の各種の加工品を扱い、レストランまで含む「食の駅」を群馬県下で5店舗展開している。「地域社会へに貢献」をモトーに生産農家と地元の中小の加工業者を一体化し、従来の農産物直売所と違い、ワンストップ(1ケ所で多種揃う)な直売所を都内・埼玉にも11店出している。

 阿佐ヶ谷店は約32坪、中野店は約45坪(レジ2台、常時2人体制?)とコンビニと同等かやや大きめの広いさに過ぎないが、野菜の品揃えは150坪の直売所以上に豊富で、細かく並べ阿佐ヶ谷60~中野130品にも及び、有機あり、泥つきのニンジン、ダイコン、ゴボウ、ネギありだ。

 さらに精肉(中野12品)、塩干魚(同・7品)、惣菜だけでなく、地元のメーカーさんの顔写真、名前まで掲示して豆腐・納豆類、こんにゃく、麺類、牛乳・乳製品、ハム・ソセージ、パン、ケーキの一部、和菓子、米、卵まで揃えています。特徴の出しにくいドライ食品は4尺のゴンドラ2~3本ほどに圧縮し、頻度の高い生鮮品、日配品に絞り、豊富さをキープしている。米粉入りのパン、バームクヘン、ハードケーキまである。
  
 

 「本物だな」と言ったのは、群馬の地元産、しかもこだわり品ばかりを置いていること。ナショナルブランド品は10品もないくらい。いま「農業の6次産業化・農商工連携」という言葉が盛んに使われているが、「地域の各業者の横の連携がポイントになる」とされるが、マルシェはこれを見事に実現している。素晴らしい。
 
 
 垢ぬけした店舗で、老いも若きも関係なく、こだわり客が来るはず。 営業時間のAM10~PM7:30ないし8:00時というのも好感が持てる。これなら並みの直売所と異なり、兼業主婦でも来店可能になる。

 
 60代の主婦は、「病院の近くなので、ある時寄って、野菜が新鮮で安いし、珍しいものばかりある。最近はバスでよく来ている」とのこと・・・話が弾み、一緒にバス停まで帰った。

 

2010年8月24日火曜日

農産物直売所!何が問題点か-リスクなき企業

 B 「大型の直売所では、3年くらいであっさり目標の売上高になりますね。だがこの後の伸びがない」
 A 「だいたいそんな傾向ですね。チラシを撒かなくても、3年もたてば口コミで来たい人に浸透してしまう。それだけ鮮度や合理的安さ、安全などスーパーにない良さでQ型(8月14日記述)人間は、ほっておいても来てくれる。だがその先の長期な発展計画がない」
 B 「そうですね。委託販売、返品受取、手数料制の運営では、まったくリスクがない。リスクなき企業などは普通の社会では考えられない。リスクがないので横ばいでも、パートの人員を調節すればどうにかやれる。このため新たな発展策を考えない」
 A 「そうなんだ。だが直売所でも、福岡市南区で直売店ぶどう畑のばあい、店長の新開玉子さん(実際は経営者)は自ら農業者だが、食品加工が得意なこともあり、当初から商品は買い取りし、残れば自家加工して売ることをしてきた。これがリスクを負った真の起業だと思う。だからオリジナルな加工品も多く、料理講習会も活発で、近隣にJAの大型店が出ても発展している」
 B 「普通に新鮮なものを安く売るだけでは、すぐ壁が出来る。これを超える新しい挑戦は「起業」でありリスクがともなう。しかし起業、また起業、また起業・・・と次の手を打たないと成長はないですね。減農薬・減化学肥料や有機品の栽培、新品種や地元伝統の品種に挑戦する。良いものを作り、直売所をブランド化して、その信用を基礎にして、ギフトの宅配も拡大する。農村レストランにとどまらず、レジャー施設、体験農場やときにペンションなども経営しグリーンツーリズムにつなげてゆく」
 A 「三重県のモクモクファーム、埼玉県のサイボクなどの発展過程を充分知るべきですね」
 B 「茨城のみずほの村の市場も立派ですね。2番手の人は1番手の人以上に良い品を作り、良となればより高い値で売らしてくれる。これであれば、良品競争の循環ができ、農家の所得は増える」
 A 「みずほでは、米20品も総て特殊栽培品以上、調味料も菓子もみんな個性あるこだわり品。それだけでなく、野菜部門では、コマツナ、ホウレンソウ、レタス、切干ダイコン、6~7種の試食がされている。温室の蘭にしてもゆうに30種になる。ともあれ理念がしかりしている」
 B 「直売所そのもののブランド化を進め、千客万来のようですね」
 この会話のように、いま新たな直売所の胎動が起きている。安さ競争の直売所にさようならしないと、その未来はないと信じます。

2010年8月14日土曜日

農産物直売所も商店もPOPが命


 農産物直売所のPOP講習会の講師を長野・栃木などでやらせていただいた。ミニ・スーパーの開店実務指導時代は相手の店に泊まり込み、当方が企画したチラシを見ながら必死に50~60枚のチラシを描いた。合計すれば楽に2千枚にもなるが、品目と値段のプライスカードである。
 
  いまチェーンスーパーでは、省力化でプライスカード一色になり、プレゼンテーション(訴え)入りの説明型POPは零に近い。生産者の思いは全く消費者に伝わらなくなった。直売所や専門店などは、これを伝えることで、差別化もでき支持者も増える。
 POPは購買時点の広告。やはり文字は多少下手でも、商品に託した売る側の思いが表現されていることが大切・・・値段は2の次。
 
 主人公の商品は「ぼくはこうしたこだわりで栽培された。そして栄養価や料理法、貯蔵法などの特徴も知らせてくださいね」とつぶやいている。こだわりには美味、新鮮、完熟、朝採り、エコ栽培、減農薬や有機肥料栽培、珍しい新種の採用等いろいろある。
 画材はなんでもありでよい。マジック、墨汁(赤・黒)、クレパス、サインペン・・・と豊富であればあるほどよいし、得意なものを選べばよい。これに写真、まんが、イラスト、新聞や雑誌の切り抜き(関連記事の載った)も駆使して、楽しく表現する。
 
 用紙サイズは店の広さ、売リたい量も考え、A3、A4、A4の1/2、A4の1/4まで用意しとくとよいし、 店の統一性を考え、周囲に楽しいデザインや枠を印刷したものを主に使うのがベターだ。
 車の通りがあるが、人通りのない山間部の直売所では、車をストップさせるため、時に看板に畳半畳もの大きなPOPも必要になる。
 
 紙の8分目ほどに描き、中心に寄せて書く。イラストなり写真はぜひ欲しい。イラスト見本が欲しければメールで連絡いただければお送りする。ネットに出っていて使えるものも沢山ある。プレゼン型のPOPの場合、ラミネート加工して何回も使えるよう保存する。プライスはその都度変わるので、別の紙に描き添えるのが妥当だ。