2010年12月18日土曜日

「ポケットファームどきどき」(牛久)は最高のおもてなし




 全国直売所研究会の特別研修会が、17日に茨城県の「ホケットファームどきどき」(牛久店)で開催された。今回はこの直売総合施設の「森の家庭料理レストラン」にスポットを当てた研修会である。 

 農村レストランのあり方について、用地取得から全体設計、レストランの細かい運営を手掛けられたJA全農いばらきの管理部特命担当部長の鎌田定宗さんから、ことこまかに説明をいただき、後にレストランで各自1,800円の食べ放題のランチを満腹になるまで賞味した。
 どきどき牛久店は10月2日開店、敷地14,300坪ほどと広く、駐車場350台と広い。直売所面積182坪。レストラン部門150坪(130席)と広く、開店初月の売上は全体で1億円という。レストラン部門はランチのみで、夜の営業はしていないがランチだけで1日200食が出、1日40万円近くという。250~300食が目標のようだ。
 バイキング形式だがホテルのバイキングと異なり、そのメニューの豊富さに圧倒される。米飯、フランスパン、スパゲティ、味噌汁、スープ、野菜サラダ、肉料理、アイス、スイーツ、ドリンクなんでもありで、選択幅は100品にも及ぶはず。新規に豚等のしゃぶしゃぶも提供している。
 そしてキッチンの中も見え清潔、通路・客席の配置もゆったりで、主婦のくつろぎの場として、すでに大繁盛。森林を開いた敷地で、周囲の景色を見れば癒される。まさに森のレストラン。料理の体験教室もあり、子供さんの遊園地も準備中でる。 

 鎌田氏の説明を聞いていると、すべてユニークな発想で、かつ納得の行くことばかり。
 「一番大切なことはおもてなしの心。これが完全に定着するには1~2年はかかる。まだまだこれから伸ばせる」
 「設備や売り場のレイアウトにしても、これで完全とは見てない。これから従業員がお客様のことも考え、直して行くもの」
 
 「料理メニューを固定してない。その日入った新鮮な野菜ほかの素材を前提に、日々考えるように指導している」・・・隣の直売所に野菜だけでなく、新鮮な肉も豊富(セルフだけでなく対面コーナーも)
 
 「ここは現在はランチを楽しむ主婦をターゲットとしている。男性客はいらない。それだけの世帯数もある」
 
 「原価率は目標よりまだ4%ほど多いが、素材や料理品の有効活用をし、料理の技術が向上すれば、2~3年後には達成できる」
 
 顧客ターゲットが明快なこと、また「どきどき茨城店」(平成12年4月オープン)の過去の実践で得た「計算された目標」に沿い、余裕を持って、かつ従業者自らの力で改善を進める・・・といった運営姿勢は素晴らしいの一語に尽きる。









 

2010年11月27日土曜日

農産物直売所の集客半径は?車客は?頻度は?

 農産物直売所と一口に言っても、その性格は実に様々。当方の各平日・土日に分けた各400人の調査では、①近隣型でサブ幹線道路に面した場合が6.1km(車客の率67.4%)、②観光客がドライブに多く使う幹線道路沿いに面した場合が17.8km(同・86.5%)、③道の駅付帯で主幹線道路に面した場合が約25km(同・87.5%)。調査はしないが、観光地にある広域型では100~200kmになっても不思議でない。
 
 「随分細かい距離計算」ですね」と思われるかもしれないが、これは距離別の累計客数をLOGの最小2乗法で処理し、傾向方程式が100%に達する距離です。ポツリポツリとは県外とか上記以上の距離からも来ていても、客数貢献度からすれば無視してよくこうなる。
 
 問題は近距離型での約67%=約2/3は車客。中・遠距離型では約87%が車客。駐車場が充分なく、「順番待ち」ともなれば次に来るのを敬遠する。個性あるローカルにある広域型のスーパーの例を見ると年約500万円の売上に対して1台の駐車場になっている。年1億円売りたい場合、最低20台は
必要になる。5億円なら100台以上だ。
 
 大都市の中の駐車場の少ない直売所がどうしても苦戦するのは、直売所は専門店的で「広く浅く集客する」ためで、総ての人が対象になりにくい・・・という事実をしるべきだ。つまり別項で触れたがライフスタイルQ型(鮮度・品質=クオリティ型)中心の集客ということ。

 実際の来店頻度は、来ない人まで入れた計算では①の近隣型で、1km内の人でも週平均0.254回、③の遠距離型では0.194回と頗る低い。主婦は平均4店ほどのスーパーほかを回り、平均週
4.34回買い物に出るので(全国55地区-当方調査)、週1店1.09回の頻度となる。ここに4倍、5倍の開きがある。スーパーと業態差(近隣型)があり、頻度の差は残るが、魅力次第で直売所への来店頻度を大幅に上げる余地があると見る。
 
 このためには、店頭調査を年1回は繰り返し、苦情・要望を正確につかみ、イノベーションをすることが大切。店頭調査ならぜひ当方に任せていただきたい。売上予測の調査も同様だが、3地区について距離別集客係数を持っているものの、立地差が大きい。やはり類似の条件の直売所の店頭調査をし、係数を割り出し新規店に適用するのがベター。これもお任せください。



 

 

2010年11月26日金曜日

地産マルシェは地元連携の本物直売所


 「よくここまでやっているな!これは本物だな」と言えるのが都内地産マルシェだ。群馬県前橋市に本拠地を持つファームドゥ株式会社が経営する都内の阿佐ヶ谷店と中野店を改めて見た感想である。

 この会社は農家直送の採れたて野菜を中心に地元産の各種の加工品を扱い、レストランまで含む「食の駅」を群馬県下で5店舗展開している。「地域社会へに貢献」をモトーに生産農家と地元の中小の加工業者を一体化し、従来の農産物直売所と違い、ワンストップ(1ケ所で多種揃う)な直売所を都内・埼玉にも11店出している。

 阿佐ヶ谷店は約32坪、中野店は約45坪(レジ2台、常時2人体制?)とコンビニと同等かやや大きめの広いさに過ぎないが、野菜の品揃えは150坪の直売所以上に豊富で、細かく並べ阿佐ヶ谷60~中野130品にも及び、有機あり、泥つきのニンジン、ダイコン、ゴボウ、ネギありだ。

 さらに精肉(中野12品)、塩干魚(同・7品)、惣菜だけでなく、地元のメーカーさんの顔写真、名前まで掲示して豆腐・納豆類、こんにゃく、麺類、牛乳・乳製品、ハム・ソセージ、パン、ケーキの一部、和菓子、米、卵まで揃えています。特徴の出しにくいドライ食品は4尺のゴンドラ2~3本ほどに圧縮し、頻度の高い生鮮品、日配品に絞り、豊富さをキープしている。米粉入りのパン、バームクヘン、ハードケーキまである。
  
 

 「本物だな」と言ったのは、群馬の地元産、しかもこだわり品ばかりを置いていること。ナショナルブランド品は10品もないくらい。いま「農業の6次産業化・農商工連携」という言葉が盛んに使われているが、「地域の各業者の横の連携がポイントになる」とされるが、マルシェはこれを見事に実現している。素晴らしい。
 
 
 垢ぬけした店舗で、老いも若きも関係なく、こだわり客が来るはず。 営業時間のAM10~PM7:30ないし8:00時というのも好感が持てる。これなら並みの直売所と異なり、兼業主婦でも来店可能になる。

 
 60代の主婦は、「病院の近くなので、ある時寄って、野菜が新鮮で安いし、珍しいものばかりある。最近はバスでよく来ている」とのこと・・・話が弾み、一緒にバス停まで帰った。

 

2010年8月24日火曜日

農産物直売所!何が問題点か-リスクなき企業

 B 「大型の直売所では、3年くらいであっさり目標の売上高になりますね。だがこの後の伸びがない」
 A 「だいたいそんな傾向ですね。チラシを撒かなくても、3年もたてば口コミで来たい人に浸透してしまう。それだけ鮮度や合理的安さ、安全などスーパーにない良さでQ型(8月14日記述)人間は、ほっておいても来てくれる。だがその先の長期な発展計画がない」
 B 「そうですね。委託販売、返品受取、手数料制の運営では、まったくリスクがない。リスクなき企業などは普通の社会では考えられない。リスクがないので横ばいでも、パートの人員を調節すればどうにかやれる。このため新たな発展策を考えない」
 A 「そうなんだ。だが直売所でも、福岡市南区で直売店ぶどう畑のばあい、店長の新開玉子さん(実際は経営者)は自ら農業者だが、食品加工が得意なこともあり、当初から商品は買い取りし、残れば自家加工して売ることをしてきた。これがリスクを負った真の起業だと思う。だからオリジナルな加工品も多く、料理講習会も活発で、近隣にJAの大型店が出ても発展している」
 B 「普通に新鮮なものを安く売るだけでは、すぐ壁が出来る。これを超える新しい挑戦は「起業」でありリスクがともなう。しかし起業、また起業、また起業・・・と次の手を打たないと成長はないですね。減農薬・減化学肥料や有機品の栽培、新品種や地元伝統の品種に挑戦する。良いものを作り、直売所をブランド化して、その信用を基礎にして、ギフトの宅配も拡大する。農村レストランにとどまらず、レジャー施設、体験農場やときにペンションなども経営しグリーンツーリズムにつなげてゆく」
 A 「三重県のモクモクファーム、埼玉県のサイボクなどの発展過程を充分知るべきですね」
 B 「茨城のみずほの村の市場も立派ですね。2番手の人は1番手の人以上に良い品を作り、良となればより高い値で売らしてくれる。これであれば、良品競争の循環ができ、農家の所得は増える」
 A 「みずほでは、米20品も総て特殊栽培品以上、調味料も菓子もみんな個性あるこだわり品。それだけでなく、野菜部門では、コマツナ、ホウレンソウ、レタス、切干ダイコン、6~7種の試食がされている。温室の蘭にしてもゆうに30種になる。ともあれ理念がしかりしている」
 B 「直売所そのもののブランド化を進め、千客万来のようですね」
 この会話のように、いま新たな直売所の胎動が起きている。安さ競争の直売所にさようならしないと、その未来はないと信じます。

2010年8月14日土曜日

農産物直売所も商店もPOPが命


 農産物直売所のPOP講習会の講師を長野・栃木などでやらせていただいた。ミニ・スーパーの開店実務指導時代は相手の店に泊まり込み、当方が企画したチラシを見ながら必死に50~60枚のチラシを描いた。合計すれば楽に2千枚にもなるが、品目と値段のプライスカードである。
 
  いまチェーンスーパーでは、省力化でプライスカード一色になり、プレゼンテーション(訴え)入りの説明型POPは零に近い。生産者の思いは全く消費者に伝わらなくなった。直売所や専門店などは、これを伝えることで、差別化もでき支持者も増える。
 POPは購買時点の広告。やはり文字は多少下手でも、商品に託した売る側の思いが表現されていることが大切・・・値段は2の次。
 
 主人公の商品は「ぼくはこうしたこだわりで栽培された。そして栄養価や料理法、貯蔵法などの特徴も知らせてくださいね」とつぶやいている。こだわりには美味、新鮮、完熟、朝採り、エコ栽培、減農薬や有機肥料栽培、珍しい新種の採用等いろいろある。
 画材はなんでもありでよい。マジック、墨汁(赤・黒)、クレパス、サインペン・・・と豊富であればあるほどよいし、得意なものを選べばよい。これに写真、まんが、イラスト、新聞や雑誌の切り抜き(関連記事の載った)も駆使して、楽しく表現する。
 
 用紙サイズは店の広さ、売リたい量も考え、A3、A4、A4の1/2、A4の1/4まで用意しとくとよいし、 店の統一性を考え、周囲に楽しいデザインや枠を印刷したものを主に使うのがベターだ。
 車の通りがあるが、人通りのない山間部の直売所では、車をストップさせるため、時に看板に畳半畳もの大きなPOPも必要になる。
 
 紙の8分目ほどに描き、中心に寄せて書く。イラストなり写真はぜひ欲しい。イラスト見本が欲しければメールで連絡いただければお送りする。ネットに出っていて使えるものも沢山ある。プレゼン型のPOPの場合、ラミネート加工して何回も使えるよう保存する。プライスはその都度変わるので、別の紙に描き添えるのが妥当だ。


 

2010年8月11日水曜日

農産物直売所の主たる顧客はQ型=品質志向

 「顧客ターゲット」という言葉が使われているが、直売所がターゲットとすべき主たる客は、①安さ好みの客?、②品揃え好みの客、③便利性好みの客? ④品質本位の客?
 さてどれでしょう。「規格外品まで買ってくれるので④ではない」、「直売所は合理的な安さが魅力だから①かな」・・・いろいろ考えてしまうはず。
 当方は全国300地区を回り、顧客の訪問調査もし(1地区40人を基本)、この調査をもとに主婦の食に関するライフスタイル分析も何回となく繰り返してきた。
 主に店を選択する基準をもとに、顧客をP型(価格志向)=プライス派、V型(品揃え志向)=バライティ派、C型(便利性志向)=コンビニ派、Q型(品質志向)=クオリティ派・・・とライフスタイルに分け、様々な分析をしてきたが・・・
 追跡調査もし惣菜の買い物程度、料理を選ぶ際の基準,総合スーパーを選ぶ基準、ポイントカードを魅力に感じる程度・・・等とライフスタイルの関係が深いことも確認している。
 この結果、直売所に来店する人の多くはQ型である・・・との結論を得た。なぜか?ゆっくり回答しよう。
1.直売所3ケ所、計1,200人の来店客調査によると、「鮮度」の支持率が平均92.3%と突出、ほぼ
全員に近い。一方、食品店の選択基準では「鮮度」は61.3%(13都府県の分析)で、この数字の1.5倍ほども高い。「鮮度」はQ型の象徴である。
 2.Q型は商品の鮮度・品質を考え、商品ごとに専門店、食品スーパー、総合スーパー、生協ルートなど多様な選択をし、このため良いとなれば直売所も来る。
 3.直売所では、規格外の品も売られているが、食生活に真摯に向合うQ型人間からすれば「規格外であっても、鮮度・品質に関係ない」ということになる。
 4.直売所の魅力の2位は「安さ」で、支持率53.5%である。これも食品店の選択基準支持率35.6%の1.5倍ほどだが、「合理的安さ」への評価と言え、P型と連動しない。なぜなら、P型は常時安いディスカウント・スーパーやチラシ特売の店を選び、生鮮、加工食品、菓子などのトータルな安さを好み、青果中心の安さにさほど魅力を感じない。
 5.P型は所得の低い20~30代の主婦に多い。子育てに追われやや遠方の直売所に来ない。事実直売所1,200人調査では、20~30代の構成比は平均18.8%と極めて少ない。
 6.V型は華美な消費層で、総合スーパーやデパートを好み、家庭内1番店に総合スーパーを選ぶ確率は63.8%(500人調査)で、Q型の13.6%の4.7倍である。青果中心の品揃えでは来ない。ただし珍しい品揃えを好み、道の駅やドライブイン付帯の土産物はV型客も好むはず。特産品の充実がV型客の獲得につながる。
 7.C型はドライブのついでなど、便利性の一点で直売所も利用する。だがその頻度は低くなるはず。
 以上を考えると「直売所の主たる顧客はQ型客」の結論になり、品質を重視して直売所そのもののブランド化を狙い、その信用でギフトも売れるスタイルの直売所作が伸びるていることも理解できる。
 
  

2010年6月4日金曜日

「福島屋」羽村はおカネ軸でなく「食の商業家」を目指す

友人が、「これあげます」と一冊の本をくれたのが・・・
「食の理想と現実」(福島徹著・幻冬舎・700円+税)。福島屋は東京の西の羽村市にある。比較的近いので最近2回程、この友人の推薦もあってこっそり見にいったし、昔リサーチで2回覗いたこともある。友人と福島徹社長とはツーカーの仲なので、本を勧められたようである。
  この本は私にすれば「稀なる名著」。滑らかな文章で、仕事柄どうしても読む必要があるが、それだけでない。「経営は社会的な存在でなければならない」とのドラッガーの言葉を、堅実に奢らず、自然体で実践している。
自らを商業家と位置付け、ソロバン軸=おカネ軸でなく(まず儲けありきでなく)、正しい商品を吟味して店に置き、そこから適正な報酬を得、農家や画家、小説家から連想される「家」になりたいというのだ。道を極める旅に出たい・・・ということか。
 他にも支店やレストラン、カフェも持っているが、本店のある羽村では道路を隔て品質志向のグレイド店と安売りのディスカウント店を併設している。お客さんが好みに応じ選択ができるよう配慮してのことだ。
 店にはパソコンのPOPではなく、手書きの心のこもったPOPが沢山ある。そして自然農法といって、生物と土壌の持つ自然の力で育てた野菜やお米が沢山置かれている。それも、自身で東京や地方の農家に出向き、「是非、食の安全のため自然農法で作ってください」とお願いし、相互の理解のもとに開発した商品ばかりだ。手間代、足代を考えれば目先の利益にはならない。
 だが福島屋は、この誠実さのためお客さんに信頼され、最近はチラシも一切まかない。それでいて仕事を始めて40年1度も赤字を出したことがない。スーパーの支店、レストラン、カフェ(顧客が集まる場の提供)まで出してきた成長商業家だ。
ただ生産された物を売るだけではない。自然農法で見てくれが悪く売れないものは加工して形を変え、売れ筋商品に育てている。自家で調達した原料で「茹でざるうどん」や、オリジナルなパンやおはぎも作り、行く行くは店内に水車小屋や味噌蔵も再現したいと、夢は無限に広がっていく。素晴らしい。