2010年6月4日金曜日

「福島屋」羽村はおカネ軸でなく「食の商業家」を目指す

友人が、「これあげます」と一冊の本をくれたのが・・・
「食の理想と現実」(福島徹著・幻冬舎・700円+税)。福島屋は東京の西の羽村市にある。比較的近いので最近2回程、この友人の推薦もあってこっそり見にいったし、昔リサーチで2回覗いたこともある。友人と福島徹社長とはツーカーの仲なので、本を勧められたようである。
  この本は私にすれば「稀なる名著」。滑らかな文章で、仕事柄どうしても読む必要があるが、それだけでない。「経営は社会的な存在でなければならない」とのドラッガーの言葉を、堅実に奢らず、自然体で実践している。
自らを商業家と位置付け、ソロバン軸=おカネ軸でなく(まず儲けありきでなく)、正しい商品を吟味して店に置き、そこから適正な報酬を得、農家や画家、小説家から連想される「家」になりたいというのだ。道を極める旅に出たい・・・ということか。
 他にも支店やレストラン、カフェも持っているが、本店のある羽村では道路を隔て品質志向のグレイド店と安売りのディスカウント店を併設している。お客さんが好みに応じ選択ができるよう配慮してのことだ。
 店にはパソコンのPOPではなく、手書きの心のこもったPOPが沢山ある。そして自然農法といって、生物と土壌の持つ自然の力で育てた野菜やお米が沢山置かれている。それも、自身で東京や地方の農家に出向き、「是非、食の安全のため自然農法で作ってください」とお願いし、相互の理解のもとに開発した商品ばかりだ。手間代、足代を考えれば目先の利益にはならない。
 だが福島屋は、この誠実さのためお客さんに信頼され、最近はチラシも一切まかない。それでいて仕事を始めて40年1度も赤字を出したことがない。スーパーの支店、レストラン、カフェ(顧客が集まる場の提供)まで出してきた成長商業家だ。
ただ生産された物を売るだけではない。自然農法で見てくれが悪く売れないものは加工して形を変え、売れ筋商品に育てている。自家で調達した原料で「茹でざるうどん」や、オリジナルなパンやおはぎも作り、行く行くは店内に水車小屋や味噌蔵も再現したいと、夢は無限に広がっていく。素晴らしい。

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