2012年5月16日水曜日

農業経営の目標設定は売上高?経常利益?所得?

    農業者の皆さん!5年後、10年後の経営改善計画を立案する場合、①粗収益、②売上高、③営業利益、④経常利益、⑤家族労働報酬・・・どれを選らんで数値目標の基礎とするか。これには家族中心の経営、従業員も多数いる経営・・・といった体質によっても違ってくるかもしれない。
 ところで、①~⑤について個々の内容を吟味したい。
1.粗収益=生産品の売上+副産物の売上+自家消費+生産品に関係する補助金・交付金
2.売上高=生産品の売上+副産物売上
3.営業利益=粗収益-生産・販売経費
4.経常利益=営業利益+営業外収入(利子や生産品と関係ない保険等の収入)ー営業外支出
=税引き前利益
5.家族労働報酬=専従者報酬(法人では家族役員報酬等)+経営主報酬 
  
  ざっとこんなことになる。1や2は、あくまで入ってくる金で、利益とか家族労働報酬の高さとは関係ない。規模拡大すれば、普通なら売上高や粗収益は上がる。しかし、規模拡大のみ急ぎ、借金まみれ、赤字まみれになっている経営は少なくない。酪農経営で110頭まで増やしたが、草地が劣悪のため、餌不足で年間1頭の乳の量が7,500kg(標準9,000kg)で、8,000万円以上の借金のため、返済できず競売にかかった例も見てきた。

 
 3や4の営業利益や経常利益は目標値になるか?家族労働報酬を高くすれば、シーソーゲームのように、一般に営業利益や経常利益は減る。実際、節税対策のため、家族個々の報酬を増やし、営業利益や経常利益を抑える例は多い。5の場合の家族労働報酬もまた、3や4とのシーソーゲームで低くなったり高くなったりする。

  経営の5ケ年、10ケ年の中・長期計画を立てる場合、それが期待や希望に満ち、楽しいものでなければ、「おっくう」なものになる。「10年後には子供も2人になり、このくらいの所得が欲しい。
借金が楽に返せ、投資も充分にできるだけの余裕を確保したい」・・・こんな前提で、経営計画が立てられることがベターである。

  とするならば、1~5の単独型経営計画は総てバツである。そして家族所得や経常利益を組みこんだ4+5型のものであるべきだ。個人経営の場合、経常利益は差引経営者所得に組みこまれている。これに専従者所得(給与)を加えれば、法人経営の家族役員報酬+経常利益に類似してくる。法人と個人の別なく収益力の比較も可能になる。また(4+5の額)÷(粗収益対比の4+5の百分率)×100=目標粗利益額となり、収入全体の目標も簡単に計算できる。

 2、3、4,5年後の粗収益の目標といっても、その前提として、目標労働報酬、目標経常利益というものが計算に組み込まれていなければ、将来の発展に結びつかない。適正な労働報酬は家庭のうるおいを保証し、経常利益は返済余地や投資の余地を広げ、着実な発展を保証してくれる。

 できれば、家族労働報酬だけでなく、雇用者の労働報酬も含めて目標に折り込むのが正解である。さもないと、人的面で行きずまる・・・新規の就農者不足も報酬の低さに起因しているからだ。

  今回、以上の点に触れたのも、個人経営には経営主所得を、法人経営には営業利益を採用し、
5ケ年の実績評価をする・・・といった同質性のない要素で評価する場面に出会ったからである。
また我々コンサルタント仲間においても、農業者に個人、法人の決算書例を示し、丁寧に数字の意味を説明したうえで、経営計画立案を指導していただく必要がある・・・と感じるからだ。

  経営計画を立案する場合、年々の変化は売上高=栽培ないし飼育規模×出荷量×単価になる。そして単価はこだわりの程度(付加価値)や販売チャネルで異なるだけではなく、①対象とのる生産物の価格推移・・・回帰分析による推定、②価格変動が激しい場合はそのリスクを折り込む必要がある。また経費面では①家族及び雇用者の所得=労働報酬の向上を見る、②主たる資材の値上りまで組む・・・といった配慮をして、初めて本物の経営計画になる。ただ過去の延長であってはいけない。

 
 回帰分析(=最小ニ乗法)による傾向値の計算は、難しいものではない。関数を使うのでなく、エクセル表で視覚でとらえながら計算する方法もある。必要な方には無料で計算方法を伝授する。
  ところで、部門別の所得率(法人であれば家族労働報酬+経常利益)のメドだが、やや古いH19
年の統計では、償却費を含んだ所得率レベルは、稲作全国38.9%、柑橘34.0%、リンゴ37.4%、露地野菜全国29.6%、施設野菜35.2%、施設花き30.3%、茶30.2%、キノコ25.6%、酪農全国23.4%、肉牛全国10.4%、養豚11.2%、採卵鶏9.3%、ブロイラー9.4%である。


 


2012年2月8日水曜日

食のライフスタイル分析②-スタイル別の対応!

では、スタイル別の特徴と対応を述べてみたい。

 1.C単独型  C型は年齢において全世代にまたがり、平均的には1人当たり食品他の消費力は低位。世帯人員は中位。選択店数は少なく、近いとか寄り道しやすい等の条件があれば、スーパー、専門店などの固定客になり易い。

 食を大切にするタイプではなく、便利性本位に考え、料理選択の総ての要素(健康、安全、美味、ボリューム、安さ、季節の味、家庭の味、簡便)で最低レベルである。仕事が忙しいというよりは、価値観の主たる対象が仕事、スポーツ、趣味など他にあるためと見るべきだ。

 惣菜だけでなく、インスタント食品、レトルト食品、各種のだし汁、たれ汁なども買い進むと見る。スーパーでも夜間営業、商品以外のサービスなどコンビニ要素をコンビニ並みに導入すれば有効である。今後は高齢層のC単独型の厚みが増すため、食品スーパーや専門店も、高齢者向きのコンビニ要素を強化することが望まれる・・・小口パック、小容量調味料、歯にやさしい食材・惣菜、趣味のための各種参考本やコピー機、宅配便窓口などだ。

 なお「兼業主婦はC単独型」と考えがちだが、これは間違いある。それほどC単独が多いわけではない。専業主婦のC単独型比率が8.6%、パート主婦が11.8%、自営・正勤務主婦が18.8%で、兼業主婦のC単独率は専業主婦の2倍以上になるが、しかし兼業主婦の88~82%はC単独型ではない。仕事が忙しくても、必死に食を大切にする兼業主婦が圧倒的に多いのだ。

 2.P型  年齢は20~30代に多く、平均的には1人当たりの食品消費力は50~60代の60%以下と低位だが、世帯人員が多く1世帯消費力では中位。安さを求め買い回るため選択店数は多く、固定客になりにくい。だがスーパーでもエブリデー・ロープライスに徹すれば確実に固定化できる。「料理の選択基準」では安さにおいてトップだが、健康とか美味、季節の味などにも配慮している。安さ+アルファーの要素にも注目すべきだ。安さだけの訴求で100%の成果は期待できない。

 子供さんのが多い層であり、「子供さんの好きな料理」(上位よりカレー、ハンバーグ、ラーメン、スパゲティ、ステーキ、焼き肉、寿司、グラタン、シチュー、サラダ類、その他焼きそば、サンド、ハム等)に関係する商材、インスタントラーメン、菓子、アイス、デザート、アイス、弁当のオカズ向き冷凍食品などインプロに留意すべきだろう。

 3.Q型  所得も高くなる40代から、貯金もあり年金もある60・70代まで広く分布する。平均的には1人当たりの食品他の内食支出は最高レベルで、世帯人員は子供が独立した家庭も多いため少ない。選択店舗数は最も多い。GMS、食品スーパー、専門店、生協、直売所などを問わずカテゴリーごとに鮮度や良い品質の店を選び、買い回るため固定化はしにくいようだが、特定部門・商品に限れば固定できる。

 鮮度、品質、安全などに軸足を置いたコンセプトの店なら全面的に支持する。今後は、Q型にシフトした「良品・こだわり品」に特化した食品スーパーや直売所が増えるはずだ。いな、農産物直売所は今も鮮度・安心面でQ客中心の集客をしているのだ(鮮度の支持率90%超える)。

 家族の健康、美味しさ、安全、そして簡便性まで総合的に考える、食の豊さと真剣に向き合うスタイルである。鮮度・品質志向のSMとすればQ型に支持されることが固定客の増加につながり発展の鍵である。食品専門店においてもQ型の支持があれば存続可能だ。

 Q型は惣菜を最も買わないスタイル。だが簡便化にも留意する層だ。「家庭の味を凌ぐ美味なものを、食卓にもう1品」と提案すれば充分受け入れられる。

 ところでQ型に含まれているS単独型(食の安全本位)は生協組合員が90%以上で、平均すると生協ルートの家庭内シェアは58%ほどである。残り42%は一般SM他で購入している。S単独型は4.0%と少ないが、Sが付く他の型(総べてQ関連型)を含めると全体の13.7%になる。

 3.V型 
 所得の高い60~70代に多いが、絶対数は少ない。1人当たり内食支出力はQ型とほぼ同じで、外食まで含めばQ型を上回はず。所得ではQ型を上回るアッパー層が多く含まれる。GMS中心で、デパートでの買い物や外食も好む。選択店数はGMS中心のため少ない部類。食品スーパーではでは珍しいとか、高級なこだわり品まで品揃えを広げないと固定化しにくい。
 
 GMSやデパ地下で、珍しいとか美味なものがあれば、惣菜も買い、ドライ食品、菓子、酒類でも、美味な地方ブランド品、高級品、輸入品などを買い進み、アップグレイドの食品スーパーも利用している層である。高度成長-バブル期といった良き時代を経て停年を迎えた世代は、かなり豊かさがしみついている。堅実な消費だけでなく華美な消費もしてきた。このためQ型、V型だけでなくQV型も多い。安さだけが総べてでないことを、再認識して欲しい。

 標準型の食品スーパーにおいても、地方発のブランド品、非ブランドのこだわり品にも注目し、こうしたコーナーを今後育てて行くべきだ。筆者は農業関係のコンサルタントでもある。農業の6次産業化、農商工連携事業で生まれる地方発商品のためにも、こうした取組を推進して欲しい。

 4.料理の選択基準(表:支持率%)

 別途、テーマごとにスタイル別の反応の詳細結果を紹介すると(一部すでに触れたが)・・・埼玉78人(複合型省略)でサンプル数不足は否定できないが、それなりに予想した傾向が出ている。
           Q型     V型     P型     C型
健康        100     60      70      55
安全        100     40      30      23
ボリューム       0     20      20       9
安さ           0      0      50       9
美味        100    100      80      55
季節の味      67     60      50      23
家庭の味       0     40      20       5
簡便         67     40      30      27

 表のようにQ型は健康、安全、美味、季節の味だけでなく簡便性にも配慮し、総合的に食と向き合い、健康・安全・美味といったバランスのとれた料理を追求している。食卓にもうい1品を加えたいときは。簡便料理も辞さない「食に対して堅実な姿勢」を示す層と理解する。

 アッパー層(所得高い)を含むV型は、美味という点ではQ型と並び1位だが、他のQ型1位要素については2~3位で、特に健康・安全については、Q型との差が多い。「家庭の味」は1位であり、ご主人を中心とした料理なり味なりで食卓を飾り、豊かさを反映しているように思う。反面、健康や安全の点ではQとの差が大きく、家族全体の健康への配慮を欠いている感じだ。

 P型は安さが1位で、当然の結果が出ている。だが健康や美味への配慮は、Q型より劣るものの、大幅な差はなく、「ただ安ければ良い」という姿勢ではない。子供さんもいる若年主婦が多く、子供さんへの配慮も怠りないと言える。

 5.お惣菜の購入割合

 これは購入率の高さで見ており、低ければ「惣菜を買わない=手作り率」が高いことになる。(東京・埼玉138人訪問調査)
           V  QV   Q  PQV  PV  PQ  P  C単独
惣菜購入率%  44  48  33  67  50  44  69   71
カテゴリー指数0.56 0.48 0.36 1.15 0.75 0.67 0.85 0.74 

 表で分かるとおり、便利性を求めるC単独型、育児で忙しい若年主婦を多く含むP型はQ型の2倍以上も惣菜購入率が高い。Vも美味しければデパ地下の惣菜を買うアッパー層を含むため、Q型より高い比率になる。「カテゴリー指数」は、惣菜の17のカテ ゴリーを上げ、買うものに丸をつけてもらい、どの程度のカテゴリーを買っているかを指標化したものである。ほぼ購入率と連動する。PQV型はPが増幅されるよう働くタイプのか2つの率・指数とも最大になる。

 なお詳しい数値は省略するか、 GMS(総合スーパー)で買い物する比率は、「1ケ所で総て揃う」「否揃え豊富」を基準にVを区分したためもあるが、V型の家庭内1番点としてGMSを選ぶ比率 は実にQ型やP型の3倍にのぼる。このため、青果専門店的な農産物直売所には通常ほとんど来ていないと推定する。ただし旅先の道の駅等での「珍しいものあさり」は、 最もする人と推定している。

 5.ライフスタイルをどうつかむか
 お客さんの額や胸にQ・V・P・C単独・・・が表示されてはいない。店頭調査やポイントカードを駆使し、
どんなスタイルの人が、何パーセントずつ来ているかを知り、そのあとどんなスタイルの人に来て欲しいかの目標を持つことが、新たな挑戦につながる。
 
 商品にはスタイル見合いの顔がある。商品をスタイル区分に分け、その商品を買えば何型・・・として顧客分類をしておけば、提案すべき商品もある程度明確になる。また商品構成の改善計画にもつながる。これを機会にぜひ「顧客一般」という捉え方でなく、食のライフスタイルに沿った、個別スタイル別の顧客満足度の充実に向かって欲しい。

 講演用のパワーポイントの用意あり

2012年2月4日土曜日

食のライフスタイル分析①-安さだけが総てでない!

長引く不況で、スーパーはどこも価格競争に走り、デフレ解消の出口が見えない。だが主婦の「食品購入ルートの選択基準」を切り口とした食のライフスタイル分析からすると、主婦の安さ志向の構成比は26.7%と少数派である。 スーパーはもちろん、直売所や農産加工品の販売に当ってもこの点に留意すべきである。

 特定セグメント(例えばライフスタイル)→顧客ターゲット→業界内のポジショニングと進むべきマーケティング理論の構築が叫ばれながら、スーパーや飲食店等は一律「安さ」を前面に打ち出すだけのマーケティングになり、自らの首を絞めている。逆に品質や珍しさ(個性やこだわり)を求める客の満足から、ますます離れってしまっている。多元的なライフスタイルを意識し、多元的なマーケティングを展開しなければ、食品スーパーやGMS(総合スーパー)は利益が出ず、不況が長期化すればその一部は生命が絶たれる。

  ここで紹介する主婦のライフスタイルは、9都県約20地区500世帯の訪問調査の分析結果である(栃木を除く関東と長野、山梨、静岡。実際は青森から鹿児島に至る25都道府県で1万人以上の訪問調査をしてきた)。特定地域に片寄った分析ではないことを断っておきたい。また「食品の購入先をどのような理由で選ぶか-選択項目24)を切り口としたライフスタイル分析である。

 ライフスタイルは①親の生き方ほかの家庭環境、②居住地の商業環境などで長年かかって形成されたもので、過去の分析で景気の良し悪しにあまり影響されないことを確認している。なぜなら、デフレで価格全体が下がれば、安さ志向の主婦はさらに下限狙いの買物をし、非価格志向の主婦は「今は安くて当然」として、やはり鮮度や品質、品揃えといった別の価値を追求する。このようにライフスタイルそのものは簡単に変えない。

   店の選択基準(非店舗購入もあるためルートが正解)の24因子を基に分類すると・・・
①鮮度・品質志向のQ型(Quality)…生鮮品の鮮度、安全、
    美味、品位高い
②品揃え重視で華美な消費志向のV型(Variety)・・・1ケ所で
    総て揃う、品揃え豊富
③安さ志向のP型(Price)・・・安い、チラシ見て、ポイントが付く
④便利性志向のC型(Convenience)・・・近い、買い慣れ、買
    い易い、勤め帰りに寄れる、ついでに寄れる、散歩がて
    らに寄れる、行き易い、駐車し易い、配達、長時間営業
 
 この4分類の単独ないし2~3の組み合わせにより、P、PQ、PV、PQV、Q、QV、V、C単独の8つのスタイルに区分できる。店の選択基準以外に対しどう反応するかも、追調査をして、各スタイルの特性を深めてきた。

1.現代は便利性の時代

 ひとまずライフスタイルと離れると、全国55地区・13都府県別の平均からすると、便利性志向=Cの因子に該当するものが10/24と多く、その支持率を合計すると全体の43.2%にのぼる。ちなみに品質志向=Qは19.8%、品揃え=Vが16.8%、価格志向=Pが14.0%である。、便利性が突出している。そして90%以上の人がTPOに応じて使い分けるためC因子を持っている。まさに現代はコンビニエンス(便利・簡便さ)の時代と言える。 これは簡便性のある食品の消費とも深く関係してくる。ボトルや缶の飲料、インスタント食品(レトルト含む)、冷凍食品、惣菜、弁当等ばかり伸びているのもこのためである。

 90%以上の主婦がC因子を持つのは、家事・育児だけでなく、正規やパートの仕事があったり、趣味を深めたい・・・等々の忙しさのためである。現代は「時間の有効利用時代」でもあり、C因子の時代でもある。兼業主婦だから後記のC単独型と限らない。兼業主婦にC型は20%ほど多いに過ぎない。
 
 ところでCはC因子は90%以上に含まれているため、総てC因子の人のみ「C単独型」にしないと、スタイルの分類ができない。分子/分母に共にCを含む場合は数学的にカットしてよい。

 2.多いのはQ型・QV型でP型は少数派
 昼間の訪問調査のため、世帯持ちの主婦中心の構成比になるが、スタイルで最も多いのがQ型の17.9%、QV型の17.5%で、以下にC単独型14.7%、P型13.3%、PQ型13.3%、V型9.5%、PV型7.8%、PQV型6.8%が続く。

 P型はまだ所得も低く、幼児等のいる20~30代の若年主婦に多いが、人口の年齢構成も関係するため少数派である。関与因子別の構成比を出すと、Q型36.7%、V型26.9、P型26.7%、C単独9.7%で、P型は1/4程度に過ぎない。以上から「安さだけが総てではない」と言い切るのだ。

 スタイル別の特徴は、後日に詳細な説明するが、Q型は鮮度・品質本位に考え、野菜はA店、魚はB店、精肉はC店と購入先を選び、かつ専門店、スーパー、総合スーパー、生協、農産物直売所の別なく選択する層である。惣菜は工夫して主に自家で作り、購入度は低い。

 V型は華美な消費層を含むが、総合スーパー=GMSを好み、惣菜も美味・珍しいとなればデパ地下などで買い進む。

 P型は20~30代の若い主婦に多い。所得の低さもあって、チラシで動いたり、エブリデ―・ロープライスの店好みである。C型は食生活以外への関心が強く、便利性本位の買物をし、多くの店に対して中立である。

 ところで、マーケティングでは「消費の多様化・細分化を考え、特定セグメント(特定ライフスタイル等)をターゲットとしていくべき」とされているが、食品は100円、最大でも2,000円程度のものが多く、かつ顔や外見からスタイルを判断できない。このためスーパーや最近ブームの農産物直売所でも、ライフスタイル分析なしのマーケティングがされてきた。

 実際はライフスタイルを意識しないまでも、以下のとおりセグメントに対応している例も多い。また都会でなくむしろ農村において、地産地消のうねりのなかで、Q・V対応の美味・健康・安全・環境等のこだわりを考えた付加価値販売が活発に論じられ、実践されている。

 (1)例えばスーパーの中で粗利益率や粗利益生産性の高い精肉では、同じ豚ロース肉100gで輸入98~148円、国産248円、薩摩の黒豚348円と言ったように3通りの品揃えをし、結果的に生鮮3品の中で最も高い粗利益率を実現している。鮮魚でも塩サケ、しらす、たらこ・明太子などはピン・キリの品揃えをし、広い消費に応えている。こうしたセグメント対応が商品全般の販売に及ぶべきである。

 (2)優良スーパーとされるヤオコーは、毎日入口の果物の陳列を変え、美しいカップ入で販売をし、季節の果物はほぼ糖度表示をしているし、完熟、木熟、陽当たり、きづっこ(傷っこ)・・・などの表示品も多い。トレーサビリティ品や有機野菜のコーナーもあった時代もあるが、いま地場野菜コーナーは必ず設けている。ヤオコウーならではのPB商品も多い。トレーサビリティ対応のSEICAカタログ商品を多数揃えてもいる。イオンの「グリーンアイ」やヨーカドーの「顔の見えるシリーズ」も、こだわり客を対象にしたセグメント政策の1つといえる。

 (3)小型スーパーの東京都羽村市の福島屋は道路を挟み、アップグレイドの店とディスカウントの店を持つ。前者では生産者と話し合って育てた「自然農法の米や野菜やその加工品」も多数扱い、手製のPOPで細かい表示もし、ライフスタイルの多様性に対処している。産直野菜をメインとしたレストランやカフェ、洋菓子店、生花店も持ち、コミュニケーションの場(レストランやカフェ)も確保し、多様な切り口で消費者を取り込のんでいる。社長の福島徹氏は「食の理想と現実」(幻冬舎、700円+税)といった著書も書いているくらいだ。・・・別項で2回紹介。

 (4)農産物直売所は、いま伸び盛りからやや転換期にさしかかっているが、繁盛店は規格外品の販売を中心とせず、例えば「みずほの村の市場」(茨城県つくば市)の場合、「今以上に良い品を出荷しなければ扱わない。出せば高く売るよう売価設定させる」とし、直売所のブランド化を進めている。調味料や菓子にしてもナショナルブランド品ゼロで、全国の珍しい物ばかりだ。主力の野菜コーナーには毎日7品もの、薄く味付けされた試食品が置かれている。裏の温室では30種ほどのランが売られている。また直売所のなかには、地方の一流ブランド農産品ばかり集め、全国に向けギフトとして発送しているところもある。

「 主婦の食のライフスタイル」の講演に応じます。パワーポイント既存。
































2011年11月19日土曜日

農産加工品の売価・値入れは?売価調査が必須!

    これは加工品の話ではないが、鹿児島の方から「直売所で初めて花を売ることになったが、売価設定をどうしたら良いか」と問われたとき、「原価÷0.50~0.40で良いのではないか」と答えたことがある。

  だが農家の方で、自家製品の原価を正確に把握している人は、10%もいないことが分かっている。分かっていながら上記のアドバイスをするのは矛盾である。6次産業化や農商工連携事業で、ジャムやジュース、チーズ、ソフトクリームなどの新製品を作る場合も、同じように原価が問われる。

  平均的な農産物の原価は、農水省や県農業試験場などの経営指標を参考にすれば、主材料の原価は出せる。経営指標について言えば、北海道(農業生産技術体系)、秋田、石川7、群馬、長野、岐阜、鳥取、広島、山口、熊本など多数の県で、細かい作物・畜種ごとの指標が出ている・・・農水省のものよりはるかに細分化した作物別の統計がある。ぜひ参考にして欲しい。

 だが、法人経営などにおいては商品別、作業別の労働時間の記録をとるようにしないと、正確な原価は出ない・・・と自覚すべきだ。合わせて、従事者全体の1時間労賃も確定しておく必要がある。

 
 加工の場合、「販売段階で利益を確保する」との考えでなく、「原価段階で生産に要した家族労力費、及び利益を確保する」と考えるべきである。経営主の所得も生産段階のものは原価に含める・・・そのうえで下記の粗利益を上乗せすべきだ。

  問題は粗利益額・率である。これを原価に乗せないと、販売が成立しない。粗利益=販売管理費+利益(通常は経常利益)・・・だが、販売管理費には、梱包費、輸送費、各種の中間手数料、販売の間接費、セールスマンや販売に要する人件費などが含まれる。

 仮に直売所で売る場合、委託手数料は加工食品や総菜では20~28%の例が多い(青果・花の12~20%と違い)。ネットで直接消費者に売る場合でも、大手のポータルサイトに出店するときは「出店料、販促費、カード手数料などに12%ほどかかり、粗利益率20%以下であれば損する」と言われている。

 
 HPで直接販売する場合、宅配便を使うので配送費のみですぐ15%ほども掛ってしまう。包材費や人件費まで考えれば、すぐ30%近くの粗利益が必要になる。このためもあり、配送費を別建てで示している例が多い。

 一般の食品加工業の指標では、売上高対比率で原価70.3%、粗利益29.7%、うち販売管理費26.4%、営業利益3.3%、経常利益4.1%という数値もある。

 製造と同時に多数の直営店で小売している例では、原価率61.8%、粗利益率38.2%、うち販売管理費34.4%、営業利益3.8%、経常利益3.5%となっている。

 29.7%の粗利益を達成するには返品や値引き(特売)まで考えると、平均33%ほどの値入率になることもある。値入率と最終の粗利益率は違うことを知って欲しい。また、価格競争型の商品(主にメーカー品)と個性の出しやすい品(中小工場や6次産業化の品)で、かなり差があることも知って欲しい。

 6次産業化や農商工連携品となると、規模が小さく生産性が低い。原価額が高いから、より「こだわり」を前面に出し、高い売価を設定しないと、並みの粗利益率は確保できない。

 小売の値入率を見ても・・・某チェーンの値入率を紹介すると、中小メーカーの多いコンニャクAは46.2%、コンヤクBは41.7%、豆腐Cは30.0%、ひき割り納豆Dは33.0%、いりごまEは33.7%、片栗粉Fは31.6%とかなり高い。これに反し、皆さんもよく知っているキッコーマン醤油Gは10.1%。QPドレシングHは20.7%、雪印バターIは16.7%、マル米みそJは17.8%と低い。

 大量に売れる売れない、回転が速いか遅いかなども、値入率や売価に関係することも知って欲しい。同時に直売をする場合と、小売や問屋に卸す場合とでは売価の概念が異なってくる。後者の場合は卸売価となるが、上記の小売段階の値入率や売価を考え設定しなければ、相手に受け入れられない。このため付加価値販売が実現しにくくなる。

 70円の原価のものを30%の値入率で売る場合・・・100-30=70  ÷100=0.70(70%の原価率の意味) 70円÷0.70=100円 が売価だが、小売段階でさらに30%の値入をして売る場合、100÷0.70=143円ほどになる。「これでは消費者に買ってもらえない」となると、生産者の粗利益率を15~20%に下げる必要が起きる。実際、販売を小売に任せれば経費が少なくなり、生産者の粗利益なり売価は下げて当然と言える。

 注意しなければならないのは、直接ネット販売するのと、卸や小売業者に任せるのと併用する場合、だれしもネットも見ているので、両者に差がありネット価格が安ければ、安いレベルに小売値を下げるよう要求される。 このため値入率や売価は、卸の場合下がってしまう。「一物一価」の原則が働くので、併用型の場合は売価を統一し、ポイントとか情報サービスとか別のプレミアで対応しなければならなくなる。

 以上から理解できると思うが、自己の粗利益率を高めるには、こだわりを持った個性力を高め、消費者なり小売り側だ「ぜひお宅の商品が欲しい」と言われるようにする必要がある。 

 最後に売価の設定だが、これは原価+販売管理費+利益として積み上げ計算が出来ない場合が多く(原価不明で)、直売所、スーパー、ネットで容量別の価格を徹底的に20~30例ほど調べ、横軸を容量、縦軸を価格とする分散表をパソコンのエクセルで作り、平均傾向線、上限傾向線、下限傾向線を引いてみて、自家の容量および品質・こだわりレベルを考え設定するのが妥当である。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料


2011年10月23日日曜日

埼玉農業大賞ベンチャー部門大賞に「桂ファーム」!(加筆)














  第2回埼玉農業大賞が20日に発表され、農業者の友人である栗原桂一代表の有限会社・桂ファーム(養鶏業-入間市)が、「農業ベンチャー部門」の大賞に輝いた。うれしい限りだ。
大賞は2部門に分かれ、「農業地域貢献部門」の大賞は本庄市の「ひびきの南部選果機利用組合」である。ちなみにベンチャー部門の優秀賞は有限・オオクマ園芸(三郷市)、高荷正行氏(深谷市)、地域貢献部門の優秀賞は北川辺米の会(加須市)、高橋博氏(さいたま市)である。11月19日午前11時から加須はなまき水上公園で表彰式が行われる。

  桂ファームは今年夏に、某農商工連携人材育成事業の際にも30人近くを案内し、栗原さんから経営の歴史と実態について話をしてもらった。HPも開かずの宣伝を嫌い、「隠れたベストセラー」ともいうべき存在だが、実際は付近の駿河大学との産学協同事業や各種の委員会にも関係、地元小学校の1~6年の某科目も担当するなど地域にも貢献し人脈は広い。

   また日に3冊の本を読んだ時代もある読書家で、すこぶる広い広い知識の持ち主でもある。これが「考える農業」「ゆとりある農業」を生み出す原動力になったように思う。

   目立ちにくい幹線道路から300mも入った奥まった立地で、常時25,000羽の養鶏を飼い、そのすぐ脇の施設で手選別し、生産タマゴの90%近くを農場付帯の直売所で売っている。品種は赤玉のポリスブラウンが90%、白玉のジュリアが10%。駐車台数は7台ほどだが、1台来て帰れば、次の1台が来るといった繁盛ぶりである。信用ある販売をすれば、口コミで広がり、多少立地が悪くとも客が来ることを教えてくれる。

              

   赤玉の直売価格はM以上が1kg480円、S以下が400円、B級品350円。白玉はM玉以上が350円、S以下が300円だ。総務庁「家計費調査」によれば、1kg平均の小売価格は269円であり、M玉は、その1.78倍になる。流通コストの削減分+単価の差があいまって、通常の25,000羽経営の平均販売額の数倍の売上高になる。選考委員の先生もその所得の高さにびっくりしたはずである。(高騰時の令和5年4月はM玉650円)。

   実際は、農水省の経営指標をアレンジした当方作成の規模別連続経営指標からすると、同規模=25,000羽の養鶏に比し粗収益は2.7倍にもなる。この数字は、生産者手取り価格をそのまま反映している。新聞報道によれば、H23年次の生産者手取り価格は中間流通経費も多いため1kg168円である。これに2.7倍を掛けると1kg454円になる。桂ファームの直売価格はこれに近いののになっている。いかに生産-直売の6次化効果が高いかを教えてくれる。

   安全で良い餌、良い環境で育て、美味なタマゴを生みだし、当方も購入して行きつけの喫茶店の馴染み客にもに数回食べてもらっているが、評判はすこぶる良い。「娘への土産にしたいから買ってきてくれ」のオーダーも何回かあったほど。

    すでに過日の「鶏卵」の項でも4点ほど書いたが、再度その理念を吟味すると7つほどの特徴が浮かびあがる。
①直売で売れる量だけ飼い、いたずらな規模拡大をしない・・・付加価値販売に沿った適正規模。
②鶏舎に余裕を持ち、オールイン・アウトの時間差を広げ、充分な消毒をする・・・鶏の安全の確保。
③1段か2段式のケージ(写真)でストレスがなく衛生的な快適環境を維持する・・・産卵環境の維持。
④現在のケージはさびず、鶏舎も20年以上持ち、無駄な投資をしない・・・償却費等の固定費削減。
⑤手選別で割れ玉も出ないが、鶏糞乾燥ハウス、鶏糞発酵機も備えその堆肥化・販売もしている・・・無駄な生産品を出さない。
⑥タマゴを1kg、2kg、4kgで売る場合、某飲料メーカーの空き箱をカットして使用・・・無駄な経費省く。
⑦ファークリフトを使った除糞やバケットローダーを使った鶏糞の切り返し(発酵のための)等の実施・・・省力すべきところは省力する。鶏糞の収入は

    だが、改めて長時間にわたり話を聞くと、一般常識と大いに異なる経営哲学を持っている。つまり、①シンプル、②スロー、③スモール、④ローカル、⑤アナログ、⑥アバウト、⑦ローテク、⑧スマイルで、「全体としては非効率と思われることをやって、最終的に効率が上がるもの」・・・と言う。
   当方も充分理解できていないが、
①養鶏一筋でかつ直販売一筋。かつムダな投資をしないシンプルな経営のほうが成果を達成しやすい。
②短期的な視野でなく長期的な視野を持ち、急がず考えながらスローに着実に最大の利益を追及する。
③質を高め、小さくても所得、利益の上がる経営を良しとする。
④都市近郊とか、遠隔地といた立地に見合った経営戦略で臨む。
⑤⑥物事を白黒と割りきらず、「あいまいさ」を残しながらアナログ的に、着実に基礎をしっかり築く。
⑦良い商品を作るには、労力を掛けるべきところは掛け、ハイテク(機械的管理)に走らない。
⑧最後には家族・従業員・顧客・地域が共に豊かになり、喜び合える経営になる。
・・・ということを、強調しているように思う。

 鶏糞の収入は売上全体の0.35%ほどにしかならないが、利用してくれる畑作農家のため、便利に散布できるようマニアスプレダーも購入し、無料貸し出ししている。軽4輪で運べるものだ。

   家族と社員5人、パート・アルバイト12人が1昨年までだが、昨年から息子さん、娘さん夫婦も加わり、社員7人、パート・アルバイト6人(実質3人)になった。従業者も充分確保されており、労力的にゆとりもあるため、畑を借りて新たな夢に挑戦しようとしている。24年の夏には、小麦の収穫の手伝いもさせてもらった。

 栗原さんの偉さは、「畑作は素人」として、その技術習得のため、栽培関係の塾に通ったことだ。「たえず謙虚であれ。そして急がず学び、ゆっくり実践し、目先の利益に走らず、信用を重んじ着実にお客を獲得していく」と、新事業の展開についても抱負を語っている。

故・栗原桂一氏を偲ぶ

 桂ファームの栗原社長は令和2年の8月に亡くなられた。6月だったか、電話に出られた栗原さんは「眼底の癌にかかり片目を取るはめになった。慣れればさほど不自由でもない」と元気な声が返ってきた。だが「一度会いに行こうか」と言うと、なぜか「今は止めておきたい」との回答。

 暮れにお歳暮の注文に行ったら訃報に初めて接し愕然とした。「農業界のエース逝く」である。私は昔、農業雑誌の記者であり、5年前までは農業コンサルタントだった。ために農業界の優秀な経営者にもたくさん会ってきたが、すぐれた実践者であり、同時に優れた実戦哲学を持った人はそう多くなかった。若いころは3冊の本を並べて交互に読んだ・・・と言うくらいの勉強家であった故に、広い視点に立った経営哲学が構築できたのだと思う。

 謙虚であり、私が50年も前に農業雑誌社「家の光」を独立する時、名刺がわりに書いた農業の本質論から説き起こし発展策を書いた「農業革命への提言」と言うタイプ打ちの小冊子を5年ほど前に渡したが、先の電話の際も「あれは大したものだ。今も大切に保管してあるよ」と言ってくれた。私の貴重な理解者が1人亡くなり淋しい限りである。




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