2012年6月26日火曜日

生産履歴も開示する直売所-中井農産センターの豊富な品揃えも参考になるフレッシュファーム(吉川市)



    6時産業化の優良モデルである中井農産センターの商品を実際に目に触れたくて、3時間ほど車を走らせ、埼玉最東部の吉川市保609-1のJAさいかつのフレシュファームを訪ねた。すでに1時半を回ってしまい、中井農産の米、小麦から枝分かれさせ多数のアイテムのごく一部しか見ることができなかった。

    まだ残っていたのは田舎寿司400g420円、ちらしいなり300g315円、小麦まんじゅう3ケ315円、草餅6ケ315円、こだわりあられ生地250g410円。米飯類は吉川産コシヒカリで美味を追求している。「こだわり農家」が中井農産のブランドといえ、どのパックにも統一したイラストともにロゴ的に描かれている。
   普通、弁当類だけで6~7種類、まんじゅう類で8種あるという。赤飯700g1,050円、1200g1,575円のPOPも張られていた。このほか季節によりのし餅(暮れ)、おはぎ、桜餅(3月)、柏餅(5月)等も置かれる。ここでは総てを扱っていないが、中井農産の枝分かれ品は、米粉、米粉パン、小麦粉、玄米粉、黒米生粉、赤米生粉、上新粉、黒米を使った食紅など際限なく開発されているのが素晴しい。
フレシュファームの場合、午後の品揃えはおせいじにも良いと言えず、欠品だらけで「機会損失が多い店」の一つである。だがキラリと光るものを多数持つ店である。たとえば、米コーナーの展示即売の玄米は5種に過ぎないが、吉川産の特殊栽培品のコシヒカリ=スーパー有機くん1kg400円も売られている。それだけでなく食味80以上の品のみ厳選して売ているとのこと。
米のすぐ脇には生産者ごとのトレサビリティ関連の「生産履歴台帳」が写真の通り整然と23人分置かれていた。これは当方としては初めてのことである。真の信頼を売りたい・・・との姿勢を大いに評価したい。また農業教育を目指した、ニンジンなどの栽培法を図解した展示物もある。


平成3年に埼玉消費直結型農業施設として建設され、年月が経っているが、冒頭の写真のようにガラス室型のモダンな建物である。売場面積は約46坪、レジ1台である。外で花卉も販売。従業員は正2人、パート4人ほどと聞いた。出荷者は32人ほど。営業時間は9:30~17:00、休日は珍しく金曜。






2012年6月15日金曜日

青年就農給付金年150万円に応募殺到!就農促進の目玉!

    45才以下の新規就農者に対し、国が年150万円を支援する制度が24年度から発足。新聞報道によれば、8,200人分の予算枠に対し、すでに12,000人の希望者がいるとされる。正式には「新規就農者確保事業」と言いの約152億円の予算となっている。この事業と合わせ「農業者育成支援事業」(約6億2千万)を通じ、若い就農者を毎年2万人に倍増させるのが狙い。申請締め切りが6月25日のはずで、希望者は申請を急ぐ必要がある。
  
    青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るため、就農前の2年以内の研修期間と、経営が不安定な就農直後の5年以内の所得を確保するための給付である。また農業法人への就農を促進するため、法人が新規就農者に対し行う実践研修について、最長2年間に要する経費を支援するもの。

    前者のばあい2年の研修期間+就農後5年間=最長計7年間の給付が受けられ、最大計1,050万円の支援となる。就農後すぐに黒字化しにくいのが農業の現状とすれば、5年間の支援は就農定着の強力な支援となる。
    問題があるととすれば、研修期間において、先進農家・法人においてもマネージメント(経営管理)やマーケティング(販売管理)の面で弱さを持っており、これらについては「農業者育成支援事業」で補っていくようである・・・プロの教育機関に任せ、これを支援。
  
    新聞の記事によれば、 平成22年に例を取ると新規就農者は54,570人、うち13,150人が39才以下の就農者というから、若い人の就農は多くはない。この少なさを打破するための施策であり、。農水省としても「予算に限りはあるが、受給要件を満たす人には可能な限り給付する」としている。
   では、受給要件とは何か・・・次のすべて満たす必要がある(農水省HP「青年就農給付金」参照。これに申請書の形式も出ている)。
Ⅰ.就農準備型  事業主体は都道府県
1.就農予定時の年齢が原則45才未満である。農業経営者となることについての、強い意志を
  持っている。
2.独立自営就農または雇用就農を目指すこと。
3.研修計画が以下の基準に合致していること。
(1)都道府県が認めた研修機関・先進農家・先進農業法人で、おおむね1年以上(1,200時間以上)研修する・・・すでに研修を開始している者であっても、残りの研修期間が1年以上の場合は給付対象となる。
(2)先進農家・先進農業法人が、その技術力、経営力等から見て、研修先として適正であること。
(3)先進農家・先進農業法人の経営主が給付対象者の親族(三親等以内の者)でないこと。
(4)先進農家・先進農業法人と過去に雇用契約(短期のパート・アルバイトは除く)を結んでないこと。
4.常勤の雇用契約を締結していないこと。
5.生活保護、求職者支援制度など、生活費を支給する国の他の事業と重複受給でないこと。
また次の場合は、給付金の返還対象となる。
1.適切な研修を行っていない場合・・・事業実施主体が、研修計画に基づく必要な技術を習得できないと判断したとき。
2.研修終了後、1年以内に原則45才未満で独立・自衛就農または雇用就農しなかった場合。
3.給付期間の1.5倍の期間(最低2年間)、独立・自営就農または雇用就農をしない場合。
Ⅱ.経営開始型 事業主体は市町村
1.就農予定時の年齢が原則45才未満である。農業経営者となることについての、強い意志を
持っている。
2.独立・自営就農であること。
(1)自から作成した営農開始計画を持ち、主体的に農業経営を行っている状態をさす。
(2)具体的には①農地の所有権または利用権を有し、原則として給付対象者が所有または借りていること。
(3)生産物や生産資材等を給付対象者の名義で出荷・取引する。
(4)売上げや経費を自身の名義の通帳や帳簿で管理する。
3.独立・自営就農5年後は農業で生計が成り立つ計画である。
4.市町村の作成する人・農地プランに位置付けられるか、位置づけが確実なこと。
5.生活保護、生活費支給の国の他の事業と重複受給していないこと。
次の場合は給付停止となる。
1.給付金を除いた本人の前年の所得が250万円以上の場合。
2.経営計画実行の努力を怠り、適切な就農をおこなっていないと市町村が判断した場合。


      近藤・支援内容
  該当時間
1.農業のマネージメント講座
3~7時間
2.農産物のマーケティング講座
3~7時間
3.農産物直売所の新たな発展策講座
3時間
4.直売所・顧客視点の販売促進講座
 3時間
5.主婦の食のライフスタイル講座
 3時間
6.直売所顧客調査(200~300人)
2日16時間
7.直売所の総合診断
2日10時間
8.農業経営総合診断
2日10時間
<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
経営診断20万円(交通・宿泊費別)
報告日は無料とし、交通・宿泊費別
     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料




2012年5月16日水曜日

農業経営の目標設定は売上高?経常利益?所得?

    農業者の皆さん!5年後、10年後の経営改善計画を立案する場合、①粗収益、②売上高、③営業利益、④経常利益、⑤家族労働報酬・・・どれを選らんで数値目標の基礎とするか。これには家族中心の経営、従業員も多数いる経営・・・といった体質によっても違ってくるかもしれない。
 ところで、①~⑤について個々の内容を吟味したい。
1.粗収益=生産品の売上+副産物の売上+自家消費+生産品に関係する補助金・交付金
2.売上高=生産品の売上+副産物売上
3.営業利益=粗収益-生産・販売経費
4.経常利益=営業利益+営業外収入(利子や生産品と関係ない保険等の収入)ー営業外支出
=税引き前利益
5.家族労働報酬=専従者報酬(法人では家族役員報酬等)+経営主報酬 
  
  ざっとこんなことになる。1や2は、あくまで入ってくる金で、利益とか家族労働報酬の高さとは関係ない。規模拡大すれば、普通なら売上高や粗収益は上がる。しかし、規模拡大のみ急ぎ、借金まみれ、赤字まみれになっている経営は少なくない。酪農経営で110頭まで増やしたが、草地が劣悪のため、餌不足で年間1頭の乳の量が7,500kg(標準9,000kg)で、8,000万円以上の借金のため、返済できず競売にかかった例も見てきた。

 
 3や4の営業利益や経常利益は目標値になるか?家族労働報酬を高くすれば、シーソーゲームのように、一般に営業利益や経常利益は減る。実際、節税対策のため、家族個々の報酬を増やし、営業利益や経常利益を抑える例は多い。5の場合の家族労働報酬もまた、3や4とのシーソーゲームで低くなったり高くなったりする。

  経営の5ケ年、10ケ年の中・長期計画を立てる場合、それが期待や希望に満ち、楽しいものでなければ、「おっくう」なものになる。「10年後には子供も2人になり、このくらいの所得が欲しい。
借金が楽に返せ、投資も充分にできるだけの余裕を確保したい」・・・こんな前提で、経営計画が立てられることがベターである。

  とするならば、1~5の単独型経営計画は総てバツである。そして家族所得や経常利益を組みこんだ4+5型のものであるべきだ。個人経営の場合、経常利益は差引経営者所得に組みこまれている。これに専従者所得(給与)を加えれば、法人経営の家族役員報酬+経常利益に類似してくる。法人と個人の別なく収益力の比較も可能になる。また(4+5の額)÷(粗収益対比の4+5の百分率)×100=目標粗利益額となり、収入全体の目標も簡単に計算できる。

 2、3、4,5年後の粗収益の目標といっても、その前提として、目標労働報酬、目標経常利益というものが計算に組み込まれていなければ、将来の発展に結びつかない。適正な労働報酬は家庭のうるおいを保証し、経常利益は返済余地や投資の余地を広げ、着実な発展を保証してくれる。

 できれば、家族労働報酬だけでなく、雇用者の労働報酬も含めて目標に折り込むのが正解である。さもないと、人的面で行きずまる・・・新規の就農者不足も報酬の低さに起因しているからだ。

  今回、以上の点に触れたのも、個人経営には経営主所得を、法人経営には営業利益を採用し、
5ケ年の実績評価をする・・・といった同質性のない要素で評価する場面に出会ったからである。
また我々コンサルタント仲間においても、農業者に個人、法人の決算書例を示し、丁寧に数字の意味を説明したうえで、経営計画立案を指導していただく必要がある・・・と感じるからだ。

  経営計画を立案する場合、年々の変化は売上高=栽培ないし飼育規模×出荷量×単価になる。そして単価はこだわりの程度(付加価値)や販売チャネルで異なるだけではなく、①対象とのる生産物の価格推移・・・回帰分析による推定、②価格変動が激しい場合はそのリスクを折り込む必要がある。また経費面では①家族及び雇用者の所得=労働報酬の向上を見る、②主たる資材の値上りまで組む・・・といった配慮をして、初めて本物の経営計画になる。ただ過去の延長であってはいけない。

 
 回帰分析(=最小ニ乗法)による傾向値の計算は、難しいものではない。関数を使うのでなく、エクセル表で視覚でとらえながら計算する方法もある。必要な方には無料で計算方法を伝授する。
  ところで、部門別の所得率(法人であれば家族労働報酬+経常利益)のメドだが、やや古いH19
年の統計では、償却費を含んだ所得率レベルは、稲作全国38.9%、柑橘34.0%、リンゴ37.4%、露地野菜全国29.6%、施設野菜35.2%、施設花き30.3%、茶30.2%、キノコ25.6%、酪農全国23.4%、肉牛全国10.4%、養豚11.2%、採卵鶏9.3%、ブロイラー9.4%である。


 


2012年5月15日火曜日

大型6次産業化の優等生-モクモク手づくりファーム!

 やや前になるが、4月26日にテレビ東京で放送された村上龍氏進行の「かんぶりあ宮殿」=三重県伊賀市の「モクモク手作りファーム」の訪問記である。見られた方も多いと思う。全国直売所研究会から事前連絡を受け、当方も一生懸命メモを取った1人である。見なかった方からのリクエストもあり、一部間違いもあるかもしれないが、下記に紹介してみる・・・

「2人のサムライ修(オサム)の農業革命」といったサブタイトルだった。社長が木村修さん(60才)、専務が吉田修さん(61才)で、2人は同じ農協で働く職員だった。木村さんが販売、吉田さんは獣医で営農指導? ともあれ、夫婦よりも長く30年間も一緒に持ち味を発揮してきた。性格も異なり木村さんは楽天派、吉田さんは慎重派で、モクモクを立ち上げるとき、吉田さんは子供3人、家も新築したばかりで慎重にならざるを得なかったようだ。

今日、モクモクは年商48億円、年間来場者50万人、視察受入れ320件(5,000人)、ネイチャークラブ会員4万2千世帯・・・HPの公表数字で、実際に放映の際にも紹介された。

1.価格決定権を持ちたい

農協当時、物を売るためスーパーを訪ねると安い輸入品がズラリと並び、「安くしろ・安くしろ」の要求ばかり。ところが、デパート等のギフトコーナーに行くと、ハムなどの贈答品は1万円で売られている。生産者手取り価格は、この1/10ほどと低い。

「メーカーや小売に価額決定権を握られ、農業者は下請けにすぎない。これではいけない。価格決定権を持たねば」と2人とも退職し、呼びかけ、仲間16人で1人200万円ずつ出資し、農事組合法人を設立、24年前に現在の「手づくり体験A館」の場所に工房を立ち上げ直売を始めた。

「あのバカ者たちに、何ができる」と当初はあざ笑われた。実際、山のなかの立地のため、お客が来てくれない。赤字続き。「ただ普通のものを作っていては評判にならない。味と品質にこだわりが必要」と反省。ハムも伝統加工法の自然熟成にし、ウインナーの皮も高騰しているものの天然の羊腸を使った。売れるようになり、地元養豚も1万頭出荷までに増え豊かになった。

次々と野菜の直売所、パン工房と拡大してきた。いまではレストラン、遊園地、宿泊施設、体験農場・・・ほか約26ほどの施設があり、その規模は東京ドームの3倍と云う。直売所「野菜塾」は100軒の農家が出荷しているが、あまり安くせず100円以上で売るのが原則。パン工房では国産の小麦を使用。酵母入り生ビールも地元産の大麦を使用。

2.土着性のあるブランド作り

 商品作りのコンセプトは生活圏の人に愛着を持ってもらえるための「土着性の強いブランド」である。「国際競争が増すなか、生き残るには地元顧客に愛されればならない」ということ。

 成功の秘訣は、一つに話題性・・・「バレンタインデーに米こめウィンナーを」と新製品を提案したり、その後も渦巻き状の「クルクルウインナー(全長160cm)」「スープが飛び出す生ウインナー」など、毎年新製品を出し続けてきた。

 地域と一体になるには、体験してもらう必要がある。イチゴ狩り体験教室をスタートさせ、子供さんなどに「イチゴは野菜ですよ。木になるのが果物」と農育の場面も放映された。「食べ放題はいけません。沢山採って沢山たべにゃーあかんということになると、採り過ぎて捨てることがある。もったいない」との弁もあった。

手作りウインナーの体験教室は1年先まで予約で一杯という。「同じ腸でも羊を使ったのがウインナー、豚がフランクフルト、牛がボロニアン」とここでも知ってもらう努力が盛んにされている。レンコンの収穫体験もあり、これらの魅力が熱烈フアン42,000人を生み出した。「消費者は仲間というスタンスが大切だ」と指摘していた。

また「大切なのは伝えること。知ってもらうこと」で、体験教室だけでなく、通信販売では、カタログに商品作りの失敗事例も沢山のせ、注目度を高めてい。現在、通販は全販売髙の30%と高い。

3.視察者の地元を支援

 立派なのは、視察に来た農業者の現地に出向き、奉仕的に農業や6次化の支援をしていること。沖縄の徳之島では2人にコーヒー栽培を奨励し、自家焙煎し、地元にコーヒーショップも作って売るよう指導している。

「おせっかいが好きなんですよ」と2人の修さんは笑い合う。各地の農業の見直しを手伝い、自らの手で地域活性化できるよう「おせっかい」を焼くとは、実に立派である。

 この後出て来たのが、モクモクへの新規就職者の紹介だった。中央や早稲田大学の法学部卒、東大や名古屋大学農学部卒、中央大学経済学部卒・・・とそうそうたる学歴が披露された。

 やはり、モクモクは生産―加工-販売の6次産業を多要素で達成、待遇も良く、楽しく、明るい未来型の農業経営をすでに実現しているからだろう。昔、モクモクの高い給与の紹介記事を見たことがある。

「各県にモクモクのような大型のモデルが1つ?できれば、ずいぶん地域活性化が進むことになるだろう」との村上龍さんの言葉が印象的だった。しかし人材が必要である。モクモクが育てた人材が、全国的に散ればこれも夢でない。

2012年4月13日金曜日

直売所にベビーリーフがありますか!新サラダ素材!

葉菜類の複数の「若い葉」(=ベビーリーフ)をミックスして、商品化しているのがベビーリーフである。4年ほど前に某農場を訪ねたいたさい、再三お土産にもらった。ドレッシングを掛け簡単に食べられ、そのシャキシャキした歯ごたえが魅力で、現在成長株の商品だ。直売所の扱いはまだ少ない。私自身、そのなんたるかを理解してこなかった。

 今回、栽培の実態を埼玉県所沢市のグリングリン・カラーズ合同会社(CEO福井航 電04-2944-1910)で見せていただいた。ハウスの土壌の上にシートが引かれ、突っかけに履き替えて入りようになっており、衛生管理に留意している。肥料も液肥のみ。外気や土壌に触れず、病気や害虫が発生しない環境。

 このため化学農薬を全く使わないそうだ。「安全保証」の品が生産されている・・・となると生食しても安心ということになり、レストランや一般家庭の消費が急増している。

 ハウスの細かい区画ごとにそれぞれ別種のベビーリーフが整然と植えられている。その数はグリーンオーク、ターサイ、デトロイト、ビノグリーン、ルッコラ、レッドオーク、レッドマスタード、ロロロッサ、レッドサラダボール、赤サラダからし菜、晩生ミズナ、イタリアンレッドの12種類にものぼる。

 ターサイ、ルッコラ、ミズナ以外は、皆さんもあまり馴染みがないはず。カルシュウム、カリュウム、鉄などのミネラルのほか、βカロチン、ビタミンCなどが豊富に含まれているそうだ。健康食である。

 ハウスの高床に無数の播種用の穴があり、これに撒いて水耕法で育てる。間引きしながら(これも売れる)10cmほどに育て出荷するようだが、種まきから30日とかからないと聞いている。高回転農業であり収益性は高い。当経営でも大胆な拡大を目指しているようだ。

 福井氏は他業界からこの世界に1年前に参入した、若手のベンチャーである。近代的な経営感覚を持ち、そのシャープさに声援を送りたい1人である。
 

 

2012年3月29日木曜日

イトーヨーカ堂「顔が見える」と直売所の安全対応!

    イトーヨーカドーの「顔の見える野菜」シリーズを見ている方も多いはず。生産者の似顔絵が描かれ、QRコードを検索すれば生産履歴も詳しく分かる。それだけでなく、シリーズ品は安全・安心重視の品で、次の5つの約束を守った商品である。

①国産の農産物に限定して取扱います。
②誰がどのようにつくった野菜かホームページで公開します。
③いい野菜はいい畑から。適地適作に取り組む生産者を厳選します。
④農薬は「平均的な使用回数の半分以下」を目標に減らします。
⑤信頼性を高めるため、第3者によるチェックを受けます。

   丸5年前、NPO「食の安全・安心支援機構」の理事をしていた時に、「トレーサビリティの課題と対応」というテーマをまとめるため何店かで「顔シリーズ」の調査もした。顔の数は3~18とバラツキがあった。久しぶりにヨーカドー某店で観察したが、「さすがヨーカドー」と言える。次の30アイテムにも増えていた。

  
   果物の不知火、トマト、ミニトマト(2)、フルーツトマト、ピーマン、パブリカ、ナス、キャベツ、レタス、サンチュ、スナップエンドウ、ミズナ、ホウレンソウ、コマツナ、ニラ、ニンニク、タマネギ、メークイン、男爵、新ジャガ、サツマイモ、ぶなシメジ、本シメジ(2)、エリンギ、マイタケ(2)、エノキ、黒大豆(乾燥品)。

   <挿入>ところで、この「顔の見える野菜・果物」を推進する「株・セブンファーム」は全国約15産地だが、J-GAPの認証を受けており、トレーサに先立つ安全生産管理適合基準を満たしており、24年7月18日の「GAP Japan 2012」においてGAP普及大賞を授与された。また今後3年を目標に50産地まで増やすという。


    いずれにしても、直売所は「顔が見える販売」としているが、実際は「名前が全品分かる販売」であって、どういう栽培法、こだわりの商品かは見えない。安全を保証する科学的根拠を提供していない場合がほとんどである。これで良いはずがない。

     昨年4月号の雑誌「農業経営者」では、千葉県の有力直売所「かしわで」で発覚した禁止農薬問題について、「かしわで」の代表者・染谷茂氏と昆吉則編集長の対談記事が出っている。いまからでも購入し読むに値する。
    内容を要約すると・・・平成10年12月に地元保健所の調査で、シュンギクから基準値を超える殺虫剤メチダチオンが検出された。自主検査をしたら他の生産者のシュンギクからも登録外の農薬が検出された。役所から商品を回収し、事故の内容を店内に告示するよういわれた。このため10日ほど営業を自粛した。出荷した本人には出荷停止の処分を果した。

   問題の本質は・・・直売所に出す人は少量多品種栽培をしていてドリフト(飛散)が起きやすい。また年配の人も多く、農薬万能時代を経験し、農薬の濃度などについて慎重さを欠いている。現在の農薬取締法の知識を欠き、登録の取れている農薬か、希釈倍率は、収穫の何日前までに撒くべきか、記録をつけるといったことを充分に指導すべき。

   改善策は・・・その後、全農家を集め研修会を開き、生産履歴を提出させ、不十分なものは弾くようにした。昆編集長は「規模の大小や年齢に関係なく、おばあちゃんの生産者もまた経営者。経営者ならだれもGAP(グッド・あぐりカルチャー・プラクティス=良い農業の規範)のような厳しいハードルを設け、努力すべきで、安易な基準で妥協してはいけない」と述べている。

    さて皆さんはどうか?どうも、安全について基準を設け挑戦している直売所は少ないように思う。大量生産-市場出荷ではトレーサビリティがかなり進んでいる。また中国なども、輸出に重点を置く場合、GAPもどんどん取り入れられている。昆編集長は「日本産品の安全神話は揺らぎつつある」とさえ指摘している。急ぎ、直売所関係者は遅れを取り戻す必要がある。

 
    当方の直売所の3ケ所の顧客調査でも、安心の支持率は29.4%と比較的高いものの、「安全」の支持率は平均5.3%に過ぎない。あまり「安心・安全」が信じられていないふしがある。

2012年1月2日月曜日

農産物直売所の接客-その基本は何か?



直売所は生産者と消費者の直接の出会いの場である。5Sを含む新5S(後記)に沿った、実りある出会いの場にし、再度来店してくれる「満足」を与えることが、接客の基本である。

 接客の基本を確立するには、これに先立つ教育が肝心だと思う。つまり接客マナーはもちろんだが、商品知識、補充・陳列、売価設定、発注、不良品チェック等も重要な要素である。新しい商品が入れば、店長が説明するなり、昼食事に試食して見ることが接客の第1歩である。また、朝礼前に、レジ要員についても、店全体を見て回り、陳列やPOPの乱れも直しながら、何がどこにあるかを知ることが第2歩である。

 そして第3歩が実際の下記の新5S=接客姿勢である。これは形ではなく、「最大のおもてなし心」が肝心で、店長が率先して「顧客満足度を高める努力・姿勢を持つ」ことが必要になる。
①誠実・・・鮮度・品質、価格設定、接客等における誠実な対応。
②正確・・・こだわりを正確に伝える。正確にレジ精算。要望・苦情を正確に処理。
③清潔・・・5S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(従業員の教育)の徹底。
④安全(セフティ)・・・食の安全。駐車場・売り場内における安全の確保。
⑤スマイル・・・いつも笑顔で顧客を迎え、顧客が笑顔で帰れる店に。

 第4歩が、正しい接客用語である。接客用語は相手の目を見て、聞こえるように行わなければならない。
①いらっしゃいませ
②お待たせいたしました
③ありがとうございます
④何かお探しでしょうか
⑤依頼には-かしこまりました
⑥苦情には-申し訳ございません
⑦お願いや恐縮したときー恐れいります
⑧客の前を横切るとき-失礼いたします
⑨客を待たせるとき-少々お待ちちください

 今のスーパーやホームセンターでは、ほとんどの店で、「何々はどこにありますか」と尋ねると、商品の現場まで案内するか、「何番の表示板の列の奥です」と教えてくれる。
 レジが終わると、手を十字に合わせ「ありがとうございました」と会釈する。
 単品購入の場合、サカー台に行かなくてもレジ台で買い物袋に詰めてくれる。
 品物の性質にしたがい、選り分けながら小袋に詰める。

 至れり尽くせりのことを、ごく自然に行っている。総てのことを直売所が取り入れる必要はないが、「おもてなし」の心が充分習慣化する必要がある。