2012年3月29日木曜日

イトーヨーカ堂「顔が見える」と直売所の安全対応!

    イトーヨーカドーの「顔の見える野菜」シリーズを見ている方も多いはず。生産者の似顔絵が描かれ、QRコードを検索すれば生産履歴も詳しく分かる。それだけでなく、シリーズ品は安全・安心重視の品で、次の5つの約束を守った商品である。

①国産の農産物に限定して取扱います。
②誰がどのようにつくった野菜かホームページで公開します。
③いい野菜はいい畑から。適地適作に取り組む生産者を厳選します。
④農薬は「平均的な使用回数の半分以下」を目標に減らします。
⑤信頼性を高めるため、第3者によるチェックを受けます。

   丸5年前、NPO「食の安全・安心支援機構」の理事をしていた時に、「トレーサビリティの課題と対応」というテーマをまとめるため何店かで「顔シリーズ」の調査もした。顔の数は3~18とバラツキがあった。久しぶりにヨーカドー某店で観察したが、「さすがヨーカドー」と言える。次の30アイテムにも増えていた。

  
   果物の不知火、トマト、ミニトマト(2)、フルーツトマト、ピーマン、パブリカ、ナス、キャベツ、レタス、サンチュ、スナップエンドウ、ミズナ、ホウレンソウ、コマツナ、ニラ、ニンニク、タマネギ、メークイン、男爵、新ジャガ、サツマイモ、ぶなシメジ、本シメジ(2)、エリンギ、マイタケ(2)、エノキ、黒大豆(乾燥品)。

   <挿入>ところで、この「顔の見える野菜・果物」を推進する「株・セブンファーム」は全国約15産地だが、J-GAPの認証を受けており、トレーサに先立つ安全生産管理適合基準を満たしており、24年7月18日の「GAP Japan 2012」においてGAP普及大賞を授与された。また今後3年を目標に50産地まで増やすという。


    いずれにしても、直売所は「顔が見える販売」としているが、実際は「名前が全品分かる販売」であって、どういう栽培法、こだわりの商品かは見えない。安全を保証する科学的根拠を提供していない場合がほとんどである。これで良いはずがない。

     昨年4月号の雑誌「農業経営者」では、千葉県の有力直売所「かしわで」で発覚した禁止農薬問題について、「かしわで」の代表者・染谷茂氏と昆吉則編集長の対談記事が出っている。いまからでも購入し読むに値する。
    内容を要約すると・・・平成10年12月に地元保健所の調査で、シュンギクから基準値を超える殺虫剤メチダチオンが検出された。自主検査をしたら他の生産者のシュンギクからも登録外の農薬が検出された。役所から商品を回収し、事故の内容を店内に告示するよういわれた。このため10日ほど営業を自粛した。出荷した本人には出荷停止の処分を果した。

   問題の本質は・・・直売所に出す人は少量多品種栽培をしていてドリフト(飛散)が起きやすい。また年配の人も多く、農薬万能時代を経験し、農薬の濃度などについて慎重さを欠いている。現在の農薬取締法の知識を欠き、登録の取れている農薬か、希釈倍率は、収穫の何日前までに撒くべきか、記録をつけるといったことを充分に指導すべき。

   改善策は・・・その後、全農家を集め研修会を開き、生産履歴を提出させ、不十分なものは弾くようにした。昆編集長は「規模の大小や年齢に関係なく、おばあちゃんの生産者もまた経営者。経営者ならだれもGAP(グッド・あぐりカルチャー・プラクティス=良い農業の規範)のような厳しいハードルを設け、努力すべきで、安易な基準で妥協してはいけない」と述べている。

    さて皆さんはどうか?どうも、安全について基準を設け挑戦している直売所は少ないように思う。大量生産-市場出荷ではトレーサビリティがかなり進んでいる。また中国なども、輸出に重点を置く場合、GAPもどんどん取り入れられている。昆編集長は「日本産品の安全神話は揺らぎつつある」とさえ指摘している。急ぎ、直売所関係者は遅れを取り戻す必要がある。

 
    当方の直売所の3ケ所の顧客調査でも、安心の支持率は29.4%と比較的高いものの、「安全」の支持率は平均5.3%に過ぎない。あまり「安心・安全」が信じられていないふしがある。

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