2013年12月27日金曜日

青梅の林業に生きる-木工やアロマ対応で林業経営に活力を!

1.無価値の間伐材の利用から

 最近、仕事の関係で、東京都下青梅市の成木を訪ね、若き林業者であるの「環境林業 成木の森」の中島大輔さん(32歳)に2度ほどお会いした。お父さんと100haの林地の管理に当たっている。
 
当方も8年前に「成木川の早太郎」という間伐材をめぐるささやかな環境小説を書いた(静岡県教育委員会の推薦図書になる)。その題材を得た場だけに、計7時間ほどと話が弾んだ。 
 
 小説でも「日本の林業は出口の見えないトンネル」と表現したが、現場にも名栗川に抜けるトンネルがあり。これに引っかけた表現である。そのトンネルの手前に西成木のバス停があるが(青梅方面からのバスの終着駅)、近くに中島さんの自宅がある。それだけでなく、バス停すぐ前には、中島さんが昔の借家跡に建てたという15坪ほど(一部2階あり)のロッジ風集会施設もある。これを拠点にいろいろの催しを開き、林業の活性化に寄与した・・・というのが中島さんの願い(写真1)。 

 
 写真①集会所用の建物
 
いま、どこの村や大字と名乗る地域でも、中島さんのような専業の林業家は1人とか2人しかいない。専業林業者や林業組合といっても、あくまで国や県の補助金で、森林を維持・管理するのが主目的。「林業本来の姿である材木売って儲けるとか、経営を維持できる状況にはない」という。 

中島さん自身も後継者のため、サラリーマン生活を投げ打って林業者になったものの、100haの森林を相手にしても、サラリーマン時代の所得に遠く及ばないそうだ。 

日本の国土の66%は森林である。資源のない日本にあって、水や森林は貴重な資源のはず。だがそうなっていない。「成木(せいぼく)の立木そのものは極めて安い。しかし、急峻な山地から運びだすとすれば、林道の不備もあって労力がかかる。市場で丸太として売れば実質赤字になる。このため、下草刈り、枝落とし、間伐、林道整備も補助金なくしてはやれない」。儲からないから人も雇用できず、林地はいたるところで荒れ放題。これでは、豊富な雨水も地中に残留することなく一気に流れ、土砂災害や洪水も起きる。 

台風のたびに、林地に放棄された間伐材がダムに流れ、流木の山を築いている写真を見た方も多いはず。林地の保水力がなくなれば、一気に流れくだり、ダムが干しあがる現象も多発する。多くの生活者は、森林と距離を持つため、この事実に無関心である。 

中島さんは、「政府も補助金で、目先の手当てをするだけで、抜本的に林業経営が回っていくような対策を講じていない。私としては、価値のない間伐材を使い、大工さんと協力し机、椅子、置物、アクセサリーなどの木工加工品の開発も始めている。また森林浴といわれるが、樹液などから癒しの基となる芳香(油精)を取り出し、アロマ・セラピーに通じるよう香水化しようと協力事業者に商品化のお願いもしている。こうしたことができ、ささやかながら収入があがるとなれば、兼業の林業者にしても、林地の整備もやれるようになる」と語る。

   写真②足を開くことで、机の面積を2~3倍に
写真③ 2人掛けの椅子。1人掛けもあり。           

 木工については、写真②のような開閉式の支柱で、テーブル面積が2倍、3倍になる商品、③のような2人掛けや1人掛けの椅子、④置物、⑤自然木を使った欄干や輪切りにしたペンダント・・・といった1点ものも作っている。まだ、いくらに売ってよいか迷いがあるようだが、写真を見て「このくらいなら買いたい」と言っていただければ、大変助かるはず。

④自然木を生かした置物 

 当方も6次産業化のお手伝いのなかで、①林地に生える榊(さかき)を畑地で増やし、ブランド化して売る、②林地にはえるカエデのシロップを集め、これをミツバチに食わせ、機能性の高いハチミツにする・・・などの話にも接してきた。 

 日本には広大な林地があり、間伐材やその枝葉という資源は無限である。政府も、こうした木工品やアロマ・セラピーに沿った商品、メイプルシロップ関連品、徳島県の葉っぱビジネス、アケビ等ほかの枝ものビジネス(直場所の顧客調査で「枝ものがもっと欲しい」との華道のお師匠さん2人からの要望を受けたこともある)・・・等々といった、林業周辺のビジネスの商品開発、マーケティングにも手を貸してゆくべきである。まず補助金ありきでなく、補助金が将来「1倍返しくらい」にはなって返ってくる緻密な戦略が必要だ。 

 間伐材を使ったバイオマス発電の実験も、各地で補助金を前提で行われたが、どこも成功例を聞いていない。当ブログでは一度、ガス化の提案をしたが、都市ガスに比し熱カロリーが低い欠点がある。都市ガスとミックスして価値が出るようだ。ガス会社に売電同様に、売ガスできる制度を作れば、これまた普及する可能性は高い。発電よりシステムが簡単と思われるからだ。売ガスで林業地帯が潤えば、森林管理も進む。 

2.急速に失われる世界の森林=1時間に東京ドーム127個分

 中島さんとも同意見だが、「やがて世界の森林が枯渇し、日本の林業がうらやましがられる日が来るはず」だ。だがそこまで待っているうちに、林業地区に後継者も従業者もまったくいなくなってしまう。そうなってからでは遅いのだ。本来の林業についても簡単に触れておきたい・・・

 ネット情報によれば、2000年から2010年までに、世界で減少した森林面積は年平均約521万haになる。1時間に東京ドーム約127個分に相当。減少の著しいのは、アフリカ、南米で、中国や欧州は植林も盛んで増えている。しかし、中国の場合、現状の供給は需要に追いつかず木材価格は高騰している。 

 残念なことに、中国はスギ、ヒノキを使ってこなかったため、木材の基準に、スギ、ヒノキが入っていないため、日本から輸出ができない。また、テレビで見て分かるように、全体的に鉄筋の集合住宅が普通という事情もあって、すぐには、日本からの輸入が進まない。 

 最近、高校時代の友人と話したことだが・・・中国であれ、その他のアジアの諸国であれ、日本のスギ、ヒノキが欲しい国があれば、政府が仲介し、立木で売り、相手国の労力で切り出してもらい、その国に持ち帰って利用してもらう。労働者の仮設住宅はこちらで準備、日本の各地を回る・・・こんなことができないものか。 

 スギ、ヒノキについては、未乾燥ではゆがみが生じ乾燥を要する。また乾燥してもなおかつやわらかい欠点がある。乾燥にコストもかかり、圧縮や硬さを生む樹脂加工などにもコストがかかる。これらへの対策も国を挙げて取り組み、ぜひ林業資源大国を生かすべきで、これまた成長戦略の1つになるはずだ。

2013年11月22日金曜日

「セレサモス」直売所(川崎市黒川)は閉店まで活気を持続!

   神奈川県川崎市麻生区黒川172のファーマーズマーケット「セレサモス」(JAセレサ川崎農協)は、友人コンサルタントが過去に「その良さ」を調査してくれ、一度は訪ねたいと思っていた直売所だ。今回、近くの明大農学部黒川分校の収穫祭を見にいったついでに寄った。明大農場でもこの日、セレスモアの出張「直売所」が開設されていた。
 
 
    上段の写真のとおり、アーチ状の建物でモダンな外観・・・ここに新鮮さがある。売り場面積は82坪ほど。レジ4台。年4億円前後ではないか。丘陵地帯のわずかな平坦地を利用したためか駐車場は60台とやや少なめだが、前面がワイドなガラスで仕切られ、店内は広々と感じる。

   ホームページで「病害虫防除記録などの生産履歴を記録し、指導管理のもと農畜産物を作っています。だから、新鮮で安全・安心を畑から食卓にお届けできます」と、明確に安全性を訴えている。
 
   16時過ぎに訪ねたが、地元生産者のキャベツ、ピーマン、コマツナ、ネギ、カブ、カリフラワーなど最低の購入に耐える品揃えがある。そして従業員全員、補充、陳列手直し、鮮度のチェックなどキビキビ作業している。
 
    閉店まで売り場が生きており、「売り切れご免」の風潮が強い直売所とは違う。職員の方に聞くと、「携帯電話で売れ行き状況が送信され、各人自主的に補充をしたり、店から午後便の出荷を促がすこともする」とのこと。最寄りの黒川駅などにスーパーがなく、付近に2店のコンビニがあるのみ。品揃えを基本に「頼りになる直売所」を目指してきたように思う。
 
    この日、和牛・ももスライス100g548円とか、切り落とし478円もあり、豚肉、鶏肉だけでなく牛肉の充実もしていると推定した。豆乳プリンや、リンゴ・パンプキン・アップルのパイ(380~398円)もある。野菜の珍しいものも、聖護院カブ200円、ベニムラサキ・カブ150円、辛味ダイコン120円、ダイコン抜き菜100円もあった。
 
    友人の7月時の報告では、ナスでけでもサラダ紫、千両二号、米ナス、ひ翠もあり、空心菜、モロヘイヤ、グレンベリー、ブラックチェリーtマト、ウコン、サンチュ、ソウメンカボチャなどもあった。
 
   
    花は店内に30程の切花の水槽を持つだけでなく、入口前、西側の側面全体(16坪ほど)に鉢花や苗木など極めて多数が置かれている。
 
    川崎市黒川地区は、「農業公園づくり」に指定されており、自然環境の保全と活用を通じ、農村・農業と市民とのふれあいを目指している。周囲の住宅も立派なものも多く、高い消費レベルに見合った、雰囲気、品揃えを実現している。
 
   11~翌3月が10~17時の営業。4~10月は10~18時の営業。定休日は毎水曜日。






 


2013年10月25日金曜日

「マオイの丘公園・道の駅」(北海道)は多店舗市場型の直売所!

   北海道の旅パート2である・・・当別から千歳空港に抜ける道すがらにある「道の駅」の標識。これに誘われ立ち寄ったのがとんがり帽子の屋根が、「マオイの丘公園」道の駅である(夕張郡長沼町)。4年程前に雪中を訪ねた由仁町。このすぐ近くだったことを後で知った。 

もちろん中央の施設には、土産物屋やレストランもあるのだが、直売所はこの施設と離れ、8つの小間割り店舗になっているのが、他所の道の駅と大違いである。各地に魚菜市場があり、ときに50店、100店もの専門店が集まっている例もある。

 
ここは魚菜市場でなく、「菜菜市場」とも言える。20区野菜販売グループ、17区グリーン営農集団、JAながぬま、幌内蔬菜集団、マオイ青果物販売グループ・・・と5つの集団がまず野菜や米を扱い、このほかに長沼町果樹振興会、酪農家の店・マオイ牧場クラブ、マオイの丘茶屋・南長沼商店街の3店が果物他の要素を補っている。たとえば。餃子、コロッケ、餅、ソフトクリームなども扱っている。
 
 
長沼町としては、1本化・1フロアー化した並みの直売所ではなく、「意欲あるグループが複数出店し、互いに市場のように競うことで、魅力を出して欲しい」との発想を持ったのではないか。1小間は15坪もないと思うが、共通の前広場が50~60坪あり、この前広場で売る分がむしろメインになっている・・・全国でも珍しい例である。ただ雨の日のことが心配になった。 

最初の5店はどこも米、カボチャ、キャベツ、ダイコン、タマネギ、ジャガイモなど共通の品も多い。だが共通品であってもそれぞれ個性ある品で、選択性が保たれている。平日の午後4時というのに、20~30人が回遊し賑わっていた。それぞれ2~3人の販売員がいるから、対話もはずみ顧客にとっても楽しいのではないか。
 


 
なお、冬場11~4月は営業時間10~18時、夏場5~10月は10~19時。駐車場は普通120台、大型15台。付近にはハイジ牧場、長沼温泉、馬追温泉もある。
 

2013年9月27日金曜日

北海道の直売所の1例-「のっぽろ野菜直売所」は地元色一杯!


   久しぶりの北海道行き。仕事の復路にあった江別市西野幌111の「のっぽろ野菜直売所」に寄ってみた。北海道ではごく普通の中規模の直売所ではないだろうか?売り場60坪ほど。レジ3台。だが内地と比べ駐車場は、約74台と広い。広さを利用し、収穫祭ほかの各種のイベントがやられ、直売所を結ぶスタンプラリー・コースの1つにもなっているようだ。 

 
 
 営業時間の8~17時は並みだが、北海道の気象条件や生産条件を配慮し、営業期間は4月中旬から11月中旬まで。そのかわりこの期間は無休で分かりやすい。 

 HPによれば販売品はグリーンアスパラ、ブロッコリ―、トマト、ホウレンソウ、ジャガイモ等・・・となっているが9月下旬のいまは、ジャガイモ、ニンジン、カボチャ、ニンニクなどが目立つ。 

 ジャガイモは10キロ箱の箱売りが約100箱もうず高く積まれている。ここが内地と違い、大量生産に見合った販売?・・・10キロで男爵1,300円、メークイン1,500円、キタアカリ1,300円とか1,500円。このほか、袋入りの100~150円のキタアカリ、男爵、レッドアンデス、キタカムイ、コロールも置かれ、ジャガイモ王国を反映している。
 
 
ジャガイモの箱売りコーナー 

 カボチャは1/4切りが中心で、顧客の買い易さを意識していて好感が持てた。100~130円だ。ニンニクは6アイテムと豊富で1袋150~200円ほど。無臭ニンニクもあって350円。ニンジンも9アイテムと多く、洗い・泥があり黄ニンジンもある。 

 今回、見ることはかなわなかったが、8月には平日500本、休日1,000本のトウモロコシを売るというから、観光シーズンの繁盛ぶりはすさまじいのではないか。おかげで、忙しさにも慣れているのか、従業者の接客ほかの動きもキビキビであったのが印象的だ。
 
 

2013年8月27日火曜日

平均年収2500万円の長野県川上村!(フジテレビ8月25日放映)


  長野県南佐久郡川上村は県の東南の端に位置し、標高1,110~2,595mに展開する高原の村である。人口4,759と少ないが、実践的で情熱あふれる指導者の藤原忠彦村長の永年にわたる村興しの努力によって、農家の1世帯の平均年収は2,500万円になっている(主にレタス?)・・・というフジテレビの放送内容である。これは桁はずれのすばらしい数値だ。
 
 
 
 藤原氏が企画課長の時代に、路線バスの廃止という事態に直面。生活の基盤を失えば、村は荒廃する。着目したのはスクールバスだ。「これを一般住民にも利用できるようにする」案を持ち、当時の文部省に掛けあったが、通学用のスクールは文部省、住民用のバスは当時の運輸省・・・という縦割り行政のため、なかなかOKが得られない。住民を乗せれば小額なりと運賃を取らねば、運営が出来ない。スクールバスの運行趣旨と矛盾が生じるからだ。

 
 

写真① 現・藤原忠彦村長

 だが、藤原氏はあきらめなかった。何回も関係の省庁に足を運んだ。そのうちスクールバスの運用規定のなかに「住民のために、利用するすることもできる」の条項があることを発見、これもとに再度交渉し、やっと文部省等の認可を得て、スクールバスの住民利用が実現した。小学生の乗る無料バスに、料金を払い地域の住民も乗る・・・地域活性化のほほえましいシーンも放送された。

 
 次に村の発展策として取り組んだのが、村営ケーブルテレビ局の設置だ。村の将来を考えたたとき、情報化時代に対応する必要がある。つまり、毎日のレタス等の相場情報を正確につかみ、各市場にタイミングよく出荷することができてこそ、不安定な経営を改善できると考え、前例を見ないケーブルテレビ局の設置に約2年かけ取り組んだ。

 これには、「関係官庁の方も、後半いろいろアドバイスしてくれ助けられた」と、感謝の気持ちを語っていた。小学校の廃屋?を利用してテレビ局は作られたようだが、的確な相場等の情報発信だけでなく、村の教育、郷育の要(かなめ)と位置付けられている。

 
写真② レタス畑の収穫
 
<感想>地方では確かに人材が得にくい。しかし、小さい町や村では1人でも熱心な改革者が行政やJAの中にいて、その人が信念を貫き、あきらめず努力すれば、改革が進むことを教えてくれる。
 
 「葉っぱビジネス」で有名な徳島県上勝町にしても、地元JAに席をおいていた横石友二氏(現・第三セクター株・「いろどり」社長)の努力が実ったものである。共通しているのは、上勝町でも「葉っぱビジネス」の成功要因の一つが情報の強化だった。1992年から町の防災無線を活用し、市場から来た注文をファックスで農家に一斉に流し、高齢者でも使える専用のパソコンを農家に貸与して、正確・迅速に出荷対応した。また、出荷情報だけでなく、各農家の売上高、売上順位なども流し、生産意欲を刺激してきたという。結果は2012年の「彩事業」のみで、年2億3千万円、関係農家194軒という。
 
  当方も1昨年、農水省の6次化事業のため20以上の市町村を訪問したが、日常業務のみに追われていて、6次化という新規の事業への理解は極めて不十分であった。各市町村の農・工・商の予算を合わせても、円グラフに表現すれば棒グラフにも似た少ないものである。これでは「日常の定番行政メニューを右から左に処理するだけに終わってしまうのもムべなるかな」と思った。
 
 だが、国・地方財政のひっ迫を考えるなら、川上村のように、公僕として「金を掛けなくても改革できることは何か」「いまある資源(例えばスクールバス)をもっと有効化できないか」「国の補助金を有効活用するすべはないか」など、考えていただきたいし、いまの世の中にはこれをボランティア的にも支えていきたいと思う人も多いことを市町村の職員は真剣に考えてもらいたいものだ。
 
 
 
 
 
 
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2013年8月3日土曜日

「成城石井のスーパー惣菜」の本-旬と手づくりへのこだわり!

   私の食品スーパーに関係した仲間は、成城石井(東京都世田谷区)を[あこがれのスーパー]として育ってきたものだ。50坪、100坪といった比較的狭いミニスーパーでありながら、通常の2~3倍もの品揃えをし、しかも「こだわりの商品」ばかり・・・その個性は大手スーパー・チェーンを寄せ付けないものだった。まだ20~30店舗ほどと思っていたが、すでに100店舗とのこと。伸びるべくして伸びている。
 
 青山の紀ノ国屋には洋の香りが強いが、成城石井には和・洋とり混ぜ、日本の食文化に根ざしたものを感じてきた。それが、最も良く表現していたのが惣菜である。今般、講談社から「成城石井のスーパー惣菜」(1,300円)が出版された。「高級スーパーで人気のあの味が家庭で作れる」の帯がついているが、和・洋・中華・エスニックの36のレシピが紹介され、味の決め手になる原材料や調味料も写真入りで添えられている。
 
 
 問題は真似ることではなく、その根底に流れる姿勢である。
「お客様の一つ一つの声に耳を傾け、厳選していくうちに、直輸入のワインやチーズ、菓子、調味料、さらには自家製の惣菜といった成城石井流の品揃えが充実していった」
「本当に価値ある商品をお客様にお届けしたい!が成城石井の想い。たとえば自社輸入ワインは、低温輸送するリーファーコンテナーで現地のワイナリーから店舗まで、外気の影響を受けることなく運びます」
 
 ・・・という記述がある。質を誇るには、それを裏付ける顧客志向、システムの強化まで完全を期すことが必要なことを教えてくれる。
 
 部門別のバイヤーさんの努力も紹介されている。こだわりは半端ではない。青果担当のばあい・・・「ハーブの使い方が分からないので、自分で家庭菜園を始めた。自分で体験すれば、農家の方が創る野菜はプロだなと思う。なかでも高知県の「りぐり自然農園のミディトマトは皮が軟らかくて、さわやかな甘さでうまみも抜群。それもそのはずで、アミノ酸たっぷりのカツヲの魚粉を肥料に遣い、ミネラルを多く含む海洋深層水で育てている」と述べているが、素材の特性をつかみ、それを生かしてこそ、美味で健康的な惣菜が生まれることを教えてくれる。精肉、酒、乳日配担当のバイヤーも同様のことを述べている。
 
 そして、成城石井のこだわりについては、①旬や産地に徹底してこだわる。②手づくりに徹底的にこだわる・・・の2点をあげている。あとは、直接購読して、その神髄を理解することだと思う。レシピごとの写真も大写しで、見た目から、その美味しさも伝わってくる本である。
 
  よくレシピを見ると、1品当たりの素材+各種調味料等の数は、少ない場合14~15点だが、多くは18~25点になり、最大限に味他を追求していることがわかる。点数が多いからといっても、調味料などは、きちんと並べておけば、混ぜるのにそう手間のかかるものではない。「時に少々の手間も惜しまない」が味の極意につながるのではないか。
 
 
 
 
 
 
 
 


2013年7月12日金曜日

農産物直売所とスーパーの陳列の差-立体・日々の演出!

 
  携帯電話のカメラを使うのは不慣れで、80%かた手ぶれが起こりピンボケになってしまう。申し訳ないが、下記の写真はスーパーのなかでも陳列にことのほか力をいれている2店舗のものだ。
 
 
 
 上記の2点の写真は、優良スーパーYの青果コーナー。中央部は平台だが、ダミーを雛壇状に置いて、商品を盛り上げている。ここため、奥のほうの商品まで目に入り、買い回り効果が高くなる。同時に下段・上段のどの商品も目線に均等に飛び込み、選択しやすくなる。
 
 一番素晴らしいことは、導入部の平台について、毎日19時くらいから、平台を離し清掃してから、明日に向け、新しい商品の配置を考え、並べ換えを行うことだ。「日々イメージチェンジをし、顧客にわくわく感を与える」といった姿勢を学ぶべきだろう。
 
 地元野菜の直売コーナー(インショップ)は、平台の5つの島からすれば、一番奥に持っていっている。誘導効果を高める工夫だろう。だが同時に、入口付近では日々イメージチェンジの場にしにくいこともあるのでは(直売コーナーは品揃えが生産者まかせのため)。
 
 
 
 
 上の2枚は、4~5店舗のミニ・チェーンだが、グレード・アップを図り、「安売り本位のスーパーではなく、品質・鮮度の高いスーパーに」を目標にしており、素晴しさがここにある。バナナ・コーナーにバナナの木のディスプレーも配置・・・こうした演出が店内随所にされている。同じ品目の品を大小とか、品種を「関連・縦陳列」する努力も徹底している・・・これにより視界に多くの品目が飛び込んできて、選択性も高まる。
 
 スーパーにおいても、現在は非冷の平台で60~70%も売る時代で、直売所とそう変りない。直売所の平台利用についても、スーパーから多くを学び、平台の効率を高めるべきだ。浮いた分の平台は、青果の充実だけでなく、他の部門・・・例えば青果のギフト、その他のギフト、ベイカリー類、和菓子、盆栽、蘭など高級花卉、メダカ等の販売等とその拡大余地は無限にある。
 
 午後になれば、ガラガラの平台が半分以上といった姿から脱皮し、機会損失のない売り場作りもおおきな課題にして欲しいものだ。
 

2013年7月6日土曜日

日本百貨店「ちゃばら」が秋葉原に!珍しい各地名産品一杯!


 東京の秋葉原と言えば電気街にメイド喫茶、コスプレ、萌・・・などアキバ文化の地である。ここにJR系の日本百貨店が5店目の「ちゃばら」を開店した。 

秋葉原駅から3分たらずの山手線高架下である。もと神田青果市場(=ヤチャバ)跡地の直ぐ前であり、ヤチャバとアキバハラにちなみ「ちゃばら」のネーミングになったようだ。他店では売られていない食品の「こだわり名産品」ばかりが、店一杯置かれている。 なお神田市場は、私にとって、青果物の流通問題で数十回通った想い出の場所である。
 
 

 日本百貨店は、「ニッポンのモノづくり」と「すぐれもの」をテーマに、全国の作り手と使い手の出会いの場を提供することをコンセプトとしている。「不定期なワークショップや実演販売など、職人の技を身近に体験・体感してほしい」としている。すでに東京の浅草、調布、神奈川では横浜、大阪では梅田の各店を運営している。

 200坪はあろうか・・・コーヒー店の「やなか」、食堂の「こまき」(鎌倉不識庵)、「カンポ-・カフェ」(長野県),発酵フードカフェ「KURAMOTO STAND」(新潟県)の飲食店もあり、千葉県の「房の駅」(商品すこぶる多い)、なるときんときの「五線譜」(徳島)、ふじのくに「おいしず」(静岡)、大自然のおいしい食材「北海道キッチン」(北海道)、新潟の日本酒{KAYOIGURA}(新潟県)のほか、65に及ぶ地方名産品のコーナーがある。
 

 なるといもの練り込まれたケーキ、梅肉の味のするスナック菓子、トマトのゼリー、宮古島のマンゴー、千葉のジャンボなニンニク、飛騨牛のビーフカレー・・・珍しい品のオンパレード。価格はこだわり品のため高いが、コンパクトな売場で、試食もしながら全国名産品が買い回れる楽しい空間である。(写真下 店舗レイアウト=カタログより)

 

2013年7月5日金曜日

「わいわい市・藤沢店」(直売所)は地域1番部門が多数!



 神奈川県藤沢市の辻堂駅前のショッピング・モール「Terrace Mall」を見るついでに、同市亀井野2504のJAさがみ「わいわい市」藤沢店を見せていただいた。「わいわい」に違わぬ繁盛店で、午後3時をすぎているのに車が20台以上も停まっていた。 

 生活道路と産業道路を兼ねた、467線に面し、広く集めやすいこともあるが、やはり「口コミ」を促がすだけの「優れた店」のためではないか。売場約140坪、レジ6台、駐車場118台、営業時間3~9月9:30~18:00時(他月15:00)、定休第3水曜と年末年始4日である。最低でも年6~7億円ほどは売っているのではないか。 

 品揃えのメリハリが効いていて、地域1番店と言える品揃えの部門が4つも、5つもあることだ。

1.まず店頭の花と野菜苗の豊富さだ。店頭の軒下からあふれ300アイテムはあるのでないか。野菜苗だけでも100~150円ほどの品が60アイテムほどあった。 

2.店内の入り口近くには、1,500円から最高10,500円の蘭が置かれ、「ギフト承ります」のPOPが印象的。安売りに走らず高級なギフト需要を開拓しているのが素晴らしい。(写真・下)
 
 

3.野菜の売れ筋のトマトも半端ではない。平台6尺×7台の陣形で、およそ22アイテムあった。桃太郎はもちろん、ミニトマト、青トマトはもちろん、中玉で極高糖度のフルティカ品種もある。(写真・下)

4.パンほかベイクのコーナーは6尺×多段6台と広く、オリジナルな食パン、菓子パンはもちろん(蒸しパン、チーズパン等)、パウンドケーキ、クッキー、ラスクなど極めて豊富である。(写真・下)
 

5.精肉は多段6尺×2台だが、結構豊富であり、鮮度も良い。これだけの精肉扱いはあまり直売所ではない。 

 このほか、タマゴにも6尺平台×4台を当てている。水物日配は冷ケース多段6尺×4台分あるが、グスグスで品揃え不足を感じた。ロスを出さず、満杯感を出すには、何を揃えるべきか・・・の課題が残されていると思う。たとえば、味噌、日もちする漬物、佃煮、ときに飲料の一部だ。

2013年6月22日土曜日

農産物の移動販売-セブン・イレブンに学ぶ!

  セブン・イレブンは東北の東日本大震災で自らの店舗を失った地域や、これとは別に今後の買い物不便地区の拡大を想定し、関東の茨城等でも、移動販売車を開発、「セブンあんしんお届け便」をスタートさせている。「顧客のあらゆる便利性のニーズ」を開拓して行こうとするその姿勢に、
おおいに学ぶべきではないか。

 セブンの移動販売のばあい、すぐに食べられ、購入頻度の高い、おにぎり、弁当、パン、飲料など150ほどを積んで販売するようだが、御用聞き-配達にもすでに着手している例もある。

 
   農産物の販売でも、直売所以外に①庭先販売、②HP-注文-宅配といった個人対個人の販売も活発になっているが、たとえHPやブログで宣伝しても、今後増える高齢世帯にはなかなか伝わりにくい。「待つ商法」から「顧客のところまで行く、攻めの商法」があってもよいはず。

 青果、鮮魚、精肉、加工食品など、総合的な「移動販売車」の歴史は古い。昭和40~41年に、冷蔵装備の移動販売車が正式が許可されたのを覚えている。これより前に、戦後いち早く青果の引き売りが登場し、昭和の30年代には、各市場に行くと仕入れや陳列を終えた移動車が、何台も市場で時間待ちをしていたものである。スーパーの拡大とともに、移動車の影は急減していった。

 だが、青果を中心とした移動販売の可能性は①こだわり農産物の拡大(スーパーではほとんど売っていない)、②顧客の高齢化で車で動けない買い物難民の増加、③新たに人のつながりを大切にする流れ・・・のなかで、充分あると見る。これは推測でなく、当方も実際に4農家の青果中心にした、タマゴ、農産加工品を積んだ移動販売を乗用車で実践してみて、可能性を実感した。


 <写真>乗用車の後部座席を倒し、売り場に変身。軽トラックでも良い

  これを成功させるには、いくつかの要件を満たす必要があることも分かった。これなら成功するだろう要件(失敗要件もふくめ)をあげると・・・

  ①我が家の近くにも、毎日曜にタマゴの移動販売車が、拡声器で「〇〇のタマゴ、よいタマゴ」とふれてくる。広域に回り、各地で固定客をつかんでいるはず。週1回と多頻度でなく、購入頻度を考えて巡回している。けっこう高額のこだわり商品のため(1kで500円近い)、ガソリン代も出る。

 ②野菜のばあい単価が低い。プラス果物、タマゴ、こだわりの6次産品まで混載し、単価の向上を図る。野菜だけでは300百円程度の客単価も、プラス商品があれば時に1,000円を超え、平均500円にはなる。

 ③宣伝カーの形を採り、随所で品目を上げ呼び込みをしても、顧客は外に全く出ってこない。一方、外に出ている人に声を掛ける方法もあるが(キャッチの可能性高い)、車の走行距離ばかり延び、ガソリン代が出なくなる。

 ④正しくは、名もでている住宅地図も用意し、特定団地群を軒並み呼び鈴を押して回り、「是非、車の商品を見てください」とアプローチする。この方法だと10軒に1軒は外に出てきて、品物を見てくれ、会話も弾み、固定客にできる。地図の名前に赤マルを付け、次回には必ず声を掛け、順次固定客を増やしていく。
 

  都市部はずれの新興・中高の住宅団地が500世帯としても1/20を獲得すれば25世帯・・・客単価500円とすれば、1日12,500円という数値にもなる。所得は1日5,000円になるはず。1/10を獲得すれば倍の効率になり、企業として成立もする。


  無為に庭先で待ったり、HPの反応を待っているより、この攻めのほうが顧客獲得の早道になるばあいもある。いずれににしても、濃密な住宅地を回り、日々2~3人の固定客を増やし、同時に顧客のニーズを聞き、自家で調達できないものも、注文-仕入-配達のスタイルでお届けしていく。こうした努力があれば、かならず上記の目標も達成できる。

 
 品名のPOP、プライスのPOP(両者切り離し、値段の日々の変化に対応)、釣銭も充分用意して(1日20,000円分の千円、100円、50円、10円玉)。1円は用意しやすいが5円刻みの売価でよい。さらに、持ち込む商品について品種、美味、安全、栄養価、料理法などを期した印刷物(コピーでよい)を用意し手渡しすれば、販促効果も高くなる。


7月31日追記
 
 
 セブン・イレブンだけでなく、イトーヨーカ堂本体も7月30日のテレビ報道によれば、中型バス並みの移動販売車を、東京の多摩ニュータウンの買い物困難地区の団地エリアで運行を開始した。ヨーカ堂の南大沢店が基地のようで、かさばる青果物については、別の車で荷を運び、路上販売もしているようだ。販売地点は、地元の市の要望にしたがい設定したという。

 地元の高齢者からは「大変、助かる」の感謝の言葉ばかりが聞かれた。移動販売の大きな流れが生まれようとしている。

 この多摩ヌータウン地区は、某チェーンの依頼で6~7回ほどマーケットリサーチをしたことがあるが、多摩センターと南大沢は商業集積が進み、買い物環境に恵まれているが、他の地区は、南北に走る丘陵の上に団地が造成され、昔はそれぞれ小型スーパーを含む商店街もあった。ところが、高齢化が進み、他からの顧客の流入がないため、次々と商店が閉鎖され、核となるスーパー
も撤退・・・買い物困難地区が拡大していった。
 

  一つには、団地のばあい公団の商業ゾーンの設計思想のまずさもある。駐車場が少なく、かつ車が進入しにくく、閉鎖的に設計され、広く外部の人も呼び込む姿になかった。地元民の高齢化で衰退に向かうというパターンなのだ。今後、大型団地の造成は少なくなるが、「外部に向かって解放型の商業ゾーンの設計にし、かつ福祉施設を含む永続型のゾーン作りの工夫が必要と言える。 成田ニュータウン他でも、同じ悲劇を見てきた。

 



 
 

2013年6月11日火曜日

武蔵野音大付属高校の「保健だより」が月1回配布!

 近くの丘陵の一隅・・・緑豊かな場所に武蔵野音大がある。その付属高校の生徒さんが、月1回「保健だより」というのを家庭に配布してくれる。

 産学共同と同じで、「地域に貢献したい」との発想だと思う。2013年6月号は写真の通りだ。良く見えないだろうが、熱中症予防、食中毒予防の3原則、酸蝕歯の3テーマだが、上手でかわいいイラストも10コマと豊富に挿入し理解しやすい。本当に「御苦労さま」「ありがとう」と言いたい。


 当方も高齢者だが、「高齢者が熱中症になりやすい理由は」・・・
①体温調整能力の低下    加齢に伴い、汗が出にくくなる。
②水分の摂取量が少ない   脳が水分不足の指令を出さなくなる。また、夜間の頻尿の心配から水分摂取を我慢する人も。
③尿として水分が出てしまう  体が脱水症状になると、腎臓は水分を対外に排出しないように、尿の濃度を濃くする。しかし、腎臓の働きが低下しているため、尿濃度は濃くならず、水分を排出してしまう。

 また酸蝕歯については・・・
虫歯は、虫歯菌が出す「酸」で歯が溶けること。酸蝕歯は、食事や飲料水などの「酸」が歯を溶かすこと。
②口のなかは、唾液によってpH6.8に保たれているが、食事をすると酸性に傾き歯を溶かす。食事が終わると唾液がpH6.8にもどしてくれる。
③このため食事をした後は、水やお茶で口をすすぐか歯磨きをする。また間食は控え、間食後も口をすすぐ。

 
 食中毒については、①バイキンをつけない、②増やさない、③やっつける・・・となっている。

 直売所やコンビニ、スーパーの関係者にも参考になることばかり。ときにPOP化し売り場に掲示しては。企業の社会的貢献度が問われているが、高校生がこれを実践している時代、遅れては大人の恥と思うべし。

7月12日追記 
  保健だより7月号がとどいた。民生委員の方が配布に当っているようだ。御苦労さま。今月は「熱中症にまぎれた血栓症」と「夏に多い皮膚トラブル」といった内容。前者では、気温32度を超えると血栓に注意とのこと。汗で脱水し血液がドロドロになり、血栓が生じやすいとのこと。脳梗塞志望者は、32度を超えたばあいもっとも低い死亡率に対し1.66倍の死亡率になるという。

 夏に多い皮膚のトラブルは①やけど・日焼け、②あせも、③とびひ、④脂労政漏性皮膚炎(かびが原因)という。





 

2013年5月21日火曜日

オランダの「農業革命」スマートアグリに学ぶ(NHK20日放映)!

 NHK5月20日19:30~20時「クローズアップ現代」を見られた方も多いと思うが、その概略をメモから再現しよう。農業のIT化を進める人、IT化に関心を持つコンサルタント等は必読である。

 オランダは九州ほどの面積にもかかわらず、農産物の世界第2の輸出国。施設園芸も輸出を前提に革新技術を採用してきた。東京ドームの何十倍ものハウスがあり、天井の高さは日本の2倍(6m)もあり、3倍も収穫できるそうだ。このハウスはスマートアグリの概念によって温度、湿度、水、CO2、日照等の基本要素だけでなく、500もの要素をITでコントロールしている。こうした大規模生産起業が5ヶ所ほどあり、主にトマト、キュウリ、パブリカなどを栽培している。

 その1つの経営者であるフランクさんは、農場から離れた事務所に朝7時に出向き、パソコンに向き合い操作し施設を管理している。めったに農場には出向かないようだ。要素別の適性数値はあらかじめ入力され、時間の経過にしたがい適正数値と実態値がPC上に表示される。適正値に沿い、各種オートメーション機器が作動し、両者のブレは微小にとどまるよう管理されている。生育促進のため、COの発生装置も持っているのが日本との違いか?

 土壌は汚染を防ぐため人口繊維で、養分や水は毎日60回、自働的に散布され適正レベルに保たれる。水も殺菌されたものを使う。COは2倍以上にコントロールされているようだ。これらのPCデーターは経営コンサルタントとも共有され、たえず修正もできるようだ。

 フランクさんもかつては、昔ながらのハウス栽培をしていたが、EUの前身のEC(欧州共同体)ができた31年前に安い農産物が輸入され打撃を受けた。オランダは農水省と経済省を統合した組織に再編し、IT農業を支援した。フランクさんは100億円を投資し、現在52.5haを経営、46億円を売り上げている。そして15ha、5haと今後も拡大計画を持つ。

 ゲストの三菱総合研究所・主任研究員の伊藤保氏は、「日本も農業のIT技術は進んでいるが、国内向けに美味で安全なものを出荷する技術を個々人が持つため、スマートアグリの必要性を感じてこなかった。オランダや韓国は輸出を前提に、コスト競争力をつけるため、スマートアグリが進んだ。高い天井のハウスは台風とうに弱いということもある。熊本には現状のハウスを強化し、スマートアグリを導入、トマトについて500~1,000の要素を管理している農家もある」。

 「東北大学主催のスマートアグリカルチャー研究会では、カメラと連動させたスマートアグリも考案している。身の丈に合った対応が必要である」

・・・と言う。しかしに国内消費が縮小するなか、農業の成長戦略として「輸出拡大」が謳われており、国谷裕子キャスターは「チームジャパンを立ち上げ、スマートアグリを推進する必要があるのでは」と結んでいた。

2013年5月18日土曜日

小型スーパー「まいばすけっと」(イオン)は下町の救世主!

 
 郊外地や地方の方はイオンの「まいばすけっと」を見ていないと思う。大型スーパーが土地問題でなかなか出店できない、東京23区や神奈川の市街地に出店し、狭い45~61坪の売り場面積で2,000アイテムを置き、高い効率を上げるという「小型スーパーのビジネスモデル」である。
 
 かつて当方が寝食を忘れ、指導に当たった50坪以下の小型(ミニ)スーパーは、生鮮の強さにおぼれ、多労ー安売りで、粗利の低下、人件費高に苦しみ自滅していった。狭い売り場にもかかわらず。最低青果2人、鮮魚1.5人、精肉1.5人は配置せねばならず、売上も最低1日150万円が必要であった。「まいばすけっと」は、システム志向で、少ない陣容で小型スーパーの弱点を克服し、下町や都心の星的な存在になろうとしている(だが、その人件費など実態はつかんでいない)。

 




 

                    住宅地の店(練馬)
 
 青山1丁目の店
 
 まずは、その一例を見てみよう。東京都心の港区青山1丁目の店は、オフィスビルの中にあり、周囲は一流企業のオフィスや高層マンション等である。
 
 付近にはファミリーマート、セブンイレブンほかのコンビニはある。だがスーパーはない。青山のアップグレードスーパーの紀ノ国屋まではやや遠い。
 
 この店は約57坪・・・コンビニの30坪平均の倍近い。レジ3台。駐車場はもちろんゼロ。7時から23時の営業で、この点もコンビニとは異なる。
 
 青果のフェイスはかなりタップリだ。平台が店頭9尺、店内4尺、多段ラック8尺、冷蔵多段オープン6尺だ。アイテムにして約60の青果がある。これは農産物直売所のアイテムでなく品目数に匹敵し、基本素材はまずもれなく揃う。
 
 肉・魚は多段オープンケース6尺分だ。この2部門はコンパクトにまとめている。肉が4段でハムソーまで入れ22アイテムほど、魚が塩干魚中心に練り製品までいれ37アイテムだったと思う。マグロほかの刺身5アイテムを含んでいる。
 
 以上の生鮮3品に必要な人員は1人以下で済んでいるはず。小型スーパーの5人分とは大違いで、ここにこそ「まいばすけと」の強さがある。
 
  いずれにしても、しばし客層を観察したが、男女比は男子65%、女子35%といったところ。年齢は男子では30>40>50代の順、女子では40>70代>30・50・70代といったところ。女子の
ほうは高齢や自転車客も多いが、この層は付近のマンション住まいと思う。
 
 男子の場合は、オフィス出入りのサラリーマンが圧倒的と思われた。昼間はコンビニ店の客とかなりバティングしていると見る。しかし出入りは激しく、1日100万円くらいはキープしているのではないか。
 
 
  
 
 
 

2013年5月17日金曜日

6次産業化-缶・瓶詰めが総てでない。カット野菜にも注目を!


    農家の6次産業化を目指す皆さん!加工と言えば瓶詰め・缶詰め・・・と考えがちですが、もっと回転頻度の高いものも沢山ある。少しでもヒントになればと思い紹介すると・・・
 

 コンビニ・チェーンの多くはカット野菜を3~5品は必ず置いている。キャベツ、レタス、そのミックス等だ。1袋105~128円ほどである(写真)。 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  コンビニの雄であるセブン・イレブンでは「米・肉中心の惣菜では栄養が偏り良くない」と考えたのだと思うが、丸いカップに入れた「野菜タップリのサラダ系惣菜」を多い店では10~15品も置いている。たとえば「振って食べるゴ―ヤとツナのサラダ」270円、「ツナ・コーンサラダ」199円(写真)。スパゲティ、春雨とのコラボ商品もある。 

 コンビニでもローソン100当たりは、180㎝幅の多段冷ケース1台と非冷の棚180㎝で青果60~70品を売っている。ここまで行かなくとも、ロスを避けカット野菜のパックや野菜タップリのカップ入り商品を強化して行く店が多くなると考えてよい。
 
 

  これらにはレタス、キャベツ、ニンジン、スイトコーン、スプライト等が主に使われているようだが、先記の通りゴ―ヤほかベビーリーフ等広く使われる可能性がある。 

  農業者で、すでにコンビニ・チェーン数店に野菜の供給をしている人の話を聞いたことがあるが、生野菜の配送が週1回。それでも残品が多く、「今後は返品のカット化をしていく」としていた。そうであれば、青果そのもの出にくい立地のコンビニには、カットしたパック品を中心に出して行く方が妥当とも言える。このばあい、日持ちのため窒素ガス充てんという方法もあるはず。 

  カット野菜は、多くはサラダ用だが、ヨーロッパの視察では、スープ用のカット野菜専用工場も見た。7品ほどのミックスものを出していた。まだスープは日本のばあい食卓に定着していないが、やがて「スープ用カット野菜」がもと売れる可能性もある。

2013年4月18日木曜日

農産物直売所は売場面積により生産性に大差-改善策はある!

 
    直売所の皆さんに分かりやすいよう、面積は㎡でなく坪数としたが、表は「平成16年度農産物地産地消等実態調査」(農水省)をもとにした分析表である。数字が古いので、売上高レベルについては、おしなべて現在値より低いと思われる。 

  ここで問題にしたいのは、直売所の場合、売場規模による従業者1人当たり売上効率、1坪面積当たり売上効率ともに格差が極端にあることだ。明快に言えば、スーパーなどに比して「規模のメリットが出やすい」「小さい規模では生産性が低く、直売所側の人件費(労働所得)や利益も出にくい」といえる。 

表―売場規模別の3要素分析(最小2乗法による傾向値)


売場規模

区分

 

従業者

趨(人)

 

従業者1人

年売上高

(万円)

売場1坪

年売上高

(万円)

25坪

.

135

65

50坪

.

988

130

75坪

.

,487

169

100坪

10.

,840

196

125坪

12.

,115

217

150坪

14.

,339

234

175坪

17.

,529

248

200坪

19.

,693

261

    小型スーパーやコンビニの場合、小なりとも従業員の雇用を前提にスタートしてきたから、効率の悪い小型スーパーは消え、300~450坪クラスのスーパーのみ永続性が保たれている。またコンビニは合理的に効率化を達成し今でも微増している。 

    直売所は、家族営業や労力の無料奉仕による共同体として誕生したいきさつもあるため、労力費を正当に評価しなかったのか、25~50坪の経営では、75~200坪に比し、1/2以下の効率になっている。2要素の効率ともボールを斜め上に投げたときに描く放物線のように、初期に急上昇し、上(面積が)に行くほど伸びは鈍化する。それでも絶対値は大きくなる。 

    JAが直売所の大規模化を進めるのも、この表からすると妥当である。しかし、この「一般的傾向」を超え、小規模でも効率の高い店も沢山ある。ではどうすれば良いか・・・ 

    表からすれば、小さい店ほど2倍、3倍もの努力をしなければ大規模店並みになれない・・・との自覚がまず第一。努力が並みならまず50坪以下の小型店は消えるだろう。 

    1人当たりの売上効率は「売上高÷投入労力」だから、売上を増やす、労力を減らすの2要素で達成される。1坪当たりの売上効率は「売上高÷投入面積」だから、やはり売上を増やすことが第一・・・面積を減らすのは愚なことで、2段、3段利用も考え、品揃えを増やし、通路も広げ買い易く、働きやすくすることだ。 

    では共通する売上拡大はどうするか。大型直売所を圧縮した品揃えではなく、大型店にない個性商品を徹底して探し、時に創る(惣菜・和菓子とう6次化商品)ことだ。「あそこにしか無い」という商品があれば、遠方からも来てくれるし、ギフトとして宅配ルートにも乗せられる。減化学農薬・肥料のエコ野菜などもギフトになる。レストランや学校給食などにも歓迎される。店内で売るだけでは、飛躍は期待できない。

  次に投入労力の問題・・・これは適正な労働配置のコントロールと質が問われる。小さな店においても、開店1時間前から閉店1時間後くらいの刻みの表を作り、名前を書き込み、レジの客数も考え、日々労働時間を書き込み、むだがないかひと目で分かるようにする。

  ある時間帯は2人、ある時間帯は1人とシフトを日々見える化する。それでも手が空くときはレジから離れ、補充、陳列の乱れを直す、清掃する・・・と第2の作業も決めておく。ともあれ、1日10万円の販売で1.5人、20万円で3.0人ほどのシフトが標準である。もちろん店長も入れての話だ。

  質とは作業のスピード、確実性、臨機応変さ、商品知識などだ。これは先進店で実習するなり、店長が教えるなりの教育の問題だ。高い教育は従業員にとっても誇りにつながる。そして売上げがアップすれば、時給アップをするなどインセンティブを与え、やる気にあふれた店になって欲しい。