長野県南佐久郡川上村は県の東南の端に位置し、標高1,110~2,595mに展開する高原の村である。人口4,759と少ないが、実践的で情熱あふれる指導者の藤原忠彦村長の永年にわたる村興しの努力によって、農家の1世帯の平均年収は2,500万円になっている(主にレタス?)・・・というフジテレビの放送内容である。これは桁はずれのすばらしい数値だ。
藤原氏が企画課長の時代に、路線バスの廃止という事態に直面。生活の基盤を失えば、村は荒廃する。着目したのはスクールバスだ。「これを一般住民にも利用できるようにする」案を持ち、当時の文部省に掛けあったが、通学用のスクールは文部省、住民用のバスは当時の運輸省・・・という縦割り行政のため、なかなかOKが得られない。住民を乗せれば小額なりと運賃を取らねば、運営が出来ない。スクールバスの運行趣旨と矛盾が生じるからだ。
写真① 現・藤原忠彦村長
だが、藤原氏はあきらめなかった。何回も関係の省庁に足を運んだ。そのうちスクールバスの運用規定のなかに「住民のために、利用するすることもできる」の条項があることを発見、これもとに再度交渉し、やっと文部省等の認可を得て、スクールバスの住民利用が実現した。小学生の乗る無料バスに、料金を払い地域の住民も乗る・・・地域活性化のほほえましいシーンも放送された。
次に村の発展策として取り組んだのが、村営ケーブルテレビ局の設置だ。村の将来を考えたたとき、情報化時代に対応する必要がある。つまり、毎日のレタス等の相場情報を正確につかみ、各市場にタイミングよく出荷することができてこそ、不安定な経営を改善できると考え、前例を見ないケーブルテレビ局の設置に約2年かけ取り組んだ。
これには、「関係官庁の方も、後半いろいろアドバイスしてくれ助けられた」と、感謝の気持ちを語っていた。小学校の廃屋?を利用してテレビ局は作られたようだが、的確な相場等の情報発信だけでなく、村の教育、郷育の要(かなめ)と位置付けられている。
写真② レタス畑の収穫
<感想>地方では確かに人材が得にくい。しかし、小さい町や村では1人でも熱心な改革者が行政やJAの中にいて、その人が信念を貫き、あきらめず努力すれば、改革が進むことを教えてくれる。
「葉っぱビジネス」で有名な徳島県上勝町にしても、地元JAに席をおいていた横石友二氏(現・第三セクター株・「いろどり」社長)の努力が実ったものである。共通しているのは、上勝町でも「葉っぱビジネス」の成功要因の一つが情報の強化だった。1992年から町の防災無線を活用し、市場から来た注文をファックスで農家に一斉に流し、高齢者でも使える専用のパソコンを農家に貸与して、正確・迅速に出荷対応した。また、出荷情報だけでなく、各農家の売上高、売上順位なども流し、生産意欲を刺激してきたという。結果は2012年の「彩事業」のみで、年2億3千万円、関係農家194軒という。
当方も1昨年、農水省の6次化事業のため20以上の市町村を訪問したが、日常業務のみに追われていて、6次化という新規の事業への理解は極めて不十分であった。各市町村の農・工・商の予算を合わせても、円グラフに表現すれば棒グラフにも似た少ないものである。これでは「日常の定番行政メニューを右から左に処理するだけに終わってしまうのもムべなるかな」と思った。
だが、国・地方財政のひっ迫を考えるなら、川上村のように、公僕として「金を掛けなくても改革できることは何か」「いまある資源(例えばスクールバス)をもっと有効化できないか」「国の補助金を有効活用するすべはないか」など、考えていただきたいし、いまの世の中にはこれをボランティア的にも支えていきたいと思う人も多いことを市町村の職員は真剣に考えてもらいたいものだ。
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