2014年8月21日木曜日

主婦の買い物行動とスーパーのリサーチ技法①-世帯人員別の1ケ月の購買力!

1.主婦を訪ねて30万km 

これは食品スーパー関係者だけでなく、消費者の方にもぜひ読んでいただきたい。きっと賢い消費者につながると思っている。主に店舗開発にたづさわる方に留意を促すためのガイダンスだが、買い物行動を客観的に知ることは、スーパーに携わるもの全員、また消費者にとっても必要ではないか。

7年前の平成20年までの約19年間、スーパー新規出店に当たってのマーケト・リサーチ(売上高の予測)をしてきた。全国約30都府県を踏破し、計300ケ所以上の調査をしたことになる。これも全国ネットワークを持つ県や地方をカバーする生協組織にお引き立てをいただけたからだ。300~600坪の大型店舗開発のリサーチを繰り返しさせていただいた。自動車や遠隔地までの飛行機の距離までいれれば楽に30万Km、地球7.5周をしたことになる。「主婦を訪ねて30万kmの旅」である。この連載もまた長くなって当然・・・と理解してほしい。 

1ケ所30~40人の主婦を訪問調査もした。昼間の調査のため単身の若いサラリーガールやサラリーマンには会えない。土日などご主人に話を聞くこともあったが、主婦の立場で回答を求めた。スーパーの顧客は主婦主体であり、「主婦主体」の回答としてまとめあげた。このため若いとか中高年の単身者の回答はほとんど含まれていない。 

予測精度を高めるためエリアの競合店への流れ、その店別頻度(週回数、徒歩・自転車・車・配達の別)、1ケ月の関係購買力、店の選択基準、主に行く店の品揃え・鮮度・価格等の評価・店の選択志向、基本事項(主婦の年齢・世帯人員・世帯主及び主婦職業、就業人員)等への回答を得、地域の実態を踏まえた予測をしたかったからだ。正確には15項目+アルファーである。アルファーでは、その時々の話題について回答してもらった。その総数は助手やアルバイトを加えたばあい、1万人以上にのぼる。当方自身が訪問した分だけで4千にはなるはず・・・主に徒歩で回れない車エリアを当方が担当した。 

1ケ所当たりのサンプル数は少ないが、地図に町丁別や字別の世帯数を記入、世帯に合わせ点を分散させて打ち、点の近辺で訪問調査し、できるかぎりエリア全体の傾向を反映できるように留意した。 

 アンケート原版と報告書はいまも総て保存してある。問題はアンケートが手書きであり、分析のためPCに打ち込む必要がある。1千、2千のサンプルの分析はなかなかできない。関東(栃木除く)+長野、山梨、静岡9都府県から2地区ずつ選んだ500人サンプルの分析が最大例である。しかし、別途年次の進展に合わせ、直近の調査地区50ケ所、66ケ所の平均数値も残してある。 

2.スーパー関係の世帯人員別の購買力推移

 売上高の予測には、地元の世帯人員に合わせた1世帯の月ないし年の購買力が不可欠である。これに世帯人員を掛ければ、地元商圏内の総購買力になり、さらに自店シェアを掛ければ月ないし年の予測売上高になるからだ。

それには、世帯人員に応じた「食品+日用品・軽衣料等」の月の支出変動をつかみ、その変動を計算式(人員に応じた月購買力y=ax+b xは人員)としてつかんでおく必要がある。この計算式は家計費調査では示していない。

 予測売上高=そのエリアの総購買力×自店シェア・・・である。エリア総購買力=そのエリアの世帯人員見合いの1世帯購買力×エリアの世帯数・・・である。特定エリアの購買力は総務庁「家計費調査」から都道府県別に得られる県庁所在都市の1世帯月消費支出を加工するしか手がない。単純な加工法はエリアの世帯人員÷「家計費調査」の平均世帯人員=aとすると、県庁所在地1世帯月の{食品+日用品雑貨等の支出}×a・・・となる。 

表―1 世帯人員別の月食品+日用雑貨等の支出(単位:万円)

世帯人員

調査数

回答数

月支出

月傾向値

1人支出

1人

15

15

3.28

除外

3.28

2人

140

115

5.80

5.53

2.77

3人

117

103

7.20

7.44

2.48

4人

131

115

8.06

8.59

2.15

5人

51

44

9.59

9.36

1.87

6人

32

24

10.21

9.94

1.57

7・8人

15

4

除外

除外

除外

総計・平均

501

430

(7.74)

加重平均→

2.35

  表-1は、9都県の世帯人員別の月支出とその傾向値等を示したものだ。各都府県とも1.5地区のサンプルを集計したもので、約13.5地区の平均1世帯購買力を出し、地域による支出格差を平均値に合わせてサンプルごとに修正し、500サンプルが「同一土俵」で比較できるようにしたあと分析したものである。このため、9都府県の平均的支出に近い数値である・・・東京や神奈川など人口が多く、購買力の多い地区の数値だけを反映したものではない。 

 世帯人員別の支出は、剣の刃のように軽く反り返ったものになる。これを放物線の上り側の曲線と仮定し、最少2乗法で処理した傾向値を出すと以下の方程式になる(サンプルの少ない1人及び7・8人を除く)。

世帯人員別スーパー関連の月支出y(万円)=-14.75×{1÷√x}+15.96 
x=エリアの世帯人員。 以上は電卓でも簡単に計算できる。実数は表の右側から2列め。

 また世帯人員で割った1人当たり月支出は右端の数字となるが、人員が増えるにつれ、少なくなる。世帯人員が増えるにつれ「ムダが減り割安になる」「低く抑える必要も生じる」といった2つの要素が影響していると見る。1人の正確な数値はないが、6人世帯は1人世帯に比べ1人当たり支出は約1/2ほどで済んでいる。 

3.「家計費調査」の数値と一致するか?

問題は得られる数値が、「家計費調査」の数値と近似するかである。前提として知っておいていただきたいのは、平成12年から25年に至るまでの14年間、世帯でなく1人当たりの食費支出は平均21,882円で、平均誤差は±0.8%と変動が極めて少ないことだ。食費はベーシックな支出で金額の変動が少ない代表格の支出と言える。したがって8年以上前(12年前が上限)のデーターを基本としても、間違いはないとになる。 

 平成25年度「家計費調査」の全国平均の食費は3.05人で月68,604円である。やや古い平成17・18年ころの食品スーパーの売上構成比は、食料品89.41%、日用雑貨4.55%、軽衣料1.73%、その他4.26%、以上3部門計10.54%である。近年は食品スーパーの雑貨等の比率は減少している。このため、仮に食品比率90%、その他比率10%ほどが普通とすれば・・・68,604÷0.90(食品比率を小数点に置換)=76,227円となる。 

 先の傾向方程式に3.05人を入れて得られ数値は75,142円である。76,227円に対して98.58%で、誤差は1.4%ほどでほぼ一致している。 

 全国統計に近い傾向方程式を使い、まず全国レベルの購買力を出し、あとは「食品+日用雑貨他の支出は所得に比例する」と仮定し、全国平均の1人当たりの所得を調べ(「家計費調査」で計算)、ついで県庁や市町村に行き、市町村別の1人当たり所得統計資料を得て、その金額格差で修正し、「調査エリアの1世帯購買力」と仮定するのが順当である。 

4.世帯人員を無視した1世帯購買力の分散状況

 地区別の購買力格差や世帯人員も無視した全国66地区の「食品+日用雑貨他の購買力」の分散状況は以下の通りである。参考に東京35地区の状況も紹介しておく。 

表-2 1世帯月支出額別構成比の分散状況 


金額区分

全国66 %

東京35  %

.5~ 4万円

0.5

0.1

.5~ 5万円

2.0

2.2

.5~ 6万円

5.0

4.2

.5~ 7万円

11.4

10.6

.5~ 8万円

9.0

8.8

.5~ 9万円

15.4

14.4

.5~10万円

8.0

11.0

10.5~12万円

19.5

14.3

12.5~14万円

12.1

15.8

14.5~16万円

8.3

8.4

16.5~24万円

8.8

10.2

支出平均  

9.25万円

9.47万円

世帯人員平均 

3.44

3.67

  単身者の不在な昼間の調査のため、平均の世帯人員は全国より東京の方が多いくらい(実際は東京の山手線沿いから内側は1世帯2.0人を切る地域ばかり)。その分、支出も東京が高い。%で見た分散状況は全国も東京もほとんど変わりないが、東京には12.5万円以上の鳶ぬけて高い富裕層が多いと言える。 

    消費者の皆さんにあっては、世帯人員も配慮し「このくらいが支出の平均」という目安を立て、生活環境を考え、目安以上に食の贅沢をするもよし、抑えるのもよしである。

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売り場規模

備考

調査分析
  レンターカー含む交通・宿泊費

300~600坪

40件の訪問

調査含む

30万円

実費

300坪未満

25件の訪問

調査含む

20万円
 

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2014年6月19日木曜日

農産物直売所も農薬検査の対象(埼玉)-対応策の早期実現を!

 6月17日の読売新聞埼玉版ページに、「直売野菜も農薬検査」の記事が出ていた。埼玉県では農薬の残留検査を直売所まで広げた。昨年末に独自の検査要領を策定、4月から県内4ケ所の保健所が直売所の抜き打ち検査を月3回ほど実施し、採取した野菜は県衛生研究所に持ち込み、10日前後で結果を通知しているとのこと。 

 これまでの結果によれば、県南部と西部の直売所でシュンギク、ホウレンソウから使用禁止農薬が検出され、廃棄処分にしている。 

 当ブログでは、千葉県の某直売所の禁止農薬使用―営業停止事件や直売所のトレーサビリティの情報開示事例も紹介してきた。当方はNPO「食の安全・安心支援機構」の会員だった時期には、当方もトーレサビティの詳しい調査をしたこともある。 

問題は、JAなどがトレーサビリティを実施しているにも関わらず、多品種・少量生産の直売所の商品にまで、充分に対応していないように思う。JA系の直売所の目立つ場所に、検査結果の綴りを展示している例も見られるが、100人以上の出荷者がいるにもかかわらず、綴りの開示はせいぜい10~20人、品目数で30~60点止まりの例しか見られななかった。綴りの開示もさることながら、「当店は全品の農薬検査実施済み」のPOPを堂々と貼れることが望ましい。 

実際は「出荷者の名前が表示されているから安心」とのコンセプトで、「真の安全保証」を怠っている直売所がまだ多いのではないか。直売所の伸びが心配される今日こそ、トレーサビリティ(生産履歴の追跡システム)を完全実施し、「新鮮さだけでなく、安全管理も十分な直売所」を目指すべきだろう。多少、労力や設備の充実も必要になるが、 

問題はJA関係の直売所では、OCR記帳シート配布→記入し出荷前に提出→OCR(文字)読み取り→集中センターのプログラムで自動確認→本人に通知・・・のチェック体制ができている。JA以外の直売所では、どこかの集中管理システムに参加で切ればよいが、それもかなわない中小グループ、個人の直売所も多い。どうすべきか? 

奈良県の某例では、農林振興センターの協力を得て、簡易な方法で確実なチェックを実施している。これを参考に当方なりきに簡易農薬チェック・システムを考えると・・・A4横長の用紙を準備し、下記を印刷し、必要生産者に渡す。生産者は出荷前にFAX送信するか、直売所に持参しコピー分を渡す。直売所は暇な時間帯にチェックし、結果を電話等で連絡。

直売所扱いの全品目について、品目ごとに生産履歴記入表を作成する。

基本記入項目は、品目名、氏名、生産者番号、住所、電話(携帯がベター)、FAX、栽培開始日(播種・定植)、収穫予定日、栽培面積(坪、本数)。

チェック記入項目として、左から右に、農薬名、希釈倍率・10a散布量、使用時期、

対象病虫害、使用月日(4月/12日―例)を書ける欄を4枠ほどとる。

上記の枠の下には、あらかじめ使用できる農薬について、全種類の農薬の希釈倍率、散布量、散布時期、対象病害虫について記入しておく。空欄は使用月日のみで、ここだけ生産者が記入。 

以上であれば、書きなれない高齢者にも十分記入可能のはず。また、希釈倍率、使用時期、対象病害虫も書いてあるため(この欄は振興センター等の協力も得る)、間違った使用も事前に防止できる。

 
追伸
読売新聞の9月21日(日)の「談論風発」に神戸市の主婦・谷井利子(54才)の下記投稿が掲載されている。参考までに。

私たち夫婦は、農業を営んでおり、地域のJA直売所に野菜などを出荷しています。そこでは、栽培履歴を毎月提出しないと、出荷できません。何月何日に種をまき、どんな肥料を使い、どんな農薬をいつ使用したかなどです。
農薬は必ず作物に適したものを使い、年に1回ほどの講習会を受ける必要があります。安全にたいしてはかなり徹底してます。
育てた人の名前がわかり、安全が保証された作物を、消費者の方に安心して欲しいと思います。

 

2014年5月24日土曜日

ファームドゥは「零細農家の強い味方」!!(テレビ東京22日放映・カンブリア宮殿)

 
   群馬県前橋市に本社を置くファームドゥ㈱会社(社長・岩井雅之氏)の素晴らしさの一端は、本ブログで2010年11月26日に紹介ずみ。今回のカンブリア宮殿で、村上龍氏の解説のもとに、全貌が余すところなく紹介された。 

 群馬、東京、埼玉、神奈川等に産地直送の食の駅(大型店)、地産マルシェ(コンビニ風小型店)、援農‘S(農業生産資材)、レストラン等、計36店舗を展開、宅配も手掛け、年商74億円の急成長企業である。従業者550名ほど。
 

写真-1 右が岩井社長 中が村上龍氏

当初の業態は援農’Sだったものが、農家の1人が「うちの野菜は飛び切り美味い。おたくで売ってくれ」の要望があり、実際美味かった。これがきっかけで、野菜販売に乗り出し、いまや5,000軒の農家を組織する産地直送チェーンに成長しおたのだ。肉、牛乳・乳製品、豆腐、納豆、漬物、ゆでめんなど、生鮮・日配業者の組織化も進んでいるのが特徴で、これら業者の社長の顔写真も売場に展示されている。 

1.農家の目線と鮮度第1主義

大きな特徴の小・零細の農業者、さらに専業農家も含め5,000軒を組織し、「新鮮」を第1義の置き、①農家による値付け、曲がったニンジン、ダイコン等もOK、パックの出荷もOK、④多数の支店のどこに出すかも各自決定、出荷の箱も,古箱等なんでもOK・・・と農家本位の取引をしている。品揃えも豊富でジャガイモなら7種、長ネギなら9種はすぐある。赤ネギ、天ぷらに向いたアカシアの花もある。雪下ニンジン、茎ブロコリーもある。

 
写真-2 曲がったニンジンのパック
 
岩井社長は、「野菜の評価は80%まで鮮度だ」と言う。このためレタス農家では、午前2時に収穫するが、昼の収穫に比し水分が多くみずみずしい。ある農家は800個、100ケースのレタスを3時半に車に積み4時に自前の集荷場に集める。朝採りキュウリも午前5時に収穫し、これらを積み午前6時には群馬を出発し、午前9時には東京の三鷹店等に届く。すべての商品を収穫から24時間以内には店に届け、鮮度を維持している。 

社長は農家の3男として生まれ、養蚕、畑作、コンニャク栽培など、親の大変さを見て育った。二束三文に買いたたかれる姿も見てきた。このため「農家の目線」ですべて判断するよう努力した。資材販売の面でも鍬の角度、柄の長さまで群馬、埼玉、栃木と土地柄を見て変えたものを販売してきた。 

そして、20年かけ、農家の所得が上がり、喜ばれる独自のビジネスを構築した。出荷は1パックでもOK、店の選択もOK、輸送箱も自由などもその一端である。ある農家の人は月83万円になると喜んでいた・・・これは直売所出荷平均の年販売額である。 

年に2,000万円以上売る専業農家も誕生している。また、某農家は、かつてハウス22棟でホウレンソウを栽培していた。現在は81才で大きな栽培できずハウス1棟のみ。勧められ夫婦で直売所出荷を始め、1日1万円を売る。「1袋でも出荷でき、女性でも出来る。働く喜びを与えてくれ感謝している」と語っていた。 

2.ソーラ発電や中国にも進出

社長のアイデアは尽きない・・・耕作放棄地に着目し、すでに15ケ所でソーラ発電を始めた。それだけではない。光が15~20%しか当たらなくても育つフキなどの栽培を、パネルの下で奨励している。 

 
写真-3 耕作放棄地を使ったソーラ発電・野菜作
 
 
写真-4 耕作放棄地で相互利益をもたらすシステムを
 
またモンゴルのウラバートルに行き、モンゴルは畜産国のため野菜や果物が中国から入り、何日も輸送にかかるため、鮮度・品質がまったくだめ。リンゴも1/3も腐ったようなものがテレビで紹介された。カリフラワーにはカビ。キャベツのようなものが30日かかりで輸入されている。 

モンゴルでも富裕層が増え、3~4割高くても買う。「日本のノウハフ、マネーを入れ、新鮮で良いものを作れば倍値でも売れる」と気づいたそうだ。畜産国で野菜・果物のノウハウがないが、きれいな水が豊富。すでに25haの農地を確保し、キャベツ、ニンニクを植え、イチゴの苗も6,000株植えた。将来は加工も手掛ける。 

 いずれにしても、農家の目線で接し、そして農家同士の仲で信頼関係を築いてきたからこそ、ソーラ発電のための耕作放棄地もなんなく貸してもらえた・・・ここにこそファームドゥの強さがある。

2014年5月19日月曜日

「直売所農業が地域を救う 定年は80才」は直売所関係者必読!

 日本の農業には、機械化によって省力も可能で、規模拡大も可能な平地の農業もあれば、中山間地のように山肌を這うように小さな区画で、省力化も進めにくく、大規模化のメリットの少ない地区もある。そして中山間地が農地の60%を占めるとされる。つまり、一律に農業・農村を考えるのは間違い。-律に方向性を打ち出せば、限界集落ばかりになる。 

 最近、「里山資本主義」(藻谷浩介著)という本も出て、ベストセラーにもなっているが、これも一律主義へのアンティテーゼある。山には森林が使われずにあり、この無料の資産をバイオマス発電とし有効利用し、成功した例もあれば、中山間地や里山地区には耕作放棄地という無料の資産があり、耕してくれることを望んでいる。この里山資本主義を実践しているのが、下記の大分県清川村かもしれない。 

「直売所農業が地域を救う 定年は80才」(著者・三浦俊荘・青木隆夫。ベネット刊・本体1,000円)は、大分県中山間地にある「有・清川ふるさと物産館夢市場」を中心とした物語である。しかも約25人(夫婦での記述も1人として)が、それぞれ直売所出荷や生産・加工の喜びを語っている。珍しく生の声が多数聞ける冊子である。 
 

 
   ごたぶんにもれず、清川村でも高齢化が進み、出荷量も衰え見せ始めている。だが、新規就農者もあたたかく迎え入れ、直営農場(3ha。将来10~20ha)も設けて、出荷量の確保に励んでいるのがすばらしい。直営農業で経験を積み、地元に新規就農する人もいる。既存の生産者も、「80才までは生産年齢」とし、高齢化に負けまいと頑張っている。 

その牽引役が著書の1人でもあり、夢市場のある道の駅館長の三浦俊荘さんである。全国直売者研究会副会長でもあるが、役場職員だったものの、H12年に村長に村長から「お前は百姓の経験がないが、農業を重々勉強せよ」と物産館担当を命じられ、バレーで鍛えた体力と根性で市場を今日の繁栄に導いた。年商は3億円。 

この直売所は数々の特徴を持つ。まず全国区のオンリーワンとも言える、糖度21~22度にもなり、平均15~16度のグリンピーチ(わい化台についだ桃)がある。300~400gだと1個800円、中元用の6玉入りの箱は5,000円にもなる。
 

このグリーンピーチからはヒット商品のソフト・クリームのはか、ジュース、プッセ、ヨーグルト、もなか、キャンディー、コンポート、ロールケーキ、ゼリー等もつかられ、年商2,500万円になるとか。

マムシや金ゴマも特産商品に仕上げた。発芽入りゴマ、すりごま、金ゴマペースト、かりんとう。金ゴマポン酢もある。加工に使う金ゴマは買い上げているのも注目に値する。 

傘下の加工場も2つある。中野加工場では6人47~73才)のメンバーが朝2時に集合し酒まんじゅうを毎日500~700個作り、催事のときは1,500個も売る。ゆで餅、高菜まんじゅう。おはぎ、山菜おこわ、お弁当も作る。H24年の年商は」2,800万円という。原料のモチ米は地元ののうかと契約生産して買い上げている。 

もう一つは「清川まんじゅう加工グループ」だ。こちらも酒、炭酸、うぐいす、みそまんじゅうのほか、焼きもち、シバ餅など。やはり朝4時から5人掛。28才から73才のメンバーだ。7人だったときは3,000万円も売っていたという。 

多方面にわたり、成果をあげているが、さらに直営農場の隣接地に貸農園を作ったり、観光農園の計画もあるし、近畿日本ツーリストからツアー企画も持ち掛けられているほど。あとは読んでのお楽しみとしたい。