2014年5月24日土曜日

ファームドゥは「零細農家の強い味方」!!(テレビ東京22日放映・カンブリア宮殿)

 
   群馬県前橋市に本社を置くファームドゥ㈱会社(社長・岩井雅之氏)の素晴らしさの一端は、本ブログで2010年11月26日に紹介ずみ。今回のカンブリア宮殿で、村上龍氏の解説のもとに、全貌が余すところなく紹介された。 

 群馬、東京、埼玉、神奈川等に産地直送の食の駅(大型店)、地産マルシェ(コンビニ風小型店)、援農‘S(農業生産資材)、レストラン等、計36店舗を展開、宅配も手掛け、年商74億円の急成長企業である。従業者550名ほど。
 

写真-1 右が岩井社長 中が村上龍氏

当初の業態は援農’Sだったものが、農家の1人が「うちの野菜は飛び切り美味い。おたくで売ってくれ」の要望があり、実際美味かった。これがきっかけで、野菜販売に乗り出し、いまや5,000軒の農家を組織する産地直送チェーンに成長しおたのだ。肉、牛乳・乳製品、豆腐、納豆、漬物、ゆでめんなど、生鮮・日配業者の組織化も進んでいるのが特徴で、これら業者の社長の顔写真も売場に展示されている。 

1.農家の目線と鮮度第1主義

大きな特徴の小・零細の農業者、さらに専業農家も含め5,000軒を組織し、「新鮮」を第1義の置き、①農家による値付け、曲がったニンジン、ダイコン等もOK、パックの出荷もOK、④多数の支店のどこに出すかも各自決定、出荷の箱も,古箱等なんでもOK・・・と農家本位の取引をしている。品揃えも豊富でジャガイモなら7種、長ネギなら9種はすぐある。赤ネギ、天ぷらに向いたアカシアの花もある。雪下ニンジン、茎ブロコリーもある。

 
写真-2 曲がったニンジンのパック
 
岩井社長は、「野菜の評価は80%まで鮮度だ」と言う。このためレタス農家では、午前2時に収穫するが、昼の収穫に比し水分が多くみずみずしい。ある農家は800個、100ケースのレタスを3時半に車に積み4時に自前の集荷場に集める。朝採りキュウリも午前5時に収穫し、これらを積み午前6時には群馬を出発し、午前9時には東京の三鷹店等に届く。すべての商品を収穫から24時間以内には店に届け、鮮度を維持している。 

社長は農家の3男として生まれ、養蚕、畑作、コンニャク栽培など、親の大変さを見て育った。二束三文に買いたたかれる姿も見てきた。このため「農家の目線」ですべて判断するよう努力した。資材販売の面でも鍬の角度、柄の長さまで群馬、埼玉、栃木と土地柄を見て変えたものを販売してきた。 

そして、20年かけ、農家の所得が上がり、喜ばれる独自のビジネスを構築した。出荷は1パックでもOK、店の選択もOK、輸送箱も自由などもその一端である。ある農家の人は月83万円になると喜んでいた・・・これは直売所出荷平均の年販売額である。 

年に2,000万円以上売る専業農家も誕生している。また、某農家は、かつてハウス22棟でホウレンソウを栽培していた。現在は81才で大きな栽培できずハウス1棟のみ。勧められ夫婦で直売所出荷を始め、1日1万円を売る。「1袋でも出荷でき、女性でも出来る。働く喜びを与えてくれ感謝している」と語っていた。 

2.ソーラ発電や中国にも進出

社長のアイデアは尽きない・・・耕作放棄地に着目し、すでに15ケ所でソーラ発電を始めた。それだけではない。光が15~20%しか当たらなくても育つフキなどの栽培を、パネルの下で奨励している。 

 
写真-3 耕作放棄地を使ったソーラ発電・野菜作
 
 
写真-4 耕作放棄地で相互利益をもたらすシステムを
 
またモンゴルのウラバートルに行き、モンゴルは畜産国のため野菜や果物が中国から入り、何日も輸送にかかるため、鮮度・品質がまったくだめ。リンゴも1/3も腐ったようなものがテレビで紹介された。カリフラワーにはカビ。キャベツのようなものが30日かかりで輸入されている。 

モンゴルでも富裕層が増え、3~4割高くても買う。「日本のノウハフ、マネーを入れ、新鮮で良いものを作れば倍値でも売れる」と気づいたそうだ。畜産国で野菜・果物のノウハウがないが、きれいな水が豊富。すでに25haの農地を確保し、キャベツ、ニンニクを植え、イチゴの苗も6,000株植えた。将来は加工も手掛ける。 

 いずれにしても、農家の目線で接し、そして農家同士の仲で信頼関係を築いてきたからこそ、ソーラ発電のための耕作放棄地もなんなく貸してもらえた・・・ここにこそファームドゥの強さがある。

2014年5月19日月曜日

「直売所農業が地域を救う 定年は80才」は直売所関係者必読!

 日本の農業には、機械化によって省力も可能で、規模拡大も可能な平地の農業もあれば、中山間地のように山肌を這うように小さな区画で、省力化も進めにくく、大規模化のメリットの少ない地区もある。そして中山間地が農地の60%を占めるとされる。つまり、一律に農業・農村を考えるのは間違い。-律に方向性を打ち出せば、限界集落ばかりになる。 

 最近、「里山資本主義」(藻谷浩介著)という本も出て、ベストセラーにもなっているが、これも一律主義へのアンティテーゼある。山には森林が使われずにあり、この無料の資産をバイオマス発電とし有効利用し、成功した例もあれば、中山間地や里山地区には耕作放棄地という無料の資産があり、耕してくれることを望んでいる。この里山資本主義を実践しているのが、下記の大分県清川村かもしれない。 

「直売所農業が地域を救う 定年は80才」(著者・三浦俊荘・青木隆夫。ベネット刊・本体1,000円)は、大分県中山間地にある「有・清川ふるさと物産館夢市場」を中心とした物語である。しかも約25人(夫婦での記述も1人として)が、それぞれ直売所出荷や生産・加工の喜びを語っている。珍しく生の声が多数聞ける冊子である。 
 

 
   ごたぶんにもれず、清川村でも高齢化が進み、出荷量も衰え見せ始めている。だが、新規就農者もあたたかく迎え入れ、直営農場(3ha。将来10~20ha)も設けて、出荷量の確保に励んでいるのがすばらしい。直営農業で経験を積み、地元に新規就農する人もいる。既存の生産者も、「80才までは生産年齢」とし、高齢化に負けまいと頑張っている。 

その牽引役が著書の1人でもあり、夢市場のある道の駅館長の三浦俊荘さんである。全国直売者研究会副会長でもあるが、役場職員だったものの、H12年に村長に村長から「お前は百姓の経験がないが、農業を重々勉強せよ」と物産館担当を命じられ、バレーで鍛えた体力と根性で市場を今日の繁栄に導いた。年商は3億円。 

この直売所は数々の特徴を持つ。まず全国区のオンリーワンとも言える、糖度21~22度にもなり、平均15~16度のグリンピーチ(わい化台についだ桃)がある。300~400gだと1個800円、中元用の6玉入りの箱は5,000円にもなる。
 

このグリーンピーチからはヒット商品のソフト・クリームのはか、ジュース、プッセ、ヨーグルト、もなか、キャンディー、コンポート、ロールケーキ、ゼリー等もつかられ、年商2,500万円になるとか。

マムシや金ゴマも特産商品に仕上げた。発芽入りゴマ、すりごま、金ゴマペースト、かりんとう。金ゴマポン酢もある。加工に使う金ゴマは買い上げているのも注目に値する。 

傘下の加工場も2つある。中野加工場では6人47~73才)のメンバーが朝2時に集合し酒まんじゅうを毎日500~700個作り、催事のときは1,500個も売る。ゆで餅、高菜まんじゅう。おはぎ、山菜おこわ、お弁当も作る。H24年の年商は」2,800万円という。原料のモチ米は地元ののうかと契約生産して買い上げている。 

もう一つは「清川まんじゅう加工グループ」だ。こちらも酒、炭酸、うぐいす、みそまんじゅうのほか、焼きもち、シバ餅など。やはり朝4時から5人掛。28才から73才のメンバーだ。7人だったときは3,000万円も売っていたという。 

多方面にわたり、成果をあげているが、さらに直営農場の隣接地に貸農園を作ったり、観光農園の計画もあるし、近畿日本ツーリストからツアー企画も持ち掛けられているほど。あとは読んでのお楽しみとしたい。

2014年4月15日火曜日

農産物直売所の数は全国16,816なのか23,560なのか?

 今回、農水省「6次産業化総合調査」(平成24年度実施・B欄)が、4月1日に公表された。農産加工、直売所、農家レストラン、民宿、水産加工等について詳しい情報がでている。ネットで検索すればすぐ出てくる。問題は直売所の資料である。全国の経営体の数が23,560、総年売上高8,448億円となっている。

 これまで、我々が頼りにしてきたのは農水省「農産物地産地消等実態調査」(平成21年度実施-23年7月25日公表・A欄)のもので、直売所数(今回は経営体数で、本来違いがないはずですが)16,816件、年総売上高8,767億円である。3年間経過してた今日、売上高においては近似しているものの319億円少なくなっている。逆に経営体数は1.40倍になり、,744経営体も増加している。明らかに大きな矛盾だ。 

 2つ統計に大幅な乖離があり、何を信じてよいか統計の信頼性を揺るがす。今回調査の「直売所認定の規定」も読んだが、「無人販売所、移動販売及びインターネットのみによる販売は除く」としており、21年度調査と一致しているように思えるのですが、経営体数の乖離があまりにも多過ぎる。今回の経営体の数の乖離は、主に農家のテント掛けハウス等の畑隅販売を計上したためと思われる(後記)。

表―1 21年と24年調査の数値比較   (左項目)


0

 分類

事業体数

0

   /調査年度

21年 A

24年 B

1

農業協同組合 小計①

1,901

1,950

2

農協女性部・青年部

427

 

3

生産者又生産者グループ

10,685

5,170

4

農家個人 (Bの分類)

 

11,090

5

農家法人 (Bの分類)

 

490

6

       小計

10,686

16,750

7

第3セクター

450


640

8

地方公共団体

203

9

       小計

653

640

10

会社   (Bの分類)

 

3,149

1,430

11

その他    

2,790

12

       小計④

3,149

4,220

13

合計 ①+➁+➂+

16,816

23,560

表―2 21年と24年調査の数値比較   (右項目)



総売上額(億円)

1事業体年売上(万円)


21年 A

24年 B

21年 A

24年 B

1

2,811

1,176

14,787

6,031

2

124

 

2,904

 

3

2,452

1,255

2,296

2,427

4

 

573

 

517

5

 

119

 

2,429

6

2,776

1,947

2,598

1,162

7

518


656

11,511


10,250

8

139

6,847

9

657

656

10,061

10,250

10

 

2,723

484

 

8,647

3,385

11

2,408

8,631

12

2,723

2,892

8,647

6,853

13

8,767

8,448

5,213

3,586

<注>1.横幅がないため、本来右に繋がるべき表を表―2として
下段に持ってきた。2.4つの小計を黄色のストライブとし、Aに
比しBが大幅に異なる場合、オレンジ色にした。3.Aに比しBが
大幅に異なる場合、水色とした。

 どこで差が生れたかを、類似項目について整理し比較してみた。結果は・・・21年調査と24年調査の乖離が大きいのは、(1)農協経営の直売所の売上高及び1事業体売上高、(2)生産者または生産者グループ等に分類される事業体数、売上高、1事業体売上高、(3)会社その他の直売所の経営体数、1事業体売上高だった。全体の売上高やその他の「小計」は比較的近似した数値も多い。
 

特に経営体の数の差を生んでいるのは生産者及び生産者グループの小計で、約6,000件のふくらみがある。農家個人が畑隅にブルーシート掛け等の2~6坪ほどのトンネル状のハウスを作り販売している売上高の小さいものが、かなりカウントされているものと推定される。確かに小計➁欄の農家個人のばあい、1経営体当たりの年商は517万円、1日当たりでは1.4万円と極めて少ない。
 
・・・東京の23区+多摩地区の中央線や総武線の沿線部にはこのような例が無数にあります。つい最近も昭島市、立川市を車で走り実感した。また武蔵野市の直売所の紹介パンフでは全直売所がこのタイプ。都市部と近郊部にはこうした例が多く、統計数字が膨らんだとみるべきだ。6次産業化の調査となると、これらが無視できないためと言えよう。
 
なお、これまでの農水省、まちむら機構、JA等の直売所統計のどれもが、要素別のクロス分析がなされておらず、コンサルタント泣かせの統計である。クロス分析ができるはずなのに、各要素の平均値と分散状況が示されるだけで、売り場面積(時にレジ台数または従業者数)に対応した年商とか客数、駐車台数等の相関が示されずに終っており、税金の無駄使いになっているのが残念である。