1.その現状と問題点
(1)セブン店舗数を3,000店も超える
農産物直売所は都市生活者にとっても、身近な存在になっている。東京23区にもあれば、土日に空き店舗や軒下を利用した都心型の直売所や集団化したマルシェ(青空市場)もある。
農業センサスによると、全国の直売所は2005年に13,538あったものが、2010年には16,829と大幅に増えている。運営主体の内訳は地方公共団体210、第3セクター462、JA経営2,315、その他13,842となっている。「その他」は個人、グループ、農事組合法人、会社組織など様々だが、個人や有志の任意組合が圧倒的に多いはずである。
コンビニエンス・ストアの雄・セブンイレブンの国内店舗数は現在約13,050店で、直売所の5年前に近く、「セブンに近い店舗数」と言われてきたが、あっさり追い抜いたところに今の直売所の成長性が読み取れる。数が増えたため最近は「直売所に出してきたが、売上が減り魅力がない」の声もよく聞くほどで、様々な問題も浮上している。。
診断士仲間ともに3店について各400人(平日200人、土日200人)、計1,200人の来店客調査をしたが、顧客視点から見て様々な問題を抱えている。苦情・要望で突出しているのは「品揃え」の40.1%である。直売所も小売りの業態であり「主人公は商品」だが、「午後に行けば欠品だらけ」「季節の特定品目に集中」といった例が実に多い。店舗の通路の狭さ、駐車場の狭さ(年商500万円に1台が目安)、価格の高い安いのバラツキ、接客の悪さ、POP表示の不足なども問われている。問題は顧客視点からスタートしていないことにある。
また多数の直売所に接し、関係者の話も聞くと、問題の本質はもっと深いところにあると思う。例えば・・・
①「手数料制・残れば生産者に返品」が普通であり、リスクなき企業のため、スーパーに等しい厳しい経営努力、サービスがされない。閉店時間も17時が一般的である。
②返品ありのため、追加補充がされず、午後になると極端に品薄になる。午後の客数が大幅に減てしまうのにレジ要員数は同じで、人件費率を高め、貴重な設備を遊ばせることにもなっている。
③店長が「生産者自身が高齢化し、出荷量が減っている」と答える場合が多いいが、出荷予備軍を育てる等の努力がされていない。
④数が増えため、店間や生産者同士の価格競争も起きている(生産者組織が売価設定のルールを設定しているところは別)。
⑤並みの直売所では、当初3年ほどは売上が伸びるが、その後は停滞、減少に転じる。チラシを播かなくても、足元地区は3年ほどで開拓が完了し、その後の発展策が準備されていない。
⑥地域に依存(地産・地消費)した属地主義のため、支店を次々出し、発展をはかることはできない。 商圏半径も5~25kmと広く、近くに支店を持てば食い合いになる。
⑦手数料一つとっても12~23%と極めて幅があり、委託品と仕入れ品の比率も様々で、多数の指導書が出ているものの、経営指標というものが明確になっていない。
2.外部参入企業によるチェーン化
最大の問題は、外部の参入である。千葉県に本部を持つホームセンター他を経営してきたタカヨシは、直売所「わくわく広場」を直営やフランチャイズで千葉、神奈川、茨城、東京に46店展開。
群馬県に本部を持つ「ファームドゥ株式会社」は、肥料・農薬・種苗などの販売がメインと思われるが、直売所機能と道の駅機能を合体した「食の駅」「食の駅+援農S」の売り場150~300坪店を群馬中心に9店舗、直売所+コンビニ機能をコラボレートした「地産マルシェ」30~40坪を都内と埼玉に7店展開している。資本金1億7千万円、従業員540名、年商142億円である。群馬や埼玉地区の農業者5千人ほか日配加工業者を農商工連携的に結集し、計画された品揃え、陳列・レイアウト、外装の店を出している。一般直売所にくらべれば魅力を多数持っている。
NEXCO東日本、中日本、西日本といった高速道路会社も、それぞれ直売所を設置する方向で数店を開設している。中日本の場合チャレンジV計画により、サービスエリア10ヶ所への出店を予定し、すでに計4ヶ所に「やさい村」を開いている。山梨の「談合坂」のばあいテント掛け50坪(レジ2台ー年商推定1億2千万円)ほどだが、通常の直売所と同様、出荷組合の品を野菜20~加工品25%で委託販売している。運営はNEXCOの子会社が当たっている
チェーンオペレーションにたけたスーパー等が本格参入すすれば、サービス力を欠いた直売所はひとたまりもない。このため体質強化を支援していくことが急務である。
3.顧客視点に立った販売に
問題の一つは顧客調査がされず、顧客属性や行動が分からないまま、「作り易い物を作り、出来たものを全量出し、大雑把な値をつけて売る」といった勝手主義だ。顧客視点の販売に変えていく必要があり、店頭での顧客調査も支援の対象となる。
スーパーの商圏半径は徒歩圏0.8km(都心部)~自働車圏2.5km(群馬・長野など)だが、調査で分かったことは、直売所は近隣型でも5km、長距離型では15~25km(幹線道路沿いや道の駅)、超長距離型では50~200km(観光地等)にもなる。広く浅くの集客である。
調査2店で1km圏の世帯数に対する週来店頻度を出すと、0.254回、0.194回となる。スーパー等(50地区の近藤調査)については、1世帯週平均4.59日買物に出て、平均4.0店を利用している(生協の共同購入、ドラッグストア等を含む)。1店平均週1.15回の来店となる。これは商圏全体の平均で、1km圏の店に限ればもっと高いことになる。主婦の買い物頻度と比べて1/4~1/5という低さだ。この事実は「特定ニーズ」「特定ライフスタイル」客を中心に集客していることになる。
主婦の食のライフスタイル区分はQ=クオリティ型 V=バライティ型 P=プライス型 C=コンビニエンス単独型、そしてQ、V、Pの複合に分かれる。
Q型(品質志向客)
物を吟味し、専門店、SM、直売所、生協など使い分ける。真摯に食と向き合う層で直売所の顧客のほとんどはQ型と見ている。
V型(品揃え志向客)
地方性の高い土産品購入大手SM・GMS・デパート好み。華美な消費。このため観光地の直売所に
は良く寄ると見る。
C型(便利性志向客)
近い、ついで、勤め帰り道、行き易い、長時間営業など便利性で動く。ドライブ、散歩、ジョッキングなどのついでに直売所による。
P型(価格志向客)
加工食品・雑貨を含め、ディスカウント店やチラシ商品を選ぶ。青果の安さのみでは動かない。このため直売所と無縁の場合が多い。
<注>SM=食品スーパー。GMS=総合スーパー
直売所3店の利用理由調査によれば、3店平均で新鮮92.3%>安さ53.5%>安心29.4%>品質・味28.3%>青果の品揃え25.3%>安心29.3%>珍しい品6.8%>特産品あり4.9%>生産者と対話可3.4%となる。「新鮮さの魅力」が突出している。これは別途関東5県(栃木除く)・長野・山梨・静岡の18地区500人の主婦対象の「食のライフスタイル区分」(近藤調査・分析)のQ型客と重なる。
Q型は商品の鮮度・品質を重視、良いとなればSMだけでなく、専門店、直売所、生協などで選択購入する。V型はGMSやデパ地下を好みで、GMSを1番店として選択する率がQ型やP型の5倍にもなり、青果専門的な直売所を好まない。アッパー層が含まれ、道の駅やドライブインなどの直売所で地方名産品と言った珍しいものは買うと見る。Q型もV型も40~70代の所得が高位安定した層に多い。Q因子が絡む主婦は36.7%と最大多数である。
P型は所得が低い20~30代に多い。世帯員1人当たり食費支出も50~60代の2/3程と低く、野菜だけが安くても直売所に来ない。実際直売所調査2店の平均では20~30代の構成比は12.4%%、土日だけに限っても19.3%と低いことでも証明される。C型は中立で、散歩やドライブの途中に直売所があれば寄る。
Q型は鮮度・品質が良ければ、市場出荷できない規格外品も買うが、反面こだわりを持った高品位の品、減農薬・減化学肥料の品も買う可能性がある。「料理の選択基準」においても健康、安全、美味、季節の味、簡便さなど総べての要素でトップを占め、食と真摯に向き合うタイプ。直売所は試食、料理教室、パンフ、POP等を通じ、Q型客を育てることが必要になる。
4.強固な出荷組織の運営を
同時に生産者に顧客視点に立ち、計画的に①顧客ニーズに沿った種類や質の品を、②必要な量だけ作り、③適正な売価で供給し、④苦情が多い場合、出荷停止・・・といった運営になっている必要がある。「勝手主義」の運営では品揃え不足(珍しい新製品や減農薬品等)、午後の欠品、売価競争や不適正な売価設定といった問題は解決しない。
大きな白板や黒板を使い、当日の売価基準を示している直売所も多々ある(埼玉県・花園農産物直売所等)。また出荷者が高齢化し、量が不足する場合、企業をリタイア-した兼業農家の人を育てるとか、市民の援農組織を結成し手伝ってもらうなど、打つ手はいくつもある(八王子市や入間市に事例あり)。
直売所組織の運営にしても、午後の欠品が多い場合、①午後出しの人は、翌日出荷時に返品、②午後出しの手数料を下げる、③午後は買取りにする。残れば翌日午前に値引き販売するとか惣菜に回す・・・などこれまた打つ手は多数ある。福岡市の「ぶどう畑直売所」は全量買い取りだ。女性が代表者(新開玉子氏)惣菜等の加工販売が得意のためである。
5.直売所発展の方向・・・すでに本ブログで何回となく言及ずみ。
(1)量的拡大戦略
減農薬・減化学肥料品、ときに精肉、惣菜、FF、農家レストラン等の充実。給食センター、民宿、ホテル等への供給→客単価の向上
(2)質的拡大戦略
こだわりの良品販売に徹し、直売所そのものをブランド化し、広域集客やギフト宅配を増やす→広域商圏化で客数拡大
(3)多層化戦略
農家レストランにとどまらず、ハウスなどの観光農園、体験施設、遊園地等も加え、総合的な憩いとレジャーの場を構築→超広域化さて、最大の課題は売上髙の停滞ないし減少対策である。もはや「地産・地消」といった単純なコンセプトではやれなくなっている。様々なこだわりを意識し、個性あるコンセプトの直売所を創造し、成長性を維持できるよう支援する必要がある。発展策として3方向が考えられる。
1は選択性を広げ、地元消費をさらに開拓し、客単価や売上髙を伸ばすことだ・・・つまり地元ニーズの深起しである。養豚の盛んな茨城の「JAポケットファームどきどき牛久店」や静岡県富士宮市の「う宮やーな」は、自店処理の精肉コーナーや主婦のランチを狙った大規模レストランも持つ。
2については、全国直売所研究会長の長谷川久夫氏が経営する「みずほの村市場」が好例である。農業者の所得向上を第1義とし、仮にAのホウレンソウが100円とすると、Bはこれをしのぐ良品でないと出荷を認めない。「良」となれば「120円で売ってよい」となる。野菜はもちろん米、加工食品、菓子まで含め、近隣スーパーにない「こだわり品」ばかりである。野菜コーナーでは常時7~8品の試食ができ、ヨウジを捨てる箱も準備している。裏のハウスでは時に1万円を超えるようの蘭(ラン)が50種ほどもある。直売所がブランド化され、商圏が広域化し県外客も多い。
3については三重県の「モクモク手づくりファーム」、埼玉県日高市の「サイボクハム」が先進例で、多様な業態を直営で集積している。後者派何回も訪問しているが、直営の加工場と合体したSMのミートセンター、楽 農広場という名の直売所、大規模な焼肉等レストラン、FF、天然温泉、パターゴルフ場、陶芸教室、3尾の子豚のいる小規模な遊園地からなり、食・遊・憩いといった「農業版デズニーランド化」を目指している。これにより、商圏は巨大化し、発展が持続する。他も直営や連携によってイチゴ等の観光農園、農業体験施設、広い植木園、コンビニ、精肉店、複数の飲食店、遊園地等を持つ道の駅付帯の直売所(群馬県のららん藤岡等)もある。
近藤・支援内容
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該当時間
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1.農業のマネージメント講座
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3~7時間
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2.農産物のマーケティング講座
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3~7時間
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3.農産物直売所の新たな発展策講座
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3時間
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4.直売所・顧客視点の販売促進講座
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3時間
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5.主婦の食のライフスタイル講座
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3時間
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6.直売所顧客調査(200~300人)
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2日16時間
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7.直売所の総合診断
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2日10時間
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8.農業経営総合診断
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2日10時間
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<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
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リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
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講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
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経営診断20万円(交通・宿泊費別)
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報告日は無料とし、交通・宿泊費別
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携帯 080-3464-2607 各種電話相談無料
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