各地からの直売所情報を聞くと「競合店やスーパーとの価格競争が激しく困っている」との声ばかりである。実際は「売れれない理由を価格にだけ求め、仲間内で値下競争している」のではないか。売上減の真の原因追究から目をそむけていないだろうか?
当方の農産物直売所3ケ所、計1,200人の顧客店頭調査では、来店理由のトップは鮮度で、その平均支持率は92.3%(1位)である。これは突出した数値である。スーパー等対象とした買い物理由調査の場合、鮮度の支持率は61.3%(近いの70.6%に次いで2位)である。その差約1.5倍である。
以上で分かることだが直売所の場合、圧倒的多数の人が鮮度目当てにきている。直売所客は鮮度・品質を好む客中心であることを、強く認識すべきだ。
安さの支持率も53.3%(2位)と確かに高い。スーパー等の調査では35.6%(3位)であり、やはりその差約1,5倍である。だが、同じ「安さ」といっても、直売所の安さは「生産者が直売し、中抜きのため合理的に安い」との認識であると推定している。直売所の顧客の75.1%までは、50代以上であり(2店各400人の調査)、所得的にも高く安定した層で、本来安さ志向ではない。
スーパー等の安さを支持する層は、所得が低く、パートに出ることも多い20~45才までの若年主婦である。子供さんもいて総合的に食品、菓子、雑貨などの安さを追求するので、野菜が安くても直売所に来ない。ディスカウント店を選んだり、スーパーのチラシを見て買い回れば、すぐ200円や300円は安く買えるからだ。ロスリダーと言われる目玉商品を3点買えば、それだけで300円や400円倹約ができる・・・開店指導でさんざんスーパーのチラシも作ってきたので明言できる。
「本質的な安さ志向客」がこの通り、ほとんど直売所に来てないのに、「スーパーや他の直売所との競争が激しいから安く売る」というのは、ある意味でムダな努力と言える。効果が出ないからますます安売りをしたくなってしまう。
直売所は数こそ16,800店となり、スーパーの約15,000店を超えたが、総売上高は8,800億円で、スーパーの18億9,000万円の4.7%に過ぎない。シェアからみればヒヨコと言ってよい。
今日、多くの直売所が売上げ、客数で低迷ないし縮小しているのは、発展方向を見失い、かつスーパーの過酷なまでの努力に比し、充分な魅力作りされていないからである。
具体的に言えば①柔軟なコンセプトの変更や顧客本位のコンセプトの設定、②計画的な出荷量や品質の確保、③新製品の開発、④安全・安心の向上、⑤POPの徹底や情報力の向上(他販促全般)、⑥店長自身やパートの教育、⑦計数・財務管理の徹底など。努力の領域は無限に残されている。営業時間・休日といた面でも、自分の都合が優先している(短い)。
1.柔軟で顧客本位のコンセプトの設定・・・「地産・地消」は直売所スタート時点の共通の理念であって、コンセプト(発想)ではない。コンセプトは、「ストア・コンセプト」とか「企業コンセプト」と言う字が前に付き、その店の個性を物語るものでなければならない。
地産・地消という言葉を金科玉条と取り、独自の個性が追求されていない。個性がなく、同じものをどこでも売れば、客は大型の品ぞろえの豊富な店に自然集まってしまう。
また「地産」のみにこだわれば、雪や寒さの時期に、全く商品が集まらない直売所もある。「顧客の利便を優先し、近隣や遠隔地のこだわりの商品も揃える」のも一つの発想である。「午後が欠品になりやすいので、仕入品も入れ、利便を優先するため、市場仕入もする」も発想の一つである。
現に20%前後の仕入品を入れ、夕方までパックし補充を続ける店で、60坪にもかかわらず年8億円強を売る店もある。この店の場合、まず青果の品ぞろえが80品目強と多い。普通は50~60品目止まりである。このほか米、米飯、餅、落花生、酒などの品ぞろえも他店の数倍ある。代表者も毎日店の補充を手伝いに来、率先垂範している。惣菜は残ると見れば、各人午後から値引きもする。仕入品をパックし補充するため、午後行っても、誰一人手持ちぶさたな従業員はいない。このため、利益も出て余剰金の積立もかなりな額ある。
ところで、「こだわり」も多様化しており、徹底した美味の追求、新品種や珍しいものの率先導入、トレーサビリティやGAP(管理適正規範の導入)による安全保障、減農薬や有機品の充実、商品知識の提供、満足してもらうおモテナシの徹底、6次産業品化による付加価値商品やサービスの充実・・・等々「こだわり」の引き出しを沢山持ち、複数の組み合わせで強い個性を創造すべきである。
最近でこそ、トレサビリティの記録ファイルを店に置く直売所も現れているが、真剣に安全・安心の保証を個性にした直売所に接したことは10に1つもない。
「地消」という枠はもともと空論である。直売所は近隣型でも、すぐ商圏半径は5kmにもなり、観光地に向かう道路沿いでは15~20kmになり、観光地であれば50~200kmにも及ぶ。集客圏はもともと地元を超えている。地元に限定すれば供給が消費をすぐ超えていまい、3年ほどで満杯になり伸びがなくなる。繁盛店はどこも直売所のブランド化で、広域集客を達成し、広域の宅配も増やし、「他消」に成功しているところである。
個性を強めれば、遠方からも来てくれ、「来年は季節になったら宅配で送ってくれ」「ギフトとして頼みたい」ということになり、努力次第で県下全体、日本全体を商圏にできる。このためには、「市場に出せない等外品を売る」から、「信頼される良品販売に徹する」というコンセプトへの転換も必要になる。
2.計画的な生産量と質・・・「好きな時に、好きな量を出荷すればよい」では、同じ品ばかり出荷され内部の価格競争を生む。出荷組合と店が充分POS情報も参考に、適正品質のものを、適正時期に出荷する体制を確立すべきだ。違反者にはペナルティを、計画履行者にはインセンティブを出すくらいにすべきである。茨城の「みずほの村市場」では実施している。安全・安心商品、新製品の開発もこの努力に含まれる。
3.POPの徹底や情報発信力・・・いまやスーパーのPOPは省力のため、アイキャチャーなどもないプライスカードになりきっている。直売所こそがPOPや印刷物を通じ、農業者の想い、商品知識を伝える唯一の場所になっており、この面でも個性を競うべきである。
試食見本も常時3~6品を用意する、糖度、美味しさ、その理由、安全管理、料理法、保存法、栄養価、素材の組み合わせで健康確保・・・など、食育・農育に沿ったPOP、写真パネル、料理教室、農業体験等もまたすこぶる必要である。
HP、プログ、ツイタ-といったネットを通じた、多面的な情報展開もしていけば、これまた商圏拡大になる。自店の従業員がITに弱くても、近隣に声を掛ければ月1~2万円でHPやブログを代行してくれる人もいくらでもいる。
できなければ、手書きで手渡しのチラシを作り店頭で配布したり、旅行社に送り、観光バスを呼び込む方法もある。売場でただ売上げ減を嘆くのでなく、行動に移すことではないか。
4.店長やパートの教育・・・定年退職後の人を半年とか1年研修を受けさせ、店長に据えるケースに良く出あう。5年たてば交代・・・これでは経験が蓄積しない。また、熟年のためパソコンのできない店長にも2例出あったことがある。若い30代、40代の人材を育て、JAなど組織が大きい場合、この人材が直売所担当の課長、部長となり、多店化の要になっていくぐらいでないと、旧・Aコープのように、衰退の運命をたどると思えてならない。絶えざるイノベーションのため、男性・女性、正社員・パートの別なく人材を育て、経営の革新に備えなければならない。
パートについても、マニュアルが準備され、かつ応用問題も解決できるよう、厳しい3~7日ていどの教育は必要である。これまでは店長が経験がなく、教育もできない店が多かったのではないか。数値目標も提示し、一緒に考える場も持ち、全員野球の出来るレベルアップを日々追求すべきだろう。
5.計数管理の徹底・・・財務管理はプロに任すとしても、毎日の売上高、客単価、客数、天候、気温、部門別売上等などは全員が見れるようにし、日々の成果とその原因を知り、改善のために役立てる必要がある。
長期的な低迷、減少が認められれば、価格競争に走るのではなく、個性を充実させる方向で、再スタートすべきだ。方向とすれば、すで別ブログで触れてきたが、下記3方向が考えられる。
①地域の深起こし・・・地域資源の再発見、惣菜や時に精肉の充実。学校給食・民宿・レストランへの供給。
②ブランド化・・・直売所の個性を強めブランド化し、商圏を集客、ギフト等の宅配を通じ広域化する。
③経営の多層化・・・6次産業化に沿い、ブランド化できる加工品の開発、農村レストランや体験農場の設置、料理教室、グリーンツウリズムとの結合による商圏の超広域化。
近藤・支援内容
|
該当時間
|
1.農業のマネージメント講座
|
3~7時間
|
2.農産物のマーケティング講座
|
3~7時間
|
3.農産物直売所の新たな発展策講座
|
3時間
|
4.直売所・顧客視点の販売促進講座
|
3時間
|
5.主婦の食のライフスタイル講座
|
3時間
|
6.直売所顧客調査(200~300人)
|
2日16時間
|
7.直売所の総合診断
|
2日10時間
|
8.農業経営総合診断
|
2日10時間
|
<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
|
リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
|
講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
|
経営診断20万円(交通・宿泊費別)
|
報告日は無料とし、交通・宿泊費別
|
携帯 080-3464-2607 各種電話相談無料
|