2011年12月4日日曜日

農業ファンドとは何か?6次産業化の強化!(加筆修正)

 注:H24年11月16日に改めて関東農政局から、農業ファンドの説明を受けた。骨子は変わっておらず、ごく一部補筆させていただく。

 農水省では25年度予算要求の柱の1 つとして、「農業漁業成長産業化ファンド(仮称)」の設立を掲げている。このため財政投融資資金200億円が計上されている。

 ファンドとは何か?。事業をするための元手、資本、基金と言った意味。 今回のファンドは、官民共同して 基金を出し、本ブログでも何回か紹介してきた6次産業化事業に資本投入して、農業者の資本力の弱さをカバーし、事業をより大きなものに育て、強い体質の農業にしようとするもの。TPP等の貿易自由化の流れにも配慮した施策といっても良い。賛否の議論は別として、中身について簡単に紹介すると・・・

 すでに触れたとおり6次産業化と一体の関係にあり、6次産業化プランナー等を300人規模から500人規模への増員したり(16 億→20億円)、輸出・観光等のメニューを追加したり(15億→23億円)、10%ほどの女性企業家枠を設定したりの施策とセットになっている。
 
 
 

  現在は1次産業年10兆円、2次産業(関連製造業)+3次 産業(流通・飲食業)年90兆円という規模である。1次×2次×3次の6次産業化事業は、過小資本のため農林漁業者の主体的な立場での価値連鎖の取組が遅れている。
 

 ファンドが出来れば、農林水産業者は6次事業体の25%以上の株を持てばよく、別途融資も受けられるので、最低4倍以上の資本で、事業展開できる。農水省では従来の投資規模の7倍程度、売上高10倍をめざしている。

 
 ファンドによるテコ入れで、6次化事業の資本強化をして付加価値の連鎖を高め、現在の1次の1兆円産業を今後5年で3兆円に、10年で10兆円に拡大して行こうとするものである。

 ファンドは下記の通り、3段階の仕組みである・・・
 1.(㈱農林漁業成長産業化支援機構に国及び民間の商社、食品 企業、金融機関=メガバンク等が出資。国は融資も行う。20年間の時限組織で、ファンド事業全体の指揮・監督に当り、意に沿わない案件に対しては拒否権を保持する。

 2.1のファンドの資金50%(上限)+地域金融機関や地元 企業が出資して、「地域ファンド」=サブファンドを立ち上げる。出資期間は最長15年(この間に下記の事業体について経営成果を上げ回収することを目標とする)。

 3.農林漁業者が25%以上、パ-トナー企業が25%以下、2の地域ファンド(サブファンド)が50%以下の出資をして「6次産業事業体」を立ち上げる。 事業が軌道に乗れば、農業者や連携事業者が地域ファンド分の基金(株)を買い取りる形で、1や2のファンドは資金を回収する仕組み。事業が失敗すれば、資金の回収が不可能になり、立上げには厳しい審査が必要となる。また運営には技術・販路・ノウハフ面でのタイトな連携が必要になる。

  農林漁業者は①高品質、②大規模供給力、③トレサビリテ ィ対応、④生産者グループ形成力等が求められる。また6次産業化支援組織のプランナーやパートナー企業が①販売ネットワークの提供、②マーケティング力、③物流ノウハフの提供、④IT技術の提供等をして支援していく体制が取られる。

 年200~500件ほどのスピードで、6次産業化ファンドを立ち上げる予定とされるが、これまで農業者1~3人程度が関係する「点」に近い6次産業事業を、地域の多数が関係する「面」に育てるといった期待が持てる。この点、意欲的なプランである。

 上記3のように、農業者の出資を25%以上にし、あくまで農業者主導の事業になるよう配慮されているが、民間企業の出資がはいることで農商工連携事業との違いが出せるか(農業者の所得向上)?との懸念もないわけではない。

 しかし農業者の弱い企画力やマーケティング力やを補ってくれ、所得率はやや下がっても、所得のボリュームを拡大することにつながることは間違いない。雇用の規模も多くなり地域活性化への効果も高まる。 

 (間違いがあるといけないので、詳細は今後、農水省のHPや新聞にも出ってくるので、正確にその知識を得て欲しい)


      近藤・支援内容
  該当時間
1.農業のマネージメント講座
3~7時間
2.農産物のマーケティング講座
3~7時間
3.農産物直売所の新たな発展策講座
3時間
4.直売所・顧客視点の販売促進講座
 3時間
5.主婦の食のライフスタイル講座
 3時間
6.直売所顧客調査(200~300人)
2日16時間
7.直売所の総合診断
2日10時間
8.農業経営総合診断
2日10時間
<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
経営診断20万円(交通・宿泊費別)
報告日は無料とし、交通・宿泊費別
     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料

2011年11月19日土曜日

農産加工品の売価・値入れは?売価調査が必須!

    これは加工品の話ではないが、鹿児島の方から「直売所で初めて花を売ることになったが、売価設定をどうしたら良いか」と問われたとき、「原価÷0.50~0.40で良いのではないか」と答えたことがある。

  だが農家の方で、自家製品の原価を正確に把握している人は、10%もいないことが分かっている。分かっていながら上記のアドバイスをするのは矛盾である。6次産業化や農商工連携事業で、ジャムやジュース、チーズ、ソフトクリームなどの新製品を作る場合も、同じように原価が問われる。

  平均的な農産物の原価は、農水省や県農業試験場などの経営指標を参考にすれば、主材料の原価は出せる。経営指標について言えば、北海道(農業生産技術体系)、秋田、石川7、群馬、長野、岐阜、鳥取、広島、山口、熊本など多数の県で、細かい作物・畜種ごとの指標が出ている・・・農水省のものよりはるかに細分化した作物別の統計がある。ぜひ参考にして欲しい。

 だが、法人経営などにおいては商品別、作業別の労働時間の記録をとるようにしないと、正確な原価は出ない・・・と自覚すべきだ。合わせて、従事者全体の1時間労賃も確定しておく必要がある。

 
 加工の場合、「販売段階で利益を確保する」との考えでなく、「原価段階で生産に要した家族労力費、及び利益を確保する」と考えるべきである。経営主の所得も生産段階のものは原価に含める・・・そのうえで下記の粗利益を上乗せすべきだ。

  問題は粗利益額・率である。これを原価に乗せないと、販売が成立しない。粗利益=販売管理費+利益(通常は経常利益)・・・だが、販売管理費には、梱包費、輸送費、各種の中間手数料、販売の間接費、セールスマンや販売に要する人件費などが含まれる。

 仮に直売所で売る場合、委託手数料は加工食品や総菜では20~28%の例が多い(青果・花の12~20%と違い)。ネットで直接消費者に売る場合でも、大手のポータルサイトに出店するときは「出店料、販促費、カード手数料などに12%ほどかかり、粗利益率20%以下であれば損する」と言われている。

 
 HPで直接販売する場合、宅配便を使うので配送費のみですぐ15%ほども掛ってしまう。包材費や人件費まで考えれば、すぐ30%近くの粗利益が必要になる。このためもあり、配送費を別建てで示している例が多い。

 一般の食品加工業の指標では、売上高対比率で原価70.3%、粗利益29.7%、うち販売管理費26.4%、営業利益3.3%、経常利益4.1%という数値もある。

 製造と同時に多数の直営店で小売している例では、原価率61.8%、粗利益率38.2%、うち販売管理費34.4%、営業利益3.8%、経常利益3.5%となっている。

 29.7%の粗利益を達成するには返品や値引き(特売)まで考えると、平均33%ほどの値入率になることもある。値入率と最終の粗利益率は違うことを知って欲しい。また、価格競争型の商品(主にメーカー品)と個性の出しやすい品(中小工場や6次産業化の品)で、かなり差があることも知って欲しい。

 6次産業化や農商工連携品となると、規模が小さく生産性が低い。原価額が高いから、より「こだわり」を前面に出し、高い売価を設定しないと、並みの粗利益率は確保できない。

 小売の値入率を見ても・・・某チェーンの値入率を紹介すると、中小メーカーの多いコンニャクAは46.2%、コンヤクBは41.7%、豆腐Cは30.0%、ひき割り納豆Dは33.0%、いりごまEは33.7%、片栗粉Fは31.6%とかなり高い。これに反し、皆さんもよく知っているキッコーマン醤油Gは10.1%。QPドレシングHは20.7%、雪印バターIは16.7%、マル米みそJは17.8%と低い。

 大量に売れる売れない、回転が速いか遅いかなども、値入率や売価に関係することも知って欲しい。同時に直売をする場合と、小売や問屋に卸す場合とでは売価の概念が異なってくる。後者の場合は卸売価となるが、上記の小売段階の値入率や売価を考え設定しなければ、相手に受け入れられない。このため付加価値販売が実現しにくくなる。

 70円の原価のものを30%の値入率で売る場合・・・100-30=70  ÷100=0.70(70%の原価率の意味) 70円÷0.70=100円 が売価だが、小売段階でさらに30%の値入をして売る場合、100÷0.70=143円ほどになる。「これでは消費者に買ってもらえない」となると、生産者の粗利益率を15~20%に下げる必要が起きる。実際、販売を小売に任せれば経費が少なくなり、生産者の粗利益なり売価は下げて当然と言える。

 注意しなければならないのは、直接ネット販売するのと、卸や小売業者に任せるのと併用する場合、だれしもネットも見ているので、両者に差がありネット価格が安ければ、安いレベルに小売値を下げるよう要求される。 このため値入率や売価は、卸の場合下がってしまう。「一物一価」の原則が働くので、併用型の場合は売価を統一し、ポイントとか情報サービスとか別のプレミアで対応しなければならなくなる。

 以上から理解できると思うが、自己の粗利益率を高めるには、こだわりを持った個性力を高め、消費者なり小売り側だ「ぜひお宅の商品が欲しい」と言われるようにする必要がある。 

 最後に売価の設定だが、これは原価+販売管理費+利益として積み上げ計算が出来ない場合が多く(原価不明で)、直売所、スーパー、ネットで容量別の価格を徹底的に20~30例ほど調べ、横軸を容量、縦軸を価格とする分散表をパソコンのエクセルで作り、平均傾向線、上限傾向線、下限傾向線を引いてみて、自家の容量および品質・こだわりレベルを考え設定するのが妥当である。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料


2011年11月3日木曜日

農産物直売所-売れる陳列③道の駅ちちぶは「木のぬくもり」!

   道の駅「ちちぶ」(埼玉県)は、市街地にあるが、背後地は中山間部である。そして林業を意識し、オール木製の陳列棚である。木の加工品も置きもの、ステッキ、子供向きのおもちゃまで並んでいる。
 
  直売所そのものは30坪ほどと狭い。注目に値するのは、野菜・果物の陳列棚を3~4段の多段式にしていること。ゴンドラ(スチール棚)を木でつくり、当方がかねて提案してきたが、台の裾に当る部分を空洞にし、ここに商品を並べる場合は4段利用となっている(写真・下)。

  狭い直売所の参考例になる。秩父は札所めぐりや有名な秩父神社もある観光地である。土産物がよく売れ、逆に野菜や果物の生産は傾斜地のため潤沢と言えない。売り場が広すぎても、ボリューム感が出ない。

  土産ものの陳列を増やせば、青果の販売はコンパクトにせねばならず、青果の陳列間口は6間弱に過ぎない。このため平台は1間聞=6尺1台のみで、他5間は3~4段利用の木製台である。ここに約120アイテムが並んでおり、品目でも50品はあるはずで、100坪の直売所と比べても見劣りしない。

  特産品の壁側の木製台は4段で額部分には、染物の暖簾も取り付け、他の道の駅にない地方性をよく演出している。デザインの企画力を称賛したい。

 直売所には立ち食いソバ・コーナー、ベーカリーもあり、狭いながらもゆったり感を残している点でもすばらしい。





      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

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3.農産物直売所の新たな発展策講座

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4.直売所・顧客視点の販売促進講座

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リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

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報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料



下記の内容の講演・研修は、すでにパワー・ポイント
を用意してあり、いつでもご要望に応じます
1.主婦の買物動向と食のライフスタイルと対応
2.農産物直売所の顧客動向と対応
3、顧客視点に立った農産物直売所の運営
4.農産物直売所の計数目標と管理
5.農産物のマーケティング
6.食品加工業の就業希望者が知るべきポイントこと
7.6次産業化の身近な事例から学ぶ


















2011年11月1日火曜日

農産物直売所-売れる陳列②マルシェに学ぶ!

 
 写真はいずれも都内・青山の国連大学前で土日に開設されるマルシェ(青空市場)の写真である・・・1年前以上の開設2日め に撮影したもので、今日どうなっているかは 別問題である。

 3点とも平台に傾斜式に箱を立てかけて、目線に近づくよう陳列している。プロの指導 を受けこうしたのか、狭い1畳分のスペース を有効に活用したいための独自の工夫なのかは分からない。

 ともあれ合理性のある陳列で、直売所においても大いに参考にすべき陳列に違いない。その理由は・・・

 ①狭い面積が1.3倍、1.5倍にも広がり、それだけ有効に利用できる。

 ②5~6mはなれていても、全体の品揃えが見える。

 ③近くに寄った場合も均等な距離で視野に入り、手に取ることも容易である。

 「直売所と狭い場所借りのマルシェとは、訳が違う」と言うかもしれない。


















 しかし、合理的で美しいものは積極的に、直売所にも生かすべきだ。いまから40年も前、初めてアメリカ西海岸15日の旅に出た時に衝撃を受けた。

 なぜか・・・勤勉できれい好きの日本人よりも、人件費の高いアメリカの方が、スーパーやファーマーズマーケットの青果他の陳列が緻密でボリューム感もあり美しいことだった。救いが一つあった。この美しさの最高傑作がカリフォルニア?のゲルソンマーケットで、青果コーナーを構築したチーフが日系人であるということだった。作業現場も見てきた。

 ともかく、西海岸はバラ売り-秤販売が全盛だった。キュウリが同じ方向に何百本と並び、他のどの品も同一方向を向いて重ね置きされ、さらにカラーコントロール=縦に色分けされた陳列でもあった。

  美しい陳列は、食味をそそり、かつお客さんに「選んでかき混ぜれば、崩れる」という心理がはたらき、痛みも出ない・・・今は省力の時代であり、ゲルソン流をそのまま真似ることはない。  

 特に狭い直売所ほど、こうした立体陳列をし、品揃えの充実に努めるべきである。また中段の写真のように、ジャムやハチミツといったものは、平台に置いた場合、目線の下の方に沈みこんでしまうので、こうした立体陳列が特に望まれる。たとえゴンドラに並べるにしても、ブランドごとに傾斜台を棚にはめ込み立体陳列するのが得策である・・・少ない在庫でも豊富に見えるからだ。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

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2011年10月31日月曜日

福島屋(都下羽村市)が福島の米を売る!NHK放映

今日(10月31日)のNHK「プロへッショナル=こんな食品スーパーがあったのか!」で、東京・羽村市の福島屋が登場した。本プログで前に紹介した店である。

 社長にお会いしたのは1回のみだが、放送中にこやかな顔が続いたのが印象的である。生産者や消費者への貢献を、楽しさに変えている点で敬服した。放送後、一気に27人の方がブログにアクセスしてくれたことで、関心の高さが知れる。

 各地の農家を訪ね、「それを作る人の生産品と向合う心=こだわりを知って、取引きするかを決める」という意味の言葉が重い。

 後半、たどりついたのは、今まで売ったことのない福島の米である。福島のセールスマンがわざわざやってきて販売をお願いする。

 担当部署の数人の方は「いままで扱ったことのない福島県産の米を扱うのはリスクが多い」と言う。 福島社長も頭に手を置き、何回も苦悩する。しかし、最後には「一生懸命、こだわりを持って作った安全も保証されているものを、風評被害を気にして避けて通ることが正しいか」と職員に問う。

 わざわざ現場も訪ね、「あの端からこちらまで。田を這って雑草を取り、減農薬を大幅に減らした」の
農家の声。

 そしていよいよ販売開始! 大きなPOPで「国の検査ー生産者の検査-福島屋の検査」と3重チェックをしたことを表示していた。午前は雨、雨があがると続々顧客が来て、社長自らアンケートを採っていたが、納得ずくで次々と買う人が出て完売。

 顧客は「福島屋さんは、平素から信用しているので、福島産であっても信用する」と、何人もが語っていた。31日は偶然2店のスーパーを訪ね、小売の現場に触れたわけだが、残念ながら2店から学んだのは品揃えの豊富さのみで、生産者や消費者への「真の思いやり」は伝わってこなかった。 

H24年2月20日 追記
 新聞報道によれば、米など一般食品に含まれる放射性セシウムの新規制値は100ベクレル以下で、これを超えると出荷停止にすることを義務づけた。福島県の米についての検査によれば、昨年産の97.5%まで100ベクレル以下であったそうだ。福島産であっても、検査済みのOKの品しか出回らない。福島の農業復興支援のため、ぜひ福島産品を快く買ってほしいものだ。

2011年10月23日日曜日

埼玉農業大賞ベンチャー部門大賞に「桂ファーム」!(加筆)














  第2回埼玉農業大賞が20日に発表され、農業者の友人である栗原桂一代表の有限会社・桂ファーム(養鶏業-入間市)が、「農業ベンチャー部門」の大賞に輝いた。うれしい限りだ。
大賞は2部門に分かれ、「農業地域貢献部門」の大賞は本庄市の「ひびきの南部選果機利用組合」である。ちなみにベンチャー部門の優秀賞は有限・オオクマ園芸(三郷市)、高荷正行氏(深谷市)、地域貢献部門の優秀賞は北川辺米の会(加須市)、高橋博氏(さいたま市)である。11月19日午前11時から加須はなまき水上公園で表彰式が行われる。

  桂ファームは今年夏に、某農商工連携人材育成事業の際にも30人近くを案内し、栗原さんから経営の歴史と実態について話をしてもらった。HPも開かずの宣伝を嫌い、「隠れたベストセラー」ともいうべき存在だが、実際は付近の駿河大学との産学協同事業や各種の委員会にも関係、地元小学校の1~6年の某科目も担当するなど地域にも貢献し人脈は広い。

   また日に3冊の本を読んだ時代もある読書家で、すこぶる広い広い知識の持ち主でもある。これが「考える農業」「ゆとりある農業」を生み出す原動力になったように思う。

   目立ちにくい幹線道路から300mも入った奥まった立地で、常時25,000羽の養鶏を飼い、そのすぐ脇の施設で手選別し、生産タマゴの90%近くを農場付帯の直売所で売っている。品種は赤玉のポリスブラウンが90%、白玉のジュリアが10%。駐車台数は7台ほどだが、1台来て帰れば、次の1台が来るといった繁盛ぶりである。信用ある販売をすれば、口コミで広がり、多少立地が悪くとも客が来ることを教えてくれる。

              

   赤玉の直売価格はM以上が1kg480円、S以下が400円、B級品350円。白玉はM玉以上が350円、S以下が300円だ。総務庁「家計費調査」によれば、1kg平均の小売価格は269円であり、M玉は、その1.78倍になる。流通コストの削減分+単価の差があいまって、通常の25,000羽経営の平均販売額の数倍の売上高になる。選考委員の先生もその所得の高さにびっくりしたはずである。(高騰時の令和5年4月はM玉650円)。

   実際は、農水省の経営指標をアレンジした当方作成の規模別連続経営指標からすると、同規模=25,000羽の養鶏に比し粗収益は2.7倍にもなる。この数字は、生産者手取り価格をそのまま反映している。新聞報道によれば、H23年次の生産者手取り価格は中間流通経費も多いため1kg168円である。これに2.7倍を掛けると1kg454円になる。桂ファームの直売価格はこれに近いののになっている。いかに生産-直売の6次化効果が高いかを教えてくれる。

   安全で良い餌、良い環境で育て、美味なタマゴを生みだし、当方も購入して行きつけの喫茶店の馴染み客にもに数回食べてもらっているが、評判はすこぶる良い。「娘への土産にしたいから買ってきてくれ」のオーダーも何回かあったほど。

    すでに過日の「鶏卵」の項でも4点ほど書いたが、再度その理念を吟味すると7つほどの特徴が浮かびあがる。
①直売で売れる量だけ飼い、いたずらな規模拡大をしない・・・付加価値販売に沿った適正規模。
②鶏舎に余裕を持ち、オールイン・アウトの時間差を広げ、充分な消毒をする・・・鶏の安全の確保。
③1段か2段式のケージ(写真)でストレスがなく衛生的な快適環境を維持する・・・産卵環境の維持。
④現在のケージはさびず、鶏舎も20年以上持ち、無駄な投資をしない・・・償却費等の固定費削減。
⑤手選別で割れ玉も出ないが、鶏糞乾燥ハウス、鶏糞発酵機も備えその堆肥化・販売もしている・・・無駄な生産品を出さない。
⑥タマゴを1kg、2kg、4kgで売る場合、某飲料メーカーの空き箱をカットして使用・・・無駄な経費省く。
⑦ファークリフトを使った除糞やバケットローダーを使った鶏糞の切り返し(発酵のための)等の実施・・・省力すべきところは省力する。鶏糞の収入は

    だが、改めて長時間にわたり話を聞くと、一般常識と大いに異なる経営哲学を持っている。つまり、①シンプル、②スロー、③スモール、④ローカル、⑤アナログ、⑥アバウト、⑦ローテク、⑧スマイルで、「全体としては非効率と思われることをやって、最終的に効率が上がるもの」・・・と言う。
   当方も充分理解できていないが、
①養鶏一筋でかつ直販売一筋。かつムダな投資をしないシンプルな経営のほうが成果を達成しやすい。
②短期的な視野でなく長期的な視野を持ち、急がず考えながらスローに着実に最大の利益を追及する。
③質を高め、小さくても所得、利益の上がる経営を良しとする。
④都市近郊とか、遠隔地といた立地に見合った経営戦略で臨む。
⑤⑥物事を白黒と割りきらず、「あいまいさ」を残しながらアナログ的に、着実に基礎をしっかり築く。
⑦良い商品を作るには、労力を掛けるべきところは掛け、ハイテク(機械的管理)に走らない。
⑧最後には家族・従業員・顧客・地域が共に豊かになり、喜び合える経営になる。
・・・ということを、強調しているように思う。

 鶏糞の収入は売上全体の0.35%ほどにしかならないが、利用してくれる畑作農家のため、便利に散布できるようマニアスプレダーも購入し、無料貸し出ししている。軽4輪で運べるものだ。

   家族と社員5人、パート・アルバイト12人が1昨年までだが、昨年から息子さん、娘さん夫婦も加わり、社員7人、パート・アルバイト6人(実質3人)になった。従業者も充分確保されており、労力的にゆとりもあるため、畑を借りて新たな夢に挑戦しようとしている。24年の夏には、小麦の収穫の手伝いもさせてもらった。

 栗原さんの偉さは、「畑作は素人」として、その技術習得のため、栽培関係の塾に通ったことだ。「たえず謙虚であれ。そして急がず学び、ゆっくり実践し、目先の利益に走らず、信用を重んじ着実にお客を獲得していく」と、新事業の展開についても抱負を語っている。

故・栗原桂一氏を偲ぶ

 桂ファームの栗原社長は令和2年の8月に亡くなられた。6月だったか、電話に出られた栗原さんは「眼底の癌にかかり片目を取るはめになった。慣れればさほど不自由でもない」と元気な声が返ってきた。だが「一度会いに行こうか」と言うと、なぜか「今は止めておきたい」との回答。

 暮れにお歳暮の注文に行ったら訃報に初めて接し愕然とした。「農業界のエース逝く」である。私は昔、農業雑誌の記者であり、5年前までは農業コンサルタントだった。ために農業界の優秀な経営者にもたくさん会ってきたが、すぐれた実践者であり、同時に優れた実戦哲学を持った人はそう多くなかった。若いころは3冊の本を並べて交互に読んだ・・・と言うくらいの勉強家であった故に、広い視点に立った経営哲学が構築できたのだと思う。

 謙虚であり、私が50年も前に農業雑誌社「家の光」を独立する時、名刺がわりに書いた農業の本質論から説き起こし発展策を書いた「農業革命への提言」と言うタイプ打ちの小冊子を5年ほど前に渡したが、先の電話の際も「あれは大したものだ。今も大切に保管してあるよ」と言ってくれた。私の貴重な理解者が1人亡くなり淋しい限りである。




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中小企業診断士歴48年  ブログ実用記事発信300件上