2016年3月15日火曜日

ジャージー酪農と神津牧場ー:鈴木慎二郎氏偲ぶ!

草地酪農を追求し続けた故・鈴木慎二郎氏
    大学時代の友人・鈴木慎二郎氏(同じ研究室)がこの1月に急逝した。彼は農工大学農学科を卒業後、新冠種畜牧場、北海道農業試験所、那須の農水省草地試験所をへて定年後、群馬県の神津牧場場長となり、酪農に関する飼料作物や草地研究の道を歩いてきた。農学科内ではトップの成績で、人情味あふれたナイスガイであった。元気な日常生活を送るなかでの急逝で、残念でならない。
写真① バンビのように可愛いジャージー牛

 彼は、2015年8月に自費出版した「草地酪農半世紀」-神津国太郎の意志をつなぐーを世に残してくれた。特にサブタイトルからも推察できるが、ジャージー酪農の神津牧場の記述が、214ページ中90ページに及ぶ。記述の最後に彼は「ジャージーのような小型で飼料利用性の高い乳牛は、日本のように傾斜のきつい山国で、酪農を行うのに適していると思う。飼養に当たっての基本は、神津邦太郎がすでに明治期に示しており、その遺志を継いで事業を行うことが、飼料自給問題解決の一つの道と信じる」と述べている。

 さらに「山間の水田は不耕作のまま放棄されている。第二次大戦まで軍馬の生産に充てられてきた牧野が100万ヘクタール近くあった。また旧薪炭林林と言われるものも数百万ヘクタールある。これらの一部はすでに山林原野に還っているものも多いが、将来の食料問題を考えるならば、家畜の生産に活用できると考える・・・奥山に生産活動を行う牧場があれば、周辺の集落にも安心感ができ、地域の活性化にも役立つと思う」と結んでいる。
写真② 優良牛(鈴木氏の年賀状から)

 私がジャージー牛に出会ったのは60年まえほど前。八ヶ岳山麓を訪ねたときだ。その後は10年前に故人が場長の時代に神津牧場を2度訪ねた時くらい。それでも、乳脂肪率が5%と高いジャージー牛乳が気がかりで、紀ノ国屋、明治屋など高級スーパーを回り、どの程度の値で売られているかチェックしたものだ。

 神津牧場がジャージー牛を古くから選定してきた理由は、「乳期(長い)、乳量、乳質、飼料の利用性、取り扱いの良さ、健康、遺伝力、そして継続性ある酪農経営が可能なこと」と彼は指摘している。ホルスタイン成雌の平均が体重650キロ、体高141cm、乳量年間5,000kg(最近平均8,600kg)、乳脂率3.6%、無脂固形分8.7%に対し、ジャージー成雌のそれは400kg、130cm、3,500kgほど(神津牧場平均5,548kg)、5%、9%で、体形が小型であり、乳量も少ないが乳脂肪や固形分が多いのが特色である。

小型で蹄も強いので、傾斜地を移動することが楽にでき放牧に適している。彼の記述によれば神津牧場では100haの草地があり、うち約80%を放牧に充ててきた。冬場は畜舎飼いだが、春から秋は放牧。搾乳牛の放牧は4月中旬から始め、5月の連休後は昼夜放牧となり、夜間も野で過ごす。職員は朝5時に放牧地まで迎えに行き、朝8時前後までにミルキングパラーで70~80頭の搾乳を終える。再び別の放牧地まで牛を追い放牧。午後1時になると迎えに行き、牛舎に戻ってから補助飼料を与えたあと、午後2時半から搾乳し5時前に終える。再び別の放牧地へ牛を追って行き翌朝まで放牧する。・・・・この通りで、春~秋は放牧で手間も濃厚飼料も大幅に削減できるのが特徴である。
写真③ 草地での放牧風景(鈴木氏の年賀状から)

 彼の提案が妥当性を持つことは、他の研究者によっても古くから証明されている。例えば昭和54年に当時の岡山酪農試験場の三秋尚氏が書いた「ジャージー牛飼養と飼料作物」を見ると、ジャージー牛は・・・
    飼料中の栄養分を牛乳や乳脂に変える割合が高い。
    基礎資料(粗飼料)をよく食べ、よく利用する。
    以上の利用率の高さを生かし、良質な基礎飼料を充分に与え、高い能力を発揮させる。
    基礎飼料の質の向上と増供与によって、泌入乳量を増やすほうが、濃厚飼料の増給与よによる効果より経済的である。
    ジャージーは体格が乳牛中で最も小さく。維持飼料が少なくて済む・・・ホルスに比し一般に養分総量(TDN)は1/2、可消化祖蛋白質量(DCP)は1/3ですむ。
    体が小さく軽快で、蹄が丈夫で、機敏性に富み、30度前後の急傾斜地の放牧に向く。
    早熟で利用年限が長く、乳牛の償却費の節約になる。ただし良質な基礎飼料と十分な運動が条件。
・・・と主に飼料面からの特徴が整理されている。

 今年は地方創生元年と言ってよい。耕作放棄地がすでに40万ヘクタールもあり、ほっておけば中山間地区の荒廃が進む。人力の不足するなか、広範囲の山間地をカバーする農業となるとやはり放牧中心の酪農となる。多くを草地化し、一部水田には飼料稲やトウモロコシを栽培して濃厚飼料に近いものも確保する。一方で6次産業化として生乳工場、バター、チーズ、ジェラード、アイス、プリン、洋菓子などの加工場を持つ。そして逆に中山間地に多い「道の駅」に地域特産品として供給する。また牧場自身が牛とのふれあい、農作業や加工作業の体験の場とし、観光地に成長すれば、地域の雇用もさらに増える。神津牧場に行けばそのモデルをつぶさに見ることができる。現に神津牧場は地元「下仁田道の駅」に、鈴木氏の主導で別会社を作り、ソフトクリームほかのカフェを経営し、10年近く黒字を続けてきた。

2016年2月16日火曜日

中小企業診断士の鏡-故・橋本文夫先生を偲ぶ

    農業経営診断を皆と体系化

   中小企業診断士の全国横断的な「一般社団法人・農業経営支援センター」という組織がある。私も発起人の1人となり、平成17年7月に結成され、全国100人ほどの会員を擁する農業コンサタントの集団である。その初代会長(当初は任意団体)であった橋本文夫先生が今年1月13日に急逝された。

橋本先生はNCR勤務15年、コンサルタント事務所運営45年を通じスーパーやショッピングセンター、直売所、レジャー施設、飲食業等の経営戦略や開店の実務指導を数百件もこなし、NCR時代には部下の教育も担当し、独立後は診断協会の静岡県支部長、診断協会の理事も歴任され、経営学や診断学の王道を歩んでこられた。実際、下記のとおり数々の表彰を受けている。

橋本先生の表彰歴

表彰年
賞名
昭和58
静岡県知事賞
平成元年
中小企業診断協会静岡県支部長賞
(支部創立30周年記念)
平成5

中小企業診断協会会長賞
平成6
中小企業庁長官賞
(中小企業基本法施行30周年記念)
平成8
中小企業庁長官賞
(全国中小企業診断大会にて)
平成10
通商産業大臣賞
(中小企業診断業務)
平成11
静岡県商工会会長賞

平成16
通商産業大臣賞
(経営診断及び助言)
平成16
静岡県宅地建物取引業協会会長賞
(会の運営と業界発展向上に貢献)
平成18
中小企業診断協会会長賞
(分科会シンポジューム)
平成19
中小企業診断協会会長賞
(中小企業の強化推進に貢献する多くの論文発表)
平成21
中小企業診断協会会長賞
(創立55周年記念・中小企業診断士の地位向上に貢献)
平成21
中小企業診断協会静岡県支部長賞
(30年以上支部の発展と地域活性化に貢献)
先生の偉大さの第1点は先見性である。「地域活性化には、農村・農業の近代化が必要」と、今日的なテーマの「地方活性化-地方創生」にいち早く着目され、農業経営診断を平成15年くらいから始めれれ、平成17年7月に農業支援センターを誕生させたことである。私は、この農業経営支援センター結成時に先生と出会い、10年半ほどご指導を受けた1人である。
写真① 中小企業診断協会会長賞の授賞式(H19年)の橋本先生

第2の偉大さは、「経営診断のノウハフは、個々のコンサルタントの頭の中にしまい込むのではなく、マニュアル化という形で誰もが利用できるようにしてこそ価値がある」と、マニュアル作成を推進したことである。支援センターの結成以前の平成16年3月に「農業経営診断実務マニュアル」~経営診断手法入門~(社団法人 中小企業診断協会出版)を、10人ほどの仲間と完成させている。決して農業分野だけでなく、副題の~ ~にあるように、あらゆる分野の診断手法に通じるものである。

支援センター結成後も、絶えず10人ほどの関心ある仲間の知見を結集し、平成18年2月に第2集の1と2、19年2月に第3集と「農業の診断・事業計画策定事例集」を完成させた。診断協会の財政支援によるものである。第1集~2・3集その他の総ページ数は1100ページほどの膨大なもので、いまも多くの支援センター会員の書架で、いざという時のバイブルとして輝きを放っている。

















写真② 先生が監修された全5巻の農業経営診断マニュアル

実際の農業者からすれば、あまり関係のないことと映るかもしれない。しかし、経営近代化には第3者の客観的なアドバイスも不可欠である。このアドバイスが不適切であれば経営は混乱し、発展するものも逆に壊れてしまう。

先生の偉大さの第3点は、じっくり聞きとり調査をし、「経営の一断面で捉えるのでなく、経営の基本理念の妥当性、財務、生産、販売、労務にわたる総合力を重視した」ーその姿勢である。全体像を正確につかみ、長所・短所、社会への適合性も見極め(swot分析)、改善点を導きだす、極めて綿密な診断である。農業者の皆さんは「費用がタダだから」と行政庁の補助金による数時間の簡易な診断・報告を望むことが多い。これでは、役立つ方向性をなかなか得られないことを知って欲しい。
写真③ 富士宮市での6次産業化研修会の生徒と共にー前列左から2人目

橋本先生は診断一般で終わらず農業部門ごとの経営・生産・販売、そして経営指標にも踏み込んでいる。マニュアル第2集-2では、稲作、麦作、野菜作、酪農、肉牛、養豚に切り込み、特に野菜作ではハウス、溶液、水耕、植物工場についてまとめ、第3集では花き、果樹、きのこのマニュアルを監修した。第4集では別の角度で、事業計画の策定を監修した。もし農業者の方で、部門別の実務マニュアルが学びたければ、当方にメールをしてほしい。部門に詳しい会員を講師として派遣することも可能である。

先生の偉大さの第4点は「企業は人なりのマンパワー」の重視である。診断の入り口で、「経営者の自己診断表」を提示していることだが、これは①経営者、②経営の基本、③販売管理、④生産管理、5労務管理・・・について10要素を上げ、5、4、3、2、1の5点法で自己採点してもらうもの。これにより経営者自らが強み・弱みを自覚し、自ら改善することを促すものである。これは申込んでいただければお送りする。 当方メール mkondou@vega.ocn.ne.jp 

 先生と一緒に関東某市の農産物直売所設置のコンペに臨んだことがある。この時、市の幹部から最後に「直売所設置に当たって、最も重視することは何か」との質問があった。先生はためらいなく「店長の人選ですよ。安易に(定年退職まじかの経験も知見もない職員を連れてくるようではだめ)」と言いきった。相手は厳しい意見に面食らったように思う。地元の浜松でレジャー施設を作る指導の過程でも、まったく同じ指摘をしたことを後で知ったが、マンパワーの大切さを極めて重視する表れである。数百店の専門店、スーパー、ショッピングセンター、飲食店、レジャー施設などの、事業計画策定だけでなく、施設設計、レイアウト、商品配置、従業員教育等の実務指導までやり、その中で得た哲学と思っていただきたい。


弔辞

平成二十八年二月二十八日   ヤマハ元会長 中小企業診断士   岸田勝彦                

去る一月二十八日、西部地区診断士同友会の北村勝利会長よりご連絡が入り「中小企業診断協会 静岡県支部長をつとめられた橋本文夫先生が一月十三日にご逝去された。ついては橋本先生の薫陶を受け、お世話になった関係者でお別れの会を開くことになりましたので、その席上岸田さんに是非とも弔辞をお願いしたい。」との事でした。

生者必滅が世のならいとは申せ、実戦的な経営コンサルタントとして、中小企業診断士として、静岡県はもとより全国的な広がりでご活躍され多くの功績を残されてこられた橋本先生の訃報に接し、私自身心の底からご尊敬申し上げていた方だけに大変落ちこんでしまいました。同時に橋本先生の持ち前の懐の大きさ、真のプロフェッショナルとしての深い見識と熱き魂にふれてこられた多くの優秀な中小企業診断士の先生方をはじめ、立派な知人友人を差しおいて私が弔辞を述べさせて頂くことの是非について瞬間的に悩んだ訳ですが、橋本先生をご尊敬申し上げていた後輩の一人として誠に僭越ながらお別れのことばを述べさせて頂くことになりました。

ところで私は中小企業診断士としては やや遅咲きの部類に入るかと存じます。つまり一九九年末、会社に於いて事業部を担当していた私は与えられた職責の大きさと、自身の実力との間にギャップを感じ、ジェネラリストとして更なるレベルアップを目指し中小企業診断士受験講座という通信教育をスタートしました。49才の時です。

一次で一回、二次で二回失敗して、後がない状況の中で必死の思いで追いこみに入っていたある日(1995年)、静岡新聞紙上に写真入りで中小企業診断協会静岡県支部長に就任された橋本先生のかなり大きな紹介記事が載っており、それを読み橋本先生の人となりとお考えに感銘を受けた

私はそれからというもの一段と受験勉強に熱が入り、翌年四月には晴れて中小企業診断士として登録されました。以後このような経緯から橋本先生の一言一句、一挙手一投足に耳を傾け注目して参りました。

私は製造業という限られた領域の中で、ビジネスパーソンとして生きて参りましたが、橋本先生は、皆様ご存知の通り地域、業界、業種のカベを超越して多分野に亘り、広く深く見識と手腕を発揮されて参りました。ショッピングセンターなど商業分野に於ける県内第一人者の枠内にとどまらず、農業経営分野に於ける経営コンサルタントの先がけとして静岡県の農業を全国トップクラスに押し上げた最も影響力を発揮した一人に数え上げられるのではないでしょうか。

ところで、現在の我国経済をとり巻く内外の環境はグローバル化の荒波の中で、益々不透明感が増し、各企業にとりましても受難の時代といわれます。このような時代背景にあって常に羅針盤の如く明確に方向性を示された橋本先生を失ったことは、日本経済並びに静岡県経済にとって大きな損失と申し上げても決して過言ではありません。又、私自身にとりましても私が思い描く経営コンサルタントとしての理想像であり、私が到達したい人生の目標像であり続けた橋本先生を今こうして失い正に痛恨の極みであります。

結びになりますが、橋本文夫先生のご冥福を本日ご列席の皆様方共々お祈り申し上げますと共に、ご遺族の皆様のご健勝とご多幸をお祈りしお別れのことばとさせて頂きます。


 

2015年11月3日火曜日

みどりの卵「緑の一番星」(青森県田子たまご村養鶏場)は最高品質追求!


 青森県三戸郡田子町大字山口の「田子たまご村」(代表者・日沢一雄氏)は、岩手県との県境近くにある養鶏場である。まだ1万羽に満たない規模で、従業者は5人のようだが、恵まれた自然環境のなかで、安全で個性的な飼料を使い、最高級の「こだわりと美味」を追求している。 
 
最近、「マーケティングの参考に」と、貴重な「緑の一番星」「有精卵」「にんにく卵」の3種のタマゴを送っていただいた。田子町は「日本一、空気が澄み、星がきれいに見える町」とされている。これがメイン商品「一番星」命名の由来である。田子町は80%が森林で、きれいな湧き水に恵まれ、冷涼な気候もあって、鶏が健康に育ち、かつ美味しいタマゴを生産するのに最適環境を提供している。
 
この環境を背景に、良質のトウモロコシ(非遺伝子組み換え)を中心に、魚粉、海藻、ヨモギ、トウガラシ、特産のニンニク、エゴマ、クワの葉、木酢液、現在注目を浴びているアスタキサンチン(抗酸化力。カニの甲羅等に含まれる)など与え、味と栄養、安全等の面で最高品質を追求している。飼料について、これだけ多角的な配慮がされている養鶏経営はそうはないはず。

荏胡麻(エゴマ):ゴマの仲間ではなく、シソと同じ仲間で、α・リノレン酸という健康によい油が60%以上含まれ、成人病、視力障害、アレルギーに有効とされる。この油は、体脂肪としてたまりにくいので、ダイエットにも効果がある。

桑の葉:鉄やカルシウムなどのミネラルが豊富で、ビタミンB1、カロチン、亜鉛、ポリヘノール、アントシアニン、フラボイドなどが含まれている。注目すべきは、桑の葉特有のDNJ=デオキシノジリマイシンである。高血圧や糖尿病に効果的とされる。

アスタキサンチン:サケ、イクラ、エビ、カニ、オキアミ等の生物に含まれる色素だが、カロチノイドの一種。体内に発生する活性酸素を抑える「抗酸化力」に優れ、その力はビタミンEの1000倍と言われる。
 
以上の有効成分が、鶏の卵にどれだけ移行し、含有するかのデーターが不足しているが、
鶏自身を元気にし、かつ有効成分の一部を貯えた卵を産むことは確かである。飼育の過程で抗生物質は一切使っていないそうである。
    緑のタマゴの「一番星」は着色ではない。青森県試験場が20年かけて育成した、もともと殻が薄緑色の「あすなろ卵鶏」の卵である。大きさは一般的な鶏卵よりも小さめのMS規格だが、卵黄が大きく、上記のように多様な餌を与えることで甘味とコクがり、成分的にも優れている。

 他の卵と比べた特徴を要約すると・・・
 1.卵黄が他の卵に比べ大きく、甘みがある。
2.卵白がしっかりと卵黄を支え、盛上がっている。
3.アルカリ化されているので、日持ちが良い。
4.生臭みがない。
5.美味しく安全な卵である。

 「田子たまご」では、ほかに赤玉品種の放し飼いによる有精卵やにんにく卵、温泉たまごも販売している。現在、販売はネットによる直売中心のようだが、そのネット価格は以下の通りだ。一番星は最高1kg1,333円、1ケ約83円だが東京の某鶏卵問屋によれば、「最高級とされる“極み”は4個432円、1個にすれば108円。まだまだ高い品はあり、高くても求める顧客はいる。問題は高いものほど回転が鈍く、一流デパートでも売上対比の値入率を25%も取るもの。我々問屋も15%は欲しい。

となると合わせて40%の中間マージンが必要。このためにはコストダウンとともに、現在の直売値も再検討する必要がある」と述べている。当方も最高1kg最高2,160円、1個135円の直売例を見てきた。新たな売価を打ち出すか、省力にも留意し現在の値で進んでいくのか。さもなくば手数料13%前後という楽天ほかのポータルサイトを使い、現状通りの値でネット直販していくか・・・「田子たまご村」の挑戦が待たれる。

 商品別価格  1k単価は仮に1k16個としての当方推定
緑の一番星
包装
価格(円)
1k価格推
18個入り
簡易包装
,440
,280
30個入り
ギフト包装
,500
,333
36個入り
簡易包装
,880
,280
 75個入り
簡易包装
,250
,120
160個入り
簡易包装
10,500
,058
放飼い有精卵



 18個入り
簡易包装
,170
,040
 36個入り
簡易包装
,340
,040
 75個入り
簡易包装
,500
960
160個入り
簡易包装
,000
800
にんにく卵



 18個入り
簡易包装
720
640
 36個入り
簡易包装
,440
640
 75個入り
簡易包装
,600
555
160個入り
簡易包装
,200
520
温泉たまご



 15個入り
たれ付
,500
,406

消費者で購入される方、仕入れを考える方の連絡先
(有限)エコ・グリーン 田子たまご村
〒039-0317 青森県三戸郡田子町大字山口字鳶ケ沢20-30
電:  0179-23-0139
FAX: 0179-23-6540

2015年9月19日土曜日

ジョイフル本田瑞穂店に農産物直売所オープンー畑の匂い不足?

 7月1日に巨大モールのジョイフル本田瑞穂店(都下瑞穂町)に農産物直売所がオープンした。この瑞穂店はフードコートにマクドナルド、ケンタッキー・フライド・チキン、リンガーハット、すき屋、はなまるうどんなど12店を擁し、客席だけで1,000はあるはず?・・・これで集客力の強さも分かる。なにせ、本体のHCやガーデンCに加え、エクステリアC、ペットCに動物病院、食品スーパーまで擁し、イオンなど蹴とばす迫力がある。

    さて、ガーデンCに付帯して出来た直売所「ジョイハーム」はどうか。ガーデンセンターを利用する付近の農家に販売の場を提供し喜んでもらう。消費者にはHC他の買い物もできるワンストップの場を提供する・・・とのコンセプトと思う。今後、関東地域全体に「ジョイファーム」を展開していく先兵とのこと。

    売り場面積は114坪ほどで、最近の直売所からすると中規模。レジ3台。青果は傾斜を持つ平台(これを多段台に直せば、200坪の陳列容積にもなり、売り場面積に不足はない)。いまはレジも常時1台しか稼働しておらず、客数不足は否めない・・・なぜかは、後で触れたい?
 
   
  開店2日めと、9月12日(土)の2度訪ねただけだが・・・モダンさにおいてデパートの1角や紀の国屋のような高級スーパーの感じだ(写真参照)。壁面を埋めた黒塗りの木製3尺棚10台以上に、こだわりのソース、ドレシング、ジャム、オイル、カレー粉、つゆ、乾麺、塩・香辛料等が美しく並び、傾斜の木製台でドレミファームというところのピクルス35種(シロップ2種含む)648円も売られている。直売所でピクルスをこれだけそろえている例は稀だろう。チルドの日配品や菓子も珍しいものばかりである。

    野菜のコーナーではポテトフェアーで、アンデスレッド、ノーザンルビー、ワセシロ、とうやなど、果物ではピオーネ、ロザリオブランコ、シャインマスカットなど、それぞれスーパーでは置いていない珍しい品種が多数売られていた。また当初はオリジナルナPOPが少ないと思っていたが、2度めの訪問時には、手書きのあじのあるPOPも増えていた。

    しかし、肝心の青果物トータルの品揃えは極めて少ない。スペース的に見ても傾斜の平台6尺の構成で、野菜が16台(うち2台は減農薬品)、果物が5台で、品目別のアイテムは1~2品のものがほとんど。直売所の特徴である同一品目内の選択アイテムの多さがまったく見られない。出荷者不足は明らかで、チラシでも「さらに出荷者を求む!」と宣伝しているほど。地元農協も開店時に応援に来ていたはずだが、地元に直売所が2つあり、高齢化や都市化が進み、作り手不足が深刻になっているのではないか。

   開店時だけでなく9月12日も1台しか動いていない。一番の問題はアイテム不足だが、さらに言えることは、生産者や畑の写真、イラスト、パネルがまったくなく、「地産・新鮮・顔が目得る」が演出されていないことだ。ここらは群馬から所沢市にも進出した「食の駅」(当方ブログのアクセス・スピード最高)と大違いである。  

   個性ある高級化路線は、多くの安売りに走る直売所に対するアンチテーゼで妥当性がある。だが、野菜の品揃えが少ないとか、顔の見えない販売では個性も死んでしまう。場合により休耕地を利用し、農家と共同の農業法人を作り、一部を自己生産することも必要なのではないか。すでに似たようなことをしているようでもあり、そうでないようでもあり、このへんがあいまいな気がする。種ほかあらゆる農業資材を売る以上、生産や農業経営で成功し、農業者や消費者にその成果を見せて欲しいものだ。



2015年8月24日月曜日

スリーエフの青果販売はコンビニの中でも好感度高いはず!

 神奈川のスーパーの雄・富士スーパーが進めるコンビニ「スリーエフ」(関東中心に600店)の店が我が家の近くにもある。ここ1ケ月前から写真の通りの傾斜台(2段)を使い、充実した販売を開始している。 
 
 写真① ショップフロントの外側の販売台
    スリーエフでは、生鮮コンビニの「キュウズマート」(30店)を推進してきて、この陳列、仕入、見切りのノウハフを他のスリーエフに生かしたようで、少なくとも青果の販売では充実し、他のチェーン(生鮮ローソン除く)を超えている。

 この店の場合、冷ケースとその突き出しで以前から10品くらいの青果を扱い、今も続けているが、これと別途に店頭に8尺、店内に4尺の傾斜台を置き、野菜20品、果物5品ほどを置いている。果物では8月上旬には小玉スイカ、グレープフルーツ、キューイ、露地メロン、アボガドなど、若者向きのもの数点に絞っている。野菜はタマネギ、ジャガイモ、ニンジン、ゴボウ、ダイコン、キャベツ、長ネギ、トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、ニンニクなど、基本素材はほぼ揃っている。ミニ・スーパーは1店あるが、スーパーは至近になく、顧客から歓迎されているはず。
写真② ショップフロントの内側の販売台
 
 ①傾斜台のおかげで全品見やすいし、②枠で区切られているため、1品ごとの陳列もしやすい、黒塗りの台で商品が引き立つ・・・の特徴を持つが、④決定的なことは鮮度判定のノウハフが確立され、絶えず新鮮に維持されていることだ。この店の場合、西日の当たるフロントの外に8尺の台を置いている。テントで一部日光を遮断しているが、それでも痛みが起きやすい。にもかかわらず新鮮さを維持しているのは、それなりきに「売る・売らない」の判断をし、見切りや廃棄もしているからだと思う。

2015年7月8日水曜日

市街地直売所「鈴木農園」(所沢)はトマトで勝負!

 西武線の新所沢駅北側踏切から県道・川越所沢線を車で川越方面へ走ること1kmほどか?衣料スーパー「しまむら」のちょっと先に、「トマト・ミニトマト 鈴木農園」の小さな看板が見える。まだまだ市街地の内側である。周りは住宅でトマト畑は見当たらない。仕事で横を毎日走るので気にかかっていた。 

 2週間前の早朝に、看板の横の庭地にやっと飛び込み買い物することになった。駐車は4~5台は楽に可能。作業小屋のようなものの中が販売所だ。若奥さんとおぼしき人が販売していた。採れたての桃太郎トマトやミニトマトの愛子、千果(ちか)が木箱に整然と入れられ客を待っている。直売所というと市場に出せない等外品をうるケースも多いが、ここの桃太郎は粒も色(完熟)も揃ったA級品である。 

「トマトなどは、どのくらい作付しているのか」には20アールほどとのこと。お父さんの代に酪農をしていた土地に、息子さんがユータウンして園芸を始めた様子。息子さんは「規模ではない。儲かる農業を目指す」という。トマトは水耕栽培で、春先にはエダマメ、今はナス、恵比寿カボチャ、夏場になればトウモロコシも併売している。実際には良いものを作り、市場出しも活発に行っている様子。 夏場は安い露地のトマトが出回るので、7、8、9、10月は休市のこともあるので注意。7、8月はナスや小玉スイカを主に販売するとのこと。


















 

駅から直売所までに、コモディーイイダ、西友、コープみらい、ヤオコーと沢山のスーパーがある。やはり「朝採りで新鮮」「完熟でうまい」「顔が見える」といった選択客がスーパーを越えて来る客、ドライブ途中の客が多いのではないか。 

桃太郎は1kgが648円、ミニトマト2種は1kg1,000円である。カボチャ1kg300円、ナス3本150円。桃太郎は弾力性のある果肉で、甘さも充分。水耕栽培でも水を抑えて栽培しているのではないか。果物替わりに2個、3個でも食べられる。ミニトマトの千果は糖度8~10度と甘い。愛子とともに半分に切って彩と栄養豊かな野菜サラダで、3~4回に分け賞味した。

2015年7月1日水曜日

コミュニティカフェひだまり(川越市)は商店街・地域活性化の手本!

   川越市川鶴に「かわつる三芳野団地」(548世帯)というのがある。団地の管理運営が素晴らしい・・・と聞き見学に出向いた。当方も分譲団地の住民で、目下団地の規約改正に従事しているからだ。この時に偶然立ち寄ったのが、団地隣にある「かわつる商店街」(約10店舗?)にある「コミュニティカフェひだまり」である。
    10時20分ほどだったが、店頭で青果物の直売をしていた。1休みしたかたので、店内に入ると「11時オープンなのでまだ無理」と、いったんは断られた。とことが、5メートルも歩かないうちに、別の女性スタッフさんが追っかけてきて、大きな笑顔で「ぜひ寄って行ってください」と引き留められた。ここが素晴らしい。「どこからいらしたの」「何が目的にこられたの」「え、三芳野団地のこと。それなら団地の広報を編集しているのはあの方よ」と、振られた方も「団地事務局を訪ねるなら、事前に電話したほうが良いよ」と、矢継ぎ早に会話の糸口を作ってくれた。まさにコミュニケ―ションカフェである。 

    このカフェは2011年10月から地域の老若男女が結成した「チームひだまり」が運営。商店街の空き店舗を安く借り、地域の交流の場として発足したもの。会員数は2011年72人、2012年が75人、2013年が113人、2014年が117人と拡大してきた。女子71人、男子46人の構成である。 

   チームひだまり会報の「談話室13号」に現在の会長・上蓑礼子さんが、「かわつる商店街のでコミュニティひだまりの目的は商店街の活性化を促すとともに、地域の拠点として子育て世代の応援、高齢者の福祉貢献をはかり、地域住民の絆を強めること」と書いている。そして会員数の増加でも分かるように成功を収めているのが素晴らしい。この41ケ月間(本年4月まで)に、プロの保育士を揃えたキッズコナー併設したカフェで、スタッフが延べ17,755時間の勤労を提供してきた。会員の利用累計も2万人に迫るという。

    活動内容は実に多岐である。まず基本は「地域の集まりの場」としてのカフェの運営で、地域のだれが来ても大歓迎で、会話が弾むようスタフの気遣いは相当なものだ。正確に来店データーを出しているが、2014年度の1日平均は28人である。朝8時過ぎに店の準備スタッフが来て、10時にメニュー担当スタフ出勤し料理開始、10時30分に当番スタフが来て店の清掃・整備、11時前に店長が滑り込む。10時50分に朝採りの新鮮野菜が入荷し店頭販売。11時にいよいよオープン。12時にランチ客がドーと来る。

 
    ランチは日替わりメニューで500円。カレーライス、ハヤシライス、かきたまうどん、お多福そうめん、五目ちらし寿司、ナポリタン等で、その他コーヒー250円、アイスコヒー300円、ミルクココア300円、りんごジュース300円等も準備されている。見ての通り店頭のメニュー表示もセンスがある。 

  こうしたなか、午後からは日を定め囲碁、歌声、講習会などが開催される。紙漉き講習会、声道講習会もあれば「けん玉同好会」なども結成されイベントを実施。外に出てリンゴの木を植えたり、里山支援に加わったりもしている。 

    立派なのは「ひだまり塾」を開き、生活困難家庭の児童の学習支援をしていることだ。カフェ閉店の土曜に実施。小学生クラスは10時~11時30分で、教員OBが教え、中学クラスは19時~11時30分で大学生が講師だ。「基礎学力が身ににつき、自発的に勉強するようになり志望校ランクを上げた」との声も多く、高校生クラスの塾開設も準備している。 

    3・11以来、全国的に叫ばれているのが「地域の絆」である。そして高齢化や地方の過疎化の中で「地方創生」も今年の大きなテーマである。地方創生や地域活性化も県、市町村、特定エリアと下におろし、下からの具体的プランなり行動が伴わないと本物にならない。お役所は想像でプランするのでなく、チームひだまりのような実践例から、ぜひ地域活性化の糸口をつかんで欲しいものだ。 

    チームひだまりは、まだまだ経営収支からすると軌道に乗ってないはず。ボランティア精神だけでなく、主婦の知恵も持ちより、子育て支援、介護支援、惣菜ほか食品の加工販売など、なんらかの収益事業を作りあげることが大切なように思う。それでこそ永続性も確保される。ニーズが強ければ、正当な労働の対価を得ても喜ばれるはず。いっそうの発展を願う1人である。