2014年4月5日土曜日

兵庫県養父市の国家戦略特区構想-山間地農業の活性化!

   政府は、3月28日に全国計6ケ所に国家戦略特区を指定することを決めた。その1つが兵庫県養父市(やぶし)である。農業委員会の事務の一部(農地移動)の権限を市に移管することなど、農業の改革が基本である。本事例については、ネットに「国家戦略特ワーキンググループ提案に関する集中ヒアリング」が出ている。これを中心に何をどうしょうとしているのか、見てみたい。 

Ⅰ.養父市の現状は超高齢化と零細農業

 養父市は「やぶ医者」の言葉の発祥地・・・実際は逆に名医の里とのこと。兵庫県北部の但馬地区に属し、平成16年に合併して誕生。12年の人口30,110人、22年には26,501人で、約12%も減少。市の面積422平方メートルのうち84%が山林。農地面積2,500haで、1農家の耕作面積は平均0.38haで全国平均の2.2haの1/5.8倍に過ぎない。山間地という部類で耕作放棄地が多い。 

 経済規模は平成24年で約560億円。農業はうち4.1%の約25億円。平成32年までに、高齢化約や人口減少で経済活動は約100億円縮小すると見込まれている。 

 超高齢化が進み、市人口のうち100才以上が1万人に対し15.4人(兵庫県の平均4.8人)、65才以上の高齢化率33%、75才以上20%.それだけ健康で長生きしている地区。今回構想では、労力不足のなかで元気なお年寄りのパワーも活用することが含まれている。 

Ⅱ.現状打破の先進的な実践

 市長は2期目を迎え、政策綱領のテーマは「産業を育て、人を育てて新たな命を生む町」として、経済再生を考え先駆的な実践をしているが、その概要は・・・ 

1.約100億円の経済縮小を考え、100億円の新たな経済効果を創造する。

2.行政の施策では、民間活力を引き出せない面があり、平成24年2月に市が100%出資の株式会社「やぶパートナー」を設立。民間から副市長を選び、社長とした。

3.「やぶパートナー」は、企業に出資を行う一方、ビジネスモデルを作り事業化を進めていく。そして収益を得る。「やぶパートナー」は、すでに農地の再生、空き地を使った米つくり、消費者との交流等を行っている。

4.官民協同で実施する公共サービス事業=PFIとして、温泉事業、道の駅を行い、 市の直轄工事に民間の専門家を配置する事業=CMとしてトンネル掘りも行っている。

 また民間との共同出資会社を立ち上げ、民間企業を育成支援をしつつ、農地の統合的な地経営、木彫を生かし地域振興もしている。さらに廃校の体育館を使い、産官学連携のスマートアグリも進めている(この事業者はオリックス)。

5.農業の活性化のため、農地をまとめ、任せる相手を決め担い手を育てる。元気な高齢の人材も活用し、養父市の特徴である無農薬有機、資源循環型の農業、蛇紋岩米(稲作)、但馬牛、八鹿豚、ブロイラー、高原野菜(特にダイコン)、朝倉山椒などの振興もしていく。

6.シルバー人材センターが頑張っているが、現在443人。平均年齢69.3才、請負事業規模2億4,000万円(件数の60%は民間事業)だが、もっと参加してもらい、農業を中心にした地域起こしに貢献してもらう。 

Ⅲ.規制緩和の主な要望は2点

 以上の改革推進のため法的な規制緩和が浮上し、戦略特区の申請がされたわけで、その具体的内容は以下の2点である・・・ 

1.農業委員会の主な仕事は、①土地利用計画の立案と土地賃借や所有権の移動決定という2つがあるが、仕事がオーバーな面がある。については、市に権限を移管して欲しい。現在市と農業委員会の関係は良好で、委員会も了解している。

また新年度から発足する農地中間管理機構は県段階に設置される予定だが、地元の実態を知っている市段階がその役割を担うのが望ましい。また農地転用の認可は県・国にあるが、これも一部は市に任すのが望ましい。 

2.シルバー人材センターについては、労働時間が週20時間以内、連続して31日以上働けないことになっているが、もっと運用を弾力的にし、長い労働時間にして欲しい。せめて週30時間、連続1年くらいの雇用にして欲しい。そうすれば収入を得ながら地域活性化に貢献できる。

  制約違反のペナルティーは明確でないが、厚生省から補助金が出るかわり、「制約遵守」の厳しい通達がたびたびくる。労働時間が少ないと人材登録者が少ないので、作業のローテイションが組めない。なお地元に労働力が少ないので、若い人の雇用機会を奪うことにはならない。 

Ⅳ.要望の背景は何かー精神的負担も加味

規制緩和を望む背景を紹介すると、まず第1の農地委員会だが、全国の状況を紹介しておくと、原則1市町村に1つの委員会を設けることとし、現在1,743市町村に1,

713の委員会がある。委員の任期は3年、月額報酬は3万円。地域の農業者から選挙でえらばれる選挙委員と、各団体(農協、農業共済組合、土地改良区)から1人ずつ推薦で選ばれる専任委員からなる。全国平均すると農業委員は21人で、選挙委員16人、専任委員5人である。
 

問題は地域には自治会委員、農協理事などいろいろの役職があり、養父市のように高齢化が進むと、なり手も減少する。加えて委員になれば地元の農地利用計画の立案や、耕作放棄地など遊休地の調査などの仕事もあり、そのうえ農地売買や賃借の許可をするとなると、極めて過重な労働。しかも、売買や賃貸の許可となると各戸の利害関係もからみ、決定をくだすための精神的負担も大きい。 

この負担軽減のためにも「所有・賃貸による移動許可」は市に移管すべきだというのだ。そして農業委員には、遊休地の調査や地元のよりよい農地の利用計画立案に専念してもらいたい・・・というのだ。 

 また現在国が検討中の農地集積中間管理機構を県に置くとしたばあいも、現場の実態が正確につかめず、これまた「不公平感が拡大」、「市町村の意向に沿わない集積」にもなってしまう。
 

・・・以上両面からの規制改革提案なのである。養父市のばあい、「山間地で平坦地と同様な大規模化をしても農業改革の実りに通じない」という面がある。ときに、シルバー人材センターの人に貸与とか、有機農業をしたい若者に貸与するなど、農業活性化の道は多様であることも背景にある。 

 シルバー人材センターの制約の緩和も深刻な問題のようだ。あらゆる面で、若手の人材が確保しにくい。当面元気な人には多いに働いてもらいたい。養父市の長寿の秘訣は各人が少ないなりに農地を持ち、働いていることも理由の一つ。となれば「若い人の職場を圧迫し、賃金も下げる」といった杓子定規な制約をはずすことも正論に映る。実際、養父市には年365日働ける、そして働きたいシルバー人材も多いという。 

 構造改革戦略特区の問題は「他山の石」ではない。1,743の市町村はそれぞれ立地も、農業の平均経営規模も、特産品も、働き手の年齢も変わっている。それぞれの個性に応じ自由裁量の余地を十分に残した行政でないと、日本は改革されないのではないか。

 

2013年12月27日金曜日

青梅の林業に生きる-木工やアロマ対応で林業経営に活力を!

1.無価値の間伐材の利用から

 最近、仕事の関係で、東京都下青梅市の成木を訪ね、若き林業者であるの「環境林業 成木の森」の中島大輔さん(32歳)に2度ほどお会いした。お父さんと100haの林地の管理に当たっている。
 
当方も8年前に「成木川の早太郎」という間伐材をめぐるささやかな環境小説を書いた(静岡県教育委員会の推薦図書になる)。その題材を得た場だけに、計7時間ほどと話が弾んだ。 
 
 小説でも「日本の林業は出口の見えないトンネル」と表現したが、現場にも名栗川に抜けるトンネルがあり。これに引っかけた表現である。そのトンネルの手前に西成木のバス停があるが(青梅方面からのバスの終着駅)、近くに中島さんの自宅がある。それだけでなく、バス停すぐ前には、中島さんが昔の借家跡に建てたという15坪ほど(一部2階あり)のロッジ風集会施設もある。これを拠点にいろいろの催しを開き、林業の活性化に寄与した・・・というのが中島さんの願い(写真1)。 

 
 写真①集会所用の建物
 
いま、どこの村や大字と名乗る地域でも、中島さんのような専業の林業家は1人とか2人しかいない。専業林業者や林業組合といっても、あくまで国や県の補助金で、森林を維持・管理するのが主目的。「林業本来の姿である材木売って儲けるとか、経営を維持できる状況にはない」という。 

中島さん自身も後継者のため、サラリーマン生活を投げ打って林業者になったものの、100haの森林を相手にしても、サラリーマン時代の所得に遠く及ばないそうだ。 

日本の国土の66%は森林である。資源のない日本にあって、水や森林は貴重な資源のはず。だがそうなっていない。「成木(せいぼく)の立木そのものは極めて安い。しかし、急峻な山地から運びだすとすれば、林道の不備もあって労力がかかる。市場で丸太として売れば実質赤字になる。このため、下草刈り、枝落とし、間伐、林道整備も補助金なくしてはやれない」。儲からないから人も雇用できず、林地はいたるところで荒れ放題。これでは、豊富な雨水も地中に残留することなく一気に流れ、土砂災害や洪水も起きる。 

台風のたびに、林地に放棄された間伐材がダムに流れ、流木の山を築いている写真を見た方も多いはず。林地の保水力がなくなれば、一気に流れくだり、ダムが干しあがる現象も多発する。多くの生活者は、森林と距離を持つため、この事実に無関心である。 

中島さんは、「政府も補助金で、目先の手当てをするだけで、抜本的に林業経営が回っていくような対策を講じていない。私としては、価値のない間伐材を使い、大工さんと協力し机、椅子、置物、アクセサリーなどの木工加工品の開発も始めている。また森林浴といわれるが、樹液などから癒しの基となる芳香(油精)を取り出し、アロマ・セラピーに通じるよう香水化しようと協力事業者に商品化のお願いもしている。こうしたことができ、ささやかながら収入があがるとなれば、兼業の林業者にしても、林地の整備もやれるようになる」と語る。

   写真②足を開くことで、机の面積を2~3倍に
写真③ 2人掛けの椅子。1人掛けもあり。           

 木工については、写真②のような開閉式の支柱で、テーブル面積が2倍、3倍になる商品、③のような2人掛けや1人掛けの椅子、④置物、⑤自然木を使った欄干や輪切りにしたペンダント・・・といった1点ものも作っている。まだ、いくらに売ってよいか迷いがあるようだが、写真を見て「このくらいなら買いたい」と言っていただければ、大変助かるはず。

④自然木を生かした置物 

 当方も6次産業化のお手伝いのなかで、①林地に生える榊(さかき)を畑地で増やし、ブランド化して売る、②林地にはえるカエデのシロップを集め、これをミツバチに食わせ、機能性の高いハチミツにする・・・などの話にも接してきた。 

 日本には広大な林地があり、間伐材やその枝葉という資源は無限である。政府も、こうした木工品やアロマ・セラピーに沿った商品、メイプルシロップ関連品、徳島県の葉っぱビジネス、アケビ等ほかの枝ものビジネス(直場所の顧客調査で「枝ものがもっと欲しい」との華道のお師匠さん2人からの要望を受けたこともある)・・・等々といった、林業周辺のビジネスの商品開発、マーケティングにも手を貸してゆくべきである。まず補助金ありきでなく、補助金が将来「1倍返しくらい」にはなって返ってくる緻密な戦略が必要だ。 

 間伐材を使ったバイオマス発電の実験も、各地で補助金を前提で行われたが、どこも成功例を聞いていない。当ブログでは一度、ガス化の提案をしたが、都市ガスに比し熱カロリーが低い欠点がある。都市ガスとミックスして価値が出るようだ。ガス会社に売電同様に、売ガスできる制度を作れば、これまた普及する可能性は高い。発電よりシステムが簡単と思われるからだ。売ガスで林業地帯が潤えば、森林管理も進む。 

2.急速に失われる世界の森林=1時間に東京ドーム127個分

 中島さんとも同意見だが、「やがて世界の森林が枯渇し、日本の林業がうらやましがられる日が来るはず」だ。だがそこまで待っているうちに、林業地区に後継者も従業者もまったくいなくなってしまう。そうなってからでは遅いのだ。本来の林業についても簡単に触れておきたい・・・

 ネット情報によれば、2000年から2010年までに、世界で減少した森林面積は年平均約521万haになる。1時間に東京ドーム約127個分に相当。減少の著しいのは、アフリカ、南米で、中国や欧州は植林も盛んで増えている。しかし、中国の場合、現状の供給は需要に追いつかず木材価格は高騰している。 

 残念なことに、中国はスギ、ヒノキを使ってこなかったため、木材の基準に、スギ、ヒノキが入っていないため、日本から輸出ができない。また、テレビで見て分かるように、全体的に鉄筋の集合住宅が普通という事情もあって、すぐには、日本からの輸入が進まない。 

 最近、高校時代の友人と話したことだが・・・中国であれ、その他のアジアの諸国であれ、日本のスギ、ヒノキが欲しい国があれば、政府が仲介し、立木で売り、相手国の労力で切り出してもらい、その国に持ち帰って利用してもらう。労働者の仮設住宅はこちらで準備、日本の各地を回る・・・こんなことができないものか。 

 スギ、ヒノキについては、未乾燥ではゆがみが生じ乾燥を要する。また乾燥してもなおかつやわらかい欠点がある。乾燥にコストもかかり、圧縮や硬さを生む樹脂加工などにもコストがかかる。これらへの対策も国を挙げて取り組み、ぜひ林業資源大国を生かすべきで、これまた成長戦略の1つになるはずだ。

2013年11月22日金曜日

「セレサモス」直売所(川崎市黒川)は閉店まで活気を持続!

   神奈川県川崎市麻生区黒川172のファーマーズマーケット「セレサモス」(JAセレサ川崎農協)は、友人コンサルタントが過去に「その良さ」を調査してくれ、一度は訪ねたいと思っていた直売所だ。今回、近くの明大農学部黒川分校の収穫祭を見にいったついでに寄った。明大農場でもこの日、セレスモアの出張「直売所」が開設されていた。
 
 
    上段の写真のとおり、アーチ状の建物でモダンな外観・・・ここに新鮮さがある。売り場面積は82坪ほど。レジ4台。年4億円前後ではないか。丘陵地帯のわずかな平坦地を利用したためか駐車場は60台とやや少なめだが、前面がワイドなガラスで仕切られ、店内は広々と感じる。

   ホームページで「病害虫防除記録などの生産履歴を記録し、指導管理のもと農畜産物を作っています。だから、新鮮で安全・安心を畑から食卓にお届けできます」と、明確に安全性を訴えている。
 
   16時過ぎに訪ねたが、地元生産者のキャベツ、ピーマン、コマツナ、ネギ、カブ、カリフラワーなど最低の購入に耐える品揃えがある。そして従業員全員、補充、陳列手直し、鮮度のチェックなどキビキビ作業している。
 
    閉店まで売り場が生きており、「売り切れご免」の風潮が強い直売所とは違う。職員の方に聞くと、「携帯電話で売れ行き状況が送信され、各人自主的に補充をしたり、店から午後便の出荷を促がすこともする」とのこと。最寄りの黒川駅などにスーパーがなく、付近に2店のコンビニがあるのみ。品揃えを基本に「頼りになる直売所」を目指してきたように思う。
 
    この日、和牛・ももスライス100g548円とか、切り落とし478円もあり、豚肉、鶏肉だけでなく牛肉の充実もしていると推定した。豆乳プリンや、リンゴ・パンプキン・アップルのパイ(380~398円)もある。野菜の珍しいものも、聖護院カブ200円、ベニムラサキ・カブ150円、辛味ダイコン120円、ダイコン抜き菜100円もあった。
 
    友人の7月時の報告では、ナスでけでもサラダ紫、千両二号、米ナス、ひ翠もあり、空心菜、モロヘイヤ、グレンベリー、ブラックチェリーtマト、ウコン、サンチュ、ソウメンカボチャなどもあった。
 
   
    花は店内に30程の切花の水槽を持つだけでなく、入口前、西側の側面全体(16坪ほど)に鉢花や苗木など極めて多数が置かれている。
 
    川崎市黒川地区は、「農業公園づくり」に指定されており、自然環境の保全と活用を通じ、農村・農業と市民とのふれあいを目指している。周囲の住宅も立派なものも多く、高い消費レベルに見合った、雰囲気、品揃えを実現している。
 
   11~翌3月が10~17時の営業。4~10月は10~18時の営業。定休日は毎水曜日。






 


2013年10月25日金曜日

「マオイの丘公園・道の駅」(北海道)は多店舗市場型の直売所!

   北海道の旅パート2である・・・当別から千歳空港に抜ける道すがらにある「道の駅」の標識。これに誘われ立ち寄ったのがとんがり帽子の屋根が、「マオイの丘公園」道の駅である(夕張郡長沼町)。4年程前に雪中を訪ねた由仁町。このすぐ近くだったことを後で知った。 

もちろん中央の施設には、土産物屋やレストランもあるのだが、直売所はこの施設と離れ、8つの小間割り店舗になっているのが、他所の道の駅と大違いである。各地に魚菜市場があり、ときに50店、100店もの専門店が集まっている例もある。

 
ここは魚菜市場でなく、「菜菜市場」とも言える。20区野菜販売グループ、17区グリーン営農集団、JAながぬま、幌内蔬菜集団、マオイ青果物販売グループ・・・と5つの集団がまず野菜や米を扱い、このほかに長沼町果樹振興会、酪農家の店・マオイ牧場クラブ、マオイの丘茶屋・南長沼商店街の3店が果物他の要素を補っている。たとえば。餃子、コロッケ、餅、ソフトクリームなども扱っている。
 
 
長沼町としては、1本化・1フロアー化した並みの直売所ではなく、「意欲あるグループが複数出店し、互いに市場のように競うことで、魅力を出して欲しい」との発想を持ったのではないか。1小間は15坪もないと思うが、共通の前広場が50~60坪あり、この前広場で売る分がむしろメインになっている・・・全国でも珍しい例である。ただ雨の日のことが心配になった。 

最初の5店はどこも米、カボチャ、キャベツ、ダイコン、タマネギ、ジャガイモなど共通の品も多い。だが共通品であってもそれぞれ個性ある品で、選択性が保たれている。平日の午後4時というのに、20~30人が回遊し賑わっていた。それぞれ2~3人の販売員がいるから、対話もはずみ顧客にとっても楽しいのではないか。
 


 
なお、冬場11~4月は営業時間10~18時、夏場5~10月は10~19時。駐車場は普通120台、大型15台。付近にはハイジ牧場、長沼温泉、馬追温泉もある。
 

2013年9月27日金曜日

北海道の直売所の1例-「のっぽろ野菜直売所」は地元色一杯!


   久しぶりの北海道行き。仕事の復路にあった江別市西野幌111の「のっぽろ野菜直売所」に寄ってみた。北海道ではごく普通の中規模の直売所ではないだろうか?売り場60坪ほど。レジ3台。だが内地と比べ駐車場は、約74台と広い。広さを利用し、収穫祭ほかの各種のイベントがやられ、直売所を結ぶスタンプラリー・コースの1つにもなっているようだ。 

 
 
 営業時間の8~17時は並みだが、北海道の気象条件や生産条件を配慮し、営業期間は4月中旬から11月中旬まで。そのかわりこの期間は無休で分かりやすい。 

 HPによれば販売品はグリーンアスパラ、ブロッコリ―、トマト、ホウレンソウ、ジャガイモ等・・・となっているが9月下旬のいまは、ジャガイモ、ニンジン、カボチャ、ニンニクなどが目立つ。 

 ジャガイモは10キロ箱の箱売りが約100箱もうず高く積まれている。ここが内地と違い、大量生産に見合った販売?・・・10キロで男爵1,300円、メークイン1,500円、キタアカリ1,300円とか1,500円。このほか、袋入りの100~150円のキタアカリ、男爵、レッドアンデス、キタカムイ、コロールも置かれ、ジャガイモ王国を反映している。
 
 
ジャガイモの箱売りコーナー 

 カボチャは1/4切りが中心で、顧客の買い易さを意識していて好感が持てた。100~130円だ。ニンニクは6アイテムと豊富で1袋150~200円ほど。無臭ニンニクもあって350円。ニンジンも9アイテムと多く、洗い・泥があり黄ニンジンもある。 

 今回、見ることはかなわなかったが、8月には平日500本、休日1,000本のトウモロコシを売るというから、観光シーズンの繁盛ぶりはすさまじいのではないか。おかげで、忙しさにも慣れているのか、従業者の接客ほかの動きもキビキビであったのが印象的だ。
 
 

2013年8月27日火曜日

平均年収2500万円の長野県川上村!(フジテレビ8月25日放映)


  長野県南佐久郡川上村は県の東南の端に位置し、標高1,110~2,595mに展開する高原の村である。人口4,759と少ないが、実践的で情熱あふれる指導者の藤原忠彦村長の永年にわたる村興しの努力によって、農家の1世帯の平均年収は2,500万円になっている(主にレタス?)・・・というフジテレビの放送内容である。これは桁はずれのすばらしい数値だ。
 
 
 
 藤原氏が企画課長の時代に、路線バスの廃止という事態に直面。生活の基盤を失えば、村は荒廃する。着目したのはスクールバスだ。「これを一般住民にも利用できるようにする」案を持ち、当時の文部省に掛けあったが、通学用のスクールは文部省、住民用のバスは当時の運輸省・・・という縦割り行政のため、なかなかOKが得られない。住民を乗せれば小額なりと運賃を取らねば、運営が出来ない。スクールバスの運行趣旨と矛盾が生じるからだ。

 
 

写真① 現・藤原忠彦村長

 だが、藤原氏はあきらめなかった。何回も関係の省庁に足を運んだ。そのうちスクールバスの運用規定のなかに「住民のために、利用するすることもできる」の条項があることを発見、これもとに再度交渉し、やっと文部省等の認可を得て、スクールバスの住民利用が実現した。小学生の乗る無料バスに、料金を払い地域の住民も乗る・・・地域活性化のほほえましいシーンも放送された。

 
 次に村の発展策として取り組んだのが、村営ケーブルテレビ局の設置だ。村の将来を考えたたとき、情報化時代に対応する必要がある。つまり、毎日のレタス等の相場情報を正確につかみ、各市場にタイミングよく出荷することができてこそ、不安定な経営を改善できると考え、前例を見ないケーブルテレビ局の設置に約2年かけ取り組んだ。

 これには、「関係官庁の方も、後半いろいろアドバイスしてくれ助けられた」と、感謝の気持ちを語っていた。小学校の廃屋?を利用してテレビ局は作られたようだが、的確な相場等の情報発信だけでなく、村の教育、郷育の要(かなめ)と位置付けられている。

 
写真② レタス畑の収穫
 
<感想>地方では確かに人材が得にくい。しかし、小さい町や村では1人でも熱心な改革者が行政やJAの中にいて、その人が信念を貫き、あきらめず努力すれば、改革が進むことを教えてくれる。
 
 「葉っぱビジネス」で有名な徳島県上勝町にしても、地元JAに席をおいていた横石友二氏(現・第三セクター株・「いろどり」社長)の努力が実ったものである。共通しているのは、上勝町でも「葉っぱビジネス」の成功要因の一つが情報の強化だった。1992年から町の防災無線を活用し、市場から来た注文をファックスで農家に一斉に流し、高齢者でも使える専用のパソコンを農家に貸与して、正確・迅速に出荷対応した。また、出荷情報だけでなく、各農家の売上高、売上順位なども流し、生産意欲を刺激してきたという。結果は2012年の「彩事業」のみで、年2億3千万円、関係農家194軒という。
 
  当方も1昨年、農水省の6次化事業のため20以上の市町村を訪問したが、日常業務のみに追われていて、6次化という新規の事業への理解は極めて不十分であった。各市町村の農・工・商の予算を合わせても、円グラフに表現すれば棒グラフにも似た少ないものである。これでは「日常の定番行政メニューを右から左に処理するだけに終わってしまうのもムべなるかな」と思った。
 
 だが、国・地方財政のひっ迫を考えるなら、川上村のように、公僕として「金を掛けなくても改革できることは何か」「いまある資源(例えばスクールバス)をもっと有効化できないか」「国の補助金を有効活用するすべはないか」など、考えていただきたいし、いまの世の中にはこれをボランティア的にも支えていきたいと思う人も多いことを市町村の職員は真剣に考えてもらいたいものだ。
 
 
 
 
 
 
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2013年8月3日土曜日

「成城石井のスーパー惣菜」の本-旬と手づくりへのこだわり!

   私の食品スーパーに関係した仲間は、成城石井(東京都世田谷区)を[あこがれのスーパー]として育ってきたものだ。50坪、100坪といった比較的狭いミニスーパーでありながら、通常の2~3倍もの品揃えをし、しかも「こだわりの商品」ばかり・・・その個性は大手スーパー・チェーンを寄せ付けないものだった。まだ20~30店舗ほどと思っていたが、すでに100店舗とのこと。伸びるべくして伸びている。
 
 青山の紀ノ国屋には洋の香りが強いが、成城石井には和・洋とり混ぜ、日本の食文化に根ざしたものを感じてきた。それが、最も良く表現していたのが惣菜である。今般、講談社から「成城石井のスーパー惣菜」(1,300円)が出版された。「高級スーパーで人気のあの味が家庭で作れる」の帯がついているが、和・洋・中華・エスニックの36のレシピが紹介され、味の決め手になる原材料や調味料も写真入りで添えられている。
 
 
 問題は真似ることではなく、その根底に流れる姿勢である。
「お客様の一つ一つの声に耳を傾け、厳選していくうちに、直輸入のワインやチーズ、菓子、調味料、さらには自家製の惣菜といった成城石井流の品揃えが充実していった」
「本当に価値ある商品をお客様にお届けしたい!が成城石井の想い。たとえば自社輸入ワインは、低温輸送するリーファーコンテナーで現地のワイナリーから店舗まで、外気の影響を受けることなく運びます」
 
 ・・・という記述がある。質を誇るには、それを裏付ける顧客志向、システムの強化まで完全を期すことが必要なことを教えてくれる。
 
 部門別のバイヤーさんの努力も紹介されている。こだわりは半端ではない。青果担当のばあい・・・「ハーブの使い方が分からないので、自分で家庭菜園を始めた。自分で体験すれば、農家の方が創る野菜はプロだなと思う。なかでも高知県の「りぐり自然農園のミディトマトは皮が軟らかくて、さわやかな甘さでうまみも抜群。それもそのはずで、アミノ酸たっぷりのカツヲの魚粉を肥料に遣い、ミネラルを多く含む海洋深層水で育てている」と述べているが、素材の特性をつかみ、それを生かしてこそ、美味で健康的な惣菜が生まれることを教えてくれる。精肉、酒、乳日配担当のバイヤーも同様のことを述べている。
 
 そして、成城石井のこだわりについては、①旬や産地に徹底してこだわる。②手づくりに徹底的にこだわる・・・の2点をあげている。あとは、直接購読して、その神髄を理解することだと思う。レシピごとの写真も大写しで、見た目から、その美味しさも伝わってくる本である。
 
  よくレシピを見ると、1品当たりの素材+各種調味料等の数は、少ない場合14~15点だが、多くは18~25点になり、最大限に味他を追求していることがわかる。点数が多いからといっても、調味料などは、きちんと並べておけば、混ぜるのにそう手間のかかるものではない。「時に少々の手間も惜しまない」が味の極意につながるのではないか。