1.
再度、日本の果物消費を論じる
「生産と消費」の項で縷々述べてきたが、果物の消費は確実に減少している。1人1日当たり消費量は2009年に115gだったが、10年後の2019年には100gになり(厚生労働省「国民健康・栄養調査」より)、さらに5年経過した2024年には90gを割り込んでいるはず。世代別で見ると50代の減少幅が大きく、全世代で果物摂取量が減っている。20~40代の果実摂取量は50g台で、まったく消費しない人の割合が59%にものぼるのだ。これでは厚生労働省の「食事バランスガイド」が掲げる「1日200g以上の果実の摂取」に遠く及ばない。
表―1 世界各国の果物消費(1人1日g数)国連食糧農業機構2011年
問題は表1のように、日本は果物消費の先進国に比し、1/2.5~1/2の後進国。もっとも中国、インド、ロシア、インドネシアも後進国。
2.産地も含めた販売促進
この現状を打破するにはどうするか。やはり1つ目は、価格が高すぎる問題。ジャイアントマスカットは、1房2,000円もし4人家族の1日のおかず代全体を奪うほどだ。他の果物の消費も奪うことも事実。やはり平地の耕作放棄地も果物に利用し、機械も大幅に導入できる果物作りに、試験場もJAや果実連も目を向け、コストダウンを真剣に行う必要がある。
2つ目は、「美味」さが不安定なことの改善である。野菜は新鮮さであれば、大方の消費者は選択する。果物は違う・・・甘さコクといった味、歯ごたえ、香りなど多要素だ。漠然としているが、食べる段階に適熟で、個々の果物の特性が発揮されている必要がある。食べる段階の適熟を前提に、これまたスーパー、仲卸、荷受け、生産者団体、農事試験場等が一つになり、適期収穫、その後の輸送法、保管法のマニュアルを確定すべきである。非常に困難なことだが、消費拡大のため頑張る必要がある。
3つ目は、甘さを増やすのに有機肥料や特殊な肥料が現に市販されている。この適正な普及を図る必要がある。
4つ目は、果物には収穫後も熟度が進むものと、そうでないものがある。①収穫後も熟度が進むものは・・・・ババナ、アボガド、モモ、ラフランス、カキ、ウメ等。②追熟が必要なもの・・・・キュウイ、洋ナシ、バナナ、モモ、スモモ、メロン、アボガド、マンゴー、パパイヤ。③追熟が進まないものは・・・・ブドウ、イチゴ、ブルーベリー、サクランボ、スイカ、パイナップル、和ナシ、かんきつ類等。なおリンゴやバナナはエチレンガスを放出。これをポリ袋に入れ、他の熟成する果物を投入し保存すると熟度が進む。スーパー等は以上のことをPOPなり、簡易印刷物でスーパーは消費者に知らす必要がある。
5つ目は、品目や品種区分で売っていく方法では、消費者は選択がしにくい。産地ごとのこだわりを前面に出す必要がある。多くの優良直売所では、個人別のこだわりをPOP化し、実ににぎやかで販促している。産地はたとえば出荷初めの10%の箱に「独自のこだわり」を表現したPOPを1枚封入し、スーパー店頭に展示してもらう。そのサイズは果物の陳列を妨げないよう横20cm×縦15cmほどの控えめな大きさにする・・・といった努力をし、店頭での販促に寄与する必要がある。
写真1 農産物直売所は「こだわり」表示のPOPが沢山
6つ目は多くのばあい、味を左右する糖度を店頭で表示することである。ヤオコーでは調査した日には48アイテムに糖度表示があり、ほぼ100%のアイテムに糖度表示を実施していると見る。そして写真のように、とてもおいしい、おいしい、普通の3区分の基準糖度を示し、大きい字で陳列品の糖度を示す方法である。
写真2 モモとブドウについての糖度表示
3. 再販売促進的な陳列法 主に優等生のヤオコーの実践と写真
①商品の目立つ台、籠、敷物 売場の主役は果物である。果物を目立つようにするには、台や籠、敷物の色を目立たなくする必要がある。一般に台は褐色、黒褐色を使う。70%の店はこの色を採用。残り20%ほどの店が木の自然の薄茶に近いもの、10%はオレンジとかグリーンと言った明るい色。若い客が多いとか、絶えずお祭り気分を演出するため、あえて明るい色を採用してもよいが、一般スーパーでは褐色~黒褐色の台や籠、敷物は黒あたりを基調色とするのが妥当である。
②ひな壇で見やすく取りやすく 直売所は出荷者の数や単品の補充量が多いため平台が普通だが、スーパーは単品多量販売ではなく、多アイテムの少量・中量販売が主流。こんおためひな壇式にして、少量を多量に見せ、かつ上の段でも見やすく・取りやすくするためひな壇式にするのが普通である。
③商品のカラー・容器コントロール 果物全体を浮き立たせるのと違い、1品=アイテムごとに目立たせるのがカラーコントロールだ。アイテム固有の赤、オレンジ、黄色、緑、褐色、紫などの反対色に近いものを交互に配し、縦じまをつくれば各アイテムが自己主張し目立つ。だがアイテムの少ない果物は全品について縦じま作りは困難である。こうした時は包装形態(ポリ袋入りとかフルーツケース入り、時にバラ売り)や皿盛り、フルーツキャップ(網目の色の差)の有無による差を利用し、縦じまをつくる。
写真2 果物の色だけでなく包装形態、籠盛りといったことも含め縦じまを
④傷つけない陳列 いくらアイテムごとの自己主張に成功しても、果物自身が痛んだり、傷着くようではマイナスである。果物の形に合わせた凹凸のあるケースを使うとか、トレイを積み上げる場合少しづつ重ねをずらすとか、フルーツキャップを使うとかし、重みが伝わらない努力が必要である。完熟度の違いによっても、痛みが異なってくる・・・この点の配慮も必要である。
写真3 マスクメロンでもフル-ツキャップを使えば、大量陳列も可能 ⑤カットフルーツの販売 こんご増々カットフルーツや冷凍フルーツの販売が増えて行く。これを冷蔵オーップンで販売する店が多いが、ヤオコーのばあい非冷のひな壇8尺でスイカ、メロンなど6アイテムくらいを販売している。非冷のため入口付近に場所を移動することもある。室温を冷やしており、持ち帰ってもひんやり感があり、多くの人は自宅で冷蔵庫に入れ再度冷やす・・・と考え、得策な非冷販売を採用しているように思う。
写真4 非冷のひな壇台によるカットフルーツ販売
⑤入口近くに何を置くか どう店頭から店奥(野菜)に誘導するかは2つの考えがあるように思う。1つは店頭近くに季節の走り品(価格は高い)を置節の変化を演出する方法。2つ目は季節の出回り品で、果物の安さや旬を演出するほうほうだ。うっかりすると、ここに安さの演出で野菜を持ってくるスーパーも多い昨今だが、すでに述べてきたよ うに実用的安さを前面に出せば、高い贅沢品ともいえる果物の購入を阻止してしまう。
写真5 入口近くは季節の走り品や単価の高い品の1個売り等。籠台も上手に利用
⑥平台利用の大量販売 ヤオコーを見ていると、入口ショップフロントを背にし、冬場は焼き芋が売られたり、夏場はひな壇にしてカットフルーツを売ったり、時としてマスクメロンの特売がされたりしている。まとめ方の難しいコーナーのようだ。入ってすぐのひな壇側のエンドは⑤の通りだが、反対側のコーナーはとっかえひっかえ平台の上で写真のように段ボール箱、数個入りの塩ビパック入り等で各種果物の特売を打つことが多い・・・他店はここに野菜の特売品を置き勝ちである。ヤオコーのばあい、閉店時はこのコーナーは「空き」状態にしているが、とっかえひっかえ目先を変えていく特売の計画化が図られているようだ。
写真6・7 入口近くの左半分は平台で季節商品の特売ー箱出しや塩ビケースの平積等