車の普及で、「モータリゼーション中心の買い物になりつつある」と思いがちだが、食品の購入のばあい、商圏半径は0.8~2.5kmのため、全国66ケ所の当方統計では、表-1のように自動車36.6%、自転車35.4%と、二つが拮抗している。徒歩はこれらの半分の17.9%だ。配達という非店舗購入も5.6%あることを忘れてはいけない。
1世帯の自動車購入費は平成8~10年に最高額を示し、その後は漸減、21年からやや回復傾向にある。以上からすれば、すでに車社会のニーズは満たされ、全国的には表のレベルが一般的と考えてよい。高度な車社会の長野の優良スーパー・チェーンのばあい、年約500万円に1台の駐車場になっている。
したがって長野の%を基準に、地域の自動車率を調べ 地元率/長野率=a とし、年商予測万円÷(500万円÷a)=上限駐車台数 となる。そして面積は1台10坪が標準ではないか。山梨のリサーチの際、「2店回るときもあり、日蔭でないと生鮮が痛む」の声も聞いた。夏日の厳しい地方では一部屋根のある駐車場も必要である。
表―1 交通手段別の構成比% (近藤調査)
手段
区分
|
全国66
地区平均
|
東京35
地区平均
|
長野11
地区平均
|
配達
|
5.6
|
4.6
|
9.5
|
徒歩
|
17.9
|
24.7
|
8.6
|
自転車
|
35.4
|
49.7
|
18.1
|
バイク
|
2.1
|
1.0
|
3.2
|
自動車
|
36.6
|
15.2
|
59.6
|
バス
|
1.3
|
2.8
|
0.5
|
電車
|
1.1
|
2.2
|
0.5
|
2.各種の自動車要素の数値
ここでは、①自家用車保有台数、②主婦の運転免許率、➂主婦のマイカー保有率の3点を紹介する。ついでに平均値も最下欄に示す。
表―2 自家用車保有台数別の構成比%
台数
|
全国66
地区平均
|
東京35
地区平均
|
長野15
地区平均
|
0台
|
9.4
|
15.9
|
5.2
|
1台
|
50.5
|
71.4
|
19.7
|
2台
|
26.4
|
10.1
|
42.9
|
3台
|
8.8
|
2.1
|
19.8
|
4台
|
3.5
|
0.4
|
8.2
|
5台上
|
1.4
|
0.1
|
4.2
|
平均台数
|
1.51
|
1.01
|
2.19
|
表―3 主婦の運転免許取得率%
有無
|
全国66
地区平均
|
東京35
地区平均
|
長野11
地区平均
|
有り
|
54.5
|
41.7
|
69.4
|
無し
|
45.5
|
58.3
|
30.6
|
表-4 主婦のマイカー保有率%
有無
|
全国66
地区平均
|
東京35
地区平均
|
長野11
地区平均
|
有り
|
34.6
|
11.4
|
59.7
|
共同利用
|
13.0
|
19.2
|
4.2
|
無し
|
52.4
|
69.4
|
36.1
|
長野など兼業農家も多い地区では主婦平均60%ほどまでマイカーを持ち、農家などは敷地も広く3~4台の駐車場が見られる。それでも70代過ぎの高齢層は結構免許を持たない主婦も多く、「買い物を含む家計の主導権が、昔と違い若奥さんに移っている」の感を深くする。
逆に、東京など市街地では、自転車+徒歩で75%になり(車は1世帯1台平均で、ご主人が主に使う)、高齢主婦といえども家計をがっちり握り、優雅な年金生活を送っている。大都市と近郊部では、高齢者をターゲットとするマーチャンダイジングにもっと目覚めるべきだ。高齢者向けのプレゼンのPOPをほとんど見たことがない。
3.交通手段別の移動距離(別項にも掲載)
食品を買うため主婦は徒歩なら、自転車なら、車なら・・・どのくらい移動してくれるのだろうか?
これはスーパーにとっても、食品専門店にとっても、チラシ配布エリアや、駐輪・駐車台数の適正配置上、重要なことである。だが意外にもはっきりした資料がない。下記のまとめは、当方が訪問調査で得た買物先、購入先別の購入シェア(頻度と客単価を想定し全戸計算)を前提に計算したものである。
地図に訪問家庭を点で落とし込み、該当スーパーに向けて、シェアに応じた長さの→を記入してあるので、交通手段別(これは原票に記入)の距離や購入シェアを、いつでも整理可能なのだ。距離は迂回でなく、あくまで直線距離だ。迂回距離はとうてい測れないし、他の地域に適応しにくい。この点では直線距離のほうが、他地区に適用しやすい。
(1)徒歩(96事例) 平均移動距離0.54km
表のとおり、普通は「徒歩商圏750m」と言われてきたが、実態も750mまでに79%まで集中している。0.75kmを越えると急速に該当者が減る傾向にある。だが1.5kmまで来ているが、回帰分析から、限界距離は1.22kmという解も出てくる。なお結構、健康がてら、散歩がてらに長距離を徒歩で行く人も増えている。
家庭内のシェアにおいては、0~0.25kmは50.8%にもなる。0.25~0.75kmでも39~34%ほどを維持し、自転車や車客より高い。よく「徒歩客は購入額では最大の良い客」と言われるが、固定客になりやすく、客単価は低くても(持てる限度ある)、購入頻度が高くなり、毎日型の来店も多く、当然の評価である。
表-5 距離別・交通手段別の利用度と購入シェア
距離区分
|
距離別利用者率%
|
家庭内平均購入シェア%
| ||||
km
|
徒歩
|
自転車
|
自働車
|
徒歩
|
自転車
|
自働車
|
~0.25
|
16.7
|
4.5
|
50.8
|
30.8
| ||
~0.50
|
30.2
|
26.3
|
11.5
|
38.6
|
31.2
|
35.3
|
~0.75
|
32.3
|
30.1
|
20.7
|
34.2
|
26.4
|
23.2
|
~1.00
|
12.5
|
21.8
|
17.2
|
27.6
|
22.7
|
26.5
|
~1.25
|
6.2
|
9.8
|
6.9
|
19.0
|
16.7
|
24.0
|
~1.50
|
2.1
|
3.8
|
12.6
|
4.1
|
19.7
|
17.9
|
~1.75
|
3.0
|
9.2
|
5.1
|
32.7
| ||
~2.00
|
0.7
|
14.9
|
18.6
|
30.8
| ||
~3.00
|
2.3
|
9.6
| ||||
~4.00
|
3.5
|
4.4
| ||||
~5.00
|
1.2
|
5.0
|
(2)自転車(133事例) 平均移動距離0.71km
平均距離からすれば、徒歩との差は200m足らずである。「楽に早く近隣を回れる」という便利さもあって、かなり近隣でも自転車は利用される。利用者例も徒歩より多い。
徒歩に押され0~0.25kmは、利用者が極めて少ない。0.25~1.00kmの利用者が78%と圧倒的に多い。1.0kmを越えると急減するが、限界距離は回帰分析では1.56kmとなるも、実際には2.0kmの例もある。
購入シェアにおいては、荷台に乗せる量に限界があり、頻度を考えたばあい車より家庭内シェアは低くなっている。
(3)自働車(87事例) 平均移動距離1.38km
平均距離からすれば、自転車の倍近くになっている。車には限界距離がないとも言えるが(たとえば、農産物直売所は狭くて5km、15~25kmもあれば、観光地型は50~200kmに及ぶ)、日常の買物では今回のように約5kmになる。スーパーの一般的な商圏半径は、モータリゼーションの進んだ長野・群馬当たりでも2.5kmほどが普通。5kmも走れば、一般的には隣の商勢圏にまで出向くことが可能な距離である。
表のように、0~0.5kmの利用者は皆無であり、0.5~2kmぐらいまでに分散している。2kmを超えると急激に減る。これは先記のとおり、食品中心の商勢圏はほぼ半径1.5~2.5km単位に分割されていることとも関係する。
しかし、0.25~2.00kmの間、購入シェアは安定しており、「距離に関係なく、自己が魅力とする店に行く」傾向が強い。自働車にとっては1kmも2kmも50歩、100歩であるためだろう。また運搬重量にも耐えるからだ。
車の積載量が多いことと合わせ、やや離れていても楽にマメに通うこともでき、購入シェアは自転車よりやや高めになる。ただし2kmを超えると間に合わせ買いのためか、急激に購入シェアは低下している。
・・・以上が、交通手段別の購入動向だが、①0~0.25kmは徒歩中心、②0.25~1.00kmは徒歩・自転車・自働車の選択圏、③1.00~2.00kmは自働車中心の自転車の選択圏、④2.00km超えは完全自働車圏と見てよい。
高齢化が進めば、自働車→自転車→徒歩への流れも加速、配達、御用聞きといった必要性も増してくる。次なる対応も必要になる。
4.週の買い物回数は
車による買い物はまとめ買が可能になり、徒歩・自転車ではコツコツ買いになる。では週の買い物回数はどうなるか?
表-6 週の買い物回数
週回数
|
全国66
地区平均
|
東京35
地区平均
|
長野11
地区平均
|
0.5-1
|
1.5
|
0.2
|
3.9
|
1.5-2
|
7.1
|
3.9
|
14.3
|
2.5-3
|
15.0
|
12.5
|
22.3
|
3.5-4
|
22.5
|
22.5
|
23.6
|
4.5-5
|
15.0
|
16.6
|
11.0
|
5.5-6
|
7.5
|
7.6
|
7.1
|
6.5-7
|
31.4
|
36.7
|
17.8
|
平均回数
|
4.66
|
5.00
|
3.92
|
結構、毎日に近い週6.5~7回が全国的にはトップで、ついで1日置き程度の週3.5~4回が2位となる。日本ほど「鮮度志向」の強い国はなく、今もって毎日派の多さ(約31%)を支えている。しかしモータリゼーションが進み、商圏半径も2.5kmと広い長野では毎日派は18%ほどまで低下する。農家や家庭菜園を持つ家も増え、野菜が自家調達できる面もある。
今後は高齢層も考え、果物のブドウとかカット・スイカをプラスチックの容器に入れ小口に販売したり、サンマやアジの1尾もの、切り身の1切れものを強化する。また野菜・果物や鮮魚等のアイテムを変えながら訴求する・・・これらの努力が来店頻度を高め、同時に購買力全体のアップにつながるはず。
鮮度については、保存法が発達しており、どうしても来店しにくい人には、各商品別の適正な保存法のPOPをつけ、ときに簡易パンフを配ることも必要ではないか。現在のスーパーは省力に走り過ぎ、プレゼンを伴うPOPがほとんどない。これまた反省すべきことだ。
食品スーパーの売上予測調査承ります スーパー開発 近藤
売り場規模
|
備考
|
調査分析
|
旅費・宿泊
|
300~600坪
|
40件の訪問
調査含む
|
30万円
|
実費
|
300坪未満
|
25件の訪問
調査含む
|
20万円
|
実費
|
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