2012年11月15日木曜日

農産物直売所の安売りは内部競争-個性化で是正を!

 
  各地からの直売所情報を聞くと「競合店やスーパーとの価格競争が激しく困っている」との声ばかりである。実際は「売れれない理由を価格にだけ求め、仲間内で値下競争している」のではないか。売上減の真の原因追究から目をそむけていないだろうか?
  

  当方の農産物直売所3ケ所、計1,200人の顧客店頭調査では、来店理由のトップは鮮度で、その平均支持率は92.3%(1位)である。これは突出した数値である。スーパー等対象とした買い物理由調査の場合、鮮度の支持率は61.3%(近いの70.6%に次いで2位)である。その差約1.5倍である。

 以上で分かることだが直売所の場合、圧倒的多数の人が鮮度目当てにきている。直売所客は鮮度・品質を好む客中心であることを、強く認識すべきだ。

 安さの支持率も53.3%(2位)と確かに高い。スーパー等の調査では35.6%(3位)であり、やはりその差約1,5倍である。だが、同じ「安さ」といっても、直売所の安さは「生産者が直売し、中抜きのため合理的に安い」との認識であると推定している。直売所の顧客の75.1%までは、50代以上であり(2店各400人の調査)、所得的にも高く安定した層で、本来安さ志向ではない。

 スーパー等の安さを支持する層は、所得が低く、パートに出ることも多い20~45才までの若年主婦である。子供さんもいて総合的に食品、菓子、雑貨などの安さを追求するので、野菜が安くても直売所に来ない。ディスカウント店を選んだり、スーパーのチラシを見て買い回れば、すぐ200円や300円は安く買えるからだ。ロスリダーと言われる目玉商品を3点買えば、それだけで300円や400円倹約ができる・・・開店指導でさんざんスーパーのチラシも作ってきたので明言できる。

 
 「本質的な安さ志向客」がこの通り、ほとんど直売所に来てないのに、「スーパーや他の直売所との競争が激しいから安く売る」というのは、ある意味でムダな努力と言える。効果が出ないからますます安売りをしたくなってしまう。

 直売所は数こそ16,800店となり、スーパーの約15,000店を超えたが、総売上高は8,800億円で、スーパーの18億9,000万円の4.7%に過ぎない。シェアからみればヒヨコと言ってよい。

 今日、多くの直売所が売上げ、客数で低迷ないし縮小しているのは、発展方向を見失い、かつスーパーの過酷なまでの努力に比し、充分な魅力作りされていないからである。

 具体的に言えば①柔軟なコンセプトの変更や顧客本位のコンセプトの設定、②計画的な出荷量や品質の確保、③新製品の開発、④安全・安心の向上、⑤POPの徹底や情報力の向上(他販促全般)、⑥店長自身やパートの教育、⑦計数・財務管理の徹底など。努力の領域は無限に残されている。営業時間・休日といた面でも、自分の都合が優先している(短い)。

 1.柔軟で顧客本位のコンセプトの設定・・・「地産・地消」は直売所スタート時点の共通の理念であって、コンセプト(発想)ではない。コンセプトは、「ストア・コンセプト」とか「企業コンセプト」と言う字が前に付き、その店の個性を物語るものでなければならない。

 地産・地消という言葉を金科玉条と取り、独自の個性が追求されていない。個性がなく、同じものをどこでも売れば、客は大型の品ぞろえの豊富な店に自然集まってしまう。

 また「地産」のみにこだわれば、雪や寒さの時期に、全く商品が集まらない直売所もある。「顧客の利便を優先し、近隣や遠隔地のこだわりの商品も揃える」のも一つの発想である。「午後が欠品になりやすいので、仕入品も入れ、利便を優先するため、市場仕入もする」も発想の一つである。

  現に20%前後の仕入品を入れ、夕方までパックし補充を続ける店で、60坪にもかかわらず年8億円強を売る店もある。この店の場合、まず青果の品ぞろえが80品目強と多い。普通は50~60品目止まりである。このほか米、米飯、餅、落花生、酒などの品ぞろえも他店の数倍ある。代表者も毎日店の補充を手伝いに来、率先垂範している。惣菜は残ると見れば、各人午後から値引きもする。仕入品をパックし補充するため、午後行っても、誰一人手持ちぶさたな従業員はいない。このため、利益も出て余剰金の積立もかなりな額ある。

 ところで、「こだわり」も多様化しており、徹底した美味の追求、新品種や珍しいものの率先導入、トレーサビリティやGAP(管理適正規範の導入)による安全保障、減農薬や有機品の充実、商品知識の提供、満足してもらうおモテナシの徹底、6次産業品化による付加価値商品やサービスの充実・・・等々「こだわり」の引き出しを沢山持ち、複数の組み合わせで強い個性を創造すべきである。

 最近でこそ、トレサビリティの記録ファイルを店に置く直売所も現れているが、真剣に安全・安心の保証を個性にした直売所に接したことは10に1つもない。

 「地消」という枠はもともと空論である。直売所は近隣型でも、すぐ商圏半径は5kmにもなり、観光地に向かう道路沿いでは15~20kmになり、観光地であれば50~200kmにも及ぶ。集客圏はもともと地元を超えている。地元に限定すれば供給が消費をすぐ超えていまい、3年ほどで満杯になり伸びがなくなる。繁盛店はどこも直売所のブランド化で、広域集客を達成し、広域の宅配も増やし、「他消」に成功しているところである。

 個性を強めれば、遠方からも来てくれ、「来年は季節になったら宅配で送ってくれ」「ギフトとして頼みたい」ということになり、努力次第で県下全体、日本全体を商圏にできる。このためには、「市場に出せない等外品を売る」から、「信頼される良品販売に徹する」というコンセプトへの転換も必要になる。

 
 2.計画的な生産量と質・・・「好きな時に、好きな量を出荷すればよい」では、同じ品ばかり出荷され内部の価格競争を生む。出荷組合と店が充分POS情報も参考に、適正品質のものを、適正時期に出荷する体制を確立すべきだ。違反者にはペナルティを、計画履行者にはインセンティブを出すくらいにすべきである。茨城の「みずほの村市場」では実施している。安全・安心商品、新製品の開発もこの努力に含まれる。

 3.POPの徹底や情報発信力・・・いまやスーパーのPOPは省力のため、アイキャチャーなどもないプライスカードになりきっている。直売所こそがPOPや印刷物を通じ、農業者の想い、商品知識を伝える唯一の場所になっており、この面でも個性を競うべきである。

  試食見本も常時3~6品を用意する、糖度、美味しさ、その理由、安全管理、料理法、保存法、栄養価、素材の組み合わせで健康確保・・・など、食育・農育に沿ったPOP、写真パネル、料理教室、農業体験等もまたすこぶる必要である。

 
 HP、プログ、ツイタ-といったネットを通じた、多面的な情報展開もしていけば、これまた商圏拡大になる。自店の従業員がITに弱くても、近隣に声を掛ければ月1~2万円でHPやブログを代行してくれる人もいくらでもいる。

 できなければ、手書きで手渡しのチラシを作り店頭で配布したり、旅行社に送り、観光バスを呼び込む方法もある。売場でただ売上げ減を嘆くのでなく、行動に移すことではないか。

 4.店長やパートの教育・・・定年退職後の人を半年とか1年研修を受けさせ、店長に据えるケースに良く出あう。5年たてば交代・・・これでは経験が蓄積しない。また、熟年のためパソコンのできない店長にも2例出あったことがある。若い30代、40代の人材を育て、JAなど組織が大きい場合、この人材が直売所担当の課長、部長となり、多店化の要になっていくぐらいでないと、旧・Aコープのように、衰退の運命をたどると思えてならない。絶えざるイノベーションのため、男性・女性、正社員・パートの別なく人材を育て、経営の革新に備えなければならない。

 パートについても、マニュアルが準備され、かつ応用問題も解決できるよう、厳しい3~7日ていどの教育は必要である。これまでは店長が経験がなく、教育もできない店が多かったのではないか。数値目標も提示し、一緒に考える場も持ち、全員野球の出来るレベルアップを日々追求すべきだろう。

 5.計数管理の徹底・・・財務管理はプロに任すとしても、毎日の売上高、客単価、客数、天候、気温、部門別売上等などは全員が見れるようにし、日々の成果とその原因を知り、改善のために役立てる必要がある。

 長期的な低迷、減少が認められれば、価格競争に走るのではなく、個性を充実させる方向で、再スタートすべきだ。方向とすれば、すで別ブログで触れてきたが、下記3方向が考えられる。
 ①地域の深起こし・・・地域資源の再発見、惣菜や時に精肉の充実。学校給食・民宿・レストランへの供給。
 ②ブランド化・・・直売所の個性を強めブランド化し、商圏を集客、ギフト等の宅配を通じ広域化する。
 ③経営の多層化・・・6次産業化に沿い、ブランド化できる加工品の開発、農村レストランや体験農場の設置、料理教室、グリーンツウリズムとの結合による商圏の超広域化。



      近藤・支援内容

  該当時間

1.農業のマネージメント講座

3~7時間

2.農産物のマーケティング講座

3~7時間

3.農産物直売所の新たな発展策講座

3時間

4.直売所・顧客視点の販売促進講座

 3時間

5.主婦の食のライフスタイル講座

 3時間

6.直売所顧客調査(200~300人)

2日16時間

7.直売所の総合診断

2日10時間

8.農業経営総合診断

2日10時間

<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)

リサーチ30万円(交通・宿泊費別)

講演の場合

1時間は4万円

2時間は6万円

経営診断20万円(交通・宿泊費別)

報告日は無料とし、交通・宿泊費別


     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料



 

 


  

2012年11月3日土曜日

援農ボランティア「すずしろ22」に学ぶ!農業の労力不足対策

                   
 農業就業人口は昭和55年の697万人から、平成22年には261万人となった。6.6%も減少した。しかも22年には就業者の74%が60才以上である。昨年から4ヶ所ほど「新規就農者する人の研修講座」にも招いていただいたが、なかなか、「就農者求む」のニーズに応えるだけの応募者はいないように思う。

 第2、第3の手だてても考えておかないと、直売所はじめ出荷者不足も進行し、農業の現状維持が難くなる。

 市町村が兼業農家で停年退職し、農業にリターン出来るようになった人を登録してもらい、その人たちに作業請負や借地農業を拡大してもらうのも大切だ。75~80歳までは十分即戦力になるはずだ。もう一つは農業者と消費者と農消連携のネット・ワークを構築し、農作業の部分部分を担当してもらう方法だ。

1.援農ほか3つが柱

 以前に紹介した東京の八王子市で活躍する「NPO法人・すずしろ22」が、農消連携の進んだモデルである。前理事長の合津秀雄さん、事務局の飛田恵美子さんの2人に、先日直接話を聞いたが、合津さんは「すずしろを参考にした組織が全国に広がることを願っている」としていた。

 そして、事後にも「①人手が必要な農家がある、②農業に関心のある市民がいる・・・③両者のニーズをコーディネイトすべきである、④責任性・継続性・両者の対等性に配慮して、有償ボランティア活動とする、⑤ある程度の実績に基づき、この活動を横に向け拡大展開できたら素晴らしい」と、意見を整理しメールで送ってくれた。

 「NPO法人すずしろ」は平成19年に誕生したが、その目的として「広く一般市民と農家を対象として、援農ボランティア、農作業の受託事業及び地場野菜供給事業を行い農業の活性化をはかる。同時に食料供給、防災、環境保全、農耕文化の継承など多面的価値ある農地を、都市住民の生活環境の中に存続させ、社会教育の推進や環境の保全に寄与する」と定款で謳っている。そして消費者の「農作業を手伝ってみたい」と云うニーズと、農業者の「農作業を手伝って欲しい」のニーズを橋渡しして、大きな成果を上げている。

2.すでに援農年12,000時間以上

 具体的には1.援農作業、2.農産物販売、3.農地の活用の3本柱で活動している。現在会員は農家約25軒、消費者約140人で、個人正会員1,500円、団体会員10,000円、個人・団体の賛助会員1,000円の各年会費を払っている。

まず1の援農作業だが、右肩上がりで昨年は12,000時間の援農作業をし、24年度は14,000時間を予定、将来的には30,000時間を目標にしている。援農1時間につき540円を農家会員から徴収、消費者会員に460円を支払い、80円を本部運営費に充てている。さらに内60円が援農業務の担当者に支払われている。

会員同士のやりとりで、かつ有償だが安い金額である。交通費は払われていない。農家側が労力支援の希望を時間単位で出し、作業時間について帳票で管理、毎月月末に締めて、15日までに事務局に入金。入金なきばあいは事務局で集金に回る。

作業はトマト他の野菜の種まき、苗植え、堆肥撒き、土寄せ、草取り、収穫、出荷作業、果物ではブルーベリーのせん定・枝片づけ、ネット張りと片付け、収穫、梅のもぎ取り、稲作では苗の補植、はざ架けなど。畜産はまだ依頼がないとのこと。また機械作業は刈り払い機、耕運機は認めるも、チエンソーは認めてない。つまり危険の少ない補助的な作業が中心である。

問題もいくつかある・・・

1.たとえば、8月は草取りなど援農ニーズのピークになるが、暑いので援農者が少ないといったこと。云った問題も起きる。

2.作業の失敗で損害が出た場合の保証。これは当日の作業報酬の範囲内で弁済する約束。3時間労働であれば1,620円の弁済だ。

3.つぎに作業中の事故に対する保証。労災保険が適用されないので、危険な労働は避けるとともに、万一の場合は個人の健康保険で対応している。将来、NPOとして保険会社の任意保険に入る方法も考えているようだ。

年金などで恵まれた消費者会員も多く、「農業をときどき楽しみたい」ということで、報酬額にこだわらない面がある。会報には「作業は厳しかったが、その後の充実感がたまらない」といった言葉が多く寄せられている。

3.農産品の販売は学校給食や宅配

2の農産物の販売ルート開拓については、「例え有償の援農を受けても、それ以上に儲かるように」と、直売的な学校給食、イベントでの販売、宅配に力を入れている。学校給食は八王子市内に68~69の対象校があるが、28校に現在供給している。農家に荷を取りに行き、学校に運ぶ。合津さんは「本気度」を見てもらうため乗用車を捨て、軽トラックまで購入し配達に当たっている。

チームがいくつかあり、某班では4月人で月1~2回直売イベントをしている。1回25,000~33,000円の販売額という。昨年秋までは月3~4回やっていたが、地産地消が進み、競争が厳しくなり、1ヶ所閉店したとのこと。また宅配は注文を受け1パック1,000円の詰め合わせを発送している。人材や車を確保できれば、まだまだ伸ばせるとのことである。

4.農地活用は遊休地の活用で市民農園

 3の農地活用は「遊休農地の活用を農家・市民・環境の3面から期待されている活動」と位置づけている。1つは「農作業受託方式」で、キーマンが生れ、10~20aの土地を請け負ってもらう方式を目指している。2つめの市民農園の開設・運営はすでに18人ほどが関与し、1区画約15坪(50㎡)を21区画運営し、年41万円ほどの収入になり、半分が農家(地主さん)に還元されているという。農園にはNPO開設型と農家開設型の2種の市民農園があり、前者はNPOの管理で後者は農業者の管理だ。

5.作業の高度化も必要ではないか

援農については農家と援農者が相互に評価することは、現在されていないという。人間関係を良好に保つための配慮と思う。しかしさらに進む人手不足を考えれば、実地研修も強化し能力の向上をはかるとともに、作業の難易度、その達成度、作業環境などの相互評価をし、能力に応じた向き向きの人を派遣し、時給もAランク(高度の作業に耐える)940円、Bランク(中程度の作業に耐える)740円、Cランク(軽・補助作業レベル)540円とするなどして、熟練農業者の代換えも可能な人材を育てることも必要だと思う。つまり半専従希望者、ときに新規就農者になり得る層が出てくることが望ましいように思う。

やや古い農水省統計によれば、露地野菜24品の農家所得は1時間平均1,343円となっている。直売所出荷の農家であれば、1.5倍の約2,000円にはなっているはず。540円を仮に上限940円にしても、農家にメリットはあるはず。

 機械作業や農薬散布など、高度の作業を担当すれば危険度も高まる。これには、民間保険会社の任意労災保険にNPOなり団体で一括加入する方法もある。当然、報酬の中に保険料負担分を含ませる等の工夫も必要になる。交通費の支給も課題になるだろう。

いずれにしても、すずしろの実践を全国に普及する必要性が益々増している。それには各市町村に、市民3人、農家3人ぐらいのコアになるキーマンがいれば十分スタートが切れるように思う・・・必ず農家と市民の相互にニーズが存在するからだ。あとは「地域活性化」の視点から市町村や農業委員会の方等の協力を引き出すことではないか。
 
「NPOすずしろ22」の定款もいただいている。必要であればメールをくださればお送りするので、参考にしていただきたい。