2012年12月20日木曜日

直売所はHPやPOPで何を知らせるか?イベントに何を?

 
   日本政策金融公庫の「農産物直売所に関する消費者意識調査」(H23年11月インターネット調査。20才以上の全国の一般消費者1,025人)は、極めて多数の項目の調査がされており、直売所関係者必須の資料である。

  これまで、HPや店内におけるPOPで、何に重点をおいて書けばよいか?の指針はなかった。だが、「直売所にある商品説明やシールへの記載要望内容」(複数回答)は、この点の指針となる。無料の公的ポータルサイトのSEICAカタログ(野菜、果物、米等)であれば、下記の調査要素の総てを表現できるが、直売所としてはHP向けの要素、POP等で売場で訴求すべき要素・・・と、ある程度分けて考えるべきだろう。


POP等の説明要素

支持率

料理方法

30.1

賞味期限等の鮮度情報

28.2

農薬や肥料の使用量

22.6

味など商品の魅力

18.6

生産地

17.0

農家のこだわり

15.9

生産者氏名・住所・連絡先等

12.2

栽培方法

10.8

売れ筋ランキング

10.1

商品の栄養成分

8.1

アレルギーに関する情報

5.1

その他・特にない

31.5

  いずれにしても生産地、生産者氏名は直売所の場合、ほぼラベル表示でクリアーされている。住所・連絡先が分からなくても、直売所では把握できていて、追跡(トレーサ)可能である。

  また売れ筋ランキングはHPで広く伝えるべきことだ。 道の駅付帯の直売所ではランクを公表していることもあるが、 今後は「たまに」ではなく、確実に打ち出すべきだろう。だが前年実績を打ち出すなど、季節を先取りした情報でないと、来る人の利便につながらない・・・後の祭りでは、顧客をがっかりさせるだけである。

 
 当方もPOP作りについては、実際に手伝ってきたが、外部の人間が書けるのは料理法、栄養成分、アレルギー情報等である。本など見ればどうにか分かるからだ。だが、その支持率は合わせて43.3%である。

  これに対し、鮮度情報、農薬や肥料の使用量(有機農業の程度)、味など商品の魅力、農家のこだわり、栽培方法は合わせて96.1%にもなる。これらについては、農業を実際にやっている出荷者しか正確なことが書けない。(減農薬・減化学肥料のエコファーマーなどの表示は、1人1人が競うくらいでないと、顧客の要望に沿わない・・・22.6%の支持率。トレーサビリティ全体については、店側が一括表示したり、記録簿全部を見せて行く姿勢が必要である)。

 
  以上を考えると、POPを直売所側が一括作成するにしても、文案については出荷者自らが充分書きこんだものを作り、そのポイントを的確に表現しPOP化する必要がある。出荷者はこの前段の努力なくしては「売る資格なし」とさえ言える。スーパーに並んでるメーカー品は、POPはない代わりに包装資材にアイキャチャーや調理法が表示されている。これに近づかないと信用は得られない。

 
 
  POPを書きなれていない人もいるのが普通である。たとえば1枚100円で店側が請け負い、ラミネート加工やセルに挟み、シーズン通して使用するなどの支援システムも必要になる。

   もうひとつ「農産物直売所に望むサービス・イベント」(重複回答)についても紹介しておこう。上記とダブル要素も結構あるが・・・
 表のように、試食の提供>レシピの提供>農薬・肥料ほか生産方法等の説明>チラシ・HP・メール等による情報提供>ポイントカード・・・などが上位だ。だが試食やレシピの提供など、ほとんど実施していない例が多い。

 毎日6~7品の試食を実施しているのは、茨城県の「みずほの村市場」くらいで、あとは1~2品の試食を実施している例にたまに出あう程度である。ニーズとの乖離がありすぎる。「美味しいですよ」とPOPで謳っても、実際に食べさせなければ判断できない。

 季節の走り品、珍しい新製品などを中心に、毎日3点、5点と目標を設定し、ゆでたり、油でいためたり、焼いたり、ドレッシングや浅漬けの素を掛けたりした試食品を出して行く必要がある。①出荷者が持ち回りで試食品を無料で出す、②費用を店・出荷者が折半して出す・・・などルールづくりも必要である。


サービス・イベンの要素

支持率

試食の提供

42.6

レシピの提供

25.5

農薬・肥料等の生産特性

24.6

HP等による営業・商品・価格

18.7

ポイントカード等のサービス

15.7

郵送・宅配サービス

11.3

抽選会等気軽なイベンと

10.6

料理教室等食材の利用法

5.6

農業体験教室等のイベント

5.4

特になし

27.3

 注目すべきは、「商品の郵送・宅配サービス」を希望する人も11.3%もいることだ。仮に宅配ゼロの店が宅配に取り組めば11%ほどの売上げ増も可能になる。もはや地産・地消だけでは発展できない。「他消」まで加味することが、顧客の要望でもあるのだ。


      近藤・支援内容
  該当時間
1.農業のマネージメント講座
3~7時間
2.農産物のマーケティング講座
3~7時間
3.農産物直売所の新たな発展策講座
3時間
4.直売所・顧客視点の販売促進講座
 3時間
5.主婦の食のライフスタイル講座
 3時間
6.直売所顧客調査(200~300人)
2日16時間
7.直売所の総合診断
2日10時間
8.農業経営総合診断
2日10時間
<注>講演3H7万円・7時間10万円 (交通・宿泊別)
リサーチ30万円(交通・宿泊費別)
講演の場合
1時間は4万円
2時間は6万円
経営診断20万円(交通・宿泊費別)
報告日は無料とし、交通・宿泊費別
     携帯 080-3464-2607    各種電話相談無料

2012年12月13日木曜日

伊佐沼農産物直売所は個性が詰め込まれている!

 
 川越市東部の伊佐沼という沼や、田や運動場に囲まれたのどかな地区に「伊佐沼農産物直売所」がある。有限会社・あぐり小江戸が運営する民営直売所である。昔はカヤブキ屋根だったという、「うどんや」の伊佐沼庵も裏にあり一体運営されている。心の安らぎを覚える場所と雰囲気の直売所だが、中身も優れている。
  
 
 
  駐車場22台ほど、売場面積42坪ほど、レジ2台とこじんまりとしているが、沢山の個性的な商品があるのが立派である。野菜類も2段台に30~40品が豊富に並んでいるが、注目に値するのは、まず冷ケースの中だ。手づくりのロールケーキ、モンブラン、野菜の羊羹、プリン、ティラミス等のスイーツ。そして小江戸の黒豚のスライス・・・100gの小間切れ250円、バラ肉260円、ロース肉370円。白もつもある。 豆腐もオリジナルなもの2銘柄が大量に置かれ、ゆば=湯葉まである。 
 
 
 次に平台等で展開する惣菜類・・・多種である。写真のように、コロッケをパックにし、ソース、辛子、レモンまで添えられいるのが好感が持てる。3ケ入り180円だ。すし巻き・のりまき各350円、かつ丼380円、五目ごはん180円、うの花100円、きんぴらごぼう130円、小松菜ピリいなりパック250円、そして鶏唐揚げのバラ売り1ケ60円もある。おにぎりもサケ、ウメ、青菜、おかかとある・・・いずれも飛びつきたくなるほど美味そうである。
 
 
 無添加の手作りパンコーナーの充実ぶりは目を見張る。写真のとおり3尺ゴンドラ3本分にビッシリと45アイテム以上ならんでいる。これだけパンを売る直売所をみたことがない。 
 
 幸い、統括マネージャーの綱島寛之さんにも話が聞けた。「現在8年め。市の倉庫だった建物で、現在も建物は市のもの。出荷者は70~80人。私も最近になりここに来たが、すぐ1kmもないところにJAの大型店もできた。スーパーのヤオコーなども幹線道路沿いに2店も出てこようとしている。やはり競争は厳しい。低迷し始めたものを再発展軌道に乗せるため手を打っている。50~60代の顧客が中心だが、もっと若い人にも来てもらわないと未来がないと思う。高齢化で出荷も少なくなるので、地場産という考えも、もっと広域にとらえたい。顧客も高い年齢のため、ネットを見てもらえない。宣伝に工夫が必要。生産者の方にも、作るだけでなく、もっと売る姿勢に立って欲しい」と、率直な声を聞かしてくれた。
 
 
   品揃えが極めて個性的かつ斬新である。個性を看板や大型POPにし、道行く人にストップをかける工夫、さらには子供連れの若い主婦に対して敷居を低くするイベント企画の工夫・・・等が望まれるのではないか。宣伝カーによるゲリラ的な速報性のある宣伝も有効だと思う。
 
  従業員(主婦)も、なかなか活発に対話をしてくれた。人的なサービスの面でも優れており、ぜひ多くの人に訪ねて欲しい直売所である。私の友人の農家の方も、スイーツ系の商品の充実を目指しており、実際スイーツも多い部類だ。若い人にも愛される一歩をすでに歩んでいる。