2014年8月31日日曜日

日本一の農業経営-600ha集積の株・西部開発農産に学ぶ!

1.小学時代からアルバイトで農業維持

 一般社団法人・まちむら交流きこうの主催で、8月25日に岩手県北上市後藤野の株・西部開発農産・代表取締役会長の照井耕一氏の講演会が行われた。農地集約面積は600haを超え、延べ作付面積は760haに及ぶ。当方の知る限り、日本一の農地集積であり、アメリカの1農家の平均規模170haの3.5倍である。
 


 写真はレジュメより 照井 耕一会長

 すでにNHKのクローズアップ現代でも紹介され、ベトナムの稲作指導にも乗り出し、身を粉にして従業員家族、地域住民、そして後進国の農業者の幸せを追求する素晴らしい方である。「人は1人で生きられるものではない。周囲の人、地域の人に育てられたので、社会に恩返しをしなければならない」というのが信念である。 

「西部開発農産」の名から、外部参入者のイメージを抱く方もいるだろうが、まったく異なり、地元の農業高校を卒業すると同時に、実家の農業に就農し苦労して今日を築いた根っからの農業者である。
 

 父親は昭和22年にこの地に入植・・・中山間地の不毛とされる土地。しかも父親は8才のときに亡くなる。ヒエ、アワ、押し麦などで空腹をしのぎ、小学校5~6年ごろには田植のアルバイト。中学の3年間は篤農家でアルバイト。高校進学のあきらめねばならない状況だったが、篤農家に頼んでさらに3年稼がせてもらい、県立北上農業高校を卒業した。その後、酪農に励み、23才で2才年上の奥さんと結婚、3人の子供さんを得た。 

 昭和46年ごろには、酪農を22頭まで拡大、開田も進め田3.2haで稲作部門を始めた。昭和53年には転作小麦20haの作業受託開始し、大規模小麦生産体制の確立を図った。昭和54年には酪農をやめ、肉用牛に変更。昭和61年に現在の会社を設立し、社長に就任した。その後、耕作放棄地や「借りて欲しい」の要望があれば、かならず相手の希望に沿い借地を順次増やし、600haという大規模農業を達成した。 

2.家族所得率に匹敵する経常利益率

まず現在の経営の果実から見ると・・・表―1、表―2の通りである。
表―1 経営規模の推移 単位:ha 頭数

部門

H22年

H23年

H24年

水稲

151.5

167.0

185.2

大豆

242.6

216.6

257.6

小麦

103.8

132.2

138.6

そば

98.9

130.0

119.5

キャベツ

   20

   21

   22

和牛肥育

120

140

190

表―2 経営成長の推移 単位:千円

区分

H22年

H23年

H24年

売上高

345,181

384,912

567,365

経常利益

128,015

46,819

182,406

H24年の延べ作付面積は722.9ha。ここ丸3年だけ見ても616.8haを1.17倍にし、肉用牛も120頭を190頭へと1.58倍に伸ばした。H24年の売上高は5億6,700万円、経常利益(家族労力は別途経費に算入のはず)は1億8,200万円。丸2年で売上高1.64倍、経常利益1.42倍と急速に伸ばしている・・・作付面積の伸びを上回り、それだけ粗放になるのでなく、利益を高める経営になっていることに注目すべきだ。経常利益率(所得ではない)が、H24年は32.1%で、一般的な家族所得率並みである。照井会長は、「平均年1億円の経常利益を目標にしている」とのことで、22年と24年は目標を大幅に上回る。

 東北新幹線の車窓から見ると、冬場の田はまったく利用されていない。当方は「これでは稲作の規模拡大をしても冬場は失業状態。大規模化―法人化をしようにも常時雇用は不可能」と感じ、「多角化し冬場の雇用を可能にすべし」と。かねてから思ってきた。 

照井会長は酪農(年間雇用)から入り、稲作、麦作、大豆作、野菜作、味噌や麺類の加工、作業受託と多角化してきた。しかも、途中から多労の酪農をやめ、労力面や耕畜連携面で多角化がしやすい肉牛に転換している。一方で稲作の直播、不耕起直播、小麦の立毛間播種等次々と採用し省力化も推進、これらの戦略が600haの集積を可能にしてきたと言える。 

広い耕地といっても、農業者の「貸したい」という希望をかならずかなえてきたので10a、20aの耕地もある。耕地が分散すれば作業能率が低下するが、全体の耕地を6ブロックに分け、Aは稲作、Bは小麦、Cは大豆、Dは野菜といったように、ブロックごとに作物部門を集め、作業の能率化の一助としてきた。 

耕畜連携も周辺農家に厩肥だけでなく飼料米も提供、見返りの堆肥を二戸などから1,000トンを集め、化学肥料・農薬を抑える環境にもやさしく、省コストの農業も進めている。

2.人と環境にやさしい農業目指す

大規模集積-高収益を達成してきた原動力は何か。従業員とその家族への思いやり、地域社会への思いやり、さらには外国の同じ農業者(現在はベトナム)への思いやり・・・といった人間愛に満ちた経営理念である。早くに父親を亡くし、小・中・高校と長男として苦労して育ち、自然に身についた理念と言える。詳しくは「経営者の理念」や「理念の実践」の項を見てほしい。 

表―3 その全体像

区分

内容

組織体制

    

取締役会

       |

    代表取締役社長     経営会議

       

   ――――――――――

    |         |          |

管理部  生産部  営業部

 

経営概況

1.役員    (平成25年度時点)

代表取締役会長 照井耕一    68才

代表取締役社長 照井勝也(長男)44才

専務取締役   小原信正    55才

常務取締役   照井 渉(次男)42才

2.経営規模

耕地758.4ha、肉用牛176頭、繁殖牛

40頭

3.資本金  2,697万円

4.売上高  5.6億円

5.従業員 正社員35名、パート60名

経営者

理念

 

地域を守り・人を育て・地域農業を担う

1.人を育てること

2.食農教育の重要性

3.農地を守ること

 100人の家族を守ること

理念の

実践

1.食農教育

食料の大切さの食育

農業(職業)教育   農業が好きだ

農業体験学習の受入れ

2.農地を守り・食料生産

 農地 →農業生産の基礎

 遊休農地、耕作放棄地→もったいない

 高齢化による未利用地の拡大

   →西部開発農産が農地の受手に

特色

1.借地によるスケールメリットの追求

2.多角化による企業的経営

3.5年7毛作の大規模輪作体系の確立

4.雇用創出と人材育成

5.耕畜連携と自然循環・環境保全農業

多角化

 

 

 

1.生産部門

穀類:水稲、小麦、大豆、そば

野菜:キャベツ、アスパラ(露地)

 青ネギ、ベビーリーフ(ハウス)

畜産:肉用牛繁殖・肥育一貫経営

2.受託部門  除雪、種子調整

3.加工部門  味噌、めん類

技術革新

大規模経営を目指す→

 作業の効率化・低コスト生産→

  生産技術の革新に取り組む

    水稲直販栽培

    小麦立毛間播種栽培

    小麦・大豆・そばの不耕起播種

雇用創出

通年雇用体制の確立

 水稲+畑作+肉用牛 野菜の導入

 農産加工、作業受託

人材育成

1.農は人なり

社長は社員の手本

人は育てるものにあらず 育つもの

若手が「育つ」環境づくり 資格取得

2.考えさせる  達成感を味わう

計画の立案→やりとげる

意欲  失敗  責任

3.農業  生物に働きかけ天候と勝負

  人を育てることについては、とりわけ熱心である。「人は育てるものでなく、育つもの」の考えに立つ。作業グループに分け部門を担当させているが、「仮に間違ったことをしていても、その場で注意するのでなく、結果が出てから考え、気づかせ、自ら改善策を見出す」ように仕向け、理解度を高める。「誰でも、親から立派な頭をもらっている。それを利用しないのは親不孝だ」「聞く耳、見る目を持つことが大切」と言う。頭脳の吸収力が活発なのは30才までで、「30才までの教育が大切」と指摘する。 

また「従業者は社長の姿を見て育つ」と、自ら手本になるよう率先して働く。いまも3~4日に1度は圃場を見て回り、作物が何を言わんとしているか観察し、次に打つ手を教えている。 

正社員は現在40人、パート60人だが、正社員には冬・夏の年2回賞与を出す(計4ケ月?か)。社長や部課長は部下の仕事ぶり、生活態度等を50点満点で評価し賞与に反映。現金で賞与を渡す際、必ずちょっとしたコメントを述べ激励する。いずれにしても、自社の赤いつなぎのユニホームを誇りに思い、チームワークの取れた集団のようだ。班ごとに、代掻きのおわるころ飲み会をひらき、コミュニケーションをよくする努力もしている。 

 地域の消費者や子供さんにも、食べ物がいかに大切かを理解してもらうと、食農教育のため無理なときでも体験学習を受け入れている。中学生がくればキャベツの草取り、青ネギの皮むきなどを体験してもらう。 

「食べ物を大切にしないようでは、危急の際に国は亡ぶ。国は後継者不足が起きないよう、ここ10年以上は年3兆円くらいの農業予算を維持すべきだった。ところがいまは2.3兆円に縮小」「3年ごとにコロコロと政策が変わるので困る」と農政に対する批判もためらわない。 

3.全体及び部門別の問題と対応

 大規模経営では、どうしても播種だとか収穫の期間が長くなり、適期作業がおろそかになる。省力体系を確立し、これに見合う機械の導入も必要だと強調する。 

水稲の直播は今年240haである。うち1haが不耕起直播を始めているが、3年以内に成功させそうだ。稲株が残っていると正確な直播ができないが、ヨーロッパの直播機も導入し、うまく播けるようになった。いずれにしても現在の田植機は作業能率が低い。むかしは軽トラックで播いたが、いまは無人ヘリコプターに担当2人がつき早く播けるようになっている。 

小麦・大豆・そばは、不耕起栽培が100%である。収量も上がった。大豆は約260haで、もともとの主力商品だが雑草との戦い。初期の土壌消毒を十分におこなえば100~120%の力を出すという。また6葉期に頭を刈ると枝が増え多収になる。収穫は16時にやめろというマニュアルもあるが、18~19時までやって、汚れたらクリーニングすれば問題はないそうだ。小麦は梅雨時が収穫のため、短期収穫が必須だが、140haほどを5日で終わらせるため夜の10~11時まで刈ることもする。いずれにしても、少ない機械を効率的に動かすことが、コストダウンの道とのこと。 

野菜は正直、不安定で3年に一度儲かればよい。キャベツは一昨年20haほどだったが、今年はゼロ。天候に左右され群馬に負ける。このためアスパラガス、青ネギ、ベビーリーフを増やしてきた。 

荷用牛は黒毛和種だが、TPPでたとえ関税の引き下げなどがあっても黒毛和種は残れると見ている。このため繁殖までして、子の雌牛を肥育する一貫経営である。それだけ経営も安定し、コストダウンの余地もあるからだろう。 

加工はどうか。味噌のばあい12~2月の冬場の仕事。独特の「ひまわり味噌」は売れる分だけ作るが、オレイン酸が多く、1年間食続けるとコレステロールが無くなるとのこと。めん類は一部原料も仕入、加工してうることまでしている。 

請負作業は、一つが12月1日から3月31日までの高速道路の除雪作業(これは当方が訪ねた北海道の稲作農家2軒もしていた)。もう一つがやはり冬場の大豆の選別作業で、1日30~40人で4時間ほど行っている。 

4.ベトナムの1農家所得月1万円をアップ

 照井会長は、「ブラジルで大豆栽培を」の話で、ブラジルの農業も見た。また4年前に9人で中国の農業も視察した。中国のばあい工場の排水で用水の水が鉛色。稲作は多収できるが安全性の面でダメ。 

 ベトナムに3年前に行き、親日感が強いことと農家所得が月1万円と低いことを知った。インディカ米だが、収穫したモミを業者にそのまま売るため、1kgがわずか25円。だが、米の生産量は日本の3倍ほどの2,500万トンで世界3位。輸出は700万トンでインドに次ぎ世界2位。一方、人口は3年間で9,000万人が9,500万人に増えたものの、工業の発展のなかで農家人口率は70%が50%に急減している。省力稲作が求められている。 

 このため、平成25年にベトナム研修生の受け入れを開始するとともに、ジャポニカ米の試験栽培をベトナム北部のバクニン省とハイズオン省、南部のアンザン省とソクチャン省で開始。H26年に入りハノイ近郊のフンエイ省でも開始。
 
 写真 ベトナムでの稲作指導 (レジュメより) 

北部は2期作で米の品質はやや良く。稲作の現状は耕耘機で代掻き→苗床で育苗→手で田植→手刈りの収穫→脱穀機→天日干しで乾燥。南部は3期作だが品質はあまり良くない。作業体系はトラックターで代掻き→手または直播ロール器で播種→コンバインで収穫→船でモミ輸送→平干しで乾燥。 

以上の体系をどう省力化・近代化していくかを指導するとともに、資金がないため倉庫も完備していないので、これらについての投資も予定。日本の商社の協力も得て、輸出に見合った法人を近々ハノイに設立する。国を越え、照井会長の「人にやさしい農業」が結実することを祈りたい。

 

 

 

 

2014年8月22日金曜日

主婦の買い物行動とスーパーのリサーチ技法➁-商圏の設定=池の鯉の運動!

1.頼れるスーパーで囲まれたエリア 

農家に行くと立派な池をよく見かける。端端に立派な巨石を配している場合が多い。この石を主婦の皆さんを取り囲む頼れるスーパーと見立てたばあい、池の中が第1次商圏で、回遊する鯉が消費者と言える。頼れるスーパーと言った場合、競合条件にもよりけりだが、150~300坪以上の食品スーパーやGMS(総合スーパー)ということになる。頼れるスーパーが近隣にあれば、これを除く、次の頼れる店を選択する。 

内側にも多数の食品専門店や小型スーパー、商店街があったとしても、消費者は頻度が少ないなりに「頼れるスーパー」までは出向き、その先まではなかなか行かないものだ。行くばあいは第1商圏からの流出としてとらえれば済む。池の外側が第2次商圏だ。流出は池の鯉が新鮮な空気を求め、水面上に飛び上る状況だ。GMSであったり、大型ディスカウントストアだったり、時に電車で行くデパートだったりする。それが3kmとか4km離れていれば、日本型の小商圏では、流出と見るほうが妥当である。 

当方のばあい、自身で設定した商圏を8方向で図り、平均商圏半径を算出してきたが、長野や群馬のようなモータリゼーションの社会でも、だいたい半径2.5kmだった。日本の商圏は単位面積当たりの人口密度が、アメリカの1/12.5ほどで(アメリカの国土約25倍、人口2倍)、距離的にアメリカの1/12.5になったとしても不思議でない。日本の主婦は買い物面で実に恵まれている。 

2.商圏の形はほぼ7種

商圏は以上の前提に立つとするならば・・・①アメーバー状、②円形、半円形、多角形、四角形、台形、三角形などの形に分類できる。周囲の店を線で結ぶので多くはとなる。外縁を直線で結ぶ商圏であれば、内側の角度を360°で割り、商圏関与度が出しやすく便利だ。3角形は鉄道、幹線道路、河川等で3方向を分断されているようなケースだ。 
 
 ➀アメーバ―状は、山に囲まれ道路沿いに集落が形成されているばあいだ。円形や半円形は四方や2方が山や林で囲まれた「すり鉢状(盆地)的なエリア」である。①も含め、このばあいは「頼れる店」を通り越して、民家のあるはずれまで商圏にすべきだろう。奥の人もさらに奥にスーパーがないため、「頼れる店」を利用するか、通り越し選択性の立場から内側の当店まで来る必然性があるからだ。山の中腹まで人家が延び、付近に頼れるスーパーがなければ、サルやイノシシ、カモシカなどの天国であろうと、どこまでも商圏視してよい。時に10km、また高度で200~500mにもなるだろう。長野県伊那市の天竜渓谷そいでは、こうした地点の訪問調査も経験した。

3.交通上の障害物で圧縮される

 自店の商圏を設定しても、どの方向、どの面(エリア)からも一律に引けるわけではない。途中に移動の障害物があれば、その方向や面に対しての集客力は弱くなる。その引きずらさは、徒歩、自転車、自動車の利用率でも変わってくる。このためアーバン(都会地)、サバーブ(郊外地)、ルーラル(農村部)と単純化して障害物による圧縮率を出すための調査もしてみた。 


障害物となる要素を複数あげ、「その先に行くか、行かないか」を聞き、全体の回答数に対し「行かない-の回答数」の割合(圧縮率)を出したのが別表である。アーバン、サバーブ、ルーラルごとに各30~50人に聞いた回答結果を踏まえたもので、まだまだ完全のものではない。


表-1 障害物による圧縮率 (一部推定値はいる)

 

アーバン

サバーブ

ルーラル

大きな河川越え

0.38

0.61

0.69

鉄道の反対側の踏切越え

0,34

0.48

0.73

鉄道の反対側の駅舎越え

0.41

0.55

0.76

鉄道のガード下越え

0.74

0.85

0.85

太い幹線道路越え

0.38

0.48

0.76

坂を登る方向

0.42

0.42

0.80

坂を下る方向

0.58

0.58

0.93

店前道路の交通量激しい

0.33

0.35

0.44

店前道路が狭い

0.45

0.45

0.45

店前歩道がない

0.51

0.51

0.73

自転車が停めにくい

0.23

0.37

0.64

車で入りにくい道・駐車場

0.39

0.39

0.18

幹線道路から奥まった所

0.64

0.77

0.78

周りが工場・事務所街区

0.63

0.63

0.78

周りが建築・道路工事中

0.42

0.42

0.42

孤立した寂しい場所

0.55

0.55

0.55

賑やかな場所の反対方向

0.77

0.77

0.77


   表のように、障害の程度が高く、圧縮率の数字が低いのは徒歩・自転車が中心のアーバンの場合、「大きな河川」「鉄道の踏切越え」「太い幹線道路」「店頭道路の交通量激しい」「自転車が停めにくい」「車で入りにくい道路や駐車場」等である。しかし車社会が進むサバーブやルーラルになると、障害物性が急激に少なくなるものもある。車なら障害物も楽々通過できるからだ。逆に「車で入りにくい道路、駐車場」となるとルーラルでは忌避され、圧縮率は極限になる。 

圧縮率がアーバン、ルーラル、サバーブの別なく一定か一定に近いものもある。「店前の交通量が激しい」「「店前道路が狭い」「奥まった場所」「周りが工場・事務所街区(殺風景)」
 
「周りが建築・道路工事中(危険)」「孤立した寂しい場所」「賑やかな反対方向」等だ。いづれも「途中」でなく店周辺・店自身の環境に問題がある場合だ。立地選定の際、考えるべきことが多い。近くで高速度道路や橋、ビルの建設がある場合、赤字期間をなくすため、その期間を避けてオープンすることも必要である。 

当方は売上予測の計算法であるハフ・モデル法においても、表の圧縮率を利用し、特定方向や面の集客を抑える形にしてきた。 

4.ハフ・モデル法の予測と距離の乗数

ハフ・モデル法とは、「各店の集客売上高は、それぞれの店の面積に比例し、細分化したエリアの重心までの距離のX乗に反比例する」というものだ。面積は単純な売り場面積ではなく、販売力を加味した「販売力修正面積」であるべきで、その店の年間売上高÷スーパーの平均的1坪効率=販売力修正面積としてきた。同じ1坪でも年に200万円を売る店もあれば、倍の400万円の店もある。これらを一律に見た目の面積で計算したら、正確な予測は不可能である。 

ハフ・モデル法では1次商圏エリアを普通10~20の面に細分化し、エリアごとに人口の重心に点を打つ(地図上の番地の数で推定)。各店からの距離は、この重心までとする。この際、「重心までの距離」÷(表の圧縮率)=障害性を加味した距離(伸びる)・・・となり、ハフ・モデル法という集客力計算に生かすことができる。 

表―2 距離別・店別の平均家庭内シェア%の推移

地域

距離km

アーバン

サバーブ

スーパー

GMS

スーパー

GMS

0.5

30.71

36.94

31.82

25.76

1.0

14.09

17.61

19.34

15.58

1.5

6.72

9.04

13.81

11.06

2.0

2.33

3.94

10.51

8.37

2.5

-0.51

0.45

8.26

6.54

3.0

 

 

6.60

5.18

3.5

 

 

5.21

4.14

4.0

 

 

4.28

3.28

距離乗数

1.0986

0.9604

集客売上高は「距離のX乗に反比例」としたが、X乗を普通1.5乗とか2乗にしたソフトが売られている。だが仮に人口見合いのスーパーの数がアメリカも日本も同じとすると、日本のスーパーの商圏はアメリカの約1/12.5と見られる(国土が25倍、人口が2倍としての話である)。このため、長野県のように商圏半径の平均が2.5kmとして、車で時速20kmで走行したとしても、7.5分で目的のスーパーに着いてしまう。このため、距離にあまり関係なく「池の鯉」のように商圏内を回遊する。 

距離の2乗に反比例だとかなり急カーブの減少曲線(双曲線)、1.5乗とするとやや緩い曲線、1.0乗だとさらに緩慢な曲線になる。実際は何乗に近いか? リサーチ1件ごとに顧客調査で得た顧客別・店別シェアを地図に落とし込んであるため、距離と集客率の関係をいつでも分析できる。 

表―2は、アーバン、サバーブに分け、1~2kmなら1.5mと中間距離として、距離別・店別(SMとGMS別)の家庭内シェアを各30サンプルほどを整理し平均値をまとめたものである。グラフ化すると、アーバンとサバーブの別なく、スーパーとGMSのカーブはほぼ一致する。両者の平均値について、高度な数学知識を持つ専門家に距離の乗数を解いてもらった。結果はアーバンで1.0986乗、サバーブで0.9604乗となった。 

 以上からすると、乗数は1倍として見て大きな狂いはない。当方のハフ・モデル計算では、1乗を使い、時に何乗の数値にも変えられるソフトで計算してきた。1乗だと圧縮率の計算もそのまま反映できるので都合がよい(1.5乗とか2.0乗では複雑に変化)。また何乗にでも出来れば、例えば駐車場のない競合店について2倍のハンディを課す・・・ということも出来る。 

なお詳細なデーターが残っていないが、表のGMSはアーバンでスーパーの平均約1.5倍の売り場面積、サバーブでは約2倍の面積であった。1.5倍とか2倍といっても、集客人数にはそのままの倍率で反映されない。家庭内シェアでは、アーバンの場合で約20%アップ、サバーブでは20%弱のダウンにとどまる。GMSだからと言って、面積見合いの購入額になっていない。これはスーパーにとっては幸いなことだ。食品スーパーの食における強さを示している。 

4.商圏内競合店はほぼ10店

 当方の商圏設定からすると、商圏内競合店は8~12店ほどで、平均すれば10店ほどである。ミニ・スーパー、逆に大型のGMS、ディスカウント・ストア、コープ店舗というものも各1店は加わるのが普通だ。ディスカウント・ストアは関東のばあいOKストア、ロジャース、家具店も持つオオカワ、魚中心の角上等だ。長野では会員制の西源が該当する。 

 実際の競合は生活雑貨を売るホームセンターやドラッグストア、便利性を売るコンビニ、非店舗販売の生協の共同購入他(ケータリングのヨシケイ、らでぃしゅぼーや、 オイシックス、個人の農家、郵便局等)なども含む。だがこれらの商圏関与度はまず確定困難と言ってよい。このため個別訪問のアンケート調査が必要になる。月の購入金額とか購買頻度×関連単価=推定購買額として捉える努力が必要になる。そうして総購買金額―以上の金額=ハフ・モデル計算に関与する購買金額・・・とするのが妥当である。 

 22地区の平均として出したシェアを紹介すると・・・
 
表―3 商圏の業態別に見た平均的家庭内シェア

区分

商圏内の平均シェア(流出分含む)

ハフ・モデル法の

計算対象 

GMS16.2%、食品スーパー53.6%

ハフ・モデル法の

計算対象外

コンビニ6.6%、零細店5.7%、ドラッ

グストア+ホームセンターの食品+日用

雑貨等5.1%、非店舗購入4.2%、

 

流出率相当分

 8.6%
        

 訪問調査を行わないリサーチ技法では、②とはあやふやになり、決して精度の高い予測は出来ないはず。

 

 

 

食品スーパーの売上予測調査承ります スーパー開発 近藤


売り場規模

備考

調査分析

旅費・宿泊

300~600坪

40件の訪問

調査含む

30万円

実費

300坪未満

25件の訪問

調査含む

20万円

 

実費

独自開発の日本的ハフモデル法採用!詳細に現場調査をし、
精度向上に最大の配慮!300件以上の調査実績!
携帯080-3464-2607  mail: mkondou@vega.ocn.ne.jp