「家庭内シェア」とは、聞きなれない言葉のはず。当方の訪問調査をし「どこで買い物するか」の店別頻度を聞き、非店舗購入の場合は、その月額を月購買力で割り、1世帯ごとに購入先別のシェアが計算できるようにしてきた。この積み上げが、現状の地区全体の店別シェアをつかむ一助になるからだ。
ところで、複数、つまり2~3店舗(非店舗購入先含む)に同程度の頻度で行く人も少なくない。9都県の500世帯の分析では、こうした「等距離外交型の買い物」をする人が約16%いる。AとBのそれぞれの良いものを、比較しつつ買うか、Aでは○○分野を、Bでは△△分野を買うといった選択購入をしているはず。
一方で、1番店で100~80%を購入する「集中型」の人も10%いる。幼児をかかえる若妻、足腰の弱い高齢者等は集中型になりやすい。若い単身者や単身赴任の方などは、通勤の途中にある複数のコンビニなどに寄るため、全店15%以下の小口な等距離型になる可能性もあるはず(調査からは除外されているが)。
人様々だが、総てを平均すると、あたかも陸上競技の三段跳びのように、ホップで50%、ステップで25%、ジャンプで12.5%・・・といったように1番店から3、4番店にかけ1/2ずつほどシェアが減る姿になる。
表―1 家庭内シェアの順位別構成比%
家庭内シェア
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9都県
500世帯
|
別途6都県
9地区平均
|
1番店
|
53.6%
|
53.9%
|
2番店
|
24.0%
|
24.1%
|
3番店
|
12.5%
|
12.3%
|
4番店
|
6.0%
|
5.8%
|
5番店
|
2.5%
|
|
6番店
|
1.0%
|
省略
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7番店
|
0.3%
|
|
8番店
|
0.1%
|
1例約40世帯
|
以上からすると、自店の魅力度をアップし、顧客が選択順位をワンランク・アップすれば、その顧客の購入額が2倍になることを意味する。ポイントカードから容易に2~4番店の該当人は分かる。「あなたの改善提案をお聞かせください」といったアンケートを送り、回答者が望む粗品を選択してもらい事後に贈る。かつ提案内容を確実に売り場に反映する・・・このようなアクションをすればランク・アップの助けになるはず。
2.多様な価値観のため24要素の選択
家庭内シェアに最も関係するのが、店の選択理由だ。多様な価値観の時代になり、選択要素を追加していくうちに、24件にも増えた。支持率5%以下の微小要素も7件ほど含まれている。最大要素は「近い」で、以下に「生鮮品の鮮度」「価格が安い」「「チラシを見て」「1ケ所で総て揃う」「品揃えが豊富」「買い慣れている」が続く。以上が支持率20%以上の7大要素だ。
「買い慣れ」は全国平均に比し、東京や長野が下回っており、主なリサーチ地区に含まれる中京、大阪、九州などでもっと高い数値ということになる。西日本では、より「フレンドリー」とか「人情的」な面が重視され、「買い慣れ」が重視されているように思う。
表―1 店の選択理由支持率%
選択理由
|
全国66
地区平均
|
東京18
地区平均
|
長野11
地区平均
|
区
分
|
店が近い
|
70.6
|
64.9
|
71.2
|
C
|
価格が安い
|
35.6
|
31.7
|
28.8
|
P
|
チラシを見て
|
29.8
|
25.1
|
29.8
|
P
|
1ケ所で総て揃う
|
27.1
|
23.1
|
29.6
|
V
|
品揃えが豊富
|
26.1
|
31.8
|
29.1
|
V
|
生鮮品の鮮度
|
61.3
|
64.7
|
52.9
|
Q
|
美味である
|
7.8
|
10.5
|
8.5
|
Q
|
品質(品位)高い
|
6.7
|
13.9
|
0.0
|
Q
|
珍しい品ある
|
1.3
|
3.5
|
2.0
|
Q
|
安全志向品ある
|
9.6
|
13.1
|
13.5
|
Q
|
配達で便利
|
5.1
|
5.9
|
10.9
|
C
|
センス・楽しさ
|
0.6
|
1.2
|
0.9
|
M
|
買い易い
|
13.9
|
8.8
|
10.5
|
C
|
買い慣れている
|
23.3
|
11.9
|
13.9
|
C
|
接客が良い
|
2.5
|
2.2
|
2.9
|
M
|
駐車し易い
|
12.4
|
9.7
|
14.4
|
C
|
何処かに行くつで
|
9.2
|
14.2
|
9.6
|
C
|
勤帰りに寄れる
|
9.7
|
10.0
|
10.2
|
C
|
長時間営業
|
2.0
|
3.8
|
1.4
|
C
|
スタンプ・ポイント
|
6.4
|
7.0
|
↓
|
他
|
会員・勤め先・馴染み・知人
|
3.7
|
3.2
|
↓
|
C
|
まとめ買いできる
|
2.8
|
3.2
|
12.6
|
C
|
運動・散歩がてら
|
3.2
|
10.7
|
↑
|
C
|
行き易い
|
4.5
|
3.7
|
↑
|
C
|
<注> C=コンビニエンス(便利志向)、P=プライス
(価格志向)、Q=クオリティ(品質志向)、V=バラエ
ティ(品揃え志向)。今までは他に分類していたM=ムー
ド(雰囲気志向)、他=区分しにくいがPではない。
「近い」という物理的な要素を除けば、実質的な魅力度の第1位は「生鮮品の鮮度」だ。日本は南北に長く、四季折々の生鮮品が出回る国。したがって生鮮食品中心の食卓である。地元品だけでも結構多いため新しさになれている。それだけに北や南のはずれから輸送される野菜、果物、魚、肉にしても鮮度に敏感である。農水省の調査、各県の消費者モニター調査でも、食品の選択基準の1位は野菜と鮮魚は鮮度、果物は「味」が一位で鮮度は2位・・・という結果が定着している。
ではアメリカはどうなのか。生鮮野菜や果物は、西海岸に生産集中していて貴重品。その西海岸を4度旅したが、ホテルの朝食はパンにバター、そして「コーヒー・オア・ティ」の注文にしたがった品しか出てこない。唯一、朝食に野菜サラダが出たのは、レタス産地のサリナスのホテルだった。普通は特別注文しない限り、貴重品の野菜・果物、さらに肉・魚は出てこない。スーパーに行けば、加工品の山、また山である。ケロッグ、ドールやデルモンテ等の缶詰、キャンベルの缶スープ、冷凍食品は日本の3~4倍ものアイテムだ。加工食品文化である・・・ただし西海岸は青果の出回りも豊富で、バルク販売(量り売り)に沿った青果の裸陳列は実に美しく、圧倒される。
以上のため、スーパーは生鮮の鮮度のノウハフを競い、その優劣がスーパー全体の価値を高め、「良いスーパー」と評判を取ってきた。しかし、20~40代前半の主婦となると少し違う。ご主人の所得も低く、食べ盛りの子供さんを抱え、「質より量」で、第3位の「価格の安さ」「チラシを見て」を選ぶ。
逆に所得にも余裕の出る40代後半~60代前半の熟年主婦は「食事にアクセントを出し、食そのものを楽しみたい」となり、「1ケ所で総て揃う」「品揃え豊富」の選択になる。GMSやデパート、各種専門店を選ぶことになる。
3.コンビニエンスの時代!
強調したのは、勤労や家事・育児、趣味・習い事と忙しい時代になり、「近い」を初めとしたコンビニエンス(便利性)を重視する時代ということ。「配達」「買い易い」「買い慣れ」「行き易い」「駐車」「ついで」「勤め帰り」「長時間営業」「馴染み」「まとめ買い可」「運動・散歩がてら」などC要素の選択項目は11と極めて多い。主婦のばあいコンビニを利用するのは少ないが、C要素を1つでも選択する主婦は90%以上にのぼる。
非店舗購入の生協の共同購入の動機も変質している。調査を開始した初期には「安全志向品が買える」が全国平均12%ほどを占めていた。それが後半になると表のように9.6%平均に減った。安全もさることながら「配達で便利」に置き換わっている・・・特に東京・長野を除く他県でこの傾向が強いと言えそうだ。
スーパーやGMSにおいて「近い」「勤め帰りに寄れる」は、物理的条件で動かしにくい面がある。だが「買い易い」「駐車し易い」などは、コストを掛けず、工夫次第で改善できる。コンビニは、スーパーやGMSが苦戦を続けるなか、業態全体としては売上高が漸増している。コピーはもちろん各種支払い、宅急便、ATMとサービス領域を広げ、青果やFFとしてのコーヒーまで必ず置くようになり、便利性の切り口をさらに深めている。たかが100㎡(30坪)に過ぎない品揃えなのに、高齢者の利用も日々増えている。「便利性」とは何か・・・を学ぶ良き手本である。
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売り場規模
|
備考
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調査分析
|
旅費・宿泊
|
300~600坪
|
40件の訪問
調査含む
|
30万円
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実費
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300坪未満
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25件の訪問
調査含む
|
20万円
|
実費
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