これは食品スーパー関係者だけでなく、消費者の方にもぜひ読んでいただきたい。きっと賢い消費者につながると思っている。主に店舗開発にたづさわる方に留意を促すためのガイダンスだが、買い物行動を客観的に知ることは、スーパーに携わるもの全員、また消費者にとっても必要ではないか。
7年前の平成20年までの約19年間、スーパー新規出店に当たってのマーケト・リサーチ(売上高の予測)をしてきた。全国約30都府県を踏破し、計300ケ所以上の調査をしたことになる。これも全国ネットワークを持つ県や地方をカバーする生協組織にお引き立てをいただけたからだ。300~600坪の大型店舗開発のリサーチを繰り返しさせていただいた。自動車や遠隔地までの飛行機の距離までいれれば楽に30万Km、地球7.5周をしたことになる。「主婦を訪ねて30万kmの旅」である。この連載もまた長くなって当然・・・と理解してほしい。
1ケ所30~40人の主婦を訪問調査もした。昼間の調査のため単身の若いサラリーガールやサラリーマンには会えない。土日などご主人に話を聞くこともあったが、主婦の立場で回答を求めた。スーパーの顧客は主婦主体であり、「主婦主体」の回答としてまとめあげた。このため若いとか中高年の単身者の回答はほとんど含まれていない。
予測精度を高めるためエリアの競合店への流れ、その店別頻度(週回数、徒歩・自転車・車・配達の別)、1ケ月の関係購買力、店の選択基準、主に行く店の品揃え・鮮度・価格等の評価・店の選択志向、基本事項(主婦の年齢・世帯人員・世帯主及び主婦職業、就業人員)等への回答を得、地域の実態を踏まえた予測をしたかったからだ。正確には15項目+アルファーである。アルファーでは、その時々の話題について回答してもらった。その総数は助手やアルバイトを加えたばあい、1万人以上にのぼる。当方自身が訪問した分だけで4千にはなるはず・・・主に徒歩で回れない車エリアを当方が担当した。
1ケ所当たりのサンプル数は少ないが、地図に町丁別や字別の世帯数を記入、世帯に合わせ点を分散させて打ち、点の近辺で訪問調査し、できるかぎりエリア全体の傾向を反映できるように留意した。
アンケート原版と報告書はいまも総て保存してある。問題はアンケートが手書きであり、分析のためPCに打ち込む必要がある。1千、2千のサンプルの分析はなかなかできない。関東(栃木除く)+長野、山梨、静岡9都府県から2地区ずつ選んだ500人サンプルの分析が最大例である。しかし、別途年次の進展に合わせ、直近の調査地区50ケ所、66ケ所の平均数値も残してある。
2.スーパー関係の世帯人員別の購買力推移
売上高の予測には、地元の世帯人員に合わせた1世帯の月ないし年の購買力が不可欠である。これに世帯人員を掛ければ、地元商圏内の総購買力になり、さらに自店シェアを掛ければ月ないし年の予測売上高になるからだ。
それには、世帯人員に応じた「食品+日用品・軽衣料等」の月の支出変動をつかみ、その変動を計算式(人員に応じた月購買力y=ax+b xは人員)としてつかんでおく必要がある。この計算式は家計費調査では示していない。
予測売上高=そのエリアの総購買力×自店シェア・・・である。エリア総購買力=そのエリアの世帯人員見合いの1世帯購買力×エリアの世帯数・・・である。特定エリアの購買力は総務庁「家計費調査」から都道府県別に得られる県庁所在都市の1世帯月消費支出を加工するしか手がない。単純な加工法はエリアの世帯人員÷「家計費調査」の平均世帯人員=aとすると、県庁所在地1世帯月の{食品+日用品雑貨等の支出}×a・・・となる。
表―1 世帯人員別の月食品+日用雑貨等の支出(単位:万円)
世帯人員
|
調査数
|
回答数
|
月支出
|
月傾向値
|
1人支出
|
1人
|
15
|
15
|
3.28
|
除外
|
(3.28)
|
2人
|
140
|
115
|
5.80
|
5.53
|
2.77
|
3人
|
117
|
103
|
7.20
|
7.44
|
2.48
|
4人
|
131
|
115
|
8.06
|
8.59
|
2.15
|
5人
|
51
|
44
|
9.59
|
9.36
|
1.87
|
6人
|
32
|
24
|
10.21
|
9.94
|
1.57
|
7・8人
|
15
|
14
|
除外
|
除外
|
除外
|
総計・平均
|
501
|
430
|
(7.74)
|
←加重平均→
|
(2.35)
|
世帯人員別の支出は、剣の刃のように軽く反り返ったものになる。これを放物線の上り側の曲線と仮定し、最少2乗法で処理した傾向値を出すと以下の方程式になる(サンプルの少ない1人及び7・8人を除く)。
世帯人員別スーパー関連の月支出y(万円)=-14.75×{1÷√x}+15.96
x=エリアの世帯人員。 以上は電卓でも簡単に計算できる。実数は表の右側から2列め。
また世帯人員で割った1人当たり月支出は右端の数字となるが、人員が増えるにつれ、少なくなる。世帯人員が増えるにつれ「ムダが減り割安になる」「低く抑える必要も生じる」といった2つの要素が影響していると見る。1人の正確な数値はないが、6人世帯は1人世帯に比べ1人当たり支出は約1/2ほどで済んでいる。
3.「家計費調査」の数値と一致するか?
問題は得られる数値が、「家計費調査」の数値と近似するかである。前提として知っておいていただきたいのは、平成12年から25年に至るまでの14年間、世帯でなく1人当たりの食費支出は平均21,882円で、平均誤差は±0.8%と変動が極めて少ないことだ。食費はベーシックな支出で金額の変動が少ない代表格の支出と言える。したがって8年以上前(12年前が上限)のデーターを基本としても、間違いはないとになる。
平成25年度「家計費調査」の全国平均の食費は3.05人で月68,604円である。やや古い平成17・18年ころの食品スーパーの売上構成比は、食料品89.41%、日用雑貨4.55%、軽衣料1.73%、その他4.26%、以上3部門計10.54%である。近年は食品スーパーの雑貨等の比率は減少している。このため、仮に食品比率90%、その他比率10%ほどが普通とすれば・・・68,604÷0.90(食品比率を小数点に置換)=76,227円となる。
先の傾向方程式に3.05人を入れて得られ数値は75,142円である。76,227円に対して98.58%で、誤差は1.4%ほどでほぼ一致している。
全国統計に近い傾向方程式を使い、まず全国レベルの購買力を出し、あとは「食品+日用雑貨他の支出は所得に比例する」と仮定し、全国平均の1人当たりの所得を調べ(「家計費調査」で計算)、ついで県庁や市町村に行き、市町村別の1人当たり所得統計資料を得て、その金額格差で修正し、「調査エリアの1世帯購買力」と仮定するのが順当である。
4.世帯人員を無視した1世帯購買力の分散状況
地区別の購買力格差や世帯人員も無視した全国66地区の「食品+日用雑貨他の購買力」の分散状況は以下の通りである。参考に東京35地区の状況も紹介しておく。
表-2 1世帯月支出額別構成比の分散状況
金額区分
|
全国66 %
|
東京35 %
|
1.5~ 4万円
|
0.5
|
0.1
|
4.5~ 5万円
|
2.0
|
2.2
|
5.5~ 6万円
|
5.0
|
4.2
|
6.5~ 7万円
|
11.4
|
10.6
|
7.5~ 8万円
|
9.0
|
8.8
|
8.5~ 9万円
|
15.4
|
14.4
|
9.5~10万円
|
8.0
|
11.0
|
10.5~12万円
|
19.5
|
14.3
|
12.5~14万円
|
12.1
|
15.8
|
14.5~16万円
|
8.3
|
8.4
|
16.5~24万円
|
8.8
|
10.2
|
支出平均
|
9.25万円
|
9.47万円
|
世帯人員平均
|
3.44人
|
3.67人
|
消費者の皆さんにあっては、世帯人員も配慮し「このくらいが支出の平均」という目安を立て、生活環境を考え、目安以上に食の贅沢をするもよし、抑えるのもよしである。
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売り場規模
|
備考
|
調査分析
| レンターカー含む交通・宿泊費 |
300~600坪
|
40件の訪問
調査含む
|
30万円
|
実費
|
300坪未満
|
25件の訪問
調査含む
|
20万円
|
実費
|
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