2012年2月8日水曜日

食のライフスタイル分析②-スタイル別の対応!

では、スタイル別の特徴と対応を述べてみたい。

 1.C単独型  C型は年齢において全世代にまたがり、平均的には1人当たり食品他の消費力は低位。世帯人員は中位。選択店数は少なく、近いとか寄り道しやすい等の条件があれば、スーパー、専門店などの固定客になり易い。

 食を大切にするタイプではなく、便利性本位に考え、料理選択の総ての要素(健康、安全、美味、ボリューム、安さ、季節の味、家庭の味、簡便)で最低レベルである。仕事が忙しいというよりは、価値観の主たる対象が仕事、スポーツ、趣味など他にあるためと見るべきだ。

 惣菜だけでなく、インスタント食品、レトルト食品、各種のだし汁、たれ汁なども買い進むと見る。スーパーでも夜間営業、商品以外のサービスなどコンビニ要素をコンビニ並みに導入すれば有効である。今後は高齢層のC単独型の厚みが増すため、食品スーパーや専門店も、高齢者向きのコンビニ要素を強化することが望まれる・・・小口パック、小容量調味料、歯にやさしい食材・惣菜、趣味のための各種参考本やコピー機、宅配便窓口などだ。

 なお「兼業主婦はC単独型」と考えがちだが、これは間違いある。それほどC単独が多いわけではない。専業主婦のC単独型比率が8.6%、パート主婦が11.8%、自営・正勤務主婦が18.8%で、兼業主婦のC単独率は専業主婦の2倍以上になるが、しかし兼業主婦の88~82%はC単独型ではない。仕事が忙しくても、必死に食を大切にする兼業主婦が圧倒的に多いのだ。

 2.P型  年齢は20~30代に多く、平均的には1人当たりの食品消費力は50~60代の60%以下と低位だが、世帯人員が多く1世帯消費力では中位。安さを求め買い回るため選択店数は多く、固定客になりにくい。だがスーパーでもエブリデー・ロープライスに徹すれば確実に固定化できる。「料理の選択基準」では安さにおいてトップだが、健康とか美味、季節の味などにも配慮している。安さ+アルファーの要素にも注目すべきだ。安さだけの訴求で100%の成果は期待できない。

 子供さんのが多い層であり、「子供さんの好きな料理」(上位よりカレー、ハンバーグ、ラーメン、スパゲティ、ステーキ、焼き肉、寿司、グラタン、シチュー、サラダ類、その他焼きそば、サンド、ハム等)に関係する商材、インスタントラーメン、菓子、アイス、デザート、アイス、弁当のオカズ向き冷凍食品などインプロに留意すべきだろう。

 3.Q型  所得も高くなる40代から、貯金もあり年金もある60・70代まで広く分布する。平均的には1人当たりの食品他の内食支出は最高レベルで、世帯人員は子供が独立した家庭も多いため少ない。選択店舗数は最も多い。GMS、食品スーパー、専門店、生協、直売所などを問わずカテゴリーごとに鮮度や良い品質の店を選び、買い回るため固定化はしにくいようだが、特定部門・商品に限れば固定できる。

 鮮度、品質、安全などに軸足を置いたコンセプトの店なら全面的に支持する。今後は、Q型にシフトした「良品・こだわり品」に特化した食品スーパーや直売所が増えるはずだ。いな、農産物直売所は今も鮮度・安心面でQ客中心の集客をしているのだ(鮮度の支持率90%超える)。

 家族の健康、美味しさ、安全、そして簡便性まで総合的に考える、食の豊さと真剣に向き合うスタイルである。鮮度・品質志向のSMとすればQ型に支持されることが固定客の増加につながり発展の鍵である。食品専門店においてもQ型の支持があれば存続可能だ。

 Q型は惣菜を最も買わないスタイル。だが簡便化にも留意する層だ。「家庭の味を凌ぐ美味なものを、食卓にもう1品」と提案すれば充分受け入れられる。

 ところでQ型に含まれているS単独型(食の安全本位)は生協組合員が90%以上で、平均すると生協ルートの家庭内シェアは58%ほどである。残り42%は一般SM他で購入している。S単独型は4.0%と少ないが、Sが付く他の型(総べてQ関連型)を含めると全体の13.7%になる。

 3.V型 
 所得の高い60~70代に多いが、絶対数は少ない。1人当たり内食支出力はQ型とほぼ同じで、外食まで含めばQ型を上回はず。所得ではQ型を上回るアッパー層が多く含まれる。GMS中心で、デパートでの買い物や外食も好む。選択店数はGMS中心のため少ない部類。食品スーパーではでは珍しいとか、高級なこだわり品まで品揃えを広げないと固定化しにくい。
 
 GMSやデパ地下で、珍しいとか美味なものがあれば、惣菜も買い、ドライ食品、菓子、酒類でも、美味な地方ブランド品、高級品、輸入品などを買い進み、アップグレイドの食品スーパーも利用している層である。高度成長-バブル期といった良き時代を経て停年を迎えた世代は、かなり豊かさがしみついている。堅実な消費だけでなく華美な消費もしてきた。このためQ型、V型だけでなくQV型も多い。安さだけが総べてでないことを、再認識して欲しい。

 標準型の食品スーパーにおいても、地方発のブランド品、非ブランドのこだわり品にも注目し、こうしたコーナーを今後育てて行くべきだ。筆者は農業関係のコンサルタントでもある。農業の6次産業化、農商工連携事業で生まれる地方発商品のためにも、こうした取組を推進して欲しい。

 4.料理の選択基準(表:支持率%)

 別途、テーマごとにスタイル別の反応の詳細結果を紹介すると(一部すでに触れたが)・・・埼玉78人(複合型省略)でサンプル数不足は否定できないが、それなりに予想した傾向が出ている。
           Q型     V型     P型     C型
健康        100     60      70      55
安全        100     40      30      23
ボリューム       0     20      20       9
安さ           0      0      50       9
美味        100    100      80      55
季節の味      67     60      50      23
家庭の味       0     40      20       5
簡便         67     40      30      27

 表のようにQ型は健康、安全、美味、季節の味だけでなく簡便性にも配慮し、総合的に食と向き合い、健康・安全・美味といったバランスのとれた料理を追求している。食卓にもうい1品を加えたいときは。簡便料理も辞さない「食に対して堅実な姿勢」を示す層と理解する。

 アッパー層(所得高い)を含むV型は、美味という点ではQ型と並び1位だが、他のQ型1位要素については2~3位で、特に健康・安全については、Q型との差が多い。「家庭の味」は1位であり、ご主人を中心とした料理なり味なりで食卓を飾り、豊かさを反映しているように思う。反面、健康や安全の点ではQとの差が大きく、家族全体の健康への配慮を欠いている感じだ。

 P型は安さが1位で、当然の結果が出ている。だが健康や美味への配慮は、Q型より劣るものの、大幅な差はなく、「ただ安ければ良い」という姿勢ではない。子供さんもいる若年主婦が多く、子供さんへの配慮も怠りないと言える。

 5.お惣菜の購入割合

 これは購入率の高さで見ており、低ければ「惣菜を買わない=手作り率」が高いことになる。(東京・埼玉138人訪問調査)
           V  QV   Q  PQV  PV  PQ  P  C単独
惣菜購入率%  44  48  33  67  50  44  69   71
カテゴリー指数0.56 0.48 0.36 1.15 0.75 0.67 0.85 0.74 

 表で分かるとおり、便利性を求めるC単独型、育児で忙しい若年主婦を多く含むP型はQ型の2倍以上も惣菜購入率が高い。Vも美味しければデパ地下の惣菜を買うアッパー層を含むため、Q型より高い比率になる。「カテゴリー指数」は、惣菜の17のカテ ゴリーを上げ、買うものに丸をつけてもらい、どの程度のカテゴリーを買っているかを指標化したものである。ほぼ購入率と連動する。PQV型はPが増幅されるよう働くタイプのか2つの率・指数とも最大になる。

 なお詳しい数値は省略するか、 GMS(総合スーパー)で買い物する比率は、「1ケ所で総て揃う」「否揃え豊富」を基準にVを区分したためもあるが、V型の家庭内1番点としてGMSを選ぶ比率 は実にQ型やP型の3倍にのぼる。このため、青果専門店的な農産物直売所には通常ほとんど来ていないと推定する。ただし旅先の道の駅等での「珍しいものあさり」は、 最もする人と推定している。

 5.ライフスタイルをどうつかむか
 お客さんの額や胸にQ・V・P・C単独・・・が表示されてはいない。店頭調査やポイントカードを駆使し、
どんなスタイルの人が、何パーセントずつ来ているかを知り、そのあとどんなスタイルの人に来て欲しいかの目標を持つことが、新たな挑戦につながる。
 
 商品にはスタイル見合いの顔がある。商品をスタイル区分に分け、その商品を買えば何型・・・として顧客分類をしておけば、提案すべき商品もある程度明確になる。また商品構成の改善計画にもつながる。これを機会にぜひ「顧客一般」という捉え方でなく、食のライフスタイルに沿った、個別スタイル別の顧客満足度の充実に向かって欲しい。

 講演用のパワーポイントの用意あり

2012年2月4日土曜日

食のライフスタイル分析①-安さだけが総てでない!

長引く不況で、スーパーはどこも価格競争に走り、デフレ解消の出口が見えない。だが主婦の「食品購入ルートの選択基準」を切り口とした食のライフスタイル分析からすると、主婦の安さ志向の構成比は26.7%と少数派である。 スーパーはもちろん、直売所や農産加工品の販売に当ってもこの点に留意すべきである。

 特定セグメント(例えばライフスタイル)→顧客ターゲット→業界内のポジショニングと進むべきマーケティング理論の構築が叫ばれながら、スーパーや飲食店等は一律「安さ」を前面に打ち出すだけのマーケティングになり、自らの首を絞めている。逆に品質や珍しさ(個性やこだわり)を求める客の満足から、ますます離れってしまっている。多元的なライフスタイルを意識し、多元的なマーケティングを展開しなければ、食品スーパーやGMS(総合スーパー)は利益が出ず、不況が長期化すればその一部は生命が絶たれる。

  ここで紹介する主婦のライフスタイルは、9都県約20地区500世帯の訪問調査の分析結果である(栃木を除く関東と長野、山梨、静岡。実際は青森から鹿児島に至る25都道府県で1万人以上の訪問調査をしてきた)。特定地域に片寄った分析ではないことを断っておきたい。また「食品の購入先をどのような理由で選ぶか-選択項目24)を切り口としたライフスタイル分析である。

 ライフスタイルは①親の生き方ほかの家庭環境、②居住地の商業環境などで長年かかって形成されたもので、過去の分析で景気の良し悪しにあまり影響されないことを確認している。なぜなら、デフレで価格全体が下がれば、安さ志向の主婦はさらに下限狙いの買物をし、非価格志向の主婦は「今は安くて当然」として、やはり鮮度や品質、品揃えといった別の価値を追求する。このようにライフスタイルそのものは簡単に変えない。

   店の選択基準(非店舗購入もあるためルートが正解)の24因子を基に分類すると・・・
①鮮度・品質志向のQ型(Quality)…生鮮品の鮮度、安全、
    美味、品位高い
②品揃え重視で華美な消費志向のV型(Variety)・・・1ケ所で
    総て揃う、品揃え豊富
③安さ志向のP型(Price)・・・安い、チラシ見て、ポイントが付く
④便利性志向のC型(Convenience)・・・近い、買い慣れ、買
    い易い、勤め帰りに寄れる、ついでに寄れる、散歩がて
    らに寄れる、行き易い、駐車し易い、配達、長時間営業
 
 この4分類の単独ないし2~3の組み合わせにより、P、PQ、PV、PQV、Q、QV、V、C単独の8つのスタイルに区分できる。店の選択基準以外に対しどう反応するかも、追調査をして、各スタイルの特性を深めてきた。

1.現代は便利性の時代

 ひとまずライフスタイルと離れると、全国55地区・13都府県別の平均からすると、便利性志向=Cの因子に該当するものが10/24と多く、その支持率を合計すると全体の43.2%にのぼる。ちなみに品質志向=Qは19.8%、品揃え=Vが16.8%、価格志向=Pが14.0%である。、便利性が突出している。そして90%以上の人がTPOに応じて使い分けるためC因子を持っている。まさに現代はコンビニエンス(便利・簡便さ)の時代と言える。 これは簡便性のある食品の消費とも深く関係してくる。ボトルや缶の飲料、インスタント食品(レトルト含む)、冷凍食品、惣菜、弁当等ばかり伸びているのもこのためである。

 90%以上の主婦がC因子を持つのは、家事・育児だけでなく、正規やパートの仕事があったり、趣味を深めたい・・・等々の忙しさのためである。現代は「時間の有効利用時代」でもあり、C因子の時代でもある。兼業主婦だから後記のC単独型と限らない。兼業主婦にC型は20%ほど多いに過ぎない。
 
 ところでCはC因子は90%以上に含まれているため、総てC因子の人のみ「C単独型」にしないと、スタイルの分類ができない。分子/分母に共にCを含む場合は数学的にカットしてよい。

 2.多いのはQ型・QV型でP型は少数派
 昼間の訪問調査のため、世帯持ちの主婦中心の構成比になるが、スタイルで最も多いのがQ型の17.9%、QV型の17.5%で、以下にC単独型14.7%、P型13.3%、PQ型13.3%、V型9.5%、PV型7.8%、PQV型6.8%が続く。

 P型はまだ所得も低く、幼児等のいる20~30代の若年主婦に多いが、人口の年齢構成も関係するため少数派である。関与因子別の構成比を出すと、Q型36.7%、V型26.9、P型26.7%、C単独9.7%で、P型は1/4程度に過ぎない。以上から「安さだけが総てではない」と言い切るのだ。

 スタイル別の特徴は、後日に詳細な説明するが、Q型は鮮度・品質本位に考え、野菜はA店、魚はB店、精肉はC店と購入先を選び、かつ専門店、スーパー、総合スーパー、生協、農産物直売所の別なく選択する層である。惣菜は工夫して主に自家で作り、購入度は低い。

 V型は華美な消費層を含むが、総合スーパー=GMSを好み、惣菜も美味・珍しいとなればデパ地下などで買い進む。

 P型は20~30代の若い主婦に多い。所得の低さもあって、チラシで動いたり、エブリデ―・ロープライスの店好みである。C型は食生活以外への関心が強く、便利性本位の買物をし、多くの店に対して中立である。

 ところで、マーケティングでは「消費の多様化・細分化を考え、特定セグメント(特定ライフスタイル等)をターゲットとしていくべき」とされているが、食品は100円、最大でも2,000円程度のものが多く、かつ顔や外見からスタイルを判断できない。このためスーパーや最近ブームの農産物直売所でも、ライフスタイル分析なしのマーケティングがされてきた。

 実際はライフスタイルを意識しないまでも、以下のとおりセグメントに対応している例も多い。また都会でなくむしろ農村において、地産地消のうねりのなかで、Q・V対応の美味・健康・安全・環境等のこだわりを考えた付加価値販売が活発に論じられ、実践されている。

 (1)例えばスーパーの中で粗利益率や粗利益生産性の高い精肉では、同じ豚ロース肉100gで輸入98~148円、国産248円、薩摩の黒豚348円と言ったように3通りの品揃えをし、結果的に生鮮3品の中で最も高い粗利益率を実現している。鮮魚でも塩サケ、しらす、たらこ・明太子などはピン・キリの品揃えをし、広い消費に応えている。こうしたセグメント対応が商品全般の販売に及ぶべきである。

 (2)優良スーパーとされるヤオコーは、毎日入口の果物の陳列を変え、美しいカップ入で販売をし、季節の果物はほぼ糖度表示をしているし、完熟、木熟、陽当たり、きづっこ(傷っこ)・・・などの表示品も多い。トレーサビリティ品や有機野菜のコーナーもあった時代もあるが、いま地場野菜コーナーは必ず設けている。ヤオコウーならではのPB商品も多い。トレーサビリティ対応のSEICAカタログ商品を多数揃えてもいる。イオンの「グリーンアイ」やヨーカドーの「顔の見えるシリーズ」も、こだわり客を対象にしたセグメント政策の1つといえる。

 (3)小型スーパーの東京都羽村市の福島屋は道路を挟み、アップグレイドの店とディスカウントの店を持つ。前者では生産者と話し合って育てた「自然農法の米や野菜やその加工品」も多数扱い、手製のPOPで細かい表示もし、ライフスタイルの多様性に対処している。産直野菜をメインとしたレストランやカフェ、洋菓子店、生花店も持ち、コミュニケーションの場(レストランやカフェ)も確保し、多様な切り口で消費者を取り込のんでいる。社長の福島徹氏は「食の理想と現実」(幻冬舎、700円+税)といった著書も書いているくらいだ。・・・別項で2回紹介。

 (4)農産物直売所は、いま伸び盛りからやや転換期にさしかかっているが、繁盛店は規格外品の販売を中心とせず、例えば「みずほの村の市場」(茨城県つくば市)の場合、「今以上に良い品を出荷しなければ扱わない。出せば高く売るよう売価設定させる」とし、直売所のブランド化を進めている。調味料や菓子にしてもナショナルブランド品ゼロで、全国の珍しい物ばかりだ。主力の野菜コーナーには毎日7品もの、薄く味付けされた試食品が置かれている。裏の温室では30種ほどのランが売られている。また直売所のなかには、地方の一流ブランド農産品ばかり集め、全国に向けギフトとして発送しているところもある。

「 主婦の食のライフスタイル」の講演に応じます。パワーポイント既存。